テクノロジー解説

3G ワイヤレス WAN

 第3世代の携帯電話方式「3G」は、高速なデータ通信やマルチメディアを利用したサービスの提供など、ユビキタスな通信メディアとして利用が広がっています。さらに携帯電話だけでなく、この高速な無線回線を企業の WAN 接続にも利用しようという動きがあります。これが「3G ワイヤレス WAN」です。
 ここでは、3G ワイヤレス WAN の用途とメリットについて解説します。

3G ワイヤレス WAN の利用方法(1) − バックアップ WAN 回線 −

 ネットワークが業務に不可欠となった現在、企業はネットワークにメインとバックアップという 2 つの経路を確保するのが一般的です。メイン回線の他に、万一その回線が不通になった場合に備えてバックアップ回線を用意しておくということです。拠点間を結ぶネットワークである WAN 回線の場合、ISDN をバックアップ回線として使用しているという企業が多いかと思います。

 WAN のメイン回線は元々は専用線が主流でした。ISDNの通信速度はメタルケーブル回線で64kbps、光ケーブル回線でも1.5Mbps程度ですから、メイン回線との速度差はそれほどありません。

 しかし、その後キャリアが提供する回線をVLANで区切って提供されるIP-VPNや広域イーサネットなどが普及し、帯域はどんどん高速化しました。今では100Mbps、さらに 1Gbps の WAN 回線でさえも珍しくなくなってきています。つまり、バックアップ回線とメイン回線との速度差がどんどん大きくなっているのです。

 ISDN に代わるバックアップ回線としては、低価格化している光ファイバ回線を契約しておくという選択肢もあるでしょう。ただし、めったに使用しない回線に対して年間約50万円のコストをかけることになります。小規模な企業や多くの拠点を持つ大企業にとって、1拠点あたりの支出には負担の大きい金額です。

 3G ワイヤレスである HSPA(High Speed Packet Access)方式では、HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)によるダウンリンク高速化によって最高 7.2Mbps、アップリンクは HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)によって最高 5.76Mbps といった高速通信が可能です。これを WAN 回線として使用すれば、ISDN よりもずっと高速なバックアップ回線になります。しかも、携帯電話キャリアの提供する定額プランにも対応できるので、バックアップ回線の回線費用予測が非常に容易になるとともに、コスト的にも大きなメリットがあります。


3G ワイヤレス WAN の利用方法(2) − 小規模拠点および期間限定の拠点での WAN 接続 −

 3G ワイヤレス WAN のバックアップ回線としての利用方法を広げて考えると、新店舗にメイン回線が敷設されるまでの一時回線としても利用できることがわかります。あるいはイベント会場や工事現場、仮店舗のように限定された期間のみの WAN 回線としても便利です。また、ショッピングモール内の通路上店舗のようにスペースの問題でネットワーク工事ができない場合にも、3G ワイヤレス WAN ならば高速な WAN 回線を確保できます。

 さらに、HSUPA に対応することでアップリンクが高速化されたため、新しい 3G ワイヤレス WAN の利用方法が可能になります。その 1 つの例が遠隔医療。アップリンクの高速化により、画像などの容量の大きいデータも 3G/HSPA ネットワーク経由で送れるようになります。このことにより、ブロードバンドなどの高速回線への接続が難しい地域の診療所でも、患者の画像を都市部にいる専門家と共有することで、より迅速で的確な診断が可能になるのです。

  また、HSUPA へ対応したことで、一般の企業にとっても WAN 回線のより柔軟な展開が可能になります。例えば、支店、支社、および ATM やキオスクなどが設置されている店舗における監視カメラの場合、その画像やビデオデータを本社やデータセンタへ送信するのは、大容量のデータ送信になるため、従来は有線 WAN 回線の敷設が必須でした。ただ、これらの WAN 回線は、導入までに時間がかかったり、物理的に敷設が難しかったり、コスト的にも必ずしも安いものではありませんでした。しかしながら、今日は 3G ワイヤレス WAN を利用することにより、これらの課題を柔軟に解決するとともに、よりコストメリットのある WAN 回線の選択が可能になるのです。

3G ワイヤレス WAN の利用方法(3) − 移動拠点での WAN 接続 −

 もう1つ、面白い利用方法をご紹介しましょう。3G ワイヤレス WAN の最大の特徴は、無線通信の回線であることから、ネットワークの構築にケーブルの敷設が不要という点です。しかも、携帯電話の電波を使用しますから、かなり広い範囲をカバーすることができます。これを利用して、移動店舗に活用するという事例があります。

 カブドットコム証券では、支店の開設が難しいような地域で証券窓口業務を行うため、移動窓口として車両を走らせています。窓口に行くのが困難な場所には、店舗がやってくるのです。ホテルのロビーのような内装の車内では、お客様にくつろいでいただきながら、株の売買や証券の電子化といったサービスが行えるようになっています。

シスコの 3G ワイヤレス WAN 製品
Cisco サービス統合型ルータ用の 3G ワイヤレス WAN HWIC

Cisco サービス統合型ルータ用の 3G ワイヤレス WAN HWIC

 シスコでは、Cisco ISR サービス統合型ルータ向けに 3G データ通信対応モジュール(HWIC-3G-HSPA)を提供しています。このモジュールに SIM カードを装着してルータを 3G 端末にすることができます。これを導入することで、プライマリの WAN 回線がダウンしても、即座にダウンリンクが最大 7.2Mbps、そしてアップリンクが最大 5.76Mbps のバックアップ回線がつながります。

 さらに、Cisco ISR サービス統合型ルータに完全に統合されるため、オンボードのインターフェイスと同等に、ルータに装備されたセキュリティ機能、様々なルーティング プロトコル、MIB などもサポートされます。例えば、ルータ組み込みの VPN 技術を活用することで、携帯電話キャリア網内にセキュアな WAN 回線が確保されます。

 HWIC-3G-HSPA は、企業での使用を想定してデザインされています。その 1 つに、直結タイプのアンテナおよび延長・拡張タイプのアンテナがあります。3G ワイヤレスは携帯電話の通信網を利用するため、電波状況によって通信品質が左右されますが、オプションのアンテナによって、アンテナだけを電波状態のいい場所に設置することができます。例えば、ルータは地下にあっても、アンテナは地上に出すことができるのです。その他、ルータと 3G モジュールの両方を同じ会社から提供しているため、一貫した保守サービスを受けられるというメリットもあります。

3G ワイヤレス WAN HWIC について詳しくは: http://www.cisco.com/web/JP/product/hs/ifmodule/hwic/3gwan/index.html

3G ワイヤレスをさらに高速な回線として利用するためのテクノロジー

 3G ワイヤレスの ダウンリンク最大 7.2Mbps およびアップリンク最大 5.76Mbps という速度をより効率的に使うためのテクノロジーがシスコにはあります。それが、Wide Area Application Services(WAAS)です。

 WAASは包括的なWAN高速化ソリューションで、次のような高度なWAN高速化テクノロジーを提供します。Cisco WAAS について詳しくはこちらをご覧ください。

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