テクノロジー解説

WAN 高速化

 コスト削減やセキュリティの確保といったニーズから、多くの企業でサーバの集約化、いわゆるサーバ コンソリデーションが進められています。アプリケーション サーバやデータベースを各拠点に分散して置くのではなく、すべてをデータセンターにまとめるというものです。この方式は、コストやセキュリティのほかにも集中管理などにもメリットがあるのですが、エンドユーザーにとってはデメリットもあります。サーバ コンソリデーションの結果、いままでLANに接続されていたサーバにWAN経由でアクセスしなければならないため、アプリケーションの応答時間が極端に延びたりサーバに繋がりにくくなるなど、使い勝手が悪くなってしまうのです。

 このような現象が起こる理由は、WANとLANの違いにあります。WANとLANとの違いを考えてみましょう。

  • WAN回線はLAN回線に比べて「帯域が狭い」
  • WAN回線はLAN回線に比べて「遅延が大きい」
  • WAN回線はLAN回線に比べて「回線品質が低い」

 LAN内ではスムーズにやりとりできていたデータが、WANのなかで渋滞を起こしてしまうわけです。また、TCPというプロトコルは、開発当初、このようなWAN上で大きなデータを扱うことを想定していなかったこともあり、その特性のために帯域を有効に使えないという問題があります。

 では、WAN回線ではどのような問題が発生するかを具体的に説明すると、だいたい以下の3つに分けることができます。

  1. 最近のアプリケーションはやり取りするデータ量が多いので、そもそも細い回線を通すこと自体が大変。
  2. LAN内で利用することを前提として開発されたアプリケーションはクライアントとサーバ間で発生するやり取りが多く発生する。これらのアプリケーションがWAN経由でも使われるようになると、トラフィックが多いために渋滞を起こしやすい。
  3. 確実な通信を実現するためのTCPというプロトコル自体の特性により、一定サイズごとに届いたという応答確認が来てからでないと次のデータを送らない。通信距離が長くなることで、この応答確認を待つ待機時間が長くなる。

 最近ではこれらの問題を解消するためのWAN高速化技術を搭載した装置が多く用いられています。Cisco WAAS(Wide Area Application Services)は、このWAN高速化技術を最適に組み合わせるとともに、QoSやセキュリティといったネットワーク技術とも統合して、アプリケーション利用の際の快適さを上げるというものです。

WAN高速化技術

 WANで発生する問題を解決するための技術を紹介しましょう。(1)と(2)は、データ転送量を削減するための技術、(3)はTCPというプロトコル自体を最適化する技術です。そして(4)がCIFSというファイル共有のプロトコル固有の問題を解決する技術です。

(1) LZ圧縮

 データサイズが大きいものをそのまま送ると、狭帯域の回線ではレスポンスが下がります。そこで、データを圧縮して送るのが「LZ」です。


(2) DRE(Data Redundancy Elimination)

  Aさんはデータ「A」「B」「C」、Bさんは「A」「C」「E」が必要である場合、LAN内にサーバがあるならば、それぞれ必要なデータを取り出せばいいことです。しかし、サーバがデータセンターにあり間に狭帯域のWANがはさまっている場合、できるだけWANを通すデータは少なくした方が渋滞をなくすことができます。そこで、WANの外側にこれまでサーバから取り出した情報のデータベースを作り、重複しているデータはそこから取り出すようにすれば、WAN内を通るデータは少なくて済みます。Webページを見る時に、一度見たページをキャッシュしておいて、表示を速くするのと同じ理屈です。


(3) TFO(Transport Flow Optimization)

 TCPアプリケーションのスループットは、ウインドウサイズとRTT(Round Trip Time:パケットが往復する時間)に依存します。何のことかと思う方もいるかもしれませんが、TCPの仕様では一定量のデータ(=ウインドウサイズ)を送信した後に受信側から受け取りの確認を待ち、次のデータを送信する、という手順を繰り返すのです。また、確実性を重視しているので、途中でパケットロスがあった場合には、再送するようになっています。

 電気信号の伝わる速さは一定ですから、遠くなれば確認応答を待つ時間も長くなります。


 また、輻輳防止のため、混んできたら自主的に送信量を減らすスロースタートという機能があります。これは、確認応答が返ってくるのが遅くなったら送信をやめてしばらく待機し、様子を見ながら徐々に送信量を増やすという仕組みになっています。混んでいるからではなく遠いから確認応答が遅れているのに、このスロースタートが働いてしまうため、帯域の利用率が下がることもあります。

 というわけで、待機時間を減らすプロトコルの最適化の手法としては、

  • ウインドウサイズを拡張する(一度に送る量を増やす)
  • パケットロスした時に、そのブロック全部ではなく無くなった部分だけを再送する
  • スロースタートがきかないようにする(輻輳が起きても、セッションが回復したらすぐに元の送信量に戻す)

というものがあります。

(4) WAFS

 Cisco WAAS では、Windowsのファイル共有(CIFS)プロトコルに特化したWAFSという高速化機能があります。CIFSはとてもやり取りを頻繁に行うプロトコルなので、ネットワークの遅延の影響を受けやすく、TCPの最適化やデータ圧縮だけでは十分に最適化できません。そのため、WAFSではプロトコル レベルのキャッシュにより、サーバとクライアントでやり取りされる大部分のメッセージをキャッシュを通じてローカルで(WAN を経由せずに)処理し、ファイルの整合性保証に必要なメッセージだけをWANに流します。これにより、WANを流れるメッセージを削減できるのと同時に、ファイルサーバの負荷も削減することが可能です。


アプリケーションに合わせた技術の採用でWAN高速化を実現

 以上のようにWAN高速化のための具体的な技術には、LZ、DRE、TFO、WAFSという4種類の手法がありますが、アプリケーションごとにどれを使うのが有効かは微妙に異なります。また、このような技術を適用してはまずいアプリケーションもあります。そこでCisco WAASでは、表1のようなポリシーをデフォルトで用意しています。

表 1 WAASデフォルトポリシー例

アプリケーション WAAS処理
Eメール TFO + DRE + LZ
Web (HTTP) TFO + DRE + LZ
Web (HTTPS) TFO
ファイル共有 (CIFS) WAFS + TFO + DRE + LZ
Lotus Notes TFO + DRE + LZ
MAPI ※1 TFO + DRE + LZ
Oracle データベース TFO + DRE + LZ
RTSP ストリーミング TFO + DRE + LZ
VoIP コントロール パススルー
Netapp SnapMirror TFO + DRE + LZ

※1 : 固定のポート番号を使用しないため、End Point Mapper(EPM:エンド ポイント マッパー)に よってアプリケーションの UUID を指定する

 Cisco WAASで、はこのWAN高速化技術を図のように実装しています。


 流れとしては、ユーザーからの通信をルータ・スイッチでアプリケーションごとに分類し、WAN高速化を適用すべきパケットをWAE(Wide Area Application Engine:WAN高速化用ハードウェア)に渡します。WAEが前述のポリシーに従って技術を適用し、ルータ・スイッチに戻し、その後でQoSや暗号化など、WANに出す前に必要なこと処理をして、送出します。

 Cisco WAASはTCP/IPの透過性(ヘッダ情報を書き換えないこと)により、ルータやファイアウォールで実行するQoS、ACLやNATなどを透過的に扱うことが可能です。これにより、ネットワーク機器との親和性が確保され、導入の容易さに加えて、エンド・ツー・エンドでのアプリケーションの快適さが実現するのです。

シスコの新技術 「WAAS Mobile」と「Windows on WAAS」

 シスコでは、一般的なWAASの他に、外出先などのモバイル環境からのアクセスを高速化するPC用ソフトウェア「WAAS Mobile」や、どうしても拠点側に残ってしまうサーバをWAASソリューションの中に統合する「Windows on WAAS」といった機能もあります。


Cisco WAAS 関連製品からテクノロジー解説まで、詳しくは『WAASソリューションガイド』をご覧ください。
WAAS ソリューションガイド (2011年4月版) [PDF: 7.98MB]


Cisco WAAS について詳しくは >
http://www.cisco.com/jp/go/waas/

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