Cisco 共有ポートアダプタ/SPA インターフェイス プロセッサ

Cisco Wideband:コネクテッド ホームの提供

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Cisco Wideband:コネクテッド ホームの提供


ネットワークのユーザは「Web 2.0 系サービス」が提供される環境をますます求めるようになってきています。ユーザは、時間、場所、デバイスに関係なくサービスを利用できるようになることを求めています。このようなサービスを加入者に提供するには、ケーブル事業者が「サービス プロバイダー」から「エクスペリエンス プロバイダー」に転換する必要があります。エクスペリエンス プロバイダーとは、内外の技術革新を統合してユーザに「コネクテッド ホーム」を提供する企業です。エクスペリエンス プロバイダーは、急激に変化する技術革新に適格に対応し、差別化された製品やサービスを提供します。

Web 2.0 系サービスを提供するためにケーブル事業者に必要となるのは、現在のサービスを一層効率的に提供すると同時に、将来の新たなアプリケーション集中型の家庭向けおよび法人向けサービスの提供を可能にする、革新的かつ統合型のインフラストラクチャです。ネットワーク インテリジェンス、統合、および全体的な柔軟性を幅広く提供するソリューションを展開することで、ケーブル事業者は当面の安心感を得るだけでなく、最終的には競争圧力に対抗し、新たな市場機会に取り組むことができるようになります。IP NGN(Next-Generation Network; 次世代ネットワーク)アーキテクチャは、このような要件に対応することを目的としたもので、その主要コンポーネントがCisco Wideband ソリューションです。

IP NGN アーキテクチャには、ネットワーク レイヤ、サービス レイヤ、およびアプリケーション レイヤの 3 つのレイヤがあります。3 つのレイヤすべての機能がまとまることで、競争力のあるトリプル プレイ サービスが実現します。図 1 を参照してください。

図 1 IP NGN フレームワーク

図 1 IP NGN フレームワーク

Cisco® IP NGN は、ケーブル事業者のネットワークだけでなく、ケーブル事業者のビジネス全体を包括する転換をもたらします。IP NGN によってケーブル事業者は加入者のニーズを効率的かつ経済的に満たすことができると同時に、収益の向上を実現するアプリケーション デリバリの基礎が提供されます。IP NGN は段階的に導入することができ、インテリジェントなインフラストラクチャの構築を促進することによって、サービス認識型ネットワーク インフラストラクチャがもたらすアプリケーション認識型のサービスの提供を可能にします。このようなインテリジェントを提供することによってケーブル事業者は、高度な付加価値のあるパーソナライズされたあらゆるメディアのサービスを、ブロードバンドやワイヤレス接続を介して安全かつシームレスにエンドユーザに提供できるようになります。

コンバージェンスが強化され、ケーブル事業者による「Web 2.0 系サービス」の提供が進んでいくと、IP はこれらの新サービスを支えるプロトコルになります。これにはいくつかの理由があります。まず、インターネットは世界最大のコンテンツ ストアであり、すべてが IP をベースにしています。つまり、広範な Web コンテンツにアクセスするには、IP を介して行うのが最も容易です。次に、IMS(IP Multimedia Subsystem; IP マルチメディア サブシステム)を含む PacketCable(TM) Release 2 などの新標準は IP をベースにしています。このため、これらの標準に基づいた新サービスも当然 IP ベースになります。さらに、PC から携帯電話、PDA(携帯情報端末)に至るまで、多くのクライアント デバイスに使われている共通言語は IP です。これらのすべてのデバイスには通常、IP スタックとブラウザが組み込まれています。このような理由から、多くのデバイスに新サービスを提供するための最も簡単な方法は、IP ベースのサービスにすることです。

上記の理由から、高精細(HD)ビデオなど、帯域幅の負荷が大きいサービスを含む多くの新サービスが、IP 経由で提供されることになります。このような新サービスにより、DOCSIS® の帯域幅要件は、現在の DOCSIS 展開で提供できる水準を超えるようになっています。Cisco Wideband ソリューションはこの制限を排除します。これは、ケーブル事業者ネットワークにとって非常に重要です。


課題

いつの時代も帯域幅には、より広い帯域幅をさらに低いコストで提供することが求められます。とりわけ競争の激しい現在のブロードバンド環境では、かつてない低価格ではるかに広い帯域幅が提供されており、ケーブル事業者は、高速データ提供の帯域幅を広げることで他社と差別化し、プレミアム マージンを稼ごうとしています。また、DOCSIS ベースのビデオ サービスなど、新たな収益を生むサービスを提供することもできます。このようなサービスにはさらに広い帯域幅が必要です。この結果、帯域幅とコストという 2 つの大きな課題が生まれます。

ケーブル モデムが市場に現れた頃、特に DOCSIS ベースのケーブル モデムが登場した頃を振り返ると、ケーブル事業者は、顧客宅内エッジ製品とサービス提供によって、ダイヤルアップ モデムの 10 倍から 100 倍の帯域幅を提供しており、そのコストはダイヤルアップのための顧客宅内エッジ製品の価格とサービス コストの 2 倍以内でした。ケーブル モデムは過去 10 年以上にわたって大きな成功を収めてきました。ただし、ケーブル モデムにはチャネル容量に上限があります。また、アップストリーム チャネルとダウンストリーム チャネルが緊密に結合しているので、CMTS(Cable Modem Termination System)のダウンストリーム コスト ベースにも限界があります。

課題 #1:帯域幅の大幅増

Wideband では、1 つまたは複数のダウンストリーム チャネルを標準ブロードバンド DOCSIS システムに追加することで、帯域幅の課題が解消します。この新たなダウンストリーム チャネルのセットは、Wideband チャネルと呼ばれる 1 つの大きな仮想チャネルにボンディングされます。

課題 #2:ビット単価の大幅減

Cisco Wideband のモジュラ アーキテクチャにより、コスト削減のためのソリューションが提供されます。アップストリーム チャネルとは関係なくダウンストリーム チャネルを追加できるようにすることと、エッジ QAM(Quadrature Amplitude Modulation)デバイスの価格低下を利用することで、コスト面での課題は解決します。DOCSIS ネットワークの Wideband プロトコルの目標は、より広い帯域幅をより低いコストで提供することです。

超高速データ通信に対する加入者の要求

現在、多くのケーブル事業者が提供している高速データ サービスの速度は、ダウンストリームの最高速度が 3 Mbps から 30 Mbps の間です。DSL のダウンストリーム速度は 8 Mbps から 50 Mbps ほどです。低速の DSL サービスでは価格競争が激しく、月額わずか 3,000 円程度という場合もあります。ケーブル事業者は、より高いブロードバンド ビットレートを使用することで、DSL サービスと差別化しようとしています。このような状況は、どの国でも起こっています。ただし国によっては、銅線のループ長が短いことやその他の要因からダウンストリーム帯域幅を広げることが容易な場合もあります。

多くの地域でブロードバンド競合各社は速度で競い合い、より広い帯域幅を提供することで新規加入者を呼び込もうとしています。まもなく 50 Mbps、その後は 100 Mbps、さらには 100 Mbps 以上のダウンストリームが標準になるかもしれません。チャネル ボンディングを採用せずに、超高速サービスを DOCSIS 経由で提供することは不可能です。ただし、Wideband を採用すると、超高速に対応した Wideband ケーブル モデムが利用できるようにさえなれば、最大 24 のダウンストリーム チャネル(集約帯域幅にすると最高約 1 Gbps)が可能になります。Wideband ケーブル モデムは、最大 320 Mbps のデータ レートに対応しています。

高帯域幅 IP サービスに対する加入者の要求

高速ブロードバンドがすべてではありません。加入者が「Web 2.0 系サービス」を要求するようになっているため、ケーブル事業者はビデオなど、帯域幅を必要とする新サービスを PC、携帯電話、PDA など、家庭内の他のデバイスに対して提供する必要に迫られています。これらのデバイスで共有される「言語」は IP です。したがって、HFC ネットワークで IP over MPEG トランスポートを提供するために開発された DOCSIS をこのようなサービスの提供に使用するのは理にかなっています。

図 2(出典:Technology Futures 社)は、2025 年までの IP ビデオ サービスの増加予測を示しています。2010 年までに、全世帯の半数近くがブロードバンド接続を IP ビデオに利用し、5 分の 1 近くの世帯がブロードバンド経由で高精細度テレビ(HDTV)を受信すると予測されています。これをケーブル ネットワークで実現するには Wideband が不可欠です。

図 2 IP ビデオの成長予測

図 2 IP ビデオの成長予測

さまざまなケーブル事業者で検討されているサービスには、テレビ番組の PC へのマルチキャスト ストリーミング、ニッチなコンテンツの PC または DOCSIS 対応セットトップ ボックスへのユニキャストまたはマルチキャスト配信などがあります。これらのアプリケーションには大量の帯域幅が必要で、Wideband は現時点でそれを HFC(Hybrid Fiber-Coaxia)上で提供できる唯一のテクノロジーです。

Wideband チャネル ボンディングによる帯域幅の拡大

Wideband の主なコンポーネントはチャネル ボンディングです。チャネル ボンディングは、複数の DOCSIS チャネルでトラフィックの負荷を共有することで機能します。DOCSIS ではそれぞれの DOCSIS チャネルは約 35 Mbps のペイロードを送信すると同時に(Euro-DOCSIS では 50 Mbps)、複数のチャネルでトラフィックの負荷を共有することで、n × 35 Mbps(または n × 50 Mbps)の最大帯域幅を得ることができます(n はボンディングされているチャネルの数)。ボンディングされたそれぞれのチャネルでは、6 MHz または 8 MHz の周波数が使用されます。DOCSIS 3.0 に定義された実際のチャネル ボンディング手法は、「パケット ボンディング」と呼ばれます。図 3 を参照してください。

図 3 Wideband パケット ボンディング

図 3 Wideband パケット ボンディング


DOCSIS におけるパケット ボンディングは、MLPPP(Multilink Point-to-Point Protocol)で使用されるボンディング手法とほぼ同じように動作します。MLPPP は複数の物理リンクに負荷を分散させるためにダイヤルアップ接続で使用されるプロトコルです。Wideband チャネル宛てのパケットは、その後、Wideband チャネルを構成する個々の DOCSIS チャネルを通じてラウンドロビン方式で送信されます。各パケットにはシーケンス番号が付加されるので、受信側のモデムはすべてのパケットを正しい順序で保持できます。これは、非常に効率の高いロードシェアリング手法であり、各チャネルでの帯域幅利用率を最大化するのに役立ちます。

帯域幅の需要が最も大きいのはダウンストリームなので、ダウンストリーム スループットを増加させるために、Wideband パケット ボンディングは初期段階ではダウンストリームのみに適用されます。放送並みの画質を備えたビデオ ストリーミングなどの新サービスを実現するには、ダウンストリーム帯域幅を拡大する必要があります。将来は、アプリケーションや消費者の需要に応じて、同じテクノロジーをアップストリームのボンディングにも適用できるようになります。

Wideband テクノロジーを採用すると、チャネルをいくつでもボンディングでき、事実上無限のダウンストリーム帯域幅容量を提供できます。ただし実際には、ダウンストリーム帯域幅は以下の 2 つの要因によって制限されます。

  • ケーブル モデム(チャネル周波数ごとに別個のチューナーを配置する必要があります。)
  • ケーブル事業者のプラントで利用できる周波数


Wideband のコンポーネント

多くの実績を持つ Cisco uBR10012 ユニバーサル ブロードバンド ルータは Wideband に対応しています。Wideband コンポーネントには、まず、ギガビット イーサネットを使用してエッジ QAM に接続する新しい共有ポート アダプタ(SPA)があります。これは 最大 24 の QAM チャネルに対応可能です。CMTS はパケット ボンディングを使用してこれらのチャネルを束ねます。Scientific Atlanta の XDQA(eXtra Dense QAM Array)に加えて、Harmonic 社製の QAM デバイスにも対応しています。

Cisco uBR10012 ユニバーサル ブロードバンド ルータのシャーシには SPA モジュールを 2 つまで装着可能で、合計 48 の Wideband サービス専用ダウンストリーム チャネルを使用できます。SPA モジュールは SPA インターフェイス プロセッサ(SIP)と呼ばれるキャリア モジュールに組み込みます。SIP モジュールは Cisco uBR10012 ユニバーサル ブロードバンド ルータ シャーシの WAN スロットに装着します。

また、宅内側には、Wideband 対応のケーブル モデムが必要です。従来のケーブル モデムにはチューナーが 1 つしかなく、1 つのチャネルしかサポートされません。それに対して Wideband ケーブル モデムには、複数のチャネルがあります。Cisco Wideband は現在、Scientific Atlanta の DPC2505 で 3 チャネル ボンディングに対応し、今後 Linksys の WCM300 で 8 チャネル ボンディングに対応します。シスコが複数のケーブル モデム オプションを提供することで、ケーブル事業者は帯域幅およびコストの要件を適切に満たすケーブル モデムを加入者に提供することができます。

Wideband によるコスト削減

Cisco Wideband は、帯域幅を増強するだけのものではありません。他のサービスと比較して、帯域幅のコストも大きく削減されます。これは、図 4 に示すように、モジュール化されたCisco Wideband アーキテクチャの成果であり、以下のセクションで詳しく説明します。

図 4 Cisco Wideband アーキテクチャ

図 4 Cisco Wideband アーキテクチャ

低コストのエッジ QAM

Cisco Wideband では実績ある既存のエッジ QAM を使用します。ケーブル事業者が現在ビデオオンデマンド(VoD)サービスで展開しているのと同じエッジ QAM です。これらのエッジ QAM デバイスの RF ポートは従来、ケーブル モデム終端システムの RF ダウンストリームの 10 分の 1 以下の価格とも言われています。結果として、Cisco Wideband は非常にコスト効率の高いソリューションであり、ケーブル事業者はより広い帯域幅を低価格で提供できます。また、Cisco Wideband システムで導入されるエッジ QAM は VoD 展開で使用されるエッジ QAM とまったく同じなので、その性能は現場で証明済みです。

ダウンストリームとアップストリームの分離

Cisco Wideband は Cisco uBR10012 ユニバーサル ブロードバンド ルータ シャーシの既存モジュールを再利用するというだけではありません。既存モジュールのアップストリーム ポートとダウンストリーム ポートの比率は固定です(たとえば、5 × 20 カードにはアップストリーム ポートが 20、ダウンストリーム ポートが 5)。Wideband でこれらのカードを再利用するということは、多くのアップストリーム ポートが使用されないことになります。代わりに、Wideband ダウンストリーム チャネルはアップストリーム チャネルとは無関係に追加できます。エッジ QAM にはダウンストリーム専用の RF ポートがあります。.結果として、未使用のアップストリーム チャネルに対するコストは不要になるので、Cisco Wideband はコスト効率が非常に優れています。図 5 を参照してください。

図 5 Wideband のダウンストリームとアップストリームの分離

図 5 Wideband のダウンストリームとアップストリームの分離

Cisco uBR10012 ユニバーサル ブロードバンド ルータのダウンストリーム容量が倍増

Cisco Wideband はソリューションの密度が高いことから、コスト効率が非常に優れています。Wideband の発表前から、Cisco uBR10012 ユニバーサル ブロードバンド ルータは超高密度のケーブル モデム終端システムを備え、単一シャーシで 160 のアップストリームと 40 のダウンストリームをサポートしていました。

Wideband が発表された現在、Cisco uBR10012 ユニバーサル ブロードバンド ルータのダウンストリーム容量は 2 倍以上になっています。Wideband 以外の DOCSIS サービスに使用されているのと同じ I/O スロットを使用するのではなく、新たな UBR10-2XWB-SIP キャリア モジュールは SPA-24XWB-SFP モジュールを 2 つまで装着できます。これらの各 SPA モジュールはそれぞれ、ギガビット イーサネット SFP(Small Form-Factor Pluggable)を使用してエッジ QAM デバイスに接続し、最大 24 のダウンストリーム QAM に対応することができます。

SIP キャリアと SPA モジュールはすべて WAN スロットに装着されるので、ケーブル事業者は引き続き Wideband 以外のサービス用に 8 つの RF モジュール スロットを使用できます。結果として、現在では最大 88 のダウンストリーム(従来のDOCSIS QAM が 40 とWideband QAM が48)を単一の Cisco uBR10012 ユニバーサル ブロードバンド ルータ シャーシでサポート可能です。Wideband にアップグレードすることで、ダウンストリーム密度は 2 倍以上になります。

まとめ

Wideband は、ケーブル事業者が超高速ブロードバンドを提供するブロードバンド競争での優位を維持し、ビデオ サービスなどの新たな IP サービスを実現するのに最適なテクノロジーです。新しい IP サービスは、Web ベースのコンテンツを活用する必要性と「Web 2.0 系サービス」の提供に対する需要によって促進されています。

Wideband ではチャネル ボンディング テクノロジーを採用して、従来のDOCSIS で利用できるよりもはるかに高速のダウンストリームを提供します。チャネル ボンディングによる帯域幅の増強に加えて、Cisco Wideband では低コストの実績あるエッジ QAM を利用して、コストを大幅に下げると同時に密度を高めることに成功しています。

多くのケーブル事業者は、プレミアム顧客層にさらに広いピーク帯域幅を提供するために、Wideband の導入を検討しています。今後はチャネル数も多様な各種の Wideband ケーブル モデム サービスが利用できるようになります。さらに、Wideband ケーブル モデムのコストが低下するにつれて、Wideband ベースのサービスは、徐々に標準的なケーブル ブロードバンド サービスになります。Wideband は「Web 2.0 系サービス」のさらなる展開を加速し、加入者が求める「コネクテッド ホーム」を提供するテクノロジーなのです。