シスコ、インターネット ルータを宇宙へ
米国政府および企業によるテストに向け、シスコがインターネットを宇宙空間まで拡大。衛星通信に大変革の可能性も
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写真提供: Space Systems/Loral
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2010 年 1 月 19 日、ローレンス・クルス
米国シスコ(本社:カリフォルニア州サンノゼ、NASDAQ:CSCO、以下シスコ)は、あらゆる通信衛星にルータを搭載しようとしています。
ネットワーク界の巨人とも言えるシスコは、記念すべき最初の 1 台を宇宙へ送り出しました。シスコは本日、11 月 23 日に発射されて上空 35,888 km(22,300 マイル)の静止軌道に乗った通信衛星インテルサット 14 に搭載されたルータの、最初の軌道上テストに成功したことを発表しました。
これは、Internet Routing in Space(IRIS)と呼ばれるシスコの大胆な新構想における小さな第一歩です。この構想はワールドワイド ウェブを構築しているインターネット プロトコル(IP)ベースのテクノロジーを天空にまで広げるもので、単一の IP ネットワークを介して衛星間で音声、データ、およびビデオ トラフィックを送信できるようにすることを長期的な目標として掲げており、現在の細分化された衛星通信ネットワークよりもはるかに効率的で柔軟性に富んだコスト効率の高い通信方法をもたらすものになるとシスコの経営陣は述べています。
この取り組みは、衛星産業のみならず米国軍、電気通信企業、およびこのテクノロジーの恩恵を受けられるその他の企業から高い関心を集めています。メリーランドに拠点を置く世界最大の商用通信衛星運用企業 Intelsat General のドン・ブラウン氏は、将来の衛星ベース通信における IRIS の役割は、1960 年代にワールドワイド ウェブが発明された当時、インターネットの先駆けであった ARPANET が果たした役割に等しいものである、と述べています。
「IRIS は、通信衛星アーキテクチャに大変革をもたらす大きな可能性を秘めています。IP がすべてを変えるのです」と、ホスト ペイロード担当バイス プレジデントである同氏は述べています。
頭脳を持った衛星
通信衛星とは宇宙空間に配備され、船舶、車両、携帯デバイスへのモバイル通信などを含むテレコミュニケーションに使用される衛星です。通信衛星は、ワイヤやケーブルが届かない場所、または敷設が現実的でない場所にテレビやラジオの放送を届ける目的でも使用されます。
これまで、衛星通信ネットワークの「頭脳」はほとんど地上に設置されたハードウェア内に存在し、衛星はそこから送られてきたデータを受動的に反射して送信するだけでした。しかし、IRIS ではその頭脳の多くが軌道上のルータに収められているため、非常に大きな利益をもたらす可能性がある、とシスコの IRIS プロジェクト マネージャ、グレッグ・ペルトンは述べています。
宇宙空間にあるルータは、通信を開始したいユーザにより重要なトラフィックを優先しながら帯域幅を適切に割り当てるため、電気通信企業は変化する需要に対応できるようになる、と彼は述べています。そのため、あるユーザが必要としていた帯域幅が不要になった場合(たとえば、放送局が予定していた政治的なイベントの放送が取りやめになった場合)に、その帯域幅を他のユーザ(突然の自然災害に対応する政府機関など)へ割り当てることも可能です。
また、ペルトンによると、宇宙空間にあるルータを利用すれば、電気通信企業が Cisco TelePresence のような高帯域幅のオンデマンド サービスを実際に提供できるようになります。従来の衛星ネットワークではユーザがあらかじめ帯域幅を確保し、使用するかどうかにかかわらず料金を支払う必要があったことを考えると、これは画期的な進歩です。
「ダブル ホップ」の排除
ペルトンはさらに、音声やビデオなど時間に敏感なサービスのユーザ エクスペリエンスが向上するという利点にも言及しています。現在、2 基の衛星を使用しているユーザ間の音声通話やビデオ転送では、対話を妨げる転送遅延が生じます。テレビ ニュースのキャスターと現場レポーターとの会話で微妙な「間」があくのはそのためです。
キャスターとレポーターの間で送受信されるデータはまず 1 基目の衛星に反射されて地上まで戻り、さらに 2 基目の衛星へ送信される必要があるため、このような遅延がしばしば発生します。ペルトンによると、この宇宙空間の往復(ホップ)を 2 回繰り返すと距離にして 14 万 km(9 万マイル)近くになり、信号に 0.5 秒程度の遅延が発生します。IRIS を使用した場合、2 ヵ所のユーザ間に直接信号を送信してこの「ダブル ホップ」をなくし、それに起因する遅延を半減させることができます。
IRIS はまた、現在は別個に運営されている地上と宇宙のネットワークを統合することで、「いつでも、どこでも」利用できるブロードバンド サービスを提供し、電気通信企業の運用コストを削減することも目指しています。ルータに搭載されているオペレーティング システムである Cisco IOS には使用されずに眠っている数々の機能がありますが、IRIS はそれに加えてまったく新しい機能を生み出す可能性も秘めています。
ペルトンはこう語ります。「私たちが来年、何かを発見することは確実です。しかし、お菓子の箱に入っているおまけと同じで、それが何かはまだわかりません」
現状を変える
通信衛星のすべてがルータを搭載するようになれば、シスコにとってのビジネス チャンスは巨大なものになるでしょう。ペルトンによると、毎年約 100 基の通信衛星が打ち上げられており、衛星市場の規模は 2009 年に 1250 億ドルに達しました。衛星産業の企業経営者たちは、シスコがこのビジョンを実現するまでには数年間が必要であり、IRIS はその途上でさまざまな困難に直面する可能性も大きいのではないか、と述べています。
これらの困難の中には、ユーザのアプリケーションを IRIS システムに適応させるなどの技術的なものから、価格を押し下げるために必要なだけのスケール メリットを得るといった経済的なものまで含まれる、と彼らは予想しています。しかし、おそらく最も大きな問題は現状を変えることそのものに由来するだろう、とペルトンは述べています。
「衛星産業は何十年間も同じ方法で物事を進めてきました」と彼は言います。「アーキテクチャにかかわる変革やビジネス上の変革をもたらすことは、私たちのお客様やパートナーに強い不安を与えるかもしれません」
IRIS は、宇宙ベースのプラットフォームから使用可能な最初のインターネット テクノロジーである、と国際的な技術コンサルタント会社 Ovum のアナリスト、ジョン・メーザー氏は述べています。
「このテクノロジーは、IP のユビキタス性をまったく新しいレベルにまで高めるでしょう。IRIS を搭載した衛星がもう数基あれば、IP は地球上のあらゆる場所から好きな時に使用できるようになります。もちろん帯域幅は限られますが」とメーザー氏は言います。
また、別の Ovum アナリストであるピーター・クラーク氏は、急速な高まりを見せるクラウド コンピューティングのトレンドを IRIS と関連付けています。クラウド コンピューティングのビジョンをしっかり持っていない企業は IRIS に戸惑い、クラウドを受け入れている企業は IRIS の可能性にすぐに気付いて、さらに企業の競争力を高めることになるだろう、と彼は述べています。
「これは、クラウドからユーザへと通じる、もう 1 つのパイプラインです。IRIS は市場での競争をさらに激化させ、 それによってサービス全体が向上するでしょう」
次のステップ
厳密に言うと、IRIS はシスコが最初に宇宙に送り出したルータではありません。2003 年、シスコは既製の商用ルータを低軌道衛星に搭載して打ち上げました。ただし、この実験的な取組み [英語]はユーザへのサービス提供を意図したものではなかった、とペルトンは述べています。
それとは異なり、IRIS ルータには宇宙での過酷な環境に耐えられるような改良が施されています。最初のテストを完了した現在、シスコは新たにこのルータの 2 つの段階のテストを開始します。米国政府は 2 月から 3 ヵ月間にわたって IRIS の評価を行う予定です。
「この方法によって、政府は高いコスト効率で通信機能を向上させることができます。特に予算が限られてきている現在、これは本当に興味深い代替案です」と、カリフォルニア州パロアルトに拠点を置く Space Systems/Loral のアーノルド・フリードマン氏は述べています。
また、ペルトンによると、シスコは上記の評価の終了後 1 年間かけてビジネス顧客を想定した IRIS の評価を実施します。これによって衛星産業における IRIS の知名度を高め、IRIS がどのように業界ビジネスを向上させるのかを理解してもらいたいと考えています。
「1 つの業界全体を変えてしまうようなチャンスは、それほど頻繁に到来するものではありません。私たちの製品がトラックではなく、450 t(100 万ポンド)以上の推力を持つロケットで配達されるのも非常にすばらしいことです」
ローレンス・クルス:ロサンゼルス在住のフリーランス ライター
シスコシステムズ合同会社について
シスコシステムズ合同会社は、米国シスコ(NASDAQ:CSCO)の日本法人です。シスコは、ビジネスの基盤となるインテリジェントなネットワーキングソリューションから、音声、映像、データ、ストレージ、セキュリティ、エンターテイメントをはじめとする新しい分野、そして、人々の仕事や生活、娯楽、学習のあり方を一変させることのできるネットワーク プラットフォームの提案を目指しています。
シスコの会社概要・詳細は以下のWebサイトでご参照頂けます。
<http://www.cisco.com/jp>
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