「和民」で広く知られる外食事業を核に、介護、高齢者向け宅配、農業、環境など幅広い分野でビジネスを展開するワタミ株式会社(以下、ワタミ)。「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」というグループスローガンに示される通り、その経営は「人」を中心に据えたものとなっています。コミュニケーションを最重要視する同社ですが、これを支援する IT の導入にあたっては慎重なステップを踏んできました。そして現在では、テレビ会議システムなどの仕組みを取り入れ、社内コミュニケーションに活用しています。
今回は、代表取締役会長・CEO の渡
美樹氏と、IT 部門を統括するシステムソリューショングループ グループ長の小西淳一氏に、ワタミの社内コミュニケーションについて、また、これを支える情報テクノロジー活用についてお話をうかがいました。
企業経営者の一番大事な仕事は、「社員に理念を伝え、社内に浸透させていくこと」だと考えています。企業は、理念、つまり思いをカタチにしていくための存在だからです。どんな思いをカタチにしていきたいのか、それを社員と共有するために、私は、ありとあらゆる機会を通じてコミュニケーションを取り、メッセージを伝えてきました。
私のコミュニケーションスタイルは、基本的にフェイストゥフェイスです。相手の顔を見ながら同じ空気感の中でメッセージを伝えることを大切にしています。和民が最初の 1 店舗の時から、2 店舗、3 店舗と増えても、直接会って話をするスタイルを変えませんでした。30 店舗を超えると、月に 1 度、一般社員、店長、エリアマネジャークラスという立場に分け、それぞれの部署や役割に応じた形で朝 7 時から徹底的にコミュニケーションを取りました。企業規模が拡大してからも基本的な仕組みは同じです。たとえば、エリアマネジャーが 10 店舗を担当している場合、本部での営業会議後、その日のうちに 10 店舗の店長を集めコミュニケーションを取ります。私からのメッセージが、エリアマネジャーを通じて各店長に直接伝えられることになり、それがまた店舗スタッフやアルバイトメンバーに伝わっていきます。
ある意味で「泥臭い」このようなカタチのコミュニケーションは、非常に手間がかかります。メッセージを受ける側だけでなく、発信するこちら側も非常に気力を使います。楽な手段は他にたくさんあるでしょう。しかし、私は楽をして逃げてしまったらいけないと考えています。
直接会って話をするだけでは機会や回数が足りないと感じるようになると、手紙によるやり取りも行いました。 社員数が 300 人前後になるまで、皆から手紙で課題などを受け取り、すべてに返事を書く形を繰り返していま した。社員の家族に対してもメッセージを送ります。たとえば、父の日、母の日には、私から 4,000 人いる社員 のご家族全員に花と手書きメッセージを送っています。同じく、子どもの日や入学のタイミング、さらには結婚式 など、あらゆる機会にメッセージを届けています。アルバイトの皆さんには、ビデオレターで月に一度メッセージ を伝えています。現在、ワタミグループはアルバイトさんを含めて 25,000 人を超える規模となっていますが、 全アルバイトさんが私のメッセージをビデオレターで視聴します。これらに加え、年に 1 度、北海道から九州 に至るまで全社員を集めて創業記念祭を開催し、その場でもメッセージを伝えています。
なぜこのように、さまざまな機会を使ってコミュニケーションを取るかと言えば、やり続けることでしか思いは伝わらないからです。社員の価値観はすべて同じではありません。人間ですから時には楽をしたいと思いますし、気持ちが緩むこともあるでしょう。そんな中で、繰り返し、繰り返しメッセージを伝えることで、少しずつ思いを浸透させていくのです。
IT については、「人が行う仕事を補完するもの」だと考えています。
ワタミの外食事業では、エリアマネジャーが集まって 1 週間に一度、営業会議を開催します。その際、北海道、九州の拠点との間では、テレビ会議システムを使って打ち合わせを行います。本来であれば、直接本社に集まる形が好ましいのですが、時間や費用と効果の兼ね合いもあり、IT を活用したテレビ会議を使います。
IT 導入の判断にあたって、私は「存在対効果」という尺度を設けています。これは私が創作した造語ですが、1 日 24 時間という制約、3 次元の世界という制約の中で、私が最もたくさんの「ありがとう」を集めるためにどうすべきか、直接会う方が良いのか、何らかの仕組みを使った方が良いのか、使う必要はないのか、という自分の存在に対する効果を図るための判断基準です。テレビ会議やビデオレターも、この存在対効果を考えた上で、IT を使った方がいいと判断して導入したものです。時間、費用と効果を考え、たとえば、毎回ではなく 2 回に 1 回はビデオ会議を使う方が効果的だと判断するのです。
25 年間におよぶ私の経営者生活というのは、どうやって社内外とコミュニケーションを取るか、どうやって自分の時間対効果を最大限に高めるかを追求し、努力し続けた 25 年間と言えるでしょう。そして、これらすべての行為は、最大限の「ありがとう」を集めるために向けられたものなのです。
今後、ワタミのビジネスは、北海道、九州だけでなく国外までもその範囲を広げていきます。IT の進化によって、私が実際にそこに存在し、しゃべっているような映像が見えるような仕組みがあれば、それは大きな効果になると思います。このような空気感までも伝えられる IT の登場に期待しています。
ワタミでは、すべての事業で「人」が中心となります。
このため、コミュニケーションは非常に重要で、たとえ高額な出張費がかかる遠隔地の場合でも、原則は直接会って面と向った形で話し合いを行っています。しかし、一方では、コスト削減や緊急を要するプロジェクトにおける業務の円滑化も求められています。このような面で、IT 化、特にユニファイド コミュニケーションの活用が必要になると考えています。
既に使用しているユニファイド コミュニケーションの仕組みとしては、テレビ会議システムを挙げることができます。九州の拠点と関東の工場の間、本部と北海道の拠点の間で使用しており、導入効果としては、出張費の大幅な削減を挙げることができます。さらに、会議における「臨場感」が高まったという効果もあります。参加者がお互いの顔を見ながらコミュニケーションを行えるため、同じ場所で会議しているような意識を持つことができるのです。たとえば、「相手がこんなに困っている」という雰囲気がダイレクトに伝わることで、文字や言葉だけでは伝達ができなかった微妙な内容を伝達、共有することができるようになりました。これは非常に大きな効果だと思っています。
今後展開するビジネスにおいても、ユニファイド コミュニケーションを活用すべき業務要件は多々発生してくると考えています。
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ワタミ株式会社 システムソリューショングループ グループ長 小西 淳一 氏 |
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