この章では、Web Cache Communication Protocol(WCCP)を使用し、キャッシュ エンジン(Cisco Cache Engine 550 などの Web キャッシュ)にトラフィックをリダイレクションするように、Catalyst 3550 スイッチを設定する方法について説明します。WCCP はシスコシステムズが開発したコンテンツルーティング技術で、ご使用のネットワーク インフラストラクチャにキャッシュ エンジンを統合するために使用できます。キャッシュ エンジンは頻繁にアクセスされるコンテンツをトランスペアレントに格納し、同じコンテンツに関する連続した要求を実行します。この結果、Web サーバから同一コンテンツを繰り返し伝送する必要がなくなります。キャッシュ エンジンを使用すると、コンテンツ配信時間が短縮され、コンテンツのスケーラビリティも可用性が最大化されます。サービス プロバイダー ネットワークの場合は Points Of Presence(POP)に、エンタープライズ ネットワークの場合は地域サイトおよび小規模な支店に、WCCP およびキャッシュ エンジン ソリューションを展開できます。
この機能を使用するには、IP サービス イメージ(以前は Enhanced Multilayer Software Image[EMI; 拡張マルチレイヤ ソフトウェア イメージ])をスイッチにインストールする必要があります。
WCCP の概要
WCCPおよびシスコ キャッシュ エンジン(またはWCCPを実行する他のキャッシュ)は、ネットワーク内のWebトラフィック パターンをローカライズし、コンテンツ要求をローカルに実行できるようにします。
WCCPを使用すると、サポートされているシスコ製ルータおよびスイッチからコンテンツ要求をトランスペアレントにリダイレクションできます。トランスペアレントなリダイレクションにより、ユーザは Web プロキシを使用するためにブラウザを設定する必要がなくなり、代わりにコンテンツを要求するターゲット URL を使用できます。要求は自動的にキャッシュ エンジンにリダイレクトされます。「 トランスペアレント 」という用語は、要求されたファイル(Web ページなど)が指定された本来のサーバからではなく、キャッシュ エンジンから送信されたものであるという区別が、エンド ユーザにはつかないことを意味します。
キャッシュ エンジンは要求を受け取ると、独自のローカル キャッシュ内で処理を試行します。要求された情報が存在しない場合、キャッシュ エンジンは別の要求をエンド サーバに送信し、要求された情報を取得します。要求された情報を受信すると、キャッシュ エンジンはその情報を要求元のクライアントに転送し、以降の要求に備えてキャッシュにも格納します。
このソフトウェア リリースは、WCCPバージョン2(WCCPv2)のみをサポートします。WCCPv2機能のサブセットのみがサポートされています。詳細については、 サポートされない WCCPv2 機能 を参照してください。
WCCPv2 を使用すると、複数のルータまたはスイッチでキャッシュ エンジン クラスタ(一連のキャッシュ エンジン)を処理できます。ただし、このリリースでクラスタを処理できるのは Catalyst 3550 スイッチのみです( 図34-1 を参照)。コンテンツはキャッシュ エンジンで重複しません。
図34-1 シスコ キャッシュ エンジンおよび WCCPv2 ネットワークの設定
WCCPメッセージ交換
- 1. キャッシュ エンジンは、WCCP を使用して WCCP 対応スイッチに IP アドレスを送信し、 Here I am メッセージを通して自己の存在を伝えます。スイッチおよびキャッシュ エンジンは UDP ポート 2048 に基づき、制御チャネルを通して相互に通信します。
- 2. WCCP対応スイッチはキャッシュ エンジンIP情報を使用し、クラスタ ビュー(クラスタ内のキャッシュの一覧)を作成します。このビューは I see you メッセージを通してクラスタ内の各キャッシュ エンジンに送信され、すべてのキャッシュ エンジンにお互いを認識させます。クラスタでのメンバーシップが特定の期間同じままの場合、安定したビューが確立されます。
- 3. 安定したビューが確立されると、クラスタ内で最小の IP アドレスを持つキャッシュ エンジンが指定キャッシュ エンジンとして選択されます。
WCCPネゴシエーション
WCCP プロトコル メッセージの交換で、指定キャッシュ エンジンおよび WCCP 対応スイッチは次の項目をネゴシエートします。
- ・ 転送方法(スイッチがキャッシュ エンジンにパケットを転送する方法)。スイッチはパケットの宛先 MAC アドレスをターゲット キャッシュ エンジンの MAC アドレスに置き換え、レイヤ 2 ヘッダーを書き換えます。そのあと、パケットをキャッシュ エンジンに転送します。この転送方法では、ターゲット キャッシュ エンジンをレイヤ 2 でスイッチに直接接続する必要があります。
- ・ 割り当て方法(クラスタ内のキャッシュ エンジン間でパケットを配信する方法)。スイッチは宛先 IP アドレスの最下位ビットの一部を使用し、リダイレクトされたパケットを受信するキャッシュ エンジンを判別します。使用されるビット数は、キャッシュ エンジンの数に基づいて決まります。キャッシュ エンジン数が 2 の累乗(1、2、4 など)に等しい場合、トラフィックはキャッシュ エンジン間で均等に分散されます(ロードバランシング)。
スイッチは、 WCCP V2.0 Internet Draft に記載されているマスク割り当て方法をサポートしません。
- ・ パケットリターン方法(パケットを標準転送によってキャッシュ エンジンからスイッチに戻す方法)。通常、キャッシュ エンジンがパケットを拒否し、パケットリターン機能を開始するのは、次の理由によります。
キャッシュ エンジンはパケットを WCCP 対応スイッチに戻し、キャッシュ エンジンが存在しないかのように Web サーバに転送します。キャッシュ エンジンは再接続試行を代行受信しません。この方法により、キャッシュ エンジンはキャッシュ エンジンへのパケットのリダイレクトを効率的に取り消し、バイパス フローを作成します。スイッチはGeneric-Route Encapsulation(GRE;総称ルーティング カプセル化)トンネルを通して戻されたパケットを受信します。スイッチの CPU はCisco Express Forwarding(CEF)を使用し、これらのパケットをターゲットWebサーバに送信します。要求された情報にサーバが応答すると、スイッチは標準のレイヤ 3 転送を使用して、情報を 要求元クライアント に戻します。
MD5セキュリティ
WCCPv2が各プロトコル メッセージに提供するオプションのセキュリティ コンポーネントを使用すると、スイッチはスイッチとキャッシュ エンジン間のメッセージにMD5認証を使用できます。認証されないメッセージは(スイッチの認証機能がイネーブルの場合)、スイッチによって廃棄されます。セキュリティ機能をイネーブルにするには、 ip wccp web-cache password password グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。パスワード ストリングと MD5 値が組み合わされ、スイッチとキャッシュ エンジン間の接続に関するセキュリティが確保されます。各キャッシュ エンジンで同じパスワードを設定する必要があります。
パケット リダイレクション
WCCP が設定されたスイッチは、クライアントから受信したすべての HTTP TCP ポート 80 パケットをキャッシュ エンジンに転送します。ただし、次に示すパケットはリダイレクトされません。
- ・ キャッシュ エンジンから送信され、Web サーバに送られるパケット
- ・ キャッシュ エンジンから送信され、クライアントに送られるパケット
- ・ キャッシュ エンジンから戻された、または拒否されたパケット。これらのパケットは Web サーバに送信されます。
サポートされない WCCPv2 機能
次に示すWCCPv2機能は、このソフトウェア リリースではサポートされません。
- ・ WCCP サービス番号。設定するには、 ip wccp [ service-number ] グローバル コンフィギュレーション コマンドおよびインターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。これらのコマンドはサポートされません。
このソフトウェア リリースでサポートされるのは、TCP ポート 80 のキャッシングのみです。
- ・ 発信インターフェイスでのパケット リダイレクション。設定するには、 ip wccp redirect out インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。このコマンドはサポートされません。
このソフトウェア リリースでサポートされるのは、着信インターフェイスでのパケット リダイレクションのみです。
このソフトウェア リリースがサポートするのは、1 台のスイッチと複数のキャッシュ エンジンの接続のみです。
- ・ WCCPのマルチキャスト。 ip wccp web-cache group-address および ip wccp web-cache group listen グローバル コンフィギュレーション コマンドはサポートされません。
- ・ WCCPアクセス リスト。 ip wccp web-cache redirect-list および ip wccp web-cache group-list グローバル コンフィギュレーション コマンドはサポートされません。
- ・ WCCP関連カウンタの統計情報。カウンタの統計情報は提供されません。この情報は show ip wccp web-cache view イネーブル EXEC コマンドの出力で 0 と表示されます。
WCCP の設定
ここでは、スイッチでWCCPを設定する手順について説明します。
WCCP のデフォルト設定
表34-1 に、WCCP のデフォルト設定を示します。
WCCP 設定時の注意事項
スイッチに WCCP を設定する前に、次に示す設定時の注意事項に従ってください。
- ・ GRE 用のキャッシュ エンジンを設定しないでください。GRE を使用するトラフィック転送はサポートされていません。詳細については、キャッシュ エンジンに付属のマニュアルを参照してください。
- ・ キャッシュ エンジンとスイッチをレイヤ 2 で直接接続し、スイッチが WCCP リダイレクションのレイヤ 2 書き換えを実行できるようにします。Cisco Cache Engineでは、ファスト イーサネット インターフェイスを使用して直接接続する必要があります。接続がレイヤ 2 の直接接続の場合は、10/100/1000ポートを使用してスイッチをキャッシュ エンジンに接続することもできます。
- ・ 最大32個のキャッシュ エンジンを、1台のCatalyst 3550スイッチに接続します。
- ・ 複数のキャッシュ エンジンには、1台のCatalyst 3550スイッチのみ接続します。複数の Catalyst 3550 スイッチを、複数のキャッシュ エンジンに接続しないでください。
- ・ Webクライアント、キャッシュ エンジン、Webサーバに接続されたスイッチ インターフェイスを、レイヤ3インターフェイス(ルーテッド ポートおよびSwitch Virtual Interface [SVI; スイッチ仮想インターフェイス ])として設定します。HTTPパケット リダイレクションを機能させるには、サーバ、キャッシュ エンジン、クライアントを異なるサブネットに配置する必要があります。
- ・ クライアント、キャッシュ エンジン、または Web サーバを同じスイッチ インターフェイスに設定しないでください。
- ・ Customer Edge(CE;カスタマー エッジ)デバイスにWCCPとmultiple VPN Routing/Forwarding(multi-VRF)インスタンスの両方を備えたスイッチを設定しないでください。
-
・ sdm prefer extended-match、sdm prefer access extended-match、または sdm prefer routing
extended-match グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用し、スイッチが 144 ビット レイヤ 3 Ternary CAM(TCAM)をサポートできるように、Switch Database Management(SDM)テンプレートを変更します。SDM テンプレートの詳細については、 ユーザが選択した機能に対するシステム リソースの最適化 を参照してください。 - ・ 同一のスイッチ インターフェイス上で WCCP とPolicy-Based Routing(PBR;ポリシーベース ルーティング)を設定しないでください。
Web キャッシュ サービスのイネーブル化、パスワードの設定、クライアントから受信したトラフィックのリダイレクション
MD5 パスワード セキュリティでは、スイッチおよびキャッシュ エンジンに同じパスワードを設定する必要があります。各キャッシュ エンジンまたはスイッチは、WCCP メッセージ ヘッダーを検証した直後に、受信した WCCP パケット内のセキュリティ コンポーネントを認証します。認証に失敗したパケットは廃棄されます。
WCCPパケット リダイレクションを機能させるには、クライアントに接続されたスイッチ インターフェイスを着信HTTPパケットにリダイレクトするよう設定する必要があります。
次の手順では、ルーテッド ポートにこれらの機能を設定する方法を示します。SVI にこれらの機能を設定する場合は、この手順に従って設定例を参照してください。
Web キャッシュ サービスをイネーブルにする場合、パスワードを設定する場合、ルーテッド インターフェイスを設定する場合、クライアントから受信した着信パケットをキャッシュ エンジンにリダイレクトする場合は、イネーブル EXEC モードで次の手順を実行します。この手順は必須です。
Web キャッシュ サービスをディセーブルにするには、 no ip wccp web-cache グローバル コンフィギュレーション コマンドを使用します。着信パケット リダイレクションをディセーブルにするには、 no ip wccp web-cache redirect in インターフェイス コンフィギュレーション コマンドを使用します。
次に、ルーテッド インターフェイスを設定し、Web キャッシュ サービスをイネーブルにする例を示します。FastEthernet ポート 1をキャッシュ エンジンに接続し、IPアドレスが172.20.10.30であるルーテッド ポートとして設定してから、再度イネーブルにします。GigabitEthernet ポート 1 をインターネット経由で Web サーバに接続し、IP アドレスが 175.20.20.10 であるルーテッド ポートとして設定してから、再度イネーブルにします。FastEthernet ポート 2 〜 5 をクライアントに接続し、IP アドレスが 175.20.30.20、175.20.40.30、175.20.50.40、175.20.60.50 であるルーテッド ポートとして設定します。 スイッチは、クライアント インターフェイスから受信した HTTP パケットを、キャッシュ エンジンにリダイレクトします。
Switch(config)# ip wccp web-cache
Switch(config)# interface fastethernet0/1
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# ip address 172.20.10.30 255.255.255.0
Switch(config-if)# no shutdown
Switch(config)# interface gigabitethernet0/1
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# ip address 175.20.20.10 255.255.255.0
Switch(config-if)# no shutdown
Switch(config)# interface fastethernet0/2
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# ip address 175.20.30.20 255.255.255.0
Switch(config-if)# no shutdown
Switch(config-if)# ip wccp web-cache redirect in
Switch(config)# interface fastethernet0/3
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# ip address 175.20.40.30 255.255.255.0
Switch(config-if)# no shutdown
Switch(config-if)# ip wccp web-cache redirect in
Switch(config)# interface fastethernet0/4
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# ip address 175.20.50.40 255.255.255.0
Switch(config-if)# no shutdown
Switch(config-if)# ip wccp web-cache redirect in
Switch(config)# interface fastethernet0/5
Switch(config-if)# no switchport
Switch(config-if)# ip address 175.20.60.50 255.255.255.0
Switch(config-if)# no shutdown
Switch(config-if)# ip wccp web-cache redirect in
次に、SVI を設定し、Web キャッシュ サービスをイネーブルにする例を示します。VLAN 299を作成し、IPアドレス175.20.20.10に設定します。GigabitEthernet ポート 1をインターネット経由でWebサーバに接続し、VLAN 299のアクセス ポートとして設定します。VLAN 300を作成し、IPアドレス172.20.10.30に設定します。FastEthernet ポート 1をキャッシュ エンジンに接続し、VLAN 300のアクセス ポートとして設定します。VLAN 301を作成し、IPアドレス175.20.30.50に設定します。クライアントに接続されているFastEthernet ポート 2〜5を、VLAN 301のアクセス ポートとして設定します。スイッチはクライアント インターフェイスから受信したHTTPパケットを、キャッシュ エンジンにリダイレクトします。
Switch(config)# ip wccp web-cache
Switch(config)# interface vlan 299
Switch(config-if)# ip address 175.20.20.10 255.255.255.0
Switch(config)# interface gigabitethernet0/1
Switch(config-if)# switchport mode access
Switch(config-if)# switchport access vlan 299
Switch(config)# interface vlan 300
Switch(config-if)# ip address 172.20.10.30 255.255.255.0
Switch(config)# interface fastethernet0/1
Switch(config-if)# switchport mode access
Switch(config-if)# switchport access vlan 300
Switch(config)# interface vlan 301
Switch(config-if)# ip address 175.20.30.20 255.255.255.0
Switch(config-if)# ip wccp web-cache redirect in
Switch(config)# interface range fastethernet0/2 - 5
Switch(config-if-range)# switchport mode access
Switch(config-if-range)# switchport access vlan 301
WCCP のモニタおよびメンテナンス
WCCP をモニタおよびメンテナンスするには、 表34-2 に示すイネーブル EXEC コマンドを 1 つ、または組み合わせて使用します。
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インターフェイスに設定されたすべての IP WCCP リダイレクション コマンドのステータスを表示します( Web Cache Redirect is enabled/disabled など)。 |
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