テクノロジー解説

テクノロジー解説:Cisco VXI ソリューションにおける WAN 最適化

前回は、デスクトップ仮想化の"エクスペリエンス"を強化する「Cisco VXI」をご紹介しました。このソリューションのキーテクノロジーの 1 つに、WAN 最適化のための Cisco WAAS があります。前回の解説でも簡単に触れましたが、今回はもう少し詳しく解説します。

デスクトップ仮想化環境では印刷が遅くなる?

VDI(Virtual Desktop Infrastructure)を導入した環境では、クライアント PC からデスクトップが分離されて、一般的にはデータセンターのサーバ上で実行されます。つまり、ユーザがキーボードから文字を入力してからその文字がディスプレイに表示されるまでの間に、データがクライアントとデータセンターの間を行き来します。このデータのやり取りに使用されるプロトコルの代表的なものに、Citrix ICA(Independent Computing Architecture)と Microsoft RDP(Remote Desktop Protocol)があります。RDP は、Microsoft の VDI ソリューションのほかに VMware の仮想化デスクトップ製品 VMware View にも採用されています。

仮想化デスクトップのユーザが Microsoft Office などのアプリケーションから印刷を実行すると、出力先プリンタがユーザのすぐそばにあっても、印刷イメージはデータセンターからネットワーク経由で送信されます。同様に、ユーザがストリーミング動画を見るときは、「マルチメディア リダイレクション(MMR)」と呼ばれるプロトコルを使用して映像データがデータセンターからクライアント PC に転送されます。デジタルカメラなどの USB デバイスに保存されているデータを仮想化デスクトップで利用するときも、「USB リダイレクション」と呼ばれるプロトコルを使用して、まとまった量のデータがクライアントの USB ポートからデータセンターまで転送されます。 このような大量データ伝送の影響が、ユーザにとってはレスポンスの遅さとして現れることもあります。仮想デスクトップのクライアントとデータセンターの間は一般的に WAN(Wide Area Network)で接続されますが、WAN は LAN に比べて帯域幅が狭く、距離や通過するネットワーク上にある装置で発生する遅延が大きいため、印刷や動画などの大量データの転送に時間がかかってしまうからです。このような問題は、VDI 導入の計画時にはなかなか気づきにくいものです。

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WAAS が解決:その具体的な効果

WAN の帯域幅が問題ならば、帯域幅を広げるのも解決策の 1 つですが、回線の増強にはコストが伴います。既存のインフラストラクチャを見直し、その能力を高めるために、シスコは WAAS(Wide Area Application Services)を開発しました。これは仮想デスクトップ環境に限らず、データセンターとブランチ オフィスなどの遠隔拠点とを結ぶ WAN 上のトラフィック伝送を最適化するテクノロジーです。WAAS のメリットには、WAN 上を流れるデータ量の削減と、ユーザ レスポンス時間の短縮があります。シスコの WAN 最適化テクノロジーについてはこれまでにも 2 回解説をしています。

WAAS の特長の 1 つに、アプリケーションに特化したプロトコル最適化があります。デスクトップ仮想化では、前述の Citrix CIA や Microsoft RDP などの最適化が可能です。シスコは市場シェア上位の各ベンダーとパートナーシップを結び、Citrix 社のCitrix XenDesktop、VMware 社の VMware View などのデスクトップ仮想化ソリューション、Wyse Technology 社のシンクライアント向け OS である Wyse Thin OS などに対応した WAAS ソリューションを開発し、各社の協力の下でテストを行って検証済みソリューションとして提供しています。

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WAAS の 3 つの主要機能、TFO(Transport Flow Optimization; TCP フロー最適化)、LZ(Lempel-Ziv; データ圧縮)、DRE(Data Redundancy Elimination; 差分データ転送)によって、次のような WAN トラフィック削減効果が得られることがテストによって実証されています(測定条件:WAN 回線 1.5Mbps/80msec)。

  • 印刷:初回印刷時に 26%、同じドキュメントの 2 回目以降は 55% 削減。同じオフィスの複数の人が同じドキュメントを印刷するような場合は、WAAS の DRE 機能がデータの重複を検出し、WAN 上のトラフィック伝送を回避します。
  • USB リダイレクション:47% 削減
  • MMR(マルチメディア リダイレクション):Wyse シンクライアントでの MMR では最大 72% 削減可能。他のクライアントでも 50〜70% の削減が見込まれます。

この 3 つのうち、印刷処理に対する Cisco WAAS による最適化がどこまで可能かをご紹介します。次の図は、Citrix XenDesktop を使用するデスクトップ仮想化環境における測定結果のグラフです。

Citrix XenDesktop を使用するデスクトップ仮想化環境における測定結果

これは、印刷処理をデータセンターに集中化した場合にデータセンターのスプーラが処理するデータ量を測定した結果です。Cisco WAAS を使用していない場合に比べ、WAAS を使用して最適化した場合、1 回目の印刷時ではデータ量が半分以下に削減され、2 回目にはさらに大幅に削減されていることがわかります。詳しくは、「Citrix XenDesktop および XenApp を全社規模で最適化する Cisco Wide Area Application Services ソリューション」を参照してください。

次の図は、Microsoft Windows Server 2008 R2 の RDS(Remote Desktop Services)と Hyper-V による Microsoft Windows 7 デスクトップ仮想化環境における測定結果のグラフです。

Microsoft Windows Server 2008 R2 の RDS(Remote Desktop Services)と Hyper-V による Microsoft Windows 7 デスクトップ仮想化環境における測定結果

プリントサーバを設置する場所や、どの端末のプリンタ ドライバを利用するかなどの条件によって、WAN を流れるデータ量は異なります。その中で、データセンターにプリント サーバを置いて RDP プリント チャネル(拠点にあるデスクトップにアクセスする端末のプリンタ ドライバを利用して印刷するケース)を使用する場合の帯域幅の削減効果は最大で 62%、ブランチ オフィスにプリント サーバを置いて仮想デスクトップのプリンタ ドライバを利用して印刷する場合の削減効果は最大 95% であることがわかります。詳しくは、「Microsoft RDP 7.1(RemoteFX)および RDP 7.0 による Microsoft Windows 7 仮想デスクトップの WAN 配信を Cisco WAAS で最適化」を参照してください。

なお、Cisco WAAS は TCP トラフィックの最適化を目的としたテクノロジーであり、したがって VMware View に採用されている PCoIP のような UDP をベースとするプロトコルは最適化の対象外となります。

シスコ独自のテクノロジー:Cisco WAAS Central Manager と WCCP
Optimization Summary Report:アプリケーション毎やトラフィック全体に対するデータ削減率を確認することが可能

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Optimized Connections over Time:1 画面でアプリケーション別にコネクション数をモニタすることが可能

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Optimized Connections over Time:1 画面でアプリケーション別にコネクション数をモニタすることが可能

Optimized Connections over Time:1 画面でアプリケーション別にコネクション数をモニタすることが可能
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上に示したような Cisco WAAS の効果は、Cisco WAAS ソフトウェアの一部である WAAS Central Manager の画面で確認できます。WAAS のバージョン 4.3 ではいちだんと管理性が向上しており、たとえばアプリケーションごとの WAN 帯域利用の削減率が 1 つの画面でわかります。このことは、WAN を流れるデータの可視化と、さらなるアプリケーション導入に向けた検討に役立ちます。

WAN 最適化におけるシスコ独自のテクノロジーとしては、他にも WCCP(Web Cache Communication Protocol)があります。これは WAAS とシスコのルータやスイッチが連動して動作し、ネットワーク経路上にはない WAAS に最適化が必要なトラフィックのみを転送するためのプロトコルです。また、TCP セッションを複数の WAAS に負荷分散させるための機能や、動作している WAAS にのみトラフィックを転送し、WAAS が利用できないときには通常のルーティングを行うといった、WAAS の冗長のための機能も備えています。シスコのルータやスイッチにはこのプロトコルによる処理が組み込まれており、対応する Cisco IOS に設定を適用することで利用できます。 ビジネスを支えるプラットフォームとしてのネットワークの重要性が高まりつつあるなかで、シスコはネットワークの能力を最大限に高めるソリューションの提供が使命であると考えています。シスコ製品によるサーバ、ネットワークと、Citrix、VMware、Microsoft、Wyse などのパートナー各社から提供される VDI ソリューションに、Cisco WAAS による WAN 最適化を組み合わせることによって、いつでもどこでも、どのデバイスからでも同じようにビジネスを遂行できる環境基盤の構築が実現します。

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