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Ciscoメーリングリスト

Cisco on Cisco Vol.1

シスコIT責任者に聞く
“ビジネスを共に作る”情報システム部門になるために

シスコIT責任者に聞く ビジネスを共に作る 情報システム部門になるために

 縁の下で企業を支えるシステム部門は、正常稼動は「当たり前」、システム障害時にはクレームに追われるという、モチベーションを維持するのが難しいとも思われるような立場にあることが多いようです。しかしシスコでは、情報システム部門が企業戦略の一部として社内に認知されています。

 それは、シスコが IT 企業だからという理由ではありません。自分たちの業務がビジネスにどう役立っているかを経営層や社員に理解してもらうことで、会社における IT 部門の価値を上げているのです。「ビジネスを共に作る情報システム部門」には、どのような背景があるのでしょうか。シスコの情報システム シニアマネージャーの廣崎淳一に聞いてみました。

ビジネスとITをブリッジするコミュニケーション
廣崎

――企業の情報システム部門というのは、あまり花形とは思われていませんね。あれをやってくれこれをやってくれという要求や苦情に常にさらされていて、何かを成し遂げてもあまり感謝もされないというイメージがあります。

廣崎:シスコはテクノロジーの会社ですし、情報システム部門というとテクノロジーに特化した部署だと思われがちですが、我々の一番大切な役割は、ビジネスとテクノロジーを橋渡しすることです。多くの企業の情報システム部門の人から聞く悩みとして、ROI(Return On Investment:投資収益率)を明確化できないというものがあります。情報システムは投資額が大きいので、どのようなリターンがあったのかと経営層から聞かれるが、それをうまく説明できない。知恵を絞って一生懸命説明した挙げ句、返ってくる言葉が「頼むから同じ星の言葉をしゃべってくれ」とかね(笑)。自分たちの観点で、自分たちの用語で説明してしまうために、うまくコミュニケーションができないという問題がどの企業にもあると思うのです。

 でも、それをきちんと説明できれば、予算の獲得もスムーズになるしIT部門の価値も認知される。経営者は、それはコストの削減につながるのか、それとも売り上げの増加に繋がるのかといったことが知りたいわけです。また、経営者は基本的に数字に対する嗅覚が非常に強いですから、数字で説明することによってお互いの共通言語を持つことができます。

――そのためにシスコ IT には何か特別な戦略があると聞きました。

廣崎:シスコの情報システム部門であるシスコITには、もちろんアプリケーション担当、インフラストラクチャ担当、セキュリティ担当といった部署がありますが、特に重要だと感じていて、恐らく他社とは異なる特徴的なことのひとつが、「カスタマーストラテジー&サクセス」という部署でしょう。

 この部署は、シスコITが提供している価値をシスコ社内に認知してもらうというミッションを持っています。例えば、アプリケーションが入れ替われば、それはエンドユーザにも分かりやすいですね。しかし、サーバやネットワークが入れ替わったということはとてもわかりづらい。だから、それが入れ替わったことによってビジネスの価値や進め方がどう変わったのか、どのような苦労があったのかということを、経営者や社員に対して伝えるのです。

――経営者だけでなく社員にも IT 部門の活動を知らせる PR 活動をしているのですか。

最初は情報システム部門の言葉を経営層の言葉に置き換えるという役割から始まりました。そして次にエンドユーザである一般社員とのコミュニケーションにもフォーカスし始めました。社員全体の働き方を変えるような大きなプロジェクトを推進する時に、IT部門が最も苦労するのはコミュニケーションの部分です。ユーザは、基本的には変化を嫌います。今までやっていた操作と違うことをしなければならないというのは面倒だからです。しかし、その変化によってユーザにどのようなメリットがあるかを伝えることで、スムーズに受け入れてもらうことができます。そのために、Eメールやボイスメール、Webや壁に貼るポスターまで、さまざまなツールを駆使して各ユーザに最適な方法で知らせます。

グローバルでひとつの IT(One IT)− IT ガバナンスの重要性
廣崎

―― 「カスタマーストラテジー&サクセス」はIT 専任のコミュニケーション部隊というわけですね。このような人たちが、世界中のシスコ IT にいるのですか。

廣崎:海外拠点を持つ多国籍の企業では、各国ごとに情報システムを持つ場合が多いのですが、シスコでは「One IT」といってグローバルでひとつの情報システムというスタンスをとっています。これはシスコ IT のもうひとつの大きな特徴です。組織的にも日本の情報システム部門というように閉じたものではなく、社員が各国にまたがって仕事をします。カスタマーストラテジー&サクセスという部門にしても、日本の情報システム部門に所属するのではなく、グローバルな組織として活動しているのです。

――シスコ全体でひとつの IT であることには、なにか理由があるのですか。

廣崎:なぜグローバル化をしなければならなかったかという背景を説明すると、多くの企業が直面している課題との共通点があると思います。かつて、ITバブルという時期がありました。シスコでも、8年間で売り上げが20倍に伸びたような時代です。この時、売り上げは20倍に伸びましたが社員を20倍に増やすことはできないので、業務をシステムにやらせようという流れができました。この時は本当に人手不足になって、とにかく予算をつけるからすぐにシステムを構築しろということで、あちこちでいろいろなシステムが林立してしまいました。

 その結果どうなったかというと、世界に40カ所のコールセンター、28の注文管理システム、22の業務報告システムといった状態です(図2)。注文管理システムが28種類なんて、どう考えても必要ないですよね。おまけに、システムというのは一度走り始めると間違いなく定常的にメンテナンスのコストがかかります。2002〜03年になると、それ以前に作ったシステムのメンテナンスにコストがかかりすぎて、新規システムへの投資に手が回らなくなってしまったのです。これはかなり危機的な状況でした。そこで我々が考えた解決策が、『ITガバナンス』です。

――企業全体として経営戦略とIT戦略との整合性をとるという考え方ですね。

廣崎:IT ガバナンスなしにスピードだけにフォーカスすると、重複投資というデメリットが出ます。また、新規でこういうシステムを作ってくれというビジネス側の要求に、メンテナンスコストがかかり過ぎて手が回りませんでは、IT 部門の存在意義が問われます。

 これは日本の企業でも、分社化や子会社化した会社をどうとりまとめるかといった課題と共通のものでしょう。また、最近では日本でもM&Aが増えています。合併に伴うシステム統合のトラブルも時々耳にしますが、買収した企業の情報システムをどのように統合するかという課題も、一般的なものになってきたと言えるでしょう。シスコはこれまで120以上の企業買収を繰り返して今の規模になった会社ですから、M&Aにおけるシステム統合のフレームワークを作り、IT ガバナンスを浸透させていくかということにも、非常に神経を使っています。

 さまざまなシステムから異なるフォーマットやクオリティのレポートを出力する状態では、その照合に時間がかかって意志決定が遅くなります。ところが、世界中でひとつのシステムを利用することで、リアルタイムで必要な情報を共有することができるようになったのです。また、その同じひとつの情報を、経営者向けや中間管理職向け、一般社員向けに、切り口だけ変えてリアルタイムで提供できるのです。

 またガバナンスの導入によって、ネットワークやサーバ、電話といった、会社のインフラ部分の考え方が大きく変わりました。例えば、今のシスコでは、所属する地域や部署によって利用できるものが違うということは、絶対に起こりません。シスコが推し進めている業務の在り方というのは、パソコンがないとか電話がない状態では絶対に実現できない。また、世界中どこのシスコのオフィスに行っても、社員は自分のオフィスにいるのと同じようにパソコンをネットワークに接続し、サーバにアクセスし、電話も利用することができます。出張中だからといって、普段よりもパフォーマンスが落ちるということはありません。

―― 「カスタマーストラテジー&サクセス」は、IT ガバナンスを経営者や社員にも認知してもらうという役割があるのですね。

廣崎:技術者は、技術的課題の解決に没頭してしまいがちです。また、その技術革新によって影響を受けるユーザは、変化によって何かが良くなるということが分かっていても、変化の方向性なりスケジュールなりを理解しないと不安なものです。だから、ユーザが変化をすんなり受け止められる手順を踏むことが重要になります。しかし、そのためのスキルを技術者に対して求めるのは難しいものです。だから専門のスタッフがいる。それが「カスタマーストラテジー&サクセス」なのです。

シスコの上でシスコは動く − ファーストユーザー事例集Cisco on Cisco
ケーススタディ

―― シスコの Web サイトに「Cisco on Cisco」というシスコ IT が担当している事例集がありますね。このサイトについて紹介してください。

廣崎:「カスタマーストラテジー&サクセス」では、経営者とのコミュニケーション、そして次に社員とのコミュニケーションを成功させてきました。そして次に考えたのはエンドユーザであるお客様にシスコ IT がやっていることをケーススタディとして提供することです。 そこで、我々がやっていきたことをケース スタディとしてお客様に紹介する「Cisco on Cisco」というサイトを立ち上げました。

 シスコ IT は世界およそ90カ国の約9万4000人の社員および契約社員が利用するインフラを管理しています。このインフラはもちろん、電話、オンラインでのミーティング、自宅からのリモート アクセスなど、あらゆるシステムにシスコ製品が使われています。まさにシスコはシスコ製のシステムの上に乗っている「Cisco on Cisco」なのです。

―― 「Cisco on Cisco」は、シスコ製品のユーザである情報システム部門の方に参考にしていただきたい事例集になっていますよね。

廣崎:Cisco on Ciscoでは、ネットワークをコアとして、そのプラットフォーム上にデータセンタやネットワークシステム、モビリティ、VPN、セキュリティといったさまざまなカテゴリのコンテンツがあります。また、最近はアドバンストテクノロジーと呼ばれるボイスやビデオなどのリッチコンテンツの領域にも広がりを見せています。

 また、基本的にはシスコのテクノロジーが中心になっているものの、例えば「●●社のソフトウェアを導入した際の苦労話」といった内容もあります。要は、ユーザの視点に立った文書ということです。我々のお客様は基本的に我々と同じ仕事をしているはずですので、その視点に立って、我々が苦労したことやうまくいった経験を、事例として公開しているのです。

――ケーススタディを作るに当たって気をつけていることはありますか。

廣崎:必ず数字でメリットを出すということです。削減効果や生産性向上といったメリットを、数字で表します。これによって、お客様が似たような取り組みをした場合にどの程度の削減効果が期待できるのかの目安となりますし、削減効果を算定するためにどのような指標をとったらいいのかという参考にしてもらえる資料になっています。

――これまで社内向けコミュニケーションで培ったノウハウを基に、自社製品のファーストユーザとしての導入事例を紹介しているということですね。それは、企業のIT部門の方にとってはかなり参考になるものと想像できますね。

「Cisco on Cisco」はこちら
http://www.cisco.com/web/JP/ciscoitatwork/index.html