中堅中小企業におけるユニファイドコミュニケーション活用最新事情

伊嶋 謙二 株式会社ノークリサーチ 代表取締役社長 伊嶋 謙二
国内大手の調査会社を経て、1998年にノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査、コンサルティングを展開。特にSMB(中堅中小)企業のIT導入実態分析やミッドレンジのITシステム市場調査を得意としている。また日経BP社などの専門誌、日経ITpro、ITmediaなどのWebサイトにおいて、SMB市場について独自のアナリスト視点で、意欲的に執筆活動を行っている。2007年には中堅中小企業のIT担当者向けQ&Aサイト「シス蔵」をテクネット社と立ち上げた。

「ユニファイドコミュニケーション」という言葉をご存知だろうか?従来、音声(電話/IP電話)、テキスト(メール)、動画(ビデオ会議)といったように別々に提供されていたコミュニケーション手段を統一的に扱うためのソリューションのことである。

ユニファイドコミュニケーションは社内における情報交換を効率化する目的で利用されることが多い。そのため社員数や拠点数の多い大企業のみに適用されるソリューションであると思いがちである。だが、実際には中堅中小企業においてもユニファイドコミュニケーションを活用する事例が出てきており、今後の自社の競争力を維持する上で欠かせない手段となる可能性を持っている。ここでは中堅中小企業におけるユニファイドコミュニケーション活用についてユーザ実態を元にした最新情報と今後の展望についてレポートする。

本レポートでは中堅中小企業を年商規模に応じて以下の四つのクラスに分けている。

● 中堅Hクラス:年商300億〜500億円 ● 中堅Mクラス:年商100億〜300億円
● 中堅Lクラス: 年商50億〜100億円 ● 中小企業:年商5億〜 50億円

普及のための準備は整った

ユニファイドコミュニケーションには音声をIPネットワーク上でやりとりするIP電話や映像をやりとりするWeb会議システムなどが含まれる。これらを実現するためにはテキストでやりとりを行うメールなどと比較して、より広帯域なネットワーク環境が必要になる。そのため、ブロードバンド回線の普及はユニファイドコミュニケーション活用の必須条件であるといえる。

以下は中堅中小企業におけるブロードバンド回線によるインターネット接続環境の導入率に関する調査結果である。ブロードバンド回線におけるインターネット接続環境は中堅企業では9割、中小企業でも8割を超えている。これを踏まえると、ネットワーク環境の整備については中堅中小企業においてもユニファイドコミュニケーション活用に必要とされるレベルをクリアしているということができる。

図1 ブロードバンド回線によるインターネット接続環境導入率(%)

ユーザのIT投資意向や利用実態を踏まえると、今後中堅中小企業におけるユニファイドコミュニケーション活用は以下の三つのステップを踏んでいくと予想される。

ステップ1 ステップ2 ステップ3

顧客とのコミュニケーションにおける活用

さらに一歩進んだ段階になると、ユニファイドコミュニケーションを社内だけでなく、社外の顧客とのやりとりにおいても活用することになる。

欧米においては留守中に顧客から受けた電話については留守録された内容を「ボイスメール」という形で保存し、それを後で確認するという利用形態が一般的である。これは欧米のビジネスマンの多くが個々に直通電話(ダイヤルイン)を持っており、日本のように電話の取り次ぎは行われないという背景に起因する面が大きい。一方の日本では着信した電話はヒトが受け付ける習慣であり、要件自体は直接伝えずに再度連絡したり、折り返しの連絡を依頼するケースが多い。

こうした文化の違いから、顧客とのコミュニケーションにおけるユニファイドコミュニケーション適用のスタイルは欧米のそれとは大きく異なってくると予想される。ボイスメールや音声自動応答(IVR)による転送処理といった機械的なソリューションは日本の中堅中小企業の商習慣にはなじまないであろう。

ここで重要になるのはモバイルとの連携である。個々の社員に業務用の携帯電話を所持させる企業も増えてきている。すると、必然的に顧客とのコミュニケーションの多くを携帯電話で行うことになる。そこでモバイルでの利用シーンを意識したユニファイドコミュニケーションがキーポイントとなってくるわけである。例えば、携帯電話で顧客へ電話する際に発信元番号を自社の共通番号に設定しておくなどが考えられる。こうしておけば、仮に担当の営業マンの電話に繋がらない場合でも自動的に社内外の他の社員へ電話を引き継ぐことができる。来年以降利用が本格化するであろうNGNの活用も視野に入れれば、さらに便利なモバイルとユニファイドコミュニケーションとの融合にも期待できる。


ステップ2へ

ユニファイドコミュニケーションを今から理解しておくことが重要

現時点での中堅中小企業におけるユニファイドコミュニケーション活用はステップ1が始まったばかりの段階である。しかし、
● IP電話やWeb会議システムを使わず、コストの掛かる足を運んでのミーティングを続けていたら…
● インスタントメッセージングを使わず、全てのやりとりを無理やりメールでカバーしていたら…
● 人手による電話取り次ぎに頼っていて、問い合わせの度に顧客に二度手間をかけている状態だったら…
といったことを考えてみると、ユニファイドコミュニケーションを活用するかどうかによって、競争力に大きな差がつくであろうことは想像に堅くない。こうした背景を踏まえて、今のうちからユニファイドコミュニケーションの可能性を理解しておくことが非常に重要であるといえるだろう。