■DLSwとDLSw+
要約
本書は、DLSw(データリンク・スイッチング)の技術的内容について概説す る。本書の説明対象は、インフォメーショナルRFC 1434の内容である第一世代 DLSw、標準規格となった第二世代DLSwでの追加機能、および第三世代DLSwであ るDLSw+が提供する拡張性とパフォーマンス強化機能である。1.0 DLSwの歴史
シスコ社が、マルチプロトコル・バックボーン上でSNAおよびNetBIOSトラフィッ クを統合する製品を初めて出荷したのは、1991年である。この年の初頭、RSRB (ソースルートブリッジング)およびSTUN(シリアルトンネンリング)の出荷 を開始した。この4年間、シスコ社はユーザの実際のニーズに応じて、RSRBと STUNを機能強化してきた。1992年後半にIBM社は、SNAとNetBIOSを統合するための類似製品を「データ リンクスイッチング(DLSw)」と名付け、IBM 6611マルチプロトコルルータに 搭載して導入した。IBM社は6611ルータに搭載したデータリンクスイッチング のインプリメンテーションの一部を文書化し、インフォメーショナルRFCとし て1993年3月にIETF(インターネット技術特別調査委員会)に提出した。
このRFC 1434には、以下の重要項目において重大な欠陥があった。
- フロー制御:SNAまたはNetBIOSエンドシステムから出されたフローの制御 方法の規定がなかった。
- 相互運用性:RFC 1434に基づく限り、サードパーティが他ベンダーのイン プリメンテーションと相互運用性のあるデータリンク・スイッチングを開発す ることができなかった。特に、サードパーティが自社独自のフロー制御用アル ゴリズムを採用してDLSwをインプリメントしようとする場合にこの傾向が顕著 であった。
- 被管理性:RFC 1434に対応するMIBがなかった。複数のDLSwインプリメン テーションを統一的に管理することが不可能であった。
- 優先度設定:RFC 1434には回線優先度設定について規定がなかった。
RFC 1434には以上の制約があったため、シスコ社は1993年3月オハイオ州コ ロンバスにて開催されたIETFの第23回会議において、データリンクスイッチン グ作業部会の設置を提案した。1993年4月、最初のAIWにおいて、シスコ社と IBM社はデータリンクスイッチングのインプリメントに関心を持つベンダーの 非公式な会を組織した。同会の席にはRFC 1434の強化に関心のあるベンダーが 多数あったため、この強化作業を担当するのがほかならぬAIWであることが確 認された。
1993年6月、2回目のAIWにおいて、DLSw SIG(Special Interest Group) が創設された。1993年6月から1994年10月まで、DLSw SIGはデータリンクスイッ チングを実現する標準仕様の策定に取り組んだ。この仕様は、インフォメーショ ナルRFCとして採用されるべく、IETFに提出される予定である。新標準として 採用される仕様がRFC 1434に代わって有効となる。
2.0 DLSwの定義
DLSw(データリンクスイッチング)とは、IPネットワーク上でSNAおよび NetBIOSトラフィックを伝送する手段である。SRBプロトコルに付随する以下の ような問題点を解決するための基本テクノロジーとして、DLSwを使用でき、 SRB(ソースルートブリッジング)に代わる手段となる。- SRBホップカウントに制約がある(SRBではホップカウント数の上限は7)。
- ブロードキャストトラフィックが生成される(SRB探索フレームまたは NetBIOS名前問合せが生成される)。
- 不要トラフィックが生成される(肯定応答およびキープアライブが生成される)。
- DLCタイムアウトが発生する。
- フロー制御および優先度設定機能が欠如している。
以上のSRBの欠点は構内ネットワーク環境で問題となると同時に、WANを介し てSRBを拡張する場合により重要な課題となる。このため一般的にDLSwは、WAN を介してSNAおよびNetBIOSを伝送する場合に使用される。
3.0 DLSw標準
DLSw標準に準拠したさまざまなインプリメンテーションを比較する際には、 どこまでが標準の定義範囲であり、どこまでがインプリメント担当ベンダーに 任されているかを知ることが重要である。DLSw標準は、DLSw接続の確立、リソー スの特定、データの伝送、およびフロー制御とエラー回復の処理を実行するた めにルータ間で使用されるプロトコル(SSP:Switch-to-Switch Protocol)を 規定している。また、DLSw接続をローカルに終端し、これらのDLSw接続をDLSw 回線にマップする方法も規定している。DLSw接続をローカルに終端することにより、DLSw標準はリンク層肯定応答お よびキープアライブメッセージをWAN上で伝送する必要性を排除している。ま た、リンク層フレームがローカルに肯定応答されるため、リンク層タイムアウ トが発生することがない。複数のDLCをTCP接続上に多重化し、IPバックボーン 上での信頼性のあるデータ伝送を実現することが、DLSwルータが果たすべき役 目である。
3.1 接続の確立
2台のルータがSNAまたはNetBIOSトラフィックをスイッチできるようになる には、まずこのルータ間でTCP接続を2つ確立しなければならない。注:同標準は上記のTCP接続をいつ確立すべきかを規定していない。また、 DLSwを実行できるルータを決定するために必要な構成の内容も規定していない。
3.2 設定内容の交換
TCP接続が確立したら、2台のルータは互いの設定内容を交換する。設定内 容としては、DLSwバージョン番号、初期ペーシングウィンドウ(受信ウィンド ウサイズ)、NetBIOSサポート、サポート対象のリンクSAP(Service Access Point)のリスト、サポート対象のTCPセッション数などがある。この段階で MACアドレスリストおよびNetBIOS名前リストも交換できる。また必要に応じて、 DLSwパートナーが検索フレームを受信するかどうかを指定できる。DLSwを使用 することになるすべてのリソースのMACアドレスおよびNetBIOS名を構成できる ため、ブロードキャストを発生させない。設定内容の交換が終わったら、DLSw パートナーはSNAまたはNetBIOSエンドシステム間での回線確立作業に着手でき る。3.3 回線確立
2台のエンドシステム間の回線を確立するには、ターゲットエンドシステム を特定し、各エンドシステムとこれに対応するローカルルータ間のデータリン ク制御接続を設定する作業が必要である。SNAおよびNetBIOSは処理方法が異な る。あるLAN上のSNA装置は、ターゲットSNA装置のMACアドレスが指定された探 索フレーム(TESTまたはXIDフレーム)を送ることによって他のSNA装置を発見 する。DLSwルータは探索フレームを受け取ると、自身のDLSwパートナーそれぞ れに対してcanureachフレームを送る。DLSwパートナーの1つが指定されたMAC アドレスに到達できると、このパートナーがicanreachフレームを用いて応答 する。注:DLSw標準は、上記のMACアドレス情報をキャッシュする方法を規定してい ないが、情報をキャッシュすることによってブロードキャストの削減を実現す ることは許容範囲である。MACアドレス情報がいったんキャッシュされると、 以降は同一のMACアドレスを探索するためにcanureachフレームをすべてのDLSw パートナーに送る必要がなくなる。
この段階で、DLSwパートナーは次の3つの接続から成る1つの回線を確立す る。2つのDLSwルータについて、各ルータと同ルータがローカル接続している SNAエンドシステム間のデータリンク制御接続(合計2つの接続)およびDLSw パートナー間のTCP接続(1つの接続)。この回線は、ソースおよび宛先回線 IDによって一意的に特定される。各回線IDには、MACアドレス、LSAP(リンク サービスアクセスポイント)、およびデータリンク制御ポートIDが含まれる。 この回線に割り当てられる優先度は回線設定時に交渉される。優先度設定だけ でなく、回線という概念も管理およびエラー処理に応用できる。回線が確立す れば、回線上でSNA情報フレームを伝送できる。
注:DLSw標準は媒体変換に対応できる。たとえば、一方のデータリンク制御接 続がSDLCであり、他方のデータリンク制御接続LLC2であることも可能である。 同標準は媒体変換の詳細は規定していないが、SDLCおよびLLC2フローを例とし て挙げている。
NetBIOSによる回線確立も上記と同様であるが、MACアドレスを指定する canureachを伝送するのではなくDLSwルータがNetBIOS名を指定する名前問合わ せ(NetBIOS NQ)を送る点が異なる。さらに、icanreachフレームの代わりに name recognized(NetBIOS NR)フレームが使用される。SNAの場合と同様に、 DLSw標準はNetBIOS名をキャッシュする方法を規定していないが、いったん NetBIOS名がキャッシュされると、以降は所定のNetBIOS名を探索するために NetBIOS NQをすべてのDLSwパートナーに送る必要がなくなる。
3.4 フロー制御
DLSw標準は、DLSwルータ間での順応性のあるペーシングを定義の対象として いるが、ペーシングを両ルータ上のネイティブDLCフロー制御にマップする方 法は示していない。DLSw標準は、2つの独立した、一方向のフロー制御機構を 要求している。フロー制御は、バッファ可用性に動的に順応するウィンドウ機 構によって処理される。ウィンドウは、一定数ずつ増加または減少、二等分、 あるいはゼロにリセットすることができる。許可単位 (送信側が送信許可を得 ている単位の数)は受信側からフロー制御インジケータを用いて増加される。 フロー制御インジケータには以下のタイプがある。- リピート:現在のウィンドウサイズの2倍のサイズに増加させる。
- インクリメント:ウィンドウサイズを1つずつ増加させる。
- デクリメント:ウィンドウサイズを1つずつ減少させる。。
- リセット:ウィンドウをゼロにする(インクリメント型のフロー制御イン ジケータが送られるまで、ある方向のすべての伝送を停止させる)。
- ハーフ:現在のウインドウサイズの半分のサイズに減少させる。
注:RNR(receiver not ready)フレーム送信の有無または送信すべきとき (あるいはローカルデータリンク制御に適切なフロー制御のタイプ)は個々の インプリメンテーションが決定できる。また、DLSwルータ輻輳をDLCフロー制 御にマップする方法も個々のインプリメンテーションが決定できる。
フロー制御インジケータおよびフロー制御肯定応答は情報フレームに乗せて 送信することも、独立したフロー制御メッセージとして送信することもできる が、リセットインジケータはつねに独立メッセージとして送信される。
3.5 ネットワーク管理
AIWは、標準MIBの策定にすでに取り組んでいるが、MIB以外の仕様がすべて 決定してもMIBの策定が完了しない見込みであるため、別 のインフォマーショ ルRFCとして文書化する計画である。一部のベンダーはMIBを何らかの形でイン プリメントする計画を持っているが、MIBのインプリメンテーションはDLSw標 準のサポートにおける必須要件ではない。3.6 DLSw標準の要約
DLSw標準の主目的は、マルチベンダーレベルの相互運用性を実現する手段を 確保することである。しかし、さまざまなベンダーのソリューションを比較す る際に、同標準に準拠しているからといって、同等の機能を持つと見なすこと はできない。
3.6.1 DLSw標準の定義範囲
DLSw標準は、DLSwルータ間で使用されるスイッチ・ツー・スイッチ・プロト コルを定義しており、DLC接続をローカルに終端し、DLC接続から出されたトラ フィックを1つのTCP接続上に多重化する機構を定義している。同標準は、伝 送がTCPであることをつねに要求し、DLCがローカルに終端されることをつねに 要求する(シスコ社のローカル肯定応答オプションと同等)。同標準は、ソー スルートブリッジRIF(Route Information Field)がDLSwルータで終端するこ とも要求する。同標準は、優先度設定およびフロー制御の方法を規定しており、 DLC接続に関連する回線のいずれかの部分が中断される場合に、DLC接続を適切 にダウンすることを保証するエラー回復手順を規定している。3.6.2 DLSw標準の定義範囲外
DLSw標準は、いつTCP接続を確立すべきかを規定していない。設定内容を交 換できることによって同標準への準拠が確保されるが、交換した設定内容はさ まざまなレベルでサポートされる。同標準は、MACアドレス、RIF、または NetBIOS名に関する学習済み情報をキャッシュする方法を規定していない。ま た、バックアップまたはロードバランスを行う目的で、DLSw実行可能パートナー またはDLSw優先実行パートナーを監視下に置く方法も規定していない。同標準 は、媒体変換について規定していないが、変換の詳細は個々のインプリメンテー ションが任意に決定できる。スイッチ輻輳をDLCフロー制御にマップする方法 も定義していない。さらに、MIBは別のRFCで文書化される計画である。
4.0 DLSw+
DLSw+とは次世代DLSwである。DLSw+はDLSwよりも進化し、シスコ社の現在の RSRBが有する先進的機能を包含できるようになり、新たな機能を提供すること によってDLSw全体としての拡張性を向上させている。DLSw+は以下の分野の強化機能を搭載する。
- オペレーションのモード:受信側ルータの設定内容を動的に検出し、この 内容に即して動作できる能力。
- 拡張性:ブロードキャストトラフィックの量を低減し、結果として拡張性 を向上させながらIBMインターネットワークを構築できる能力。
- 可用性:SNAまたはNetBIOSの2台のエンドシステム間でのエンド・ツー・ エンド接続の全体的な可用性。
- パフォーマンス:回線速度およびトラフィックの状態からローカル肯定応 答が必要でないときに、より高いパフォーマンス伝送オプションを提供できる 能力。
4.1 DLSw+のオペレーションモード
シスコ社は数年前からIBMインターネットワーキング製品を出荷している。 現在、RSRBを稼働しているCiscoルータの導入実績はかなりの数にのぼる。こ のため、DLSw+にはRSRBをサポートすることが求められる。DLSw+は新DLSw標準 を基盤としているため、このDLSw標準を基盤としている他ベンダーのインプリ メンテーションとも相互運用性があるはずである。DLSw+には以下の3つのオペレーションモードがある。
- バックワード互換モード:DLSw+は、RSRBおよびSDLLC(SDLC-to-LLC2変換) 等をサポートしている旧バージョンのCisco IOSTM(Internetworking Operating System)との相互接続を構成する。
- 標準準拠モード:DLSw+は(DLSw Capabilities Exchangeを介して)、受 信側ルータが別のベンダー製であるかどうかを自動的に検出できるため、別 の ベンダー製である場合はDLSw+は標準モードで動作する。
- エンハンスモード:DLSw+は受信側ルータもDLSw+ルータであることを自動 的に検出できるため、DLSw+ルータである場合はエンハンスモードで動作して、 DLSw+のすべての機能をSNAおよびNetBIOSエンドシステムが使用できるように する。
Ciscoルータが他ベンダー製ルータと標準準拠モードで動作中であるときに は、エンハンスモードのDLSw機能の一部が使用できる。特に、ルータ上でロー カルに制御される分野の強化機能は、このリモートルータがDLSw+を搭載して いなくても使用できる。この種の機能には、ローカル学習(宛先がローカル LAN上にあるかどうかを確認してからWANを介してcanureachフレームを送るこ とができる機能)、探索ファイアウォール、媒体変換などがある。
4.2 DLSw+による拡張性の向上
シスコ社は、現存する最大規模のToken Ringインターネットワークのいくつ かをRSRBを用いて構築している実績がある。この数年間、シスコ社はToken Ringインターネットワークの規模の拡張とともに、RSRBの拡張性を一貫して向 上させてきた。RSRBを対象とした拡張性の向上はすべて、DLSw+に取り入れら れている。Token Ringインターネットワークの規模を制限する最も重要な要素の1つが、 WAN上に伝播する探索トラフィックの量である。DLSw+は、探索トラフィックの 数を削減する最適化機能を複数搭載している。
4.2.1 Peer Groupという概念
最も重要な最適化機能は、Peer Groupという機能であろう。この数年間に渡っ て、シスコ社が構築を手助けしてきた大規模Token Ringインターネットワーク はすべてある共通した構造を持っている。この構造とは、ネットワーク上をブ ロードキャストが通常どのように伝送されるかに基づいてルータを階層的にグ ループ化したものである。企業のある地域またはある部門内の一群のルータが 1つのPeer Group内にまとめられる。1つのPeer Group内では、1つ以上のルータがBorder Peerとして指定され る。DLSw+ルータは、テストフレームまたはNetBIOS名前問合せを受け取ると、 1つの探索フレームを自身のグループのBorder Peerに送る。このBorder Peer が、Peer Groupのメンバーに代わって探索フレームを伝送する全責任を負う。 このため、すべてのアクセスリンクに対して探索フレームを複製する必要がな くなり、アクセスルータ内で必要な処理が最小限に抑えられる。
このほかにもDLSw+には、構成が必要なピア・ツー・ピアの数を大幅に削減 するという拡張機能、すなわちオンデマンドピア機能がある。図1に示すよう に、オンデマンドピア機能を用いると、エンドシステムを処理するDLSw+ルー タがすべてのピアについての構成情報を持っていなくても、エンド・ツー・エ ンド回線を確立できる。このため、あらかじめ接続を指定するという負担を強 いることなく、臨機応変に、any-to-any構成を確立できる。また、永続的な TCP接続が不可能であるような大規模インターネットワークにおいて any-to-anyルーティングを実行することもできる。

図1 DLSw+が実現する拡張性
4.2.2 探索ファイアウォール
WANに侵入する探索トラフィックの量をさらに削減するために、探索トラフィッ クをDLSw+ルータ上で終端させるためのさまざまなフィルタリングおよびファ イアウォール手法がある。主要手法の1つが探索ファイアウォール手法である。 探索ファイアウォールを用いると、ある特定の宛先MACアドレスに対してWAN 上で送信される探索トラフィックが1つしか存在しなくなる。探索トラフィッ クが未処理または宛先からの応答待ち中である間は、同一のMACアドレスに向 かう以降の探索トラフィックは単に記憶されるだけである。探索応答が送信側 DLSw+に受信されると、すべての探索トラフィックが即座にローカル応答を受 け取る。このため、多くのネットワークで見られる、始業時の探索トラフィッ クの大量発生がなくなる。
4.3 DLSw+が実現する可用性の向上
DLSw+は、複数の宛先MACアドレスごとのパスまたはNetBIOS名から構成され るリストを維持することによって、可用性を向上させている。各Ciscoルータ は、受信側DLSw Border Peerに至り、かつ宛先に到達できる、1つの優先経路 および1つ以上のDLSw実行可能経路を維持する。2台のDLSw+ルータを経由す る優先経路を介した回線が中断されると、次に使用可能な実行可能経路が新規 優先経路となる。ブロードキャストをあらたに送る必要はなく、代替パスを介 した回復が即座に実現する。DLSw+を用いて複数の使用可能ピアを処理する実際の方法は、次のようなネッ トワークのニーズに応じて変動する。
- フォールトトレランス性:データリンク接続が失われた場合に迅速に再接 続するニーズ。
- ロードバランシング:ネットワーク内の複数のDLSw+ピア上でネットワー クトラフィックを分散するニーズ。
2台のエンドシステム間で新規回線が確立され、この回線用のエンド・ツー・ エンド・パスがすでに認識されている(すなわち、キャッシュされている)と きはかならず、キャッシュを検査するために送信側DLSw+ルータが経路検証メッ セージを優先パートナーに直接送信する。優先パートナーがもはや使用できな くなっている場合は、キャッシュ内にあって使用可能なルータ宛に経路検証が 送信される。
使用可能ルータのリスト内にラウンドロビン方式で単方向検証を送信するこ とによって、上記の経路検証を複数のルータ間で交換するように構成してロー ドバランスを実行させることもできる。
この機能は特にSNAネットワークにおいて有用である。階層SNA環境で非常に 広く使用される手法は、同一のMACアドレスを、IBM FEP(フロントエンドプロ セッサ)上のさまざまなToken Ringインタフェースカプラー(TIC)に割り当 てる方法である。DLSw+は、複製TICアドレスが発見されることを保証し、複数 のDLSw+ピアを用いてFEPに到達できるのであれば、すべてのDLSwピアがキャッ シュされることを保証する。この手法は、フォールトトレラント性を確保する だけでなく、ロードバランスを実行するためにも使用できる。この手法をフォー ルトトレラント性を実現するために使用されると、セッション中断後に迅速な 再接続を容易に実現する。ロードバランス用にこの手法を使用すると、図2に 示すように全体のSNAパフォーマンスを向上させる。

図2 可用性とパフォーマンスの拡張
4.4 DLSw+:パフォーマンス
DLSw+ルータ間の伝送接続は、ネットワークのニーズに応じて変わり、DLSw 標準と同様にTCP/IPに限定されるとは限らない。シスコ社はDLSw+ルータ間で 以下の3つの伝送プロトコルをサポートする。- バンド幅が制限され、DLCセッションの終端が必要であるWAN上でSNAおよ びNetBIOSトラフィックの伝送を実現するためのTCP/IP。
- SNAおよびNetBIOSを格納するだけの十分なバンド幅を備えた任意のトポロ ジーを用いてWAN上の伝送を実現するためのFST/IP。
- 任意のトポロジーというメリットが重要でないポイント・ツー・ポイント 接続を介した伝送を実現するための直接カプセル化。
