Cisco Wide Area Application Services (WAAS)ソフトウェア

Cisco Wide Area Application Services(WAAS)V4.0 技術概要

ソリューションの概要





Cisco Wide Area Application Services(WAAS)V4.0 技術概要


概要

企業は、企業エッジへのアプリケーションおよび重要なビジネス データの配信において数多くの課題に直面しています。世界中での従業員の分散化に伴って、企業全体で十分なサービス レベルを提供することがますます困難になっています。そのため IT 組織は、ファイル サービス、E メール、ビデオ、ソフトウェア配信、印刷サービスなど、管理の困難な高価なインフラストラクチャを各サイトに導入しています。しかし、業界および政府の規制による継続的な要求のもとで、IT 組織は新たに、この高価なインフラストラクチャを統合してデータ保護と政府や業界の規制への準拠を強化すると同時に、分散した従業員が期待するサービス レベルを何とかして維持するという重大な課題に直面しています。そのうえ、ネットワークでは常により複雑で安定したアプリケーションが必要とされているため、アプリケーションとアプリケーション情報を企業エッジに配信することがますます困難になっています。Cisco Wide Area Application Services(WAAS)は、既存の資産を活用しながら、アプリケーションの配信とインフラストラクチャの統合を容易にする新しいソリューションです。


課題

IT リソースに対する経営陣の期待はますます高まっていますが、IT 予算はそれに見合うほど増えてはいません。分散したインフラストラクチャを管理している IT 組織の多くが、リモート オフィスの高価なインフラストラクチャを統合し、導入コストと運用コストを抑制したいと考えています。さらに、アプリケーションが絶えず発展し、大規模化、複雑化するにつれて、生成されるネットワーク負荷が増大し、WAN のパフォーマンス特性がアプリケーションの配信に与える影響も大きくなっています。インフラストラクチャが大きく分散化し、すでに WAN 環境に過大な負荷がかかっている状況で、データ保存ポリシー、業務の継続性、障害回復、コンプライアンスの要件などの課題によって、問題はさらに悪化しています。IT インフラストラクチャを中央集中化すると、運用および導入コストを節約でき、同時にデータ保護プロセスを簡素化できます。

これまで多くのベンダーがポイント製品でこうした問題を解決しようとしましたが、IT 組織はネットワーク インテリジェンスへの既存の投資を有効活用することはできませんでした。


Cisco WAAS による WAN の克服

Cisco® Wide Area Application Services(WAAS)ソリューションは、アプリケーション高速化テクノロジーと WAN 最適化技術を組み合わせて、分散したサーバおよびストレージの統合の促進、すでに中央集中化されているサービスのパフォーマンス向上、中央集中化されるサービスのパフォーマンス レベルの維持といった、アプリケーション配信のジレンマを解決します。Cisco WAAS は、WAN の両側に配置されるデバイスである Cisco Wide Area Application Engine(WAE)上で動作し、アプリケーション特有の高速化と WAN 最適化機能を提供します。Cisco WAE エンジン(図 1)は、ルータ統合型ネットワーク モジュール、またはスタンドアロンのアプライアンスとして提供されており、ハイ アベイラビリティ、スケーラビリティ、およびフェールスルー動作を実現します。

Cisco WAAS を導入すると、IT 組織は次のことを実現できます。

  • 分散したサーバやストレージなどの高価な IT リソースをデータセンターへ中央集中化する
  • 企業エッジへのアプリケーションおよびアプリケーション データのスループットと配信を改善する
  • 既存の WAN 接続の効率を高め、帯域利用率を制御する
  • リモート オフィスのユーザが期待するアプリケーションのパフォーマンスを維持する

Cisco WAAS はこうした利点を、次のような一連の最適化機能によって促進します。これらは、すべてのアプリケーションに対して安全であるだけでなく、クライアント、サーバ、およびネットワーク自体に対して透過的です。

  • 安定したアプリケーション特有およびプロトコル特有の高速化 - Cisco WAAS は、プロトコル高速化、先読み、動作のバッチ処理、多重化、および安全なキャッシングによって、遅延や帯域利用率といったアプリケーション レイヤのパフォーマンス問題を緩和します。その結果、プロトコル仕様への完全な準拠、データの完全な整合性、ネイティブ WAN と比較してユーザ エクスペリエンスの大幅な改善が実現されます。
  • プロトコルに依存しない高度なネットワーク圧縮 - Cisco WAAS は、標準規格ベースの圧縮やプロトコル間共通のデータ抑制など、長く使われている圧縮技術を使用して伝送データを圧縮できます。その結果、ネットワーク帯域幅の使用量が大幅に削減され、アプリケーションのスループットが向上します。
  • ネットワークに適したスループット向上テクノロジー - Cisco WAAS は TCP を最適化し、WAN の利用効率とパケット損失、輻輳、および復旧といった WAN の状態の処理を改善します。その結果、WAN の状態に問題が発生してもノード間の通信が保護され、Cisco WAAS の最適化によってこれらの状態が管理され、スループット、パフォーマンス、および応答時間が改善されます。

Cisco WAAS を導入すると、インターネットおよびイントラネット アプリケーション、データベース、ファイル サービス、ファイル転送、E メール、データ保護、リモート デスクトップ アプリケーション、クライアント/サーバ アプリケーションなど、事実上すべての TCP ベースのアプリケーションで、ネットワークおよびアプリケーション特有の高速化技術を活用できます。

図 1 Cisco WAAS ハードウェア ファミリ

図 1 Cisco WAAS ハードウェア ファミリ
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Cisco WAAS は、インフラストラクチャの統合を容易にすると同時に、次のアプリケーション高速化および WAN 最適化機能によって、WAN の利用効率とアプリケーション配信を改善します。

  • Cisco WAAS Transport Flow Optimization(TFO) - Cisco WAAS は、問題のある WAN の状態における TCP の動作を改善し、パケット損失、輻輳、復旧、Long Fat Network(LFN; 広帯域高遅延ネットワーク)に伴う問題を緩和するのに役立つ最適化を提供します。Cisco WAAS TFO を導入すると、通信ノードが WAN の状態から保護され、WAE デバイスがそれらのノードに代わって WAN の状態を管理することで、利用可能な容量が活用され、パケット損失と輻輳の影響が緩和され、スループットが向上します。TFO は、パケット ネットワークとの親和性と、標準の TCP 実装を使用して通信する他のネットワーク ノードとの安全な共存を維持します。
  • Cisco WAAS Data Redundancy Elimination(DRE) - DRE は、TCP のバイト ストリームに含まれるデータ ブロックの双方向データベースです。DRE は、着信 TCP トラフィックを検査し、データ パターンを識別します。パターンが識別され、DRE データベースに追加されていくと、それらを圧縮履歴として使用できるようになります。繰り返し現れるパターンは、リモートのデバイスに対してオリジナル メッセージの再構築方法を指示する非常に小さなシグニチャで置き換えられます。DRE を導入すると、交換する必要のあるパケットの数が減少するため、帯域幅の使用量が最小限になり、データ転送に伴う遅延も最低限に抑えられます。DRE では、リモートの WAE で再構築されるオリジナル メッセージの正確性が常に複数のレベルで検証され、アプリケーションに依存しないため、アプリケーションとプロトコルの整合性と正確性が完全に維持されます。あるアプリケーション フローで学習したパターンは、異なるアプリケーションのフローにも使用できます。DRE では、アプリケーション、データ、および作業負荷に基づいて、2:1 ~ 100:1 の圧縮を実行できます。
  • 永続的な Lempel-Ziv(LZ)圧縮 - Cisco WAAS は、コネクション型圧縮履歴を備えた LZ 圧縮を実装しており、TCP 接続で消費される帯域幅をさらに最小化できます。永続的な LZ 圧縮は、単独または DRE とあわせて使用でき、DRE の任意の圧縮に加えて、使用アプリケーションと伝送データに基づいて 2:1 ~ 5:1 の圧縮を実現します。
  • Application Traffic Policy(ATP) - ATP は、安定した高速化および最適化管理ツールです。これにより管理者は、Cisco WAAS による特定のアプリケーション プロトコルの処理方法を柔軟に設定および制御できます。Cisco WAAS には、150 種類を超えるトラフィック タイプと 25 個を超えるアプリケーション グループに関するデフォルト ポリシーが付属しています。管理者は、これらの既存のポリシーを修正したり、新しいポリシーを作成したりして、環境内の他のアプリケーション フローとマッチさせることができます。
  • 業界最高の Wide Area File Services(WAFS)機能 - Cisco WAAS は、Cisco WAFS ファミリが提供する安定した WAFS 機能に基づいて構築されています。プロトコル特有の最適化、安全なキャッシングとデータ検証、先読み、予測、非同期書き込み、多重化、およびパイプライン処理によって、Cisco WAAS は、ネットワーク エッジで Common Internet File System(CIFS)クライアントに広範なファイル サービスの高速化を提供します。また、遅延、データ転送、帯域幅の使用量といったプロトコル特有のパフォーマンス上の制限を安全に解消できます。Cisco WAAS の高速化によって、リモート オフィスのユーザは、中央集中化されたファイル サーバのデータに対して LAN と同様にアクセスできます。また、切断動作モードにより、切断期間が長くなった場合にもファイルの読み取り機能を維持できます。Cisco WAAS は、「ポイント アンド プリント」および中央集中型のドライバ配信をサポートする Windows 互換の印刷サービスも提供し、ブランチ オフィスでの印刷が必要な環境に対応しています。中央集中型のプリント サーバが必要な環境では、Cisco WAAS でそのトラフィックを最適化することもできます。さらに、アプリケーション高速化テクノロジーでは、WAN 経由で情報転送やメッセージ交換を行う必要があるときに、Cisco WAAS WAN 最適化コンポーネントが提供するスループットの向上と圧縮を活用することもできます。
  • 拡張性のあるアプリケーション プラットフォーム - Cisco WAAS は、現在および将来のアプリケーション配信とインフラストラクチャ統合の課題に対処できるように設計されています。Cisco WAAS のモジュラ ソフトウェア アーキテクチャでは、安定したアプリケーション特有のアダプタや WAN 最適化コンポーネントを追加、または他の最適化レイヤを透過的に統合できるため、投資の保護を実現できます。
  • 導入の柔軟性と可用性 - Cisco WAAS は現在、導入の柔軟性、可用性、サービスに対する透過性を提供する唯一のアプリケーション配信プラットフォームです。Cisco WAAS は、クライアント、サーバ、およびネットワークと透過的に統合され、アプリケーションの設定とネットワーク機能は維持されます。Web Cache Communication Protocol Version 2(WCCPv2)、Policy-Based Routing(PBR; ポリシーベース ルーティング)などのネットワーク インターセプト テクノロジー、および Cisco Catalyst® 6500 シリーズ スイッチ用の Content Services Module(CSM)や Application Control Engine(ACE)シリーズといった Server Load Balancing(SLB)プラットフォームは、ハイ アベイラビリティ、スケーラビリティ、およびロード バランシングによってフェールスルー動作を容易にします。また、Cisco WAAS は、Network Interface Card(NIC; ネットワーク インターフェイス カード)を使用して物理的にパス内に配置することもでき、fail-to-wire 機能を備えています。Cisco WAAS の透過性によって、IT 組織は、ルーティングおよびパス選択の最適化、QoS(Quality of Service)、Network-Based Application Recognition(NBAR)、NetFlow、ファイアウォール ポリシーなど、付加価値のあるネットワーク機能に対する資本と運用の投資を維持できます。
  • ネットワーク透過性 - Cisco WAAS は、透過的な最適化を提供し、ネットワーク機能の動作に不可欠なオリジナルのパケット ヘッダー情報(送信元と宛先の IP および TCP 情報など)を保持します。そのため、中間にあるルータ、スイッチ、およびファイアウォールは、最適化されたパケットに対して、分類、優先順位付け、アクセス コントロール、キューイング、制御、NetFlow、ルーティングといった機能を引き続き実行できます。Cisco WAAS をそのまま配置した場合にも、Cisco IOS が提供する付加機能を中断なく動作させるために必要な透過性は提供されますが、Cisco WAAS と Cisco IOS を組み合わせることにより、最も機能の充実したフレームワークが構築され、アプリケーションが最適化されたネットワーク インフラストラクチャが実現します。
  • 業界最高レベルのスケーラビリティ - Cisco WAAS を Catalyst 6500 シリーズ用 ACE モジュールとともに使用すると、WAN 最適化およびアプリケーション高速化にスケーラビリティが付与され、最大 16 Gbps のスループットおよび 400 万の TCP 同時接続が可能になります。Cisco ACE は、スケーラブルなパス外メカニズムによりデータセンター内の Cisco WAAS WAE 間で負荷分散を行うだけでなく、新たにアプリケーション最適化、可用性、セキュリティ、および仮想化の機能を追加します。
図 2 Cisco WAAS と Cisco IOS の組み合わせが提供するアプリケーション最適化のためのフレームワーク

図 2 Cisco WAAS と Cisco IOS の組み合わせが提供するアプリケーション最適化のためのフレームワーク
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次のセクションでは、Cisco WAAS ソリューションの高度な各機能について説明します。


導入における柔軟性

Cisco WAAS のアプリケーション高速化と WAN 最適化は、パケット ネットワークと緊密に結合されています。WCCPv2、PBR、または Cisco Catalyst 6500 CSM や ACE モジュールのような SLB テクノロジーを使用することによって、Cisco WAAS はパケット ネットワークへ透過的に統合され、クライアント、サーバ、またはネットワーク機能に変更を加える必要はありません。Cisco WAAS は、ハイ アベイラビリティ、スケーラビリティ、および透過性を提供し、セキュリティ、アカウンティング、およびアプリケーション特有のポリシーを完全に維持します。Cisco WAAS をパケット ネットワークへ統合すると、安定したアプリケーション高速化および WAN 最適化機能が提供され、インフラストラクチャの統合が容易になり、WAN が効率化されます。

  • WCCPv2 は、シスコシステムズで開発されたもので、ハイ アベイラビリティとロード シェアリングによってネットワークへのアプリケーション高速化テクノロジーの透過的な統合を可能にします。あるサイトの Cisco WAE デバイスは、ルータ(スイッチ、複数のルータまたはスイッチもネットワーク パスのハイ アベイラビリティ用に使用可能)に対して利用可能であることをアドバタイズし、TCP トラフィックの転送先を WAE にするように指定します。WAE デバイスがルータとともにサービス グループに加入すると、ルータは元の宛先ではなく WAE へ転送する必要のあるフローがトラフィックにあるかどうかを監視します。トラフィックの受信を開始すると、WAE は、設定されたアプリケーション ポリシーに基づいて最適化とプロトコルレベルの処理を選択して適用します。WCCPv2 では、最大 32 台の WAE が最大 32 台のルータとともに 1 つのサービス グループに加入でき、各 WAE が通常は最適化されずに WAN 上を伝送される作業負荷の一部を担います。いずれかの WAE が故障した場合は、残ったメンバーが故障した WAE の作業負荷を引き受けます。あるサイトですべての WAE デバイスが故障した場合は、いずれかの WAE が復旧するまで、トラフィックは最適化されずに WAN 上を転送されます。
  • PBR は、Cisco WAAS と Cisco WAE で使用できるもう 1 つの導入オプションです。PBR を使用すると、ネットワーク管理者は、すべてまたは特定の TCP トラフィックについて、1 台または複数台の WAE をネクストホップ ルータとして設定できます。TCP トラフィックを受信すると、ルータはそのトラフィックをネクストホップ ルータである WAE へ転送します。WAE では、設定されたアプリケーション ポリシーに基づいて最適化が適用されます。WCCPv2 と同様、PBR はパケット ネットワークへの透過的な統合を実現し、また WAE が故障した場合はネクストホップとして定義された別の WAE を使用することによって、リモート オフィスまたはデータセンターにハイ アベイラビリティを提供します。すべての WAE が故障した場合は、ポリシーベースのルートは利用できないとみなされ、いずれかの WAE が復旧するまで、トラフィックは最適化されずに WAN 上を転送されます。
  • 物理的インラインは、データ パス外インターセプション メカニズムおよびリダイレクト メカニズムが使用できない場合に利用できる配置オプションです。Cisco WAE には、オプションで fail-to-wire 機能を持つ 4 ポート ギガビット イーサネット アダプタを設定できます。このカードによって、物理的に 2 つのネットワーク要素(たとえば、スイッチとルータ、またはスイッチとファイアウォールなど)間のパスにある WAE 上に Cisco WAAS を配置できます。fail-to-wire 機能を使用すると、ハードウェア、ソフトウェア、または電源に問題があった場合に、カード内のメカニカル リレーが自動的にパススルー状態になります。これによって、問題が発生した場合にも、中断によりネットワーク機能が停止しないように Cisco WAAS を配置することができます。

WAE は、パケット ネットワークに導入されると、アプリケーション ポリシーに基づいてネットワークおよびアプリケーション最適化の適用を開始できます。明確なアプリケーション アダプタが存在するアプリケーションでは、アプリケーション レイヤのメッセージングをローカルで終端して、遅延と不必要なデータ転送を抑制できます。WAN で伝送する必要のある TCP トラフィックがあれば、WAE はパケットに妨げにならないようなマーク付けを行います。これにより、それらのパケットが(WCCPv2 または PBR を通じて)リモートの WAE で受信されると、2 台の WAE が互いを識別してピアリングを確立し、最適化機能をネゴシエートして、WAN で伝送する必要のあるトラフィックに最適化を適用し始めます。


デバイスの自動検出

Cisco WAAS は、パケット ネットワークと透過的に統合され、また送信元と宛先ペア間のパス内にあるすべての Cisco WAE デバイスを自動的に検出します。各 TCP 接続が確立されると、Cisco WAAS は、妨げにならないようなマーキングを接続要求パケットに適用して、通信ノード間のパス内にある各 Cisco WAE を識別し、設定されたポリシーに基づいて要求されている最適化を特定します。マーク付けされたパケットをリモートの Cisco WAE で受信すると、WAE トポロジが学習され、最適化機能をネゴシエートできます(図 3)。

図 3 Cisco WAAS の自動検出プロセス ― 要求元

図 3 Cisco WAAS の自動検出プロセス - 要求元
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受信ノードが接続要求に応答すると、受信ノードの近接の WAE によって接続応答パケットが最適化の対象となる接続のものであることが認識されます。次に、受信ノードの近接の WAE は、接続応答パケットに最適化確認応答マーキングを適用します。その後、パケットは要求元へ伝送するためにネットワークへ返信されます。要求元の配置されたネットワークへ到達すると、パケットは近接の WAE にリダイレクトされ、そこでパスにある他の WAE の最適化機能が識別されます。この時点で、両方の WAE は完全にお互いを認識し、最適化の適用を開始できます。図 4 は、自動検出プロセスの受信側を示しています。

図 4 Cisco WAAS の自動検出プロセス ― 受信側

図 4 Cisco WAAS の自動検出プロセス - 受信側
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Cisco WAE は、接続パケット内に最適化マーキングを常に残すことにより、複数の Cisco WAE が送信元と宛先間のパス内にあるような環境をサポートできるようにします。これによって、フル メッシュ、部分メッシュ、リング、スターなどのトポロジが可能になります。最適化は、パスに多数の Cisco WAE がある場合でも、常に最も離れた 2 台の Cisco WAE デバイス間で確立されます。中間にある WAE は、いずれも接続を最適化せず自動的に通過させるため、最も外側にある WAE でフローの最適化を処理できます。Cisco WAAS の自動検出によって、管理者は複雑で面倒なオーバーレイ ネットワークを設定する必要がなくなります。オーバーレイ ネットワークは人的ミスを招きやすく、基盤となるネットワーク トポロジより優先されてしまう場合もあります。


Cisco WAAS TFO

Cisco WAE デバイスがクライアント/サーバ接続の確立時に互いを検出すると、設定されたアプリケーション トラフィック ポリシー(後述)に基づいて、複数の最適化を適用できます。そうした最適化の 1 つが Cisco WAAS TFO です。Cisco WAAS は、TFO を使用して、アプリケーションがクライアントまたはサーバの TCP スタックの低性能と WAN がもたらす制限を克服できるよう支援します。Cisco WAAS TFO では、安定した TCP プロキシを使用し、TCP 互換の最適化を適用して WAN の状態による TCP 動作の劣化からクライアントとサーバを保護することにより、WAE デバイスで TCP を安全に最適化します。Cisco WAAS TFO は、次のように WAN 環境でクライアントおよびサーバのスループットと信頼性を向上させます。

  • 大きな初期ウィンドウ - Cisco WAAS は、自動検出後に初期 TCP ウィンドウを拡大し、TCP 接続でスロー スタートが早期に終了するようにします。これによって、より多くの WAN 帯域幅を早く使用できるため、帯域幅が通常不足する短期の接続だけでなく、輻輳によって強制的にスロー スタートを再開する比較的長期の接続でもパフォーマンスが向上します。
  • ウィンドウ スケーリング - Cisco WAAS によって、標準の TCP 実装を使用しているデバイスでは、クライアントまたはサーバに変更を加えることなくウィンドウ スケーリングを活用できます。ウィンドウ スケーリングを使用すると、Cisco WAAS により、LFN(帯域幅と遅延が大きいネットワーク)上でパフォーマンスを大幅に向上させることができます。Cisco WAAS は、TCP ウィンドウを安全にスケーリングすることによって、通常スループットに制約があるアプリケーションが、WAN 環境で問題なく動作でき、WAN で提供される利用可能な容量をフル活用できるようにします。
  • 高度な輻輳管理と損失回復 - Cisco WAAS では、パケットの損失が発生しても、高度な輻輳管理および損失回復技術を使用して、安全に最大スループットに戻すことができます。Cisco WAAS の高度な輻輳管理は、全体的なスループットの向上に役立つだけでなく、ネットワーク上で使用される可能性がある他の TCP 実装(標準の TCP 実装を含む)との互換性も保持しています。

図 5 は、Cisco WAAS TFO によって、クライアントとサーバが WAN の状態から保護される様子を示しています。標準的なオペレーティング システムの TCP スタックは WAN 環境で動作するように設計されていないため、TFO は、クライアントとサーバに対し大幅なパフォーマンスの向上と安定性を提供します。

図 5 Cisco WAAS TFO によるアプリケーションのパフォーマンスと信頼性の向上

図 5 Cisco WAAS TFO によるアプリケーションのパフォーマンスと信頼性の向上
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高度なネットワーク圧縮

Cisco WAAS は、高度なネットワーク圧縮を利用して、各接続で伝送する必要のあるデータ量を最小限にします。Cisco WAAS の高度なネットワーク圧縮は、独立または互いに連携して機能できる 2 つの独特な圧縮タイプで構築されています。

DRE は、高度なネットワーク圧縮形式で、アプリケーションに依存しない、TCP のバイト ストリームで過去に認識したデータの履歴を WAAS で保持します。この情報は、将来または現在の伝送で認識された冗長なデータ パターンを排除するために使用されます。これによって、冗長なトラフィック パターンを大幅に圧縮できます。また、オリジナル メッセージがリモートの WAE によって常に再構築および検証されるため、メッセージとアプリケーションの整合性が確保されます。DRE は、トランスポート プロトコルのコンテキスト内で動作し、双方向であるため、アプリケーションに依存せず、トラフィック フローの方向に関係なく有効です。そのため、あるアプリケーション プロトコルについて識別されたデータ パターンを他のアプリケーションでも使用でき、ある方向のトラフィック フローについて識別されたパターンを別の方向に流れるトラフィックの冗長性を排除するために使用できます。DRE を使用すると、ユーザがあるプロトコルまたはアプリケーションで情報にアクセスしたあと、別のプロトコルまたはアプリケーションで同一または類似した情報にアクセスしたときに、大幅な圧縮が適用されます。

図 6 は、DRE および LZ 圧縮を使用した Cisco WAAS の高度な圧縮を示しています。

図 6 Cisco WAAS の高度な圧縮

図 6 Cisco WAAS の高度な圧縮
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DRE および永続的な LZ 圧縮に TFO を組み合わせることにより、スループットとパフォーマンスを飛躍的に向上させることができます。TFO は、WAN の状態を克服し、既存の WAN 容量を効率的に使用できるようにします。この機能は、DRE の強力な冗長性削除エンジンのプロセスにおいて生成される小さなデータ シグニチャによっても実現されます。Cisco WAAS を使用すると、既存の WAN 容量をより効率的に使用し、少ないネットワーク容量で多くのデータを転送することができます。


ATP エンジン

Cisco WAAS では、管理者は、Cisco WAE での特定のトラフィック タイプの処理方法を柔軟に定義できます。そうした定義には、最適化(DRE、LZ 圧縮、フロー最適化)、監視、およびバイパスが含まれます。デフォルトでは、25 種類を超えるアプリケーション タイプが特定され、150 個を超えるアプリケーション分類子が用意されており、それぞれその特定のアプリケーションのスループットを最大限向上させる特定の最適化のセットにマッピングされています。表 1 は、デフォルト構成で特定されているアプリケーション タイプを示しています。

表 1 デフォルトの Cisco WAAS アプリケーション ポリシー:Cisco WAAS で最適化される一般的なアプリケーション タイプ

 
認証 バックアップ コール管理 会議
企業メッセージング ファイル サービス ファイル転送 インスタント メッセージング
ネーム サービス ネットワーク分析 印刷 リモート デスクトップ
レプリケーション ソフトウェア データベース リモート アクセス ストレージ プロトコル
ストリーミング システム管理 バージョン管理 イントラネットとインターネット



業界最高の WAFS

Cisco WAAS はモジュラ ソフトウェア アーキテクチャを使用して構築されており、多くの最適化レイヤが単一のソフトウェア プラットフォームに組み込まれています。Cisco WAAS は、柔軟性のある強力な WAN 最適化ソリューション、および Windows のファイル共有プロトコル環境での CIFS プロトコルといった特定のプロトコル用の追加的な高速化を提供します。Cisco WAAS のファイル サービス最適化は、Cisco WAFS ソフトウェア リリース 3.0 で提供されている、業界最高の WAFS 機能に組み込まれたコンポーネントで構築されます。

Cisco WAAS のファイル サービス機能は、パケット ネットワークだけでなく、論理ネットワークにも透過的に統合されます。Cisco WAAS が提供するファイル サービスの最適化を活用するために、クライアントまたはサーバ ソフトウェアをインストールする必要はありません。Cisco WAAS は、次の WAFS 機能を提供します。

  • プロトコル特有の高速化 - Cisco WAAS は、 CIFS のすべてのクライアントおよび言語をサポートし、クライアント/サーバ通信をメッセージごとに検査して実行中の動作を完全に識別します。そのため、Cisco WAAS は、特定の動作を最も適切に高速化する方法についてインテリジェントな決定を下すことができます。そのような高速化には、先読み、メッセージと動作のバッチ処理、多重化、またはパイプライン処理などがあります。多くの場合、Cisco WAAS は、プロトコルの正確性やデータの整合性を損なうことなく、メッセージ トラフィックをローカルで安全に処理できるため、LAN と同等のパフォーマンスが実現されます。メッセージを変更せずに正確性、一貫性、セキュリティ、またはデータ整合性を維持しながら WAN で伝送する必要がある場合、Cisco WAAS は、基盤となるネットワーク最適化(TFO、DRE、永続的な LZ 圧縮など)を使用してそれらを転送します。プロトコル特有の高速化によって、Cisco WAAS は、プロトコルのセマンティクス、整合性、または正確性を損なうことなく、リモート ユーザが中央集中化されたファイル サーバ ストレージにアクセスする場合にも LAN と同等のパフォーマンスを提供します。さらに、Cisco WAAS によるファイル サービス プロトコルの安全な高速化は、グローバルなファイル ロッキングにおいてファイルのロック要求が常にオリジン サーバへ伝達されるため、CAD/CAM、ソフトウェア開発、およびデータベースなど、グローバルなコラボレーションが行われる環境でも機能します。
  • 投資の保護 - Cisco WAAS は、プロトコルに変更があった場合にも、引き続き安全に高速化を適用できる、未来対応型のアーキテクチャで構築されています。シスコは、CIFS プロトコルの開発企業に関連するパートナー プログラムに参加しており、CIFS プロトコルの将来のバージョンを確実にサポートするよう、適宜 Cisco WAAS を改善していくことができます。
  • データおよびメタデータの安全なキャッシング - プロトコル特有の高速化に加え、Cisco WAAS では、データとメタデータをキャッシュすることもできます。アプリケーション特有のデータおよびメタデータのキャッシュを利用することによって、Cisco WAAS は、整合性が確認された使用可能なコンテンツを要求元のユーザに提供できます。キャッシュされたオブジェクトに変更が加えられた場合、Cisco WAAS はネットワーク最適化(TFO、DRE、永続的な LZ 圧縮など)を使用してアップデートされたコンテンツを取得できます。オリジン サーバでは、信頼できるファイルのコピーに加え、ファイル ロックを含む各ファイルの状態も保有しているため、Cisco WAAS が期限の切れた、または変更されたコンテンツを提供することはありません。
  • 中央集中型のファイル ストレージ - Cisco WAAS によって、IT 部門では分散したファイル サーバ、ストレージ容量、データを、IT スタッフの配置されたデータセンターへ集中化できます。分散したサーバおよびストレージを集中化することには、次のように具体的な利点が数多くあります。
    • 管理対象デバイスの減少 - Cisco WAAS では、分散型のファイル サーバが事実上不要になります。これによって、サーバ、サーバのオペレーティング システムとメンテナンス、OS のパッチとホットフィックス、アンチウイルス、テープ ドライブとライブラリ、テープ カートリッジ、バックアップ ソフトウェアなど、インフラストラクチャ内で管理するデバイスの数が最小限になり、多くの高価なコンポーネントが不要になります。
    • 既存のデータセンター インフラストラクチャの活用 - インフラストラクチャを統合すると、アプリケーションとファイル サーバは、サーバやストレージの仮想化を含めて、データセンターのインフラストラクチャ コンポーネントを最大限に活用できます。プロトコル特有の高速化によって、作業負荷の大部分が Cisco WAAS によってエッジで処理されるため、既存のサーバおよびストレージ インフラストラクチャで規模の経済性を拡大できます。
    • データ保護ポイントの減少 - 分散型のファイル サーバ ストレージとデータをデータセンターへ統合することによって、保護する必要のあるデータのコピーが減少します。それによって、データ保護のコストが抑制され、政府または業界の規制に準拠することができます。
    • 障害回復と業務の継続性の簡素化 - Cisco WAAS は、統合を容易にし、分散型の企業をサポートするために必要なアプリケーションおよびファイル ストレージ インフラストラクチャの数を最小限にします。リモート アプリケーションのインスタンスとデータのコピーが減少するため、障害回復と業務の継続性の計画、導入、および管理が大幅に簡素化されます。
  • データの整合性、正確性、および一貫性 - Cisco WAAS がプロトコルを高速化するのは、安全な場合だけです。重要なメッセージ(認証、許可、ファイル ロック要求、書き込み要求など)は、常に Cisco WAAS で変更されることなくデータセンターへ伝送され、DRE、TFO、および永続的な LZ 圧縮によって実現された、基盤となる WAN 最適化フレームワークを活用できます。Cisco WAAS によって、データセンターのファイル サーバや NAS デバイスは、常にデータ自体、データの状態、およびデータに適用されたすべてのロックを保持します。そのため、ユーザがファイルを閉じてアプリケーションを終了すると、データはデータセンターに安全に保存されます。
  • 高度なネットワーク圧縮との統合 - Cisco WAAS は、DRE と永続的な LZ 圧縮で提供される高度な圧縮レイヤを活用します。DRE および永続的な LZ 圧縮と統合することによって、Cisco WAAS は、アプリケーションのメッセージングやデータ転送で消費される帯域幅を、変更データの量にまで大幅に低減します。この機能は、メッセージを WAN で伝送する必要がある場合や、ファイル データが変更なしで、または部分的に変更されてファイル サーバへ書き戻されるときに、きわめて有効です。
  • 切断動作モード - Cisco WAAS のアプリケーション高速化には、WAN やファイル サーバが長期間オフラインになった場合に備えて、読み取り専用の切断動作モードも用意されています。切断期間中にアクセスする必要がある情報のために、Cisco WAAS では、ファイル、フォルダ、メタデータ情報、およびアクセス コントロール情報が積極的にキャッシュされます。切断期間中は、近接のドメイン コントローラをユーザ認証に使用でき、要求元のユーザがキャッシュ データへの読み取り専用アクセスを許可されていることを WAE が確認できます。

まとめ

IT 組織は、アプリケーションおよびデータの可用性の向上、パフォーマンスおよびスループットのレベルの向上、人員の削減、デバイスの削減、時間の短縮など、より少ないリソースでより多くの作業を求められています。アプリケーション配信テクノロジーは、IT 組織がアプリケーション インフラストラクチャを分散したサイトからデータセンターへ統合すると同時に、WAN 上でのアプリケーションとデータ アクセスのパフォーマンス向上に必要な最適化を実行できるようにします。Cisco WAAS は、ネットワークとアプリケーションに安定した最適化を提供し、IT 組織が企業エッジへのアプリケーションおよびアプリケーション データの配信を改善できるようにするとともに、インフラストラクチャの要件を最小化します。