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もし産業機械が空を飛べたなら


もし産業機械が空を飛べたなら

インダストリアル インターネットは、2030年までに全世界で14兆ドルを上回る市場規模に発展する可能性がある

  * 当資料は、米国で発表されたFeature Articleの抄訳です。

著者:ローレンス・クルス (Laurence Cruz)
ロス・アンジェルス在住のフリーランス・ライター


2015年10月5日

インダストリアル インターネットは、2030年までに全世界で14兆ドルを上回る市場規模に発展する可能性がありますが、大半の企業は未だにその影響を測りかねています。

航空機エンジンは以前から、雲の中で活躍するものでした。では、クラウドにおいてはどうでしょうか。

航空機エンジンは実際のところ、比喩的に「空を飛んだ」多くの産業機械の1つにすぎません。つまり、以前は「モノ」として販売されていましたが、現在は「サービスとして」販売され、クラウドで管理・運用されるようになっています。「インダストリアル インターネット」あるいは「プロダクト アズ ア サービス(Product-as-a-Service、XaaS)」と称されるこのトレンドは、機関車から風力タービン、MRI装置、あるいは工場全体に至るまで、あらゆるものに広がっています。

またこのトレンドは、私たちの生活にも大きな影響を及ぼす可能性があります。コンサルティングファームAccentureの2015年の報告書によると、インダストリアル インターネットは2030年までに全世界で14兆米ドルを上回る市場規模に発展する可能性があり、製造者と購入者の双方に明らかな利点をもたらします。たとえば、MRI装置の価格が「MRI撮影1回あたり」で設定される場合、病院側は事前に数百万ドルを支払う必要がなくなります。また、発電所において故障時期を予測できれば、事前に予防点検を依頼することができます。さらに、ユーザのフィードバックに基づいて、機関車の設計を継続的に見直すことも可能です。

接続技術とセンサー ソリューションのメーカーTE Connectivity、シニア バイス プレジデント兼最高マーケティング責任者のエイミー・シャー(Amy Shah)氏は、次のように語っています。「データの可用性が向上し、センサーの高度化が進み、コンピューティング能力が低価格化するにつれて、すべての業界で重大な変化が起きようとしています」

XaaSを採用しているのは誰か

依然として組織の大半(世界経済フォーラムの2015年度調査で88%)は、この「産業分野のモノのインターネット(Internet of Heavier Things)」の意義を測りかねています。誰がそのメリットを生かすことができ、既存のビジネス モデルにどのような影響を与え、どのようなリスクと見返りがあるのでしょうか。

IoTに関する洞察の提供やアプリケーション開発を行っている、MachNation共同創設者兼最高技術責任者ディマ・トーカー(Dima Tokar)氏によると、サービス中心のビジネスへと移行したい企業は、技術モデルやビジネス モデルを変更する必要があります。

つまり技術面では、通常は内蔵の通信機器と一連のアプリケーションによって資産利用を追跡・監視する方法と、その資産の利用に対する課金方法を見つける必要があります。ビジネス面では、新しいプロセスの採用や組織設計の見直し、新しいビジネス モデルを支えるマーケティング、セールス、運用、およびサポート チームの連携が必要となります。

「この変革が収益増加やコスト削減につながるとしたら、企業はその実現方法を探すようになるでしょう」とトーカー氏は語っています。

スティッキーなサービス:リース モデル

厳密に言えばXaaSは、新しいモデルではありません。Rolls Royceは数十年前に、航空機エンジンの販売から、包括契約(Power-by-the-Hour)の販売へと移行しています。エンタープライズ グレードのソフトウェアや業界ソリューションを開発しているPLAT.ONE最高執行責任者ケン・フォースター(Ken Forster)氏によると、コネクテッド サービスの確立は、資産よりもサービスへの重点が大きいことを除けば、さまざまな点でリースと類似しています。

フォースター氏は次のように述べています。「これは、資産やサービスの製造者と購入者の双方に利益をもたらします。製造者側は、幅広いサービスを提供することで安定した長期的な収益を得て、より『スティッキー』な関係を構築でき、購入者側は、大規模な資本財の利用/採用コストが下がるというメリットを得られます」

インダストリアル インターネットの利点を生かせるのは誰か

フォースター氏によると、その答えは製品や業界の種類によって異なり、サービス業界で良く売れている高価値商品であれば、より容易にXaaSモデルに対応できます。しかし、顧客が希望するかもしれないあらゆるモデルを柔軟にサポートできれば、必ず販売能力の向上につながるとフォースター氏は付け加えています。

フォースター氏は、次のようにも語っています。「あらゆる産業機器の製造者が、XaaSモデルをより効果的にサポートするために、自社商品のインテリジェンスや接続性をどの程度向上させるべきかを検討する必要が生じてくると思われます」

機会と課題

世界経済フォーラムの報告書によると、インダストリアル インターネットはまだ初期段階にあり、1990年代後半のインターネットの状況と似ています。これまで最も良く引き合いに出されている用途は、予防保守とリモート資産管理であり、これらは運用データに基づいて機器の障害や不測のダウンタイムを減らします。

たとえばGEの最新の機関車には、250個を超えるセンサーが搭載されており、毎分15万のデータ ポイントを測定しています。その結果として、天候から油圧、温度、速度に至るまで、あらゆるリアルタイム情報が次々に集まり、稼働中の機械の状態チェックを可能にして、BNSFやUnion Pacificなどの鉄道会社・顧客のダウンタイムや収益損失を最小化します。

インダストリアル インターネットを早期に導入することで実現できる、もう1つの重要な機会は、従業員の生産性と安全性の向上です。たとえば、ドローンを用いて油送管を点検したり、センサーを使用して食品の安全性を監視したり、騒音、化学物質、有害ガスに従業員がさらされる危険性を最小限に抑えることができます。これは特に、石油・ガス、製造、化学工業といった、従来型の重工業において当てはまります。

しかしこうした機会は、さまざまな課題によって相殺されてしまいます。世界経済フォーラムの報告書では、ビジョンやリーダーシップの欠如、実証済みのビジネス モデルの不足、技術の進歩があまりに急速であるために多額の投資を先送りするという企業の傾向など、多様な課題があげられています。

TE Connectivityシャー氏は、技術革新を進めて素早く行動する企業は最大のメリットを獲得し、業界リーダーとしての地位に安心している企業は機会を逃す可能性があると述べています。「こうした企業の今後が気がかりです。競合は全世界に及び、自分が変化の犠牲になるまで気づかないという場合もあります」

PLAT.ONEフォースター氏は、次のように語っています。「最も保守的な業界では、特にリスク モデルが開発されるまで採用のペースは緩やかになるでしょうが、XaaSへの移行は不可避であると思います」

MachNationトーカー氏も同意しますが、いくらか不穏な展開も予測しています。「私たちは、飛行中に航空機の翼を交換しているようなものです」

* 米国で発表されたFeature Articleの内容は、以下をご参照ください。
<If industrial machines could fly...>