Cisco WAAS(Wide Area Application Services)(「わーず」と読みます)は、データセンター ソリューションの 1 つとして、センターに統合されたストレージおよびアプリケーションの利用環境を最適化するソリューションです。Cisco WAASの導入により、WAN経由でもLANのような高速ファイル アクセスが可能になるほか、アプリケーション サーバへのアクセスも効率化します。

多くの企業では、ファイルやプリンタを社内で共有するという目的でネットワークの導入を開始しました。その後、インターネットが普及し、TCP/IP環境が社内ネットワークにも標準的に利用されるようになり、電子メールサーバ、グループウェア導入に伴うアプリケーション サーバなど、さまざまなサーバが企業ネットワークのなかに設置されるようになりました。一方で、共有ファイルへの社内認識の充実、ファイル容量の増加、また部署単位でのファイル共有の必要性から、拠点にサーバが置かれるようにもなっています。

ネットワーク管理者は、拠点に分散しているサーバの管理もしなければなりません。最悪な場合には、管理者に無断でサーバが設置され、トラブルが発生したときにだけ相談があるということさえあります。

ネットワーク構成がどんどん複雑になっているうえに、その上のトラフィックを管理者が把握できず、情報漏えいの危険さえあるのです。
このようなネットワークが抱える問題を整理してみましょう。

●機器および管理のためのコスト
サーバやバックアップ装置を拠点ごとに設置するために、無駄なコストが発生します。また、トラブル対応などに対応する管理者のコストも無視できません。

●コンプライアンスおよびセキュリティ
拠点にファイル サーバが分散しているために管理者の目が行き届かず、ウイルス対策やセキュリティパッチ適応の遅れることがあります。その結果、情報漏えいの危険性が高まります。

●サービスレベルとビジネス継続性
拠点によってサービス レベルに差が生じる可能性があります。ファイル、特にソフトウェアは大容量化しているため、このようなデータ配布時にWANアクセス回線の容量が不足し、ユーザが通常通りにサービスを受けられなくなることになるのです。また、機器障害時の対策が不十分であるために、ネットワークの障害発生がビジネスに影響を与える可能性も高くなります。

データセンターの必要性
ネットワークが企業戦略の一部と位置付けられている今、データ保護インフラストラクチャが整備されたデータセンターの設置は、企業ネットワークに不可欠となっています。 シスコのデータセンター ソリューションについては詳しくはこちら >>>
http://www.cisco.com/jp/event/campaign/fy06q4datacenter/ データセンターにファイル サーバやアプリケーション サーバを集めれば、センターの管理者によってデータが保護され、情報漏えいのリスクも低減します。さらにバックアップやデザスタリカバリが一元化され、管理が簡素化されます。
しかし、WAN 経由でデータセンターにアクセスする各拠点のエンドユーザにとっては、WAN遅延のために利便性が低下します。これでは、ユーザにとっては不満なシステムになってしまいます。

Cisco WAASソリューション
Cisco WAAS は、WAN を経由するアプリケーション アクセスを最適化する機能を提供します。さらにファイルサーバの統合に必要な Cisco WAFS(Wide Area File Services)の機能も利用できます。Cisco WAFSは、WAN経由でのファイル アクセスに対して、LAN上でのサーバアクセスに近いレスポンスを可能にします。

Cisco WAAS が提供する WAN 最適化技術とファイル キャッシュの機能によって、WAN経由でのファイルアクセスおよびアプリケーション サーバへのアクセス速度が解決されます。その具体的な手法を見ていきましょう。

最初に紹介するCisco WAASの機能は、Cisco WAFSによって実装されていたものと同じです。これは、拠点にあるWAASとデータセンターに設置されたWAASが常に同期しており、WAN経由でアクセスしなくて済む要求を判断して、ローカルで高速に処理する機能があることです。
データの一貫性と同時性を保証したうえで、WAN切断時の耐障害性も確保できます。
Cisco WAASは、Cisco WAFSの機能にアプリケーション サーバ アクセスへの対応が追加されているということができます。それは、データ転送量を劇的に削減するDRE(Data Redundancy Elimination)という機能によって実現されています。これは、データのパターンを学習し、重複するデータの転送を削減します。
Cisco WAASの特長の1つは、TCP/IPでのファイル転送の特性に着目して設計されている点です。たとえば、サイズの大きいファイルを転送する場合を考えてみます。TCPを使って一度に運べるデータ量には制限がありますから、多くのファイルは小さなデータに分割されて転送されます。この小さなデータは、順番どおりに送信先に届くよう、ときどき着信を確認しながら転送することになります。Cisco WAASでは、これを先読みしてディスクに蓄積することにより、LAN 経由でファイルサーバにアクセスしているようなスピードでのファイル転送を可能にしているのです。この機能をTFO(TCP Flow Optimization)といいます。
以上のようなCisco WAASの機能により、WANを経由したアプリケーション アクセスのパフォーマンスは、大幅に改善されます。実際、4倍~100倍のレスポンスタイムの改善があったというデータもあります。

実は、Cisco WAASの最大の特徴は、サーバやアプリケーションに何の変更をすることなく、通信の最適化と転送データの圧縮・削減機能を実現する点にあります。既存ネットワーク機器で利用しているQoSやクライアントごとのモニタリングなどの機能は、そのまま使い続けることができるのです。