特集 どこまで許されるプライバシーのビジネス利用

One to Oneマーケティング、顔の見えるサービス、CRM。その精度を上げるには詳細な個人情報 (プライバシー) の収集と活用が不可欠となる。素早く最新の個人情報を収集し活用できる企業こそが、ビジネスの成功への近道だ。しかし、プライバシーのビジネス利用においては、一歩間違うとプライバシー侵害や漏洩にもつながり企業の信用を失墜させる。2005年4月、個人情報保護法の施行を目前に控え、ユビキタス時代におけるプライバシーのビジネス利用を考えた。

INDEX

  1. あなたは今、アメリカ西海岸への旅行を考えていませんか?
  2. プライバシーマーク取得数から見えてきた プライバシー保護の危うい状況
  3. 現場からはプライバシーの管理面で何度かヒヤリ、ハッとした経験があるとの声
  4. ユビキタス時代だからこそプライバシーのビジネス利用には法律を遵守する社風と体制整備が求められる

あなたは今、アメリカ西海岸への旅行を考えていませんか?

ダイレクトメールが来ない日はない。よほど興味のある DM でなれけばゴミ箱へ直行が多いのではないだろうか。例えば、「夏休みにアメリカの西海岸へ行きたい」と思っている人の手元に西海岸の DM がきたり、「車を買い替えよう」と考えている人に車の DM が届いたら、きっと開けて見るに違いない。そのときはグッドタイミングと思っただけかも知れないが、その背後には緻密なマーケティング戦略が隠れており、One to Oneマーケティングを可能にする仕組みがある。

例えば、ある大手ビデオレンタル店では、会員が借りたビデオ情報を本部のホストコンピューターに記録・蓄積し、「誰が、いつ、どんな商品を借りたか」を管理している。これは個人の嗜好を蓄積した感性データベースであり、好みを基礎にしているだけにその応用範囲は広い。こうした会員情報を分析すれば、確度の高い商品ターゲットを得ることができる。

アメリカの西海岸へ行きたいという人は何らかの情報を収集しており、旅行代理店でパンフレットを手に入れたり雑誌やビデオを見たりしているはずだ。アメリカ西海岸のビデオを借りた人をピックアップすれば、最適の見込み客となる。こうしてセグメント化された情報を元に、その企業は DM 代行を請け負うという仕組みだ (予め DM 送付に同意した会員に送られる) 。これは車はもちろん、化粧品、食品、電気製品などの商品分野、釣り、旅行、アウトドアなどあらゆるレジャー、サービスのマーケティング情報として利用可能だ。

このようにサービスの精度を上げるには、One to One マーケティング、顔の見える詳細な個人情報 (プライバシー) の活用が不可欠となる。

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