テクノロジー解説

UPOE(Universal Power over Ethernet)ソリューション

 CO2 排出量の低減、ピーク時の電力不足への対応、エネルギー コストの削減など、企業には一層の節電が求められています。データセンターやオフィスの IT 環境では、IT 機器そのものの省電力化だけではなく、IT を活用したビル全体の省エネといった取り組みが行われています。

 このような取り組みを支援するテクノロジーの 1 つに、シスコの開発した次世代 PoE(Power over Ethernet)である UPOE(Universal Power over Ethernet)があります。UPOE を活用することで、どのようにエネルギー削減を実現できるのか?今回は、UPOE のテクノロジーとそれによるメリットについて解説します。

PoEからUPOEへ

 IT 環境の変化によって、PC のほか、ネットワーク スイッチや無線 LAN デバイス、IP 電話など、オフィスのなかに数多くの IT 機器が導入されるようになりました。2011 年に資源エネルギー庁から発表されたデータによると、オフィスの電気消費量のうち OA 機器が占める割合は 16%。今後、この数値はますます高まっていくと考えられます。そのため、IT 環境全体に対する電力供給の最適化はもちろん、IT のインテリジェンスを活用したエネルギー消費管理が重要な課題となっています。

 今から 10 年以上前、シスコは、イーサネットの配線で利用される銅線ケーブルを通じて電力を供給する PoE テクノロジーを開発しました。これは、LAN スイッチなどの給電側デバイス(PSE:Power-Sourcing Equipment)が、イーサネットのカテゴリ 5 以上の UTP ケーブルを介して、エンドポイントである受電側デバイス(PD:Powered Device)に電源を供給するというものです。開発当初の目的は、IP テレフォニーの配備をサポートすることでした。それまでの IP テレフォニー機器には、動作用の電源が必要でしたが、PoE を利用すればネットワーク接続と電源供給を 1 本のケーブルで行うことができるため、IP テレフォニーの配備が簡単になります。

 2000 年にリリースされたシスコの PoE ソリューションは、1本のイーサネット ケーブルで供給できる電力量は 7W でした。その後、PoE がIEEE 802.3afとして標準化されてると、供給できる電力も 15W へとパワーアップ。さらに、2009年9月に標準化された IEEE 802.3at(PoE+)では 1 ポートから最大 30W を給電できるようになりました。これによって PoE の適用範囲は、ネットワーク カメラ、POS デバイス、セキュリティ アクセス制御デバイス(カードスキャナ)、ビルディング オートメーション、産業オートメーションなど、新世代のネットワーク接続デバイスへと広がりました。

 そして、2011 年、シスコは、1 ポートあたり 60W が給電可能な Cisco UPOE を開発し、さらに広範囲なデバイスへの電源サポートを可能にしました。

 現在、UPOE に対応している給電機器は Cisco Catalyst 4500E スイッチで、48ポート搭載のモジュールをシャーシに追加することで利用できます。

PoE 技術開発をリードするシスコ
UPOE の仕組み

 UPOE が 60W を給電できる仕組みは、ツイストペア ケーブルに含まれる銅線使用線数によります。 ポートあたりの 30W の給電が可能な PoE+(IEEE 802.3at)の場合、カテゴリ 5e(またはクラスD)以上のツイストペアケーブルの 4 ペア(8 芯)中 2 ペア(4 芯)を使用して電力を供給します(図2)。給電側の PSE は 2 ペア(ペア 1、2、および 3、6)のみを使用して、PSE から PD(Powered Device:受電側デバイス)に電力を供給し、残りの2ペア(ペア 4、5、および 7、8)はアイドル状態で保留します。

PoE  および  PoE+ アーキテクチャ

 一方 UPOE は、PoE と同じケーブル配線標準を使用しますが、2 つのツイストペアではなく、標準のイーサネットケーブル配線(カテゴリ 5e 以上)にある 4 ペアすべてを使用します(図3)。信頼性、耐久性などのハードルをクリアしたシスコ固有のアーキテクチャによって 60W を実現しました。

UPOE アーキテクチャ

 このように 4 ペアを使って 60W を供給するという仕組みは、2 ペアの設計をシンプルに拡大したものと言えます。2 ペアのシステムでは、PSE コントローラを 1 つ使用して、ケーブルのシグナルペアを通して PD に電力を供給。4 ペアシステムでは、PSE コントローラを 2 つ使用して、シグナルペアとスペアペアの両方に電力を供給します。

表1 PoE/PoE Plus/UPOEの比較

  PoE PoE Plus UPOE
最小限必要なケーブル タイプ Cat5e Cat5e Cat5e
IEEE 標準 802.3af 802.3at シスコ固有
PSE ポートあたりの最大電力 15.4W 30W 60W
PD への最大電力 12.95W 25.5W 51W
使用するツイスト ペア 2 本 2 本 4 本

 しかも、UPOE に対応している受電機器かどうかは、スイッチ側が自動的に判断し、適正な電力を給電することができます。UPOE に対応した機器には 60W を、PoE+ に対応した機器には 30W を給電するといった具合です。

PSE と PD の自動的な電圧ネゴシーション

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UPOE を活用したスマートオフィスで TCO 削減

 UPOE を含む PoE の導入には、TCO 削減の効果が期待できます。まず、ネットワーク工事だけで電源の供給が可能になるため、電源工事が不要になります。さらに、物理的に AC ケーブルを引き回す必要がなくなるため作業の手間が減り、オフィスのレイアウト変更などに柔軟に対応できます。

 また、イーサネット ケーブルで供給される電源は DC(直流)であり、AC-DC 変換は PSE 側でのみ実行されます。これにより、AC-DC 変換による電力ロスが大幅に削減され、機器ごとに AC アダプタを利用する場合に比べて、システム全体で 30 〜 50% のコスト削減が見込まれます。

 さらに「Cisco EnergyWise」を活用することで、フロアや部屋といった単位ではなく、部署や機器単位で電源のオン/オフをコントロールでき、より細かな電力管理が実現でき、例えば災害や停電などの緊急時に必要な機器にのみに給電するといった運用も可能になります。

UPOE 対応のゼロクライアントも登場

 UPOE によって提供される 60W という電力は、PoE に適用範囲を大きく拡大します。例えば、仮想デスクトップ環境で使用されるゼロクライアント(シンクライアント)があります。電源とネットワーク環境を統合することで、省エネ・省スペースを実現し、電力消費まで含めた一元管理が可能になります。

仮想デスクトップ環境

 UPOE 対応ゼロクライアントのメリットは省エネだけではありません。ネットワークケーブルをつなぐだけでサービスの提供が可能になり、情報セキュリティの向上と運用の効率化を実現します。

スマートオフィス実現をサポートする Cisco UPOE
UPOE 対応ソリューションの紹介

Cisco UPOE による次世代のオフィス給電網のデモ
ついに LAN ケーブル一本で 60W 給電を実現! UPOE に対応したデバイスの例と、UPOE を収容する Cisco Catalyst 4500 をご紹介します。(8:39 min)

Cisco UPOE による次世代のオフィス給電網のデモ

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 業界屈指のスイッチポートあたり 60 W を誇る Cisco UPOE は、次世代のワークスペース環境における新たな導入オプションとなります。

 現時点で、UPOE 対応機器はサムスン電子のディスプレイ一体型 仮想化ゼロクライアント「Sync Master NC220P」、LED 蛍光灯、仮想デスクトップ機能を搭載したゼロクライアント端末「Cisco Virtualization eXperience Client」(Cisco VXC)ですが、UPOE  非対応機器であっても UPOE スプリッターを活用すれば電源を分岐して供給することができます。これらを活用すれば、デスクトップ上から AC ケーブルをなくすことも可能になります。

 オフィス環境で UPOE 対応機器や LED 照明を使えば、仮想デスクトップ環境だけでなくスマートオフィスへの道筋が見えてきます。近い将来、エアコンと複合機を除いたオフィス内の弱電設備に対して、電源をイーサネットで供給するスマートオフィスも遠い話ではありません。

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