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Cisco IOS ソフトウェア

IOS 10.2 New Features (Cisco IOSリリース10.2の新規機能)

IOS 10.2 New Features (Cisco IOSリリース10.2の新規機能)


Date:September 1,1994

はじめに

リリース10.2となったCisco IOS(Internetwork Operating System)は, 管理能力を高め,バンド幅をよりコストパフォーマンスの高い方法で割り 当て,効率的に規模を拡大し,新規アプリケーションおよびサービスへの 拡張性を備えた新規ソフトウェア機能群が搭載されたため,さらに高度に 洗練された。

本プロダクト・ブルティン(PB)は,Cisco IOSリリース10.2に搭載され た新機能について説明するものであり,最初に「概観」の項でこの新機能を リストアップする。

IOSリリース10.2の発注に必要な手順およびプラットフォームのサポート 状況の詳細については,PB#279(IOSリリース10.2発売時に発表)を 参照のこと。

概観

1.0 バックボーン・プロトコル・ルーティング機能

 1.1 IP機能

 1.2 トランスペアレントブリッジング機能 2.0 デスクトップ環境プロトコル機能

 2.1 AppleTalk機能

 2.2 Banyan Vines機能  2.3 Novell IPX機能 3.0 広域ネットワーキング機能

 3.1 ISDN/DDR

 3.2 X.25用強化機能  3.3 フレームリレー用機能  3.4 SMDS用強化機能  3.5 ATM対応強化機能 4.0 IBM機能

 4.1 新機能

5.0 ネットワーク管理

 5.1 新機能

6.0 コミュニケーション・サーバ機能

 6.1 新機能


1.0 バックボーン・プロトコル・ルーティング機能

1.1 IP機能

1.1.1 IPマルチキャスト

説明:
従来,一般的なネットワークアプリケーションでは2台のホスト間の 通信が前提であった。しかし,1台の送信ステーションから複数の受信 ステーションへ,または複数の送信ステーションから複数のステーションへ の通信を前提とする新世代のアプリケーションが出現している。

この種のテクノロジーはデスクトップビデオ会議,サーバロケーション アプリケーション,コンピュータシミュレーション,エンターテイメン トなどの分野に使用される。

この種のアプリケーションをサポートするべく研究者達によってIPマル チキャストの開発が進められてきた。IPマルチキャストテクノロジーを 用いて実現されるものの例としてパブリックインターネット を介したMBONE(Muticast Backbone)が有名である。

アプリケーションの例:
デスクトップビデオ会議の例を説明する。3つのビデオ会議が同時に 発生しているものとする。3つのサイトすべてのホストがグループ2 会議の通信を処理している。このうち2つのサイトはグループ1会議 も処理しており,別の組み合わせの2つのサイトがグループ3会議も 処理している。

シスコ社のIPマルチキャストサポート機能には以下のものがある。

  • ルーティングプロトコルのサポート
  • ネットワーク管理ツール
  • サービスの保証
  • MBONE相互運用性
  • IGMP(Internet Group Membership Protocol)のサポート
ルーティングプロトコルのサポート

IOS 10.2はPIM(Protocol Independent Multicast)をサポートする。 PIMを用いるとネットワーク管理者は既存のネットワークに,現在稼働中 のルーティングプロトコルの種類にかかわらず,IPマルチキャスト機能を 追加できる。PIMはIGRP,EIGRP,OSPF,Integrated IS-IS,RIP, およびBGPに対応する。

PIMには密(Dense)モードと疎(Sparse)モードがある。密モードは, ほとんどのLANが1つの特定のマルチキャストグループに所属しようと する環境において使用される。疎モードは,少数のLANが1つの特定の マルチキャストグループに所属しようとする環境において使用される。 両モードとも別々のマルチキャストトラフィックに同時に使用できる。 IOS 10.2は密モードおよび疎モードPIMをサポートする。

ネットワーク管理ツール

マルチキャストアプリケーションにおけるネットワーク管理は,従来の ユニキャストアプリケーションの場合よりも困難かつ重要なテーマで ある。シスコ社はネットワーク管理として以下の機能を搭載することを 計画している。

  • グループメンバーシップマップを構築する。IOS 10.2は,将来の CiscoWorksアプリケーションによるグループメンバーシップマップの 構築を可能にするMIBサポート機能を搭載する。
  • 接続性を確定する。IOS 10.2はマルチキャストPingパケットを送信できる。
  • パケットフローを追跡する。IOS 10.2はパケットフローを追跡できる。 フローの追跡方法にはつぎの3つの方法がある。

Mtrace―マルチキャスト経路追跡。Mtraceはマルチキャスト分散 ツリーを追跡する。
MBranch―MBranchはマルチキャスト分散ツリーの1つのブランチを 追跡する。
MRBranch―任意の宛先からソースまでのパスをさかのぼって追跡する。

サービスの保証
マルチキャストトラフィックはバンド幅を多く消費する傾向がある。 ネットワーク上の既存のアプリケーションのパフォーマンスを低下 させずにマルチキャストをネットワークに追加できることが重要で ある。

IOS 10.2では,ネットワーク管理者がカスタムキューイングまたは 優先度キューイングを用いて,特定のマルチキャストグループが消費 できるバンド幅の量を制御することができる。このため,ネットワーク 管理者は新規アプリケーションのバンド幅要求から既存のネットワーク アプリケーションを保護できる。

MBONE相互運用性
IPマルチキャストテクノロジーをすでに採用した多くのネットワーク ではMBONEを接続する例が増えている。MBONEとはパブリックインター ネットの上に構築されるマルチキャストバックボーンネットワークで ある。MBONEはIPマルチキャストをサポートしないルータ上でマルチ キャストパケットをトンネンリングすることによって構築される。 このトンネルを介して使用されるルーティングプロトコルがDVMRP(Distance Vector Multicast Routing Protocol)である。Ciscoルータは,DVMRPを 使用したルータやホストとLAN上で相互運用できる。
IGMP(Internet Group Membership Protocol)のサポート
サブネットブロードキャストおよびUDPフラッディングはすべてのマル チキャストパケットを同じ方法で処理する。TCP/IP研究者のあるグルー プは,各ホストが自身を複数のマルチキャストグループ内に所属させる ことができるマルチキャスト機能を提供する方法を定義している。マルチ キャストグループのすべてのメンバーにトラフィックを送ることができる。 マルチキャストグループはクラスD IPアドレスによって識別される。 ホストは自身を複数のマルチキャストグループとして動的に登録できる。 ホストは自身がどのグループに所属するかをIGMPメッセージを送信する ことによって識別する。ルータはIGMPメッセージを受け取り,どのLAN上 のどのグループがアクティブかを発見するための問合わせを定期的に送出 する。ルータは,各グループに対してマルチキャスト経路を構築するため に,複数のルーティングプロトコルを用いて互いにやりとりするようにな る。
メリット:
シスコ社がIPマルチキャストをサポートすることにより,ネットワーク 管理者はネットワークにマルチキャストアプリケーションを少しずつ追加 することができる。IOS 10.2はIPマルチキャストアプリケーションを稼働 するのに必要なコア機能,すなわち,ルーティングサポート手法,ネット ワーク管理サポート手法,サービス保証を実現するシンプルな手法,およ びMBONE相互運用性手法をインプリメントの対象とした。将来のリリース ではIPマルチキャストおよび他のマルチメディアテクノロジー用の諸機能を 追加していく計画である。

1.1.2 ローカルエリアモビリティ

説明:
一般的には,IPネットワークの管理者が直面する最大の問題は,IPアドレ スの管理である。通常,ホストへのIPアドレス割り付けは手動で行われる。 ホストが移動する,またはネットワークトポロジーが変更すると, ネットワーク管理者はIPアドレスを変更しなければならない。

多くのIPホストベンダーが,この種のアドレス管理問題の将来の解決策と してDHCP(Dynamic Host Configuration Prodocol)の開発に取り組 んでいる。DHCPを用いるとホストが自身のIPアドレスを動的に学習できる ようになる。CiscoルータはDHCP要求および応答をリレーできる機能をサ ポートしている。

しかし,多くの既存のネットワークには,DHCPに対応したコードを持つ ホストやサーバが存在しない。IOS 10.2は,ホストの 新ロケーションへの移動を動的に確定でき,この状況に適応したルーティ ングをルータに実行させるDHCPとは別の手法をインプリメントしている。

アプリケーションの例
IPホストがネットワークで稼働するようになると,不必要なARPパケットを 送出する。通常Ciscoルータは,ARPパケット内のIPアドレスが誤ったサブ ネット上にあると見なされる場合はこのARPパケットを廃棄する。しかし, 特定のLANを対象にローカルエリアモビリティ機能をオンにすると,Cisco ルータはこのアドレスに対するホストルートを設定する。ルータはこのホスト が引き続きLAN上にあるかどうかを確認するために定期的にARPを送出する。

ローカルエリアモビリティ機能のしくみの例を下図に示す。

ローカルエリアモビリティ機能が動作するためには,ルーティングプロト コルがホストルートをサポートしていなければならない。シスコ社はEIGRP, OSPF,およびIntegrated IS-ISを用いてホストルートをサポートしている。

メリット:
ローカルエリアモビリティ機能は,従業員がポータブルコンピュータを 使用し,1日のうちに企業ネットワーク内の複数のロケーションに移動す るような環境に非常に威力を発揮する。さらに,ローカルエリアモビリティ 機能は,移動および変更発生時のネットワーク管理タスクの負担を著しく 軽減する。

1.2 トランスペアレントブリッジング機能

1.2.1 DLD(Deterministic Load Distribution)

説明:
シスコ社は,並列回路上でのブリッジトラフィックの分散を実現する, より有効な独自の新手法,DLD(Deterministic Load Distribution) を開発した。2台の同じルータ⁄ブリッジ間の複数の並行回線を用いる, シスコ社が回線グループと呼んでいる手法を用いて,追加バンド幅が確保 される。DLDは回線グループ内の並行回線上にトラフィックを分配する。

一般的なロードバランスがトラフィック到達率,パケットサイズや使用可能 なバンド幅をつねに監視しなければならないのに比べて,DLDでは必要とする CPUオーバーヘッドが少なくてすむ。

DLD機能は宛先MACアドレスを回線グループにマップしてから,ソース および宛先MACアドレスを特定の回線グループインタフェースにマップ する。このため,ある特定のソース⁄宛先ペアに対応するすべてのパケッ トが,ブリッジフラッディングおよびアドレス学習プロセスにかかわりな く,あらかじめ定義された特定の回線上で伝送される。DLDの独自の機能 の詳細は,プロダクト・ブルティン#271を参照のこと。

メリット:
DLDの主要なメリットはつぎのとおり。
  • 回線グループを適切に構成し,回線グループ有用性を適切に評価する ネットワーク設計を実現する,決定論的なアドレス分配手法である。
  • 現在のクライアント⁄サーバ環境の1対多関係などの関係に対応する エンド・ツー・エンド・ステーションを考慮に入れた,低オーバーヘッ ド・負荷分散手法である。
アプリケーションの例:
下図に示すとおり,DLD機能はパケットの宛先アドレスを チェックして,宛先ホストに至るパス上の回線グループを決定する。 つぎに,パケットのソースアドレスと宛先アドレスとを組み合わせる ことにより,パケットを回線グループ内の特定のリンク(S1-S6)に 分散する。
考慮条件:
統計型ロードバランスは非常に魅力のある概念であるため,競合ベンダーは この用語またはその変形であるロードバランスという語を,自社の製品 説明および仕様でおおざっぱに使用している。真のロードバランスとは 3つの基準に基づいてトラフィックをバランスする,上位レベル伝送プ ロトコルの完全なインプリメンテーションである。この3つの基準とは, (1) トラフィック到達率,(2)パケットサイズ,および(3)バンド幅であ る。ロードバランスを採用していると主張するベンダーはこの3つの基準 すべてを満たしていなければならず,そうでない場合は真の統計型ロード バランスではなく,むしろパケットまたはアドレス分散に近い。統計型ロード バランスプロトコルのオーバーヘッドはブリッジ手法のデータリンクと いう性質を無効にするものであり,「獰猛な力づく」の感が否めない。 DLDというアドレスの正しい分散を 用いる方がより適切と思われる。

2.0 デスクトップ環境プロトコル機能

2.1 AppleTalk機能

2.1.1 AURP(AppleTalk Update-based Routing protocol )

説明:
Apple Computer社はAURP(AppleTalk Update-based Routing protocol) という名のAppleTalkルーティングの新手法の仕様を策定した。AURP仕様は 多くのコンポーネントを持つが,シスコ社のインプリメンテーションは AURP仕様の必須コンポーネントに完全に準拠している。AURPの必須コンポー ネントにはつぎのものがある。
  1. IPパケット内にATパケットを「トンネンリング」するために定義 されている手法のサポート
  2. 新AURPルーティングプロトコル

新ルーティングプロトコルは,「更新ベース」であるという点で,従来のRTMP AppleTalkルーティングとは著しく異なる。すなわち,ルーティング更新は, RTMPのように10秒おきに発行されるのではなく,ルーティングに影響を及ぼす トポロジー変更があるときにのみ発行される。

AURPは,すべてのAppleTalkパケットをIP内にトンネンリングするこ とも必須コンポーネントとしている。このため,ネイティブAppleTalkが サポートされていない環境では,AURPを用いれば,IPインフラストラク チャを介してAppleTalkトラフィックを送信できる。

MacintoshホストはAURPをインプリメントしていない。このため,Cisco ルータはこれまで同様RTMPを用いてホストに通信し,AURPとの間でルー ティング情報を変換(または「再分配」)する。Ciscoルータは,再分配を 実行することによって非AURP対応ルータにも接続できる。

シスコ社のAURPインプリメンテーションを用いて,AURPのAIR(Apple Internet Router)のインプリメンテーションに接続できる。この接続形態は, すでに試験によって相互運用性が実証されている。

メリット:
AURPを用いると,特にIPインターネットワークを介したトンネンリン グを必要とするトポロジーにおいて,AIRなどの他のAURP対応システ ムと通信できるようになる。EIGRPと同様に,AURPはRTMPよりもより 効率的なAppleTalkルーティングプロトコルを用いるため, バンド幅を削減し,AppleTalkネットワークの拡張性を向上させるため に使用できる。
考慮条件:
あるインタフェース上でAURPを構成するとこのインタフェース上では ファースト・スイッチングが使用できなくなる。

AURPには元のRTMPルーティングに勝るメリットがあるが,プロトコル のトンネンリングが必須コンポーネントであるため,AppleTalkにEIGRP を使用する場合よりもオーバーヘッドが多くなり,管理がより複雑になる。

必須コンポーネントに加えて,AURP仕様はネットワークナンバーマッピ ング,ループ検出,およびホップカウント削減というオプショナル機能 も規定している。これらのオプショナル機能はプロトコルにより高い機 能と同時により多くの複雑さとをもたらすため,機能が使用されるトポ ロジーに制約を課すことになる。ネットワークナンバーマッピング,ルー プ検出,およびホップカウント削減は1995年前半に出荷予定のCisco IOS のリリースでインプリメントされる予定である。

2.1.2 AppleTalkファースト・スイッチング強化機能

説明:
AppleTalkファースト・スイッチングは以下のプラットフォームおよびインタフェー スでインプリメントされるようになった。
  • 4000シリーズのFDDIインタフェース
  • 2000,3000,および4000シリーズの全プラットフォームのToken Ringインタフェース
  • AGS+のCTR Token Ringインタフェースおよび7000のTRIP Token Ringインタフェース
  • 全プラットフォームの全シリアルインタフェースにおけるフレームリレーおよびPPPカプセル化
これらの機能強化によって,AppleTalkファースト・スイッチングは,AGSプラット フォームファミリーのSBEおよびSTR Token Ringカードをのぞくすべての プラットフォームのすべてのLANインタフェース上でサポートされるように なった。WANを介して,フレームリレー,HDLC,およびPPPカプセル化が すべてのプラットフォーム上でファースト・スイッチされる。
メリット:
ファースト・スイッチの対象となったインタフェース上で,AppleTalkパフォー マンスが著しく向上している。
考慮条件:
プライオリティおよびカスタムキューイングなどの特定の機能を構成すると, これらの機能が使用されているインタフェース上でファースト・スイッチングが 使用できなくなる。

2.1.3 AppleTalk MIB

説明:
AppleTalk情報用のMIBはRFC 1284に準拠してインプリメントされて おり,以下のAppleTalkプロトコルをサポートしている。ARP(AppleTalk Resolution Protocol),AppleTalk Port Group,AppleTalk DDP(Datagram Delivery Protocol),AppleTalk RTMP(Routing Table Maintenance Protocol),AppleTalk ZIP(Aone Information Protocol),AppleTalk NBP(Name Binding Protocol),およびAppleTalk Echo Group。
メリット:
AppleTalk情報はIETF標準規格に準拠しており,SNMPを用いて検索できる。
考慮条件:
本リリースでは,すべての変数は読取り専用である。AppleTalk MIB変数を 設定する機能は将来のリリースでインプリメントされる予定である。

2.1.4 AppleTalk ZIP応答フィルタ

説明:
AppleTalkネットワークでゾーン情報をフィルタリングするあらたな手段がIOS に追加された。 下流ルータとなるルータはネットワーク管理者の構成に よって決まるが,ZIP応答フィルタを用いるとゾーン情報を下流ルータ から隠すことができる。近傍ルータが ZIP応答フィルタを持つルータに 通知対象ネットワークのゾーンリストを要求するとき,このフィルタ内 で否定されたゾーンは ZIP応答パケットには含まれない。 ZIP応答フィ ルタはエンドシステムに対してゾーン情報をフィルタしない。エンドシ ステムからゾーンを隠すには,Get Zone List Filtering(IOSの旧リ リースでインプリメント済み)を使用すること。
メリット:
ゾーン情報は,エンドシステムに加えて,ネットワークの他のルータから も隠せるようになった。この強化機能を用いてセキュリティを向上させ ることも,不必要なゾーン情報の伝播を制限することによってバンド幅を 節約することも可能である。
考慮条件:
なし

2.2 Banyan Vines機能

2.2.1 Vinesファースト・スイッチング強化機能

説明:
本リリースではBanyan Vinesのファースト・スイッチングは,PPP,フレーム リレー,SMDS,およびATMカプセル化を対象にできるようになった。ATM では,AAL3/4,AAL5 NLPID,AAL5 LLC/SNAP,およびAAL MUが すべてサポートされている。これらの機能強化によって,Vinesファースト・スイッチ ングはすべてのプラットフォームのすべてのLANインタフェースでサポート されるようになった。また,HDLC,PPP,フレームリレー,SMDS,またはATM カプセル化の使用時にはすべてのプラットフォームでWAN相互接続が実現する。
メリット:
ファースト・スイッチの対象となったインタフェース上でVinesパフォーマンスが 著しく向上している(予想値18~22kpps)。
考慮条件:
プライオリティおよびカスタムキューイングなどの特定の機能を構成すると,これらの 機能が使用されているインタフェース上でファースト・スイッチングが使用できなく なる。

2.2.2 Vines準拠経路トレース

説明:
Vinesに準拠した相互運用性のある経路トレース機能がインプリメント された。Vinesネットワークレイヤアドレスに加えて,伝送に使用され る各インタフェースのMACアドレスも記録される。
メリット:
Banyan仕様をインプリメントしているネットワーク内のすべての 装置がVines経路トレースを認識および応答できるため,ネットワーク 全域における診断機能としての有用性が向上する。
考慮条件:
なし

2.3 Novell IPX機能

2.3.1 Novell IPXファースト・スイッチング強化機能

説明:
Novell IPXのファースト・スイッチングがフレームリレーおよびATMカプセル化を 対象にできるようになった。ATMではAAL3/4,AAL5 NLPID,AAL5 LLC/SNAP, およびAAL MUがすべてサポートされている。これらの機能強化によって,IPX ファースト・スイッチングはすべてのプラットフォームのすべてのLANインタフェー スでサポートされるようになった。また,HDLC,PPP,フレームリレー,SMDS, またはATMカプセル化の使用時にはすべてのプラットフォームでWAN相互接続が 実現する。
メリット:
ファースト・スイッチの対象となったインタフェース上でVinesパフォーマンスが 著しく向上している(予想値18~22kpps)。
考慮条件:
プライオリティおよびカスタムキューイングなどの特定の機能を構成すると,これらの 機能が使用されているインタフェース上でファースト・スイッチングが使用できなくな る。

2.3.2 Novell準拠IPX Ping

説明:
Novell社は最近「標準」IPX Ping機能の仕様を策定したが,このIPX Ping 機能がリリース10.2でインプリメントされている。同機能は旧リリースで インプリメントされているシスコ社独自のPingと同等の機能を持つものだが, 将来的にはNovellサーバを含めて他ベンダーの装置はPingをインプリメン トし,これに応答するものと見られるため,有用性の向上が見込まれる。
メリット:
Novell Ping仕様をインプリメントしているネットワーク内のすべての 装置がPingを認識および応答できるため,ネットワーク全域における診断 機能としての有用性が向上する。
考慮条件:
なし

2.3.3 Novell IPX MIB

説明:
Novell IPX情報がNLSP仕様においてNovell社が定義している変数と互換性を 持つようにインプリメントされている。
メリット:
Novell IPX情報は,IPX「標準」としてNovell社が規定している規格に準拠 しており,SNMPを用いて検索できる。
考慮条件:
本リリースでは,すべての変数は読取り専用である。Novellが規定する仕様は, 一部の変数に対してSNMPを介して制御できることを要求している。IPX MIB 変数を設定する機能は将来のリリースでインプリメントされる予定である。

3.0 広域ネットワーキング機能

3.1 ISDN/DDR

3.1.1 ISDN MBRI

説明:
Cisco 4000シリーズルータに搭載される新MBRI(Multiport Basic Rate Interface)NP(Network Processor)モジュールがISDNシグナリング ソフトウェアを使用できるようになった。これらのNPモジュールは4または8 のBasic Rate Interfaceをサポートするため,4000シリーズルータが最大32 の独立したリモートロケーションに対応するハブとして動作できる。ダイアル バックアップ,バンド幅オンデマンド,追加バンド幅などをはじめ,IOS DDR ソフトウェア機能を完全にサポートしている。
メリット:
Cisco 4000シリーズルータにこれらのISDN MBRI機能が追加されたため, 複数のリモートオフィスをISDNを介してバックボーンネットワークに接続 しようというニーズを持つ組織にとって,4000シリーズルータが優れた 「ハブ」ソリューションとなる。
考慮条件:
多数のリモートオフィスがISDNにアクセスする状況では,新Cisco 4500の 方が既存Cisco 4000プラットフォームよりもトータルパフォーマンスが 高くなる。

3.1.2 ISDN PRI

説明:
MIP(MultiChannel Interface Processor)カードは,シスコ社がISDN PRI (Primary Rate Interface)を現実に提供するうえでの基盤となる。MIP カードは,1つまたは2つのインタフェースをサポートできるため,最大46 のISDN Bチャネルを提供する。ソフトウェアリリース10.2でに搭載されてい るISDN PRIシグナリングは,MIPカードをISDN PRIとして使用することを必 要としている。ISDN PRIは最初,北米市場用に4ESS,5ESS,およびDMS-100 シグナリングをサポートする。
メリット:
Cisco 7000シリーズルータに搭載されるPRIは,主要サイトでのBチャネル 集中を可能にする高密度ソリューションとなる。1台のCisco 7000デュアルMIP カードを4枚装着すると,最大184までのリモートサイトに接続できる。
考慮条件:
近日中に,日本でISDN PRIシグナリング機能が使用できるように なる予定である。欧州およびオーストラリアのISDNに対応するハードウェア およびソフトウェアも今後発売の予定である。

3.1.3「スナップショット」ルーティング更新

説明:
スナップショットルーティングとは,短い「アクティブ」ピリオド(下図 のT1)中にリモート「スレーブ」ルータが中央「マスター」ルータから 動的ルーティングおよびサービス情報を学習できるようにする,タイムト リガー式ルーティング更新機能である。学習された情報は,つぎの「アク ティブ」ピリオドまでのユーザが設定可能な「非アクティブ」ピリオド(T2) の間保存される。「アクティブ」ピリオド中にルーティング更新が交換 されない場合(DDR電話番号またはインタフェースが話中の場合)は, ルーティング情報の交換を行うために次のような「アクティブ」ピリオドまでの 「非活動」ピリオドの全時間を持つようなことにはならないように, ユーザが設定可能な「リトライ」ピリオド(T3)も設定できる。スナップショットルーティング更新は,IP (RIP,IGRP),Novell(RIP,SAP),およびAppleTalk(RTMP) プロトコルをサポートしている。
メリット:
スナップショットを用いるとリモートサイトのルータが最新のネットワー ク接続情報を収集および保持できる。スナップショットルーティングはISDN 環境で特に有用な機能であり,大規模DDRネットワーク内で静的経路を インプリメントしてメンテナンスしなければならないという 課題に応えるソリューションとなる。
考慮条件:
つねにルーティングテーブルに格納されていなければならない「致命的に 重要な」ロケーションがある場合は,必ずいつでも使用できるようにこれ らのロケーションを静的に構成できればベストかもしれない。しかし, 現在のシスコのインプリメンテーションでは,スナップ ショット「アクティブ」ピリオド中に必要なロケーションが一時的にでもダウ ンすると,この宛先に至る経路が最低でも1回の「非アクティブ」ピリオド 全時間中使用できなくなる。

3.1.4 ISDNを用いるダイアルアップX.25

説明:
ダイアルアップX.25はPSTN,SW56またはISDN(Bチャネル)を介して 動作できる。ルータは,ダイアルバックアップ,ダイアルオンデマンド ルーティング,またはその両方とほとんど同じ方法で,ネットワークを ダイアルアップする。ネットワークへの接続が確立すると,X.25レイヤが 起動し,X.25コールが置かれる。

下図は,ISDNを介してX.25ネットワークにアクセスするルータを示す。

メリット:
多くの場合,ダイアルアップX.25はX.25ネットワークへの専用アクセス よりもかなりコストが低くなる。特にダイアルバックアップアプリケー ションでコストの低減が顕著となる。
考慮条件:
認証機能であるX.32が提供されていない。また,キャリアがなんらかの シンプルなダイアルアップサービスを提供しているならば,ダイアル アップX.25機能は必要ない。

3.1.5 DDRダイアラーホールドキュー

説明:
ダイアルアップサービスでは,リモートルータへの接続を確立するために 一定の量の時間がかかる。この時間は,ISDNでの2秒からアナログモ デムでの30秒までの間で変化する。この時間のあいだ,接続が存在し ないことからリモートルータ宛のパケットが廃棄される可能性がある。 ダイアラーホールドキューを作成すると,通常はドロップされるはずの パットが接続が確立されるまで保持されるようになる。
メリット:
接続が確立されるまでアウトゴーイングパットをキューに入れることに よって,ダイアラーホールドキューは,より短い時間でパケットの廃棄を 決断してしまうプロトコルおよびアプリケーションを用いる場合でもDDRを より効率的に活用できるようにする。
考慮条件:
なし

3.1.6 DTRダイアリング

説明:
シスコ社はすでに,DDR(ダイアルオンデマンドルーティング)ソフトウェア パッケージの一部としてV.25bisダイアリングをサポートしている。IOSリリー ス10.2を用いると,Ciscoルータは,DTRシグナリングを用いて非V.25bis モデムへ接続するシリアル回線を介した接続をサポートする。
メリット:
すでに導入されている大量のモデムがV.25bisダイアリングをサポートして いない。こうした旧式のモデムがシスコ社のDDRソフトウェアを用いて使用 できるようになった。
考慮条件:
DTRダイアリング用に構成されたシリアルインタフェースはコールの設定 のみが可能で,コールを受けることはできない。

3.2 X.25用強化機能

3.2.1 RFC 1356

説明:
RFC 1356は,IPおよびOSIのX.25上での伝送を可能にする方法を規定したRFC 877に代わる規格である。RFC 1356はつぎの2つの重要な機能を備える ことによってRFC 877の機能を拡張している。
  1. マルチプロトコル相互運用性――定義された方法によってすべてのプロト コルが伝送される。
  2. シングルVC――単一のVCを介して多くのプロトコルを伝送できる。 フレームのLLC/SNAPカプセル化が使用される。

既存ユーザがRFC 877および独自のカプセル化手法からRFC 1356準拠 ソリューションに円滑に移行できるように,シスコ社のインプリメンテー ションは非常に豊富な機能を備えている。

下図は,単一のRFC 1356仮想回線を介してNovellおよびAppleTalkが 両方とも伝送されている環境を示す。

メリット:
つぎの2つの大きなメリットがある。

相互運用性:RFC 1356の採用により,ユーザは,PC,ファイルサーバ などのサードパーティ製の非IP装置をX.25ネットワークを介してCisco ルータに接続できるようになった。

仮想回線の効率使用:RFC 1356マルチプロトコルVCの採用により,1つ のネットワークを介して使用される仮想回線を少なくできるため,コール 設定ロードおよびVCカウントを低減できる。パブリックネットワークが 採用されている環境では,使用料金が節減される。

考慮条件:
既存ネットワークを既存のカプセル化手法から変更するには,慎重な計画が 必要である。

3.2.2 X.25ペイロード圧縮

説明:
ペイロード圧縮とは,リンク圧縮の拡張機能であり,WAN媒体のペイロー ドのみが圧縮される。X.25では,ヘッダが圧縮されないため,パケットを 正しくスイッチできる。

シスコ社のペイロード圧縮は,圧縮率およびプロセッサ効率において最新の 水準のSTACアルゴリズムを採用している。

圧縮率は,データに依存し,4:1以上が可能だが,一般的には約2:1である。

メリット:
ペイロード圧縮のメリットはつぎの3つである。

スループットの向上:データ伝送が可能になるためX.25回線の効率が高まる ことからファイルをより高速に伝送できるようになることが明らかである。

待ち時間の短縮:多くのインタラクティブアプリケーションにおいて, パケットサイズが小さくなることから応答時間の短縮が見込まれる。

使用料金の節減:パブリックネットワークユーザにとっては,圧縮によって 伝送データのトータルが低下することから,多くの場合使用料金が節減される。

考慮条件:
圧縮は負荷のかかる処理であるため,圧縮対象とすべき最大スループットは,2500, 4000,および7000ファミリープラットフォームでは128kbpsとすることが 望ましい。4500では384kbpsに対応できると見込まれる。

3.2.3 LAPB強化機能

説明:
本リリースには,つぎの2つの重要なLAPB強化機能が搭載されている。

モジュロ128:1つのリンク上により大きなウインドウサイズを構成できる ようにする。

T4タイマ:RR(Receive Ready)をキープアライブとして使用できるように なるため,上位レイヤルーティングプロトコルに依存せずに,リンク障害を 迅速に検出できる。

メリット:
モジュロ128によってより大きなウインドウサイズを構成できるため, 広帯域および待ち時間の長い製品を使うリンク上でスループットを向上 できる。サテライトリンクおよびT1/E1回線において特に役立つ機能で ある。

T4タイマは,リンク障害を迅速に検出するのに役立つため,ダイアルバック アップが必要となるような状況におけるネットワーク可用性を向上させる。

考慮条件:
モジュロ128はスイッチがモジュロ128演算をサポートしている場合にのみ 使用できる。

3.2.4 X.25を介したIPXWAN

説明:
IPXWANはRFC 1356仕様には規定されていないが,IPX環境でマルチ ベンダー間の相互運用性を確保するために必要である。IPXWANとは, インフォメーショナルRFC 1362でNovell社が規格策定したリンク始動 および交渉プロトコルである。
メリット:
RFC 1356およびX.25を介してIPXWANを使用すると,IPXWANのみを サポートするサードパーティ製装置との相互運用性が確保できる。
考慮条件:
現時点では,X.25を介したIPXWANをサポートする装置として確認され ているのはNovell MPRのみである。

3.3 フレームリレー用機能

3.3.1 DEビットのサポート

説明:
DE(廃棄資格)ビットはフレームリレー標準規格において損失優先度の 識別子として定義されている。DEビットセットを備えたパケットは, 輻輳発生個所でDEビットセットを持たないパケットに優先して廃棄 される。

シスコ社のDEビットサポート機能はプリオリティ・キューイングのサポート機能と よく似ている。プリオリティ・キューイングと関係なく,パケットはアクセスリスト システムを用いてDEビットセットを持つことができる。

メリット:
バッチ処理や,より優先度の低いトラフィックにDEビットを設定することに よって,インタラクティブおよびミッションクリティカルなデータスト リームが,より優先度の低いトラフィックが原因である輻輳によって 著しくパフォーマンスを損なわないようにするために必要な情報を ルータがフレームリレースイッチ⁄ネットワークに提供する。

明らかにメットと言えるのが,トラフィックを同一のDLCI上で混合でき ながらも,あるレベルのパフォーマンス管理をミッションクリティカルな データストリームに対して実現できるという点である。

考慮条件:
DEビットを設定しても,プリオリティ・キューイングがネットワーク上で実現す る待ち時間制御機能は提供されない。ネットワーク上の最大待ち時間は, フレームリレーネットワークの出口ポイントにおけるバッファのサイズの 関数だけではないことに留意されたい。

3.3.2 TCP/IPヘッダ圧縮

説明:
Van JacobsonがRFC 1144において,TCP/IPヘッダ圧縮アルゴリズムを 定義した。このアルゴリズムは,1つのパケットのTCP/IPヘッダは1つ 前のパケットから予測可能であることから40オクテットを5オクテット に圧縮できるという事実を活用している。

同アルゴリズムは現在,シリアル回線およびX.25ネットワーク上でサポート されている。本リリースでは,フレームリレーのサポートが追加され,DLCI ごとにヘッダ圧縮をオンにできる。

メリット:
ヘッダ圧縮はより低速な回線およびアプリケーションがより小さいパケット を送ろうとする環境において特にメリットがある。たとえば,Telnetなどの インタラクティブアプリケーションが該当する。ユーザはTCP/IPヘッダ圧縮 をオンにして応答時間の30%もの短縮を記録している。

ヘッダ圧縮は,ルータがTCP/IP内にトラフィックをトンネンリングする環境 でも役に立つ。特に,SNAまたはRSRBおよびX.25において役に立つ。

考慮条件:
ヘッダ圧縮は128K以下の速度のリンク上でのみ使用すること。リンク速度が 高くなるにつれて,メリットが薄れる。

3.3.3 ブロードキャストキュー

説明:
フレームリレーブロードキャストキュー機能は,ルーティング,SAP更新など のすべてのブロードキャストトラフィックを識別し,通常のインタフェース キューとは別に管理される特別なキューにトラフィックを入れるこによって 機能する。特に,このキューは専用のバッファを持ち,サービスレートが 設定可能である。

ブロードキャストトラフィックは,オリジナルパケットのコピーであり, 追加DLCI上に伝送されるパケットであると定義される。なお, オリジナルルーティングまたはSAPパケットは通常キューを介して伝送 される。また,タイムセンシティブであるため,ブリッジブロードキャスト およびスパニングツリーパケットは通常キューを介して伝送される。

下図は,インタフェースごとに通常および特別キューが存在するようすを 示す。

メリット:
フレームリレーブロードキャストキューにはつぎの3つの主要なメリット がある。
  1. ブロードキャストキューが消費するアクセスバンド幅が制約され, 通常データトラフィックにはある割合のアクセスバンド幅が保証され る。フレームリレーブロードキャストキューは,遅延が変動すること が致命的な影響を及ぼすSNA伝送などのアプリケーションにとって 非常に重要である。
  2. ブロードキャストに割り当てられるバッファリングの量を,LATなどの ユーザデータプロトコルのパフォーマンスを低下させることなく,増加で きる。場合によっては,インタフェースバッファリングの増加により, 不必要な再伝送が発生し,トータルスループットが低減する場合がある。
  3. 複製ルーティング更新を保存するために大容量の特別キューを構成できる ため,ルーティング更新を損失する可能性が著しく低下する。

すなわち,セッションの損失および経路の損失という点から見て,動作が より円滑になりネットワークの安定性が向上する。

考慮条件:
キューのサイズおよびバイトレートは,DLCIの数に直線的に比例して増えて いくことは明らかである。このため,アクセスバンド幅に与えられたリーズ ナブルな境界範囲内で,DLCIの数および更新のサイズが保証されるように 注意を払うべきである。

3.3.4 フレームリレー上のIPXWAN

説明:
IPXWANはRFC 1490などのいかなるフレームリレー仕様においても規定 されていないが,IPX環境でマルチベンダー間の相互運用性を確保するた めに必要である。IPXWANとは,インフォメーショナルRFC 1362でNovel l社が規格策定したリンク始動および交渉プロトコルである。
メリット:
フレームリレーを介してIPXWANを使用すると,IPXWANのみをサポート するサードパーティ製装置との相互運用性が確保できる。
考慮条件:
IPXWANは,PPP,X.25,またはフレームリレーを介してのみ構成できる。 フレームリレーを介する場合に,IPに対しては今のところMPRと相互運用性 が確保できない。この問題は,Novell社が旧RFC 1294ではなくRFC 1490をサポートするようにMPRを更新する時点で除去される予定である。

3.4 SMDS用強化機能

3.4.1 バーチャルインタフェース

説明:
バーチャルインタフェースは,個々の宛先E.164アドレスまたはアドレスの グループがルータ上の独立した1つのポート(サブインタフェース)に接続 されていると認識されることを可能にする,新構成機能である。すなわち, 個々のVI(バーチャルインタフェース)に専用アドレス,ルーティングプロ トコル,アクセスリスト,およびルーティング計測基準値を指定して構成す ることができる。

たとえば,1つのVIに1つのインターネット接続を指定することができ, 特定のアクセスリストをこのVI上に置くことができる。

下図は4つのサイトが1つの部分メッシュを介して接続しているようすを 示す。各VIにはリモートサイトのアクセス速度に応じてそれぞれ異なる ルーティング計測値を割り当てることができるため,最適パスを決定でき る。

アプリケーションの例:
メリット:
バーチャルインタフェースをサポートすることにより,スピリットホラ イズンというルーティングプロトコル問題を気にせずに任意のトポロジー のネットワークを構築できるようになる。ルーティング・メトリックを 適切に割り当てることにより,ルータ間のパケット伝送にどのVIを使用 するかについてルータは最適の決定を下せる。

個々のアクセスリストおよびE.164ソースアドレスを使用できることも 重要なメリットである。これらを使用して,リモートサイトに応じたセ キュリティを設定でき,さらにはプロトコルごとに異なるE.164アドレ スが指定されるため,課金管理レベルを向上させることができる。

考慮条件:
現時点ではバーチャルインタフェースはプライオリティおよびカスタムキューイ ングをサポートしていない。

3.4.2 ATMを介するSMDS

説明:
SMDSは,可変長パケットおよびE.164ソース⁄宛先アドレス指定を格納 するレベル3PDUを持つ,3つのレベルから成るスタックによって規定さ れる。レベル2PDUはIEEE 802.6に従って定義されており,ATMセルに 似ている。

ATMの出現により,AAL3/4を用いてレベル2を純粋なATMレベル2に 置換することに関心が集まっている。この置換はITUがI.364として標準 化している。このプロトコルスタックを下図に示す。

シスコ社がATMを介してSMDSをサポートする方法はI.364に準拠しており, CSU/DSUを不要にする。このスタックはAIP上で稼働する。通常SMDSが 提供するこのアクセスクラス機能は,AIPのトラフィックシェープイン カミング機能を用いてサポートされる。

メリット:
CSU/DSUを不要にすることによって,このソリューションはコストを 削減し,管理を容易にする。コスト削減というメリットは,SMDS装置と 比べて耐用期間がはるかに長くなると見られるATM装置を使用する場合に さらに意味を持つものとなる。

また,このスタックを用いることの重要なメリットとして,ATMレイヤを 用いて,ATMスイッチング機能をより深く活用できるより柔軟なネット ワークを構築できるという点がある。

たとえば,下図は1つのCLSF(Connectionless Server Function)に 複数のルータが接続可能であるようすを示している。さらに,複数のルー タを2つのCLSFに接続することもできる。これは,距離およびバンド幅が 異なる場合でも固定料金によるサービスをキャリアが提供している場合など, さまざまな問題を解決するよいソリューションとなる。たとえば,都市内 データを処理するCLSFへの10Mbps接続と,長距離データ用の2Mbps接続 との料金体系を分けることができる。

考慮条件:
SMDSネットワークによってはこの機能がすぐに導入されない場合がある。 地域のSMDSプロバイダに導入計画について問い合わせられたい。

3.5 ATM対応強化機能

3.5.1 AAL 3/4のサポート

説明:
バースト性データには一般的にAAL 5およびAAL3/4の2つのAAL(ATM アダプテーションレイヤ)が使用される。通常はAAL 5が使用され,初期AIP リリースでサポートされている。ATMを介してSMDSをサポートするにはAAL 3/4をサポートしていることが必要である。

AAL 3/4は,複数のパケットをセルレベルで多重化し,単一のVCを介して 伝送できる点がAAL 5と異なる。AAL 3/4をサポートするために,各セル 内部に追加ヘッダ情報が置かれ,従来よりやや複雑なパケットヘッダおよび トレーラが置かれる。下図に,AAL 3/4での分解⁄組立(SAR)のしくみを 図解する。

メリット:
AAL 3/4のサポートはATMを介したSMDSをサポートするために必要で ある。
考慮条件:
AAL 3/4はAAL 5よりも効率が落ちる。AAL 5では53バイトのセルあたり48 オクテットのペイロードを持つのに対し,AAL 3/4はペイロードが44オクテット しかない。

3.5.2 RFC 1490のサポート

説明:
RFC 1490は,フレームリレーに対して規定されており,伝送される各パ ケットのプロトコル種類を示すNLPID(Network Layer Protocol Identifier) を用いたカプセル化を定義している。RFC 1490は現時点でシリアルインタ フェースを介してサポートされており,フレームリレーおよびATM DXIカプ セル化を実現できる。

ATMに対して規定されているRFC 1483はAIPの最初のリリースに採用されて 以来,最も一般的であり,デフォルトで使用されるカプセル化手法となって いる。本リリースでは,RFC 1490カプセル化オプションがAIPに追加された。

下図に,ATMを介した使用を実現するために策定されている一般的なプロト コルスタックの一部を示す。

メリット:
RFC 1490をサポートすることにより,シリアルインタフェースを介してATM DXIを経由して接続されているルータ,ATM CSU/DSUなどの他の装置との 相互運用性が確保される。特にHSSIを経由してATM CSU/DSUに接続され ているAGS+は,相互運用性を確保するために,AIP上にRFC 1490が構成 されていることを必要とする。

両方のカプセル化手法をサポートすることにより,CiscoルータはRFC 1483 をサポートする装置とRFC 1490をサポートする装置間のゲートウェイと しても動作できる。

考慮条件:
長期的には,AGS+および他のルータはATM DXIを介したRFC 1483をサポー トするため,RFC 1490はサードパーティ製装置との相互運用性を確保する 場合にのみ必要となる。

4.0 IBM機能

4.1 新機能

4.1.1 動的スパニングツリー

説明:
ソースルートブリッジ環境では,特定のプロトコル(特にNetBIOS)が シングルルート・ブロードキャスト(SRB)フレームを用いてブリッジLAN上の 経路を発見する。SRBを処理できると指定されたブリッジのみがSRBフ レームを伝送するため,ブロードキャストによって生成されるトラフィック の量が最小限に抑制される。ブリッジは,SRBを伝送するように構成する ことも可能であり,スパニングツリープロトコルを用いてSRBフレームを 伝送するブリッジを動的に決定することもできる。

Ciscoルータがソースルトブリッジとして動作するときは,スパニングツ リープロトコルを用いてSRBを処理できるブリッジを動的に決定できるよ うになった。

メリット:
動的スパニングツリー機能は,CiscoルータをSRB処理可能ルータとして 静的に構成する必要を排除するため,Ciscoルータの管理を容易にする。 また同機能は,CiscoルータとIBM互換ソースルートブリッジとの相互運 用性を向上させるため,ユーザの既存のブリッジへの投資を保護する。

4.1.2 拡張SDLCのサポート:ブロードキャストサービス

説明:
Ciscoルータは,複数のSDLC回線を1台のFEPに接続する単一バーチャル マルチドロップ回線と認識させることを可能にする,バーチャルマルチド ロップという機能をサポートしている。シスコ社は同機能にブロードキャ ストサービスサポート機能を追加した。SDLCブロードキャストサービス 機能を用いると,Ciscoルータがバーチャルマルチドロップ回線上で全ス テーションブロードキャストを受け取った場合に,このCiscoルータはバー チャルマルチドロップ回線を構成する各SDLC回線にこのブロードキャストを 伝播する。
メリット:
同機能は複数の宛先に同一のメッセージを同時に送る必要のあるシステムにとっ て重要である。たとえば,金融機関は株価を多くの個所に同時に伝達するこ とが法的に義務づけられている。

4.1.3 双方向同時SDLC伝送

説明:
シスコ社はSDLCパフォーマンスに双方向同時SDLC伝送サポート機能を 追加した。同機能を用いると,Ciscoルータは1つのマルチドロップ回 線で複数の装置を順々にポーリングしながら同一回線で別の装置からデー タを同時に受信することができる。また同機能は,1つのCiscoルータ ネットワークを介して接続されている2台のFEP間でのSDLC伝送のパ フォーマンスを向上させる。
メリット:
SDLC伝送のパフォーマンスが向上する。

4.1.4 QLLCのサポート

説明:
QLLC(Qualified Logical Link Control)とは,X.25ネットワークを 介して接続されているときにSNA装置が使用するリンクプロトコルであ る。シスコ社のQLLCサポート機能は,QLLC/X.25とSDLCまたはLAN(LLC2) との間での変換を実現する。同機能を用いると,リモートSNA装置がQLLC/X.25 を用いてCiscoルータに接続でき,CiscoルータがフレームをToken Ringに 変換して適切なFEP(AS/400)に伝送する。またシスコ社のQLLCサポー ト機能を用いて,リモートSDLC,Token Ring,またはEthernet接続装置 をQLLCに変換できるため,従来のSNA/X.25ネットワークをLANインター ネットワークと統合できる。

シスコ社のQLLCサポート機能は,PVC(Permanent Virtual Circuit) またはSVC(Switched Virtual Circuit)を介して接続されているPU 2.0 装置に対して適用される。リモートToken Ring接続装置をローカルQLLCに 変換すると,PU_T2.1装置もサポートされる。

メリット:
シスコ社のQLLCサポート機能を用いてリモートQLLCをローカルToken Ring に変換すると,リモートSNA装置がFEPに接続されているToken Ring装置として認識される。このため,SNAパフォーマンスが著しく向上し, NCP内で装置を静的に構成する必要がなくなる。さらに,シスコ社のQLLC サポート機能によってIBM社のNPSI(NCP Packet Switching Interface) を用いる必要がなくなるため,月極のライセンス料金を節約できる(ただし, GATEまたはDATE機能を用いる場合はNPSIが必要である)。

シスコ社のQLLCサポート機能を用いてリモートSDLCまたはLANをローカルQLLC に変換する場合の主要なメリットは,ネットワークを統合できることおよび トラフィックをルータ接続装置からX.25を介してまたは直接FEPに伝送できる ことである。さらに,複数のLAN装置(PU 2.0およびPU 2.1)がX.25接続を 確立せずにX.25上の装置にアクセスを実現できる。

5.0 ネットワーク管理

5.1 新機能

5.1.1 SNMPバージョン2

説明:
SNMP(Simple Network Management Protocol)とはネットワーク 装置間での管理情報の交換を容易にするためのアプリケーション層プロ トコルである。SNMPバージョン2に導入された変更のほとんどがSNMPの セキュリティ機能を向上させるものである。SNMPバージョン2はMD5(Message Digest 5)アルゴリズムを用いてデータの完全性を確保し,認証機能を 提供する。

シスコ社のSNMPエージェントサポート機能は,SNMPバージョン1およびSNMP バージョン2NMS(Network Management Stations)の両方とやりとり できるという意味でバイリンガル機能といえる。

メリット:
両バージョンがサポートされるため,シスコ社のユーザはバージョン1と バージョン2のどちらをも選択できる。このためユーザはネットワークの 移行時期および経路をより柔軟に計画できる。
考慮条件:
SNMPバージョン2の機能を活用するためには,ユーザはSNMPバージョン2 プロトコルを発することができるNMSを有していなければならない。

5.1.2 アクセスリスト違反ログ機能

説明:
IPプロトコルにおいて,アクセスリスト違反ログ機能はIPアクセスリスト 違反を生成しているIPアドレスのソース⁄宛先ペアを追跡する。
メリット:
同機能には2つの主要なメリットがある。第1に,アクセスリスト違反 機能がネットワークに対して違反することになる試みを警告するため, セキュリティが向上する。第2に,アクセスリストのおかげでユーザが ルータ上で伝送に失敗しているトラフィックを特定できるため,診断機 能が向上する。

6.0 コミュニケーション・サーバ機能

6.1 新機能

6.1.1 CHATスクリプト強化機能

説明:
チャットスクリプトとはアクセスサーバ内に記述でき,モデム接続の管理 を容易にする構成など特定のユーザ構成用に使用できるスクリプトである。 複数のプロトコルに対応できるようにモデムを適切に構成することは難し い作業だが,チャットスクリプトを用いるとモデムを従来より容易に初期 設定でき,適切に維持できるようになる。

新CHATスクリプトは以下のとおり。

Init(Initialize)
主に装置の初期設定に用いられる始動チャットスクリプト。 停電後にASCIIストリングを送って再構成しなければならない可能性がある モデム,プリンタ,またはダイレクトホスト接続がある場合は,この始動init チャットが活躍する。
hang up
initと似ているが,回線が使用されるごとに構成をリセットするスクリプト である。たとえば,モデムをダイアルアウトに使用するには,より低速で ダイアルするように,別のパリティなどを指定するなど,モデム構成を変更 する必要がある。このようにモデムを構成を変更したユーザが接続を終える ときには,システムが構成を元の状態にリセットすることが望ましい。ホス トへの接続を最大限に利用するために,リセットチャットスクリプトを用い て接続がクローズするときにユーザを確実にログアウトさせることができる。
dial out
特定のホストへのダイアルアウトをインプリメントする,新規ジョブ用に プリンタを初期設定する,またはダイレクト接続ホストへのハンドシェー クを初期設定するために使用される。
dial in
インカミング接続スクリプトと似ているが,ネットワークからではなくRS-232 側からのみ回線を起動する点が異なる。
メリット:
CHATスクリプトは,構成プロセスを簡素化し,設定エラーを低減し, 大幅なコスト節減をもたらす。

6.1.2 ARAP 2.0

説明:
ARAP(Apple Remote Access Protocol)2.0をサポートすることにより, ユーザはTACACS(Terminal Access Controller Access System) などの外部セキュリティAIP(Application Programming Interface)を 介した認証を実行できるようになる。TACACSサーバを介した認証では, 特別なARAPモデムCCL(接続制御言語)スクリプトが不要となる。

ARAP 2.0サーバは,ARAP 2.0クライアントにおけるMNP4エラー訂正強化 機能もサポートする。

メリット:
ARAP 2.0機能により,認証機能を中央サイトに集約することが著しく 容易になる。

6.1.3 ユーザメニュー端末サービス

説明:
ユーザメニューを用いると,初心者ユーザはメニューリストを表示および 選択することによりネットワークシステムへの接続を果たせる。接続先ホ ストをタイプ入力するのではなく,1からn(通常5)までのリストを表示 して,対応する番号を入力することによりホストを選択する。

ユーザメニューはコマンドインタフェースを隠し,ユーザに対してコミュニケーション・サーバ の知識を要求せずにサーバの選択を可能にする。

メリット:
使いやすさという特長によって初心者ユーザがコミュニケーション・サーバシステムを使い こなす能力が向上する。

6.1.4 CHAPのサポート

説明:
PPPシングルクライアントユーザがCHAP(Challenge Handshake Authentication 'Protocol)を用いて接続時にTACACSサーバに照らして認証できるように なった。このため,CHAP認証がクライアントウインドウで実行されている とき,ユーザは使いやすいPPPウインドウを使用できる。アクセスサーバはCHAP 情報を収集し,これをTACACSサーバに送り,ユーザを認証できる。すなわち, ユーザがスクリプトを用いて認証する必要がなくなった。

この機能は,TACACSを介した「逆認証」にも対応している。逆認証では, リモートPPPクライアントがアクセスサーバにリモートクライアント自身に 照らした認証を要求する。従来,これを行うにはアクセスサーバが単一の ローカルパスワードを保存していなければならなかったが,新アクセスサーバ ではTACACSを介してCHAPを用いることにより,TACACSから直接認証 情報を要求できる。

TACACSはARA 2.0ユーザ⁄名前認証をネイティブでサポートしている。 このため,ARAユーザは標準ARA CCL(接続制御原語)スクリプトを使用 できるが,中央から制御するためにはやはりTACACSを使用する。このため, 中央サイトによるパスワード認証を用いることによりARA接続がより管理 しやすくなった。

メリット:
CHAPがサポートされたため,TACACSを用いてより多くの機能を中央化 することによって認証プロセスの管理にまつわる複雑さが著しく低減される。


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