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超小型センサー「モート」をあなたに

〜監視・制御システムを一変しつつある「スマート ダスト」ワイヤレス センサー ネットワーク〜



* 当資料は、米国で発表されたニュースリリースの抄訳です。

2008年7月21日

チャールズ・ウォルトナー

建物のスマート化を実現するには、何よりもまず、物理的な世界の情報を収集するための手段を建物に持たせることが必要です。ところが、ユビキタスなセンサーのネットワークを構築するのはむずかしいのが現状でした。

あらゆる種類の小型センサーが広く手に入るようになった今、いかにそれらのセンサー同士を接続するかということが課題となっています。標準的な有線ネットワークやいわゆる「Wi-Fi」ネットワークは、壁や天井、窓や机、セキュリティ バッジをはじめ、オフィスビルや製造施設、屋外エリアのほぼあらゆる場所に埋め込まれている何百、何千ものセンサーを接続するには非効率で、多くの費用がかかります。

Smart dust wireless sensor networks

そのため、研究者らは、数年前から、低消費電力で低帯域幅の新しいワイヤレス「メッシュ」ネットワークの開発に取り組んできました。しかし、信頼性の問題があって、開発はなかなか進んでいません。それが今、ビルや施設の内部の状況を監視する画期的な方法を実現できる可能性がでてきました。

カリフォルニア大学バークレー校電気工学部のクリス・ピスター教授は、この分野の指導的存在のひとりであり、2002年に設立された新興企業Dust Networks(本社:カリフォルニア州ヘイワード)の最高技術責任者でもあります。

ピスター教授は、10年以上前に、「モート(「塵」の意)」と呼ばれる小型のワイヤレス センサー(現在は約12平方ミリ程度ですが、将来的にはピンの頭ほどのサイズになるとされています)で構成されたネットワークを表す「スマート ダスト」という概念を考案しました。これらのセンサーは超小型バッテリーで稼動し、最大10年間使用することができます。これらのセンサーをビルや住宅、産業施設はもちろん、森林や田畑などのあらゆる場所にちりばめることにより、広域な監視システムを簡単に構築できるようにしようというのが、「スマート ダスト」の考え方です。

しかし、スマート ダストの開発者は、気まぐれなことで有名なワイヤレス電波を相手に苦戦を強いられてきました。この種の通信システムは、コンクリートの壁や金属のパイプ、他の電気装置の干渉といった物理的な障害によって、大幅に品質が劣化する場合があるからです。また、「モート」は、標準的なワイヤレス デバイスに比べ、情報を伝達するのにわずかな電力しか使用しないため、問題はさらに大きくなります。

ピスター教授によれば、これらの問題を切り分け、ほぼあらゆる環境に対応できて、使いやすく、信頼性の高いワイヤレス センサー ネットワークを実現するための方法を模索するのに、この5年間を費やしたといいます。

研究と実地のテストを重ねた結果、有線ネットワークと同等の信頼性を保ちながら、設置費用や保守費用がほんのわずかですむワイヤレス センサー ネットワークを実現することができました。複数の時間パス、周波数パス、伝送パスを持つショート デジタル メッセージを利用することにより、信頼性の問題を解決することができたのだと、ピスター教授はいいます。たとえ信号がブロックされたとしても、選択肢は他にもたくさん用意されているのです。

当初は、精油所や天然ガス工場、製造施設のパイプラインやバルブ、タンクを監視するなどの業務を効率化するための製品として、工業オートメーション会社への販売を目標としていましたが、Dust Networksの技術にとって、それらは非常に厳しい環境でした。しかし、同社のシステムは、そうした厳しい試練にも耐えうる非常に高い信頼性を発揮することができたと、ピスター教授は述べています。

その証拠として、EmersonGeneral Electricといった市場大手を含む、多くの工業オートメーション会社が、Dust Networksの製品を採用するようになってきているといいます。「つらく長い道のりでしたが、ようやく峠を超え、希望の光が見えてきました」

Dust Networksが力を入れているのは工業オートメーションですが、スマート ダストは、建物の機能の効率化にも役立てることができます。ピスター教授によれば、Dust Networksのワイヤレス技術は、ほぼあらゆる種類のマイクロセンサーに対応することができるといいます。

例えば、ビルの所有者は、室温を測定するのに1台のサーモスタットに頼るのではなく、スマート ダストの熱センサー ネットワークをオフィス フロアの各部屋に導入することができます。また、このような超小型デバイスのマトリクスによって、室内に入ってくる日光を監視することもできるため、必要に応じて人工照明を減らしたり、増やしたりすることも可能です。

さらに、モート ネットワークは、社員バッジからの信号を拾って、室内に誰がいるのかを判断することもできます。その情報を環境システムに送れば、特定の場所の冷暖房や照明を作動させることができるのです。

New York Times誌の最近の記事によれば、技術関連企業は、家庭用の「魔法のじゅうたん」を実現したり、医療提供者や医療関係者がひとり住まいのお年よりの行動を遠隔地から見守るためのワイヤレス マイクロセンサーの開発に取り組んでいるといいます。

ワイヤレス センサー ネットワークが支持されるようになり、医療やスマート ビルディング制御技術として広く応用されるようになることで、ダスト センサー技術が主流となることを、ピスター教授は期待しています。現在、モートの価格は1個当たり10〜100ドルですが、今後急速に低価格化が進むはずだとピスター教授は述べています。

ピスター教授によれば、Dust Networksでは、「IPに似ているが若干異なる」通信プロトコルを使用しているといいます。同社は現在、インターネット標準化団体の中心的な存在であるEngineering Task Force(IETF)と協力して、IPをベースとしたワイヤレス センサー ネットワーク規格の開発に取り組んでいます。教授によれば、シスコはこの取り組みを積極的に支援しているといい、シスコは、Dust Networksや他の企業と協力して、工業生産施設のための包括的なワイヤレス ネットワーク システムの開発に取り組んできました。

現在、Dust Networksのワイヤレス システムは、変換ゲートウェイによってインターネットベースのネットワークに簡単に接続することができるようになっており、モートが収集したデータは、一般的なインターネット プロトコルのひとつであるExtensible Markup Language(XML)にフォーマットされます。

ワイヤレス センサー システムを実現するには時期尚早とはいえ、スマート ダストはすでに大手の企業に影響を与えつつあります。今やDust Networksの技術は、Shell OilやBritish Petroleum、PPG Industries、K-V Pharmaceuticalをはじめ、ビール会社のAnheuser-Buschなどに採用されています。ピスター教授は次のように述べています。「皆さんが飲んでいるビールは、モートによってセンターされたものかもしれません」

チャールズ・ウォルトナー:米カリフォルニア州ピードモントを拠点に活躍するフリーライター

*当資料は、米国で発表されたニュースリリースの抄訳です。米国で発表されたニュースリリースの内容は以下のWebサイトをご参照ください。
<http://newsroom.cisco.com/dlls/2008/hd_072108.html >

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