Enterprise Mobility 4.1 デザイン ガイド Cisco Validated Design I
VoWLAN の設計に関する推奨事項
VoWLAN の設計に関する推奨事項
発行日;2012/01/13 | ドキュメントご利用ガイド | ダウンロード ; この章pdf , ドキュメント全体pdf (PDF - 7MB) | フィードバック

目次

VoWLAN の設計に関する推奨事項

アンテナに関する考慮事項

AP アンテナの選択

アンテナの位置決め

ハンドセットアンテナ

チャネルの使用率

Dynamic Frequency Selection(DFS; 動的周波数選択)および AP の 802.11h 標準

5 GHz 帯域のチャネル

コール キャパシティ

AP コール キャパシティ

セルの境界の設計

デュアル バンド カバレッジ セル

送信電力の動的制御

ユーザにとってローカルな干渉源

VoWLAN の設計に関する推奨事項

この章では、Voice over WLAN(VoWLAN)ソリューションを展開する際の設計上の考慮事項について詳しく説明します。WLAN 固有の設定は、使用されている VoWLAN デバイスおよび WLAN の設計によって異なります。この章では、 第 3 章「WLAN 無線周波の設計に関する考慮事項」 で説明されている、VoWLAN の展開において一般に適用される主要な RF およびサイト調査に関する考慮事項についてより詳しく説明します。

アンテナに関する考慮事項

VoWLAN の多くのネットワーク要件は、アンテナの選択に至るまで、WLAN の計画全般にわたって影響を及ぼします。 アンテナに関する主な考慮事項は、次のとおりです。

アクセス ポイント(AP)アンテナの選択

アンテナの配置

ハンドセットアンテナの特性

AP アンテナの選択

音声アプリケーション用のダイバーシティ天井マウント アンテナをお勧めします。天井マウント アンテナは、すばやく簡単に設置できます。また、アンテナの放射部分をオープン スペースに配置するため、信号の伝搬と受信を最も効率的に行うことができます。すべてのアンテナを、金属などの高反射面から波長 1 ~ 2 に配置することをお勧めします。2.4 GHz ウェーブは 12.5 cm(4.92 インチ)で、5 GHz は 6 cm(2.36 インチ)です。 アンテナと反射面との間の 1 つまたは複数の波長を分離することにより、AP 無線では送信される電波の受信感度が向上し、無線送信時のヌルの生成を減らすことができます。 11g と 11a で使用されている Orthogonal Frequency Division Multiplexing(OFDM)により、リフレクション、ヌル、およびマルチパスに関する問題が軽減されます。ただし、アンテナを適切に配置し、適切なタイプのアンテナを使用すると、より良好な結果が得られます。天井タイルそのものが、天井の上部領域に伝送されカバレッジ領域に反射して戻ってくる信号の緩衝材となります。

アンテナのタイプおよびフォーム ファクタにはさまざまなものがありますが、あらゆる用途と場所に適したアンテナのタイプおよびアンテナ モジュールはありません。 各種アンテナ、および Cisco Aironet アンテナの製品番号の詳細は、『Cisco Aironet Antennas and Accessories Reference Guide』
http://www.cisco.com/en/US/products/hw/wireless/ps469/products_data_sheet09186a008008883b.html )を参照してください。

AP にアンテナを取り付けるときには、屋内の音声アプリケーション用の Cisco AIR-ANT5959(2.4 GHz 用)および ANT5145V-R(5 GHz 用)を使用することをお勧めします。これら 2 つのアンテナには次のような利点があります。

ロー ゲイン全方向性カバレッジおよびアンテナ ダイバーシティ

上方傾斜角の低減。床上へのカバレッジの拡散の可能性が低減され、天井タイルの上にあるエアー ダクトなどの金属物からのリフレクションが低減されます。

ほとんどの天井タイル上の T バーへの取り付けが容易

ハイ ゲイン アンテナは信号を水平平面に拡散させ、これにより、多くのノイズを拾う大規模セルが作成されます。 この結果、Signal-to-Noise Ratio(SNR; 信号対雑音比)が低くなり、パケット エラーの比率が高まります。SNR は次の 2 つの条件によって定義されます。

信号:ある無線から送信され、中断されずに他の無線が受信できる放射エネルギー。 すなわち、Wi-Fi では、送信無線によって、受信無線がデコード可能な 802.11 プロトコルのパケットが送信されます。

ノイズ:受信無線の周波数範囲内の送信エネルギーのうち、その無線でデコードできないもの。

プロトコル パケットとバックグラウンド ノイズ間のエネルギー差が大きいほど、プロトコル パケットを適切に受信することができ、パケット エラー レートおよびビット エラー レートが減少します。カバレッジ領域の設計では、複数のチャネルを使用して、高いコール キャパシティを維持したままでの最も低いパケット エラー レートの作成が行われます。

ハイ ゲイン アンテナを使用すると、カバレッジ領域が増えるため、Wi-Fi チャネル上のコール数も減少します。 音声の場合、人間の頭と体が 5dB の信号を減衰させるため、壁面マウント パッチよりも天井マウント アンテナが推奨されます(図9-1 を参照)。 天井マウント アンテナは、たいていの壁面マウント アンテナよりも人間の頭と体による減衰を防ぐように、適切に配置されます。

図9-1 頭と体による減衰

 

アンテナの位置決め

天井マウント アンテナでは、通常、携帯電話へのより適切な信号パスが使用されます。頭などの障害物による減衰があるため、推奨カバレッジ セル サイズでは信号損失が考慮されます。 アンテナのゲインは受信と送信の両方で同程度になることを理解しておくことが大切です。 アンテナ ゲインは、送信電力の増加を表すものではありません。送信電力を発生させるのは無線です。 アンテナは、パッシブ デバイスにすぎません。 ゲインは、無線信号の焦点を、ある方向、平面、およびビーム幅に合わせることで導出されます。それは、懐中電灯のリフレクタによって、電球から放射される光の焦点が合わせられるのと同じです。

WLAN RF 計画の詳細は、 第 3 章「WLAN 無線周波の設計に関する考慮事項」 を参照してください。

ハンドセットアンテナ

Cisco Unified Wireless IP Phone 7920 および 7921G には、電話の本体から伸びるアンテナが付いています。 電話の持ち方は、手による信号減衰にほとんど影響しません。

電話本体にアンテナが内蔵されている場合は、ユーザの電話の持ち方によって 4dB の信号減衰が起こることがあります。手でアンテナを覆って頭で電話を支えた場合には、9dB の信号減衰が起こることがあります。 屋内での展開の場合、一般的に、信号が 9dB 減衰するごとにカバレッジ領域は半減します。図9-1 は、頭で支えた場合のハンドセットからの放射電力の違いの例を示しています。

2.4 GHz スペクトラムを使用するハンドセットでは、通常、ダイバーシティ アンテナを使用しません。2.4 GHz 波長はおよそ 5 インチであり、実際にアンテナ ダイバーシティを実装して信号の受信感度を向上させることはできないからです。 そのため、AP においてのみリンクの質を高めることができます。 電話と AP 間のリンクの質を最適にするには、AP がデフォルト設定で動作する必要があります。デフォルト設定では、ダイバーシティ アンテナとダイバーシティを有効にできます。

Cisco 7921G などの 802.11a 端末では、11a 無線用のダイバーシティ アンテナ ソリューションが使用されます。

チャネルの使用率

802.11、802.11b、および 802.11g のいずれの規格でも、2.4 GHz 帯域が使用されます。 これらすべての規格で、同じ帯域を同時に使用する必要があるため、オーバーヘッドが増加し、チャネル スループットが減少します。 多くのサイトには、すでに 2.4 GHz Wi-Fi 帯域を使用している製品があります。 また、そのほかにも多数の製品が、Wi-Fi で使用されるのと同じ 2.4 GHz 帯域を使用しています。 たとえば、Bluetooth 機器、コードレス電話、ビデオ ゲーム コントローラ、監視カメラ、電子レンジなどです。 2.4 GHz 帯域の輻輳やチャネル割り当ての制約を考えると、新たに VoWLAN を展開するときには、5 GHz Wi-Fi 帯域の使用を検討する必要があります。 5 GHz で使用可能なチャネルは、ほとんどのサイトで自由に使用できます(図9-2 を参照)。VoWLAN トラフィックに W53 チャネルを使用する場合、レーダーが存在してはなりません。 このため、いずれかの新しいサイトで追加テストを実施し、W53 のチャネルを設定でブロックすべきかどうかを確認することをお勧めします。 このテストを実施する理由は、AP が標準使用時にレーダーを検知した場合、その AP は 10 秒以内にチャネルを離れなければならないからです。

図9-2 オフィスでの 2.4 GHz と 5 GHz の標準チャネル使用率

 

Cisco Unified Wireless Network をインストールする前に、チャネル干渉および AirMagnet、Wild Packets、Cognio などのツールの使用に関して、サイトをテストする必要があります。Wireless Control System(WCS)AP オンデマンド統計ページには、次の項目についてのスペクトラム レビューが記載されています。

チャネル別ノイズ

チャネル別干渉

クライアント数と RSSI との比較

クライアント数と SNR との比較

チャネル レーダー探知の時間変化

Dynamic Frequency Selection(DFS; 動的周波数選択)および AP の 802.11h 標準

米国の Federal Communications Commission(FCC)、European Telecommunications Standards Institute(ETSI)および日本の総務省などの監督機関は、無線周波数の使用に関する標準を定めています。5 GHz 帯域の一部は、現在(過去においても)、気象レーダーなどのレーダーで使用されています。 ほとんどの 5 GHz レーダー システムでは、一般に波長の短い高周波数を使用していますが、一部の WiFi W53 帯域を重複して使用するシステムも存在します。 2007 年 1 月に、総務省は 5.6 GHz 帯域(W56)を無線 LAN に開放しました。 これらの周波数が新たに使用可能になったことにより、「干渉のない」ように AP の設定を管理することが必要になりました。AP のレーダー パルスを定期的に監視し(通常、軍事、衛星、気象観測所から)、レーダーが探知された場合は自動的に「クリーン」チャネルに切り替える必要があります。

レーダーが探知された場合、システムで次のことを実行する必要があります。

200 ミリ秒以内にパケット伝送を中止

10 秒以内に制御伝送を中止

30 分間、チャネル上での伝送を回避

伝送前に 60 秒間、新規チャネルをスキャン

W53 のレーダー要件では、音声アプリケーションを稼動させる前にレーダーのテストを実施することが求められています。これは、レーダー回避に必要な動作が音声コールの質に影響する可能性があるためです。 Cognio Spectrum Expert も、レーダーの存在をテストするためのすぐれたツールです。テスト中にレーダーが探知された場合、該当するチャネルを使用しないように AP を設定できます。

5 GHz 帯域のチャネル

図9-3 は、日本での 802.11a のチャネル割り当てを示しています。 DFS 要件には、従来の 8 つの W52 および W53 チャネル(36 ~ 64)と、11 の新しい W56 チャネル(100 ~ 140)が含まれます。5 GHz 帯域には現在 19 のチャネルがあります。これらは重複しないチャネルであり、すべて同じ場所に配置できます。2.4 GHz には重複しないチャネルは 3 つしかありません。1 つのカバレッジ領域に共存配置チャネルを許容する設計により、カバレッジ領域で取得可能なコール数が集約されます。

図9-3 802.11a チャネル割り当て

 

日本で割り当てられているチャンネルとアクセスポイントの対応表は以下のURLを参考にしてください。

ワイヤレスLAN適合状況
http://www.cisco.com/japanese/warp/public/3/jp/product/hs/wireless/airo1500/prodlit/pdf/wlancs.pdf

図9-4 に示すように、チャネルを基準とするチャネルベースの設計を単一フロアに実装できます。 複数フロア設計では、フロア間でチャネルを分離して、チャネル相互の干渉を減少させることができます。

図9-4 単一フロアのチャネル設計

 

図9-5 は、垂直チャネル分離を示しています。

図9-5 垂直チャネル分離

 

コール キャパシティ

Wi-Fi チャネルのコール数は、多くの要因によって制限されます。 まず、AP および VoWLAN クライアントによって使用されるメディアは、RF スペクトラムです。RF スペクトラムは、シールド ツイストペア CAT 5 ケーブルなどの電磁干渉からシールドできません。 Wi-Fi でセグメンテーションに最も近いのは、チャネル分離です。 この、802.11 のオープンな共有メディアは、高パケット損失の原因となることがあります。 このようなパケット損失の大部分には、802.11 フレームを再送することで対処しますが、その結果としてジッタが発生します。図9-6 は、パケット損失の関係を Mean Opinion Score(MOS; 平均オピニオン評点)として示しています。

図9-6 実際のパケット損失

 

802.11a では、802.11g と同様、最も低いデータ レート(6 Mbps)によって最も高いカバレッジ範囲が実現します。同じ電力レベルの場合、最も低いパケット エラーも 6 Mbps です。

許容可能な音声のカバレッジ領域は、5% 以下のパケット エラー レートが維持される領域です。MOS スコアは次のようにランク付けされています。

4.4:最高 G.711 MOS スコア

4.3 ~ 4.0:「非常に満足」から「満足」

4.0 ~ 3.6:「一部のユーザにとって満足」

図9-6 は、5% のパケット エラー レートによって MOS が低下し、スピーチの質が「一部のユーザにとって満足できる」レベルまで低下した例を示しています。

電話のカバレッジ領域の境界は、そのカバレッジ領域の MOS が「非常に満足である」というカテゴリに当てはまる場所です。 この章では、カバレッジ領域の境界をセルの境界と呼びます。 複数の電話クライアントやデータ クライアントどうしの干渉、相互チャネルの干渉、その他の説明のつかない干渉が発生する可能性があるため、音声に対しては、パケット エラー レートが 1% のセルの境界が必要です。セルの境界およびカバレッジ設計については、この章の他のセクションで詳しく定義されています。

802.11 および 802.11b で従来の 2.4 GHz Wi-Fi クライアントをサポートする必要がない場合は、1、2、5.5、および 11 のレートを無効にすることをお勧めします。これらのレートが無効な場合、1 つ以上の 802.11g データ レートを「必須」に設定する必要があります。データ レート 6 は通常「必須」に設定することが推奨されるデータ レートですが、これはセル サイズ設計要件によって異なり、高ビット レートを使用する必要がある場合があります。可能であれば、802.11b/g ネットワークよりも 802.11g 専用ネットワークが推奨されます。ほとんどのデータ クライアントおよび電話クライアントは、AP からビーコンとプローブ応答でアドバタイズされたデータ レートを認識します。したがって、クライアントは、AP によってアドバタイズされた「必須」データ レートで、管理、制御、マルチキャスト、およびブロードキャスト パケットを送信します。クライアントは、ユニキャスト パケットを AP によってアドバタイズされた任意のデータ レートで送信できます。一般に、これらのユニキャスト パケットは、AP とクライアント間のリンクに対して最も信頼性の高いデータ レートを提供できるデータ レートで送信されます。AP は、クライアント リンクごとに固有のデータ レートでユニキャスト パケットを送信できます。

パケットの受信において、SNR を考慮することは重要です。無線受信器は、AP または電話機のいずれかです。SNR はリンクの両方の無線で同じではありません。SNR とマルチパス干渉は、AP およびカバレッジ領域の境界で考慮する必要があります。パス損失は、リンクの両方の終端で同じであると想定できます。

音声アプリケーションに対しては、実際の電話機を使用して、希望するデータ レートでセルの境界を設定することをお勧めします。 Wi-Fi アプリケーションにおいて AP と電話間で送信される音声パケットは、通常、標準サイズ 236 バイトのユニキャスト RTP G711 パケットです。Real-Time Transport Protocol(RTP)パケットは UDP および IP プロトコルに基づいているため、RTP はコネクションレスです。 通話の信号強度、SNR、データ レート、およびエラー レートは、スタンドアロン AP または Lightweight Access Point Protocol(LWAPP; Lightweight アクセス ポイント プロトコル)コントローラ上の AP 統計から確認できます。 図9-7 および図9-8 は、802.11g および 802.11a の電話クライアントのセルの境界における dBm 値のサンプルを示しています。 図9-9 は、コール ストリーム統計を示しています。ストリーム メトリックは、音声メトリックを有効にした後に WCS で表示できます。メトリックを有効にするパスは、Configure > Controller > ipaddress > 802.11bg > Voice Parameters > Enable Voice Metrics です。

図9-7 11g クライアント統計

 

図9-8 11a クライアント統計

 

図9-9 WLC コール メトリック

 

図9-10 は、デコードされた RTP パケットを示しています。 このパケットは、7960 電話から発信されています。 Over-the-Air QoS マーキングは、QoS ベースライン マーキング 5 から、802.11e 仕様に準拠するユーザ優先度 6 に変更されています。Cisco 7920 および 7921 電話のコール統計は、電話に表示することも、電話の IP アドレスを使用して電話をブラウズして確認することもできます。 実際の電話でテストしてセルの境界を特定した後は、より自動化されたツールを使用してこれらの数値を適合させ、サイトのカバレッジ設計を完了できます。

図9-10 VoWLAN キャプチャのサンプル

 

信号レベルが測定されている場所でマルチパス干渉がある場合は、報告される値がパケットごとに変動する可能性があります。 パケットは、前のパケットより 5dB 高いか、低い可能性があります。 所定の測定場所での平均値が算出されるまでに数分かかることがあります。

AP コール キャパシティ

AP ごとの同時音声ストリーム数の計画は、VoWLAN 展開の計画プロセスのキーとなる部分です。AP の音声ストリーム キャパシティを計画する際は、次の点を考慮してください。


) 同一 AP に関連付けられている 2 つの電話間のコールは、2 つのアクティブな音声ストリームとしてカウントします。


無許可の(共有)802.11 チャネルの使用率によって、AP が伝送できる同時音声ストリーム数が確定されます。

チャネルの使用率と AP のパフォーマンスによって音声ストリーム数が決定されるため、同じチャネルと次のチャネルの分離が非常に重要になります。 2 つの AP が同一の場所にあり、同一チャネルで動作していても、音声ストリーム数は 2 倍にはなりません。実際、AP が 1 つの場合よりも音声ストリームが少なくなることがあります。

セル キャパシティまたは帯域によって、同時に実行可能な音声ストリーム数が決定されます。

ハンドセットおよび VoWLAN 展開でサポートされているハンドセット QoS 機能を、考慮する必要があります。

ハンドセットにはさまざまな WLAN QoS 機能があり、これらは WLAN 展開で有効化されている機能に影響を与え、最終的には AP ごとのコール キャパシティを決定します。 ほとんどの VoWLAN ハンドセットでは、その電話でサポートされる AP ごとのコール数についての指針が示されています。そして、それは、ハンドセットで最適な QoS 機能を使用でき、チャネル キャパシティにフル アクセスできる最良のケースでの値を示していると考える必要があります。

チャネルでサポート可能な実際の音声ストリーム数は、環境要因やクライアントでの WMM および Cisco Compatible Extension 仕様の遵守など、多くの問題に左右されます。 図9-11 は、コールの質の向上やチャネル キャパシティの拡大に非常に役立つ Cisco Compatible Extension 仕様を示しています。シミュレーションでは、5 GHz チャネルが 14 ~ 18 コールをサポートできることを示しています。 すなわち、1 つのカバレッジ セルには 20 の AP があり、それぞれの AP は異なるチャネル上で動作しており、各チャネルでは 14 の音声ストリームがサポートされています。このカバレッジ セルは 280 のコールをサポートできます。 複数の 802.11b クライアントが 1 つのチャネルを使用している場合、そのチャネルでは 7 つの音声ストリームがサポートされるため、重複しない 3 つのチャネル上に 3 つの AP を持つカバレッジ セルでは 21 の音声ストリームがサポートされます。

図9-11 Cisco Compatible Extension VoWLAN 機能

 

図9-11 は、次のことを示しています。

Cisco Centralized Key Management(CCKM)は Extensible Authentication Protocol(EAP)認証クライアントに高速クライアント ローミングを提供し、これによってコールの質が向上します。

Call Admission Control(CAC; コール アドミッション制御)によってコールの質を向上し、E911 およびローミング コール用の帯域予約を作成できます。

AP 支援ローミングおよび近接リストによって、コールの質が向上し、バッテリの寿命が延びます。

音声メトリックは管理に役立ちます。

Unscheduled Automatic Power Save Delivery(U-APSD; 不定期自動省電力配信)および Dynamic Transmit Power Control(DTPC: 送信電力の動的制御)によってバッテリの寿命が延びます。

負荷分散および DTPC はコールの質を向上させます。

Cisco Compatible Extensions 機能には、さまざまな利点があります。

バッファ メモリの量、CPU 速度、および無線品質は、AP 無線のパフォーマンスを左右する主要な要因です。QoS 機能はチャネル内の音声およびデータ トラフィックを優先順位付けします。QoS の詳細は、 第 5 章「Cisco Unified Wireless QoS」 を参照してください。

802.11e、WMM、および Cisco Compatible Extensions 仕様では、セルが音声ストリームで過負荷にならないように、負荷を分散できます。CAC は、コールを再起動するのに十分なチャネル キャパシティがあるかどうかを判断します。ない場合、電話は別のチャネルをスキャンします。 U-ASPD の主な利点は、WLAN クライアントの電力の節約です。これは、WLAN クライアントからのフレームの送信を可能にし、節電のために AP でバッファされるクライアント データ フレームの転送をトリガーすることによって実現されます。 近隣リスト オプションでは、近隣 AP のチャネル番号とチャネル キャパシティを含むリストが電話に提供されます。これによってコールの質が向上し、高速ローミングが実現し、バッテリの寿命が延びます。

U-APSD および CAC の詳細は、 第 3 章「WLAN 無線周波の設計に関する考慮事項」 を参照してください。

セルの境界の設計

802.11b/g/a VoWLAN ハンドセットの展開ガイドラインでは、セルの境界線の最小電力を -67dBm にする設計が推奨されています(図9-12 を参照)。 これにより、以前に設計されたデータ WLAN で使用されていたセルよりも小さいセルが作成されます。 -67dBm のしきい値は、パケット エラーを 1% にするために通常推奨される値ですが、そのためには、SNR 値を 25dB 以上にする必要があります(この要件には、その地域のノイズ条件が影響します)。 したがって、特定の電話タイプの見込みチャネル カバレッジ領域を決定する場合は、電話で計測される信号強度とノイズの両方を、AP によって提供されるクライアント統計を使用して検証する必要があります。 スタンドアロン AP および LWAPP AP 上でのこれらの値の決定については、図9-8 および図9-11 を参照してください。

-67dBm という信号強度の測定値は、802.11b 準拠の電話のベンダーで長年にわたって使用されてきました。テストの結果、この経験に基づく測定値を 802.11g および 802.11a 準拠の電話のクライアントにも適用できることが確認されています。

図9-12 セルの境界の測定

 


図9-12 は、-86 dBm の理想的な分離方法を簡略化して示したものです。 このように 19dBm を分離させることは、たいていの展開では実現不可能なことです。 RF の設計基準として特に重要なのは、セル半径を -67 dBm にすることと、セル間のオーバーラップが推奨値である 20% になるようにすることです。 これらの制約に従って設計することにより、チャネル分離が最適化されます。


5 GHz セルの場合、使用可能なチャネル数から考えても、同一チャネルの分離に関して考慮しなければならないことは、あまりありません。 802.11a では、周波数がオーバーラップしない 3 つのチャネルしか存在しない 2.4 GHz 帯域とは対照的に、チャネルが 19(電話機が W56 に対応していることが前提)あるため、ほとんどの場合に 2 チャネル分離が可能です。

5 GHz および 2.4 GHz の両方で、セルの境界を、指定チャネルに必要な最高データ レートでパケット エラー レート 1% が維持されるようなフロア レベルに配置する必要があります。 802.11b の場合、データ レートは 11 Mbps です。 したがって、AP の場所を中心として電話機の信号が AP によって認識されるフロア上の場所までがセルとなり、その境界は -67 dBm です。

802.11g および 802.11a 電話クライアントは、最大 54 Mbps のレートを実現できる可能性があります。 現在のチップ セットは 54 Mbps をサポートしていますが、送信電力は実際それぞれ異なっています。 電話クライアントと AP 間のすべてのリンクを、一致する送信電力レベルで確立することを強くお勧めします(「送信電力の動的制御」を参照)。

特定のデータ レートに対してカバレッジ セルを作成できます。 高密度展開または小さいフロア空間に多数のコールが必要な展開では、チャネル数および 54 Mbps というデータ レートを考慮して、802.11a が推奨されます。 802.11a で低いデータ レートを無効にして、データ レート 24 Mbps を「必須」に設定し、36 ~ 54 のレートをそのまま有効にしておくことができます。

セルの境界を -67 dBm に設定した後、1% のエラー レートが発生している場所を特定して、SNR 値を確認します。

-67 dBm のセルの境界は、次のように決定されます。

電話を、必要な送信電力に設定します。

AP を、一致する送信電力に設定します。

AP と必要なアンテナを、電話を使用する場所に配置します。

アクティブなコールを使用して、または G711 コーデックと同一サイズのパケットを送受信する間に、-67 dBm セル境界への信号レベルを測定します。

個々の電話端末のデータ シートで、特定の Wi-Fi 帯域においてその電話端末でサポートされている送信電力レベルとデータ レートをよく確認します。 Cisco Unified Wireless IP Phone のデータ シートは、 http://www.cisco.com/en/US/products/hw/phones/ps379/index.html にあります。 他のベンダーの電話については、各ベンダーの Web サイトを確認してください。

80211a の最大送信電力レベルは、チャネルおよび AP のモデルによって異なります。 802.11g の最大送信電力レベルは、モデルごとに異なります。Cisco Aironet AP のデータ シートで、どのモデルの AP がどのデータ レートに対応しているかをよく確認する必要があります。図9-13 は、日本の電波法で規定されているチャネル別の Max EIRP(dBm)を示しています。

図9-13 チャネルの Max EIRP

 

5 GHz 帯域での最大許容送信電力は、6dB 単位で変化します。 これは、すべてのチャネルを使用可能なサイトで最大許容送信電力を使用する場合、すべてのチャネルのセル カバレッジが同じになるわけではないことを意味します。また、動的なチャネル選択が使用されている場合、セル カバレッジ エッジはチャネル数によって変化する可能性があります。 ただし、動的なチャネル選択は調整可能です( 第 3 章「WLAN 無線周波の設計に関する考慮事項」 を参照)。動的なチャネル選択のデフォルト モードでは、チャネルごとの最大送信電力レベルの相違に対応します。

すべての AP 上のセル送信電力は、電話の最大または希望送信電力を超えてはなりません。電話の最大送信電力または設定送信電力が 10 dBm の場合、すべての AP の最大送信電力が 10 dBm であることが推奨されます。 したがって、AP の最大送信電力を同じレベルに設定するか、それが不可能であれば、次に大きい送信電力レベルに設定する必要があります。片通話を避けるために、同じ送信電力に設定することが推奨されます。一般に、AP は電話よりもレシーバの感度およびダイバーシティがすぐれているため、やや低い強度の電話信号を受信できる必要があります。同じ送信電力の詳細は、「送信電力の動的制御」を参照してください。

デュアル バンド カバレッジ セル

第 3 章「WLAN 無線周波の設計に関する考慮事項」 で、2.4 GHz と 5 GHz 帯域のチャネル カバレッジ設計について説明されています。デュアル モード AP において 2.4 GHz チャネルと 5 GHz チャネルの両方で同じセル カバレッジを提供する場合、2.4 GHz チャネルは 5 GHz チャネルと同じ(または低い)送信電力を持つ必要があります。多くのサイトでは、SNR 計算式のノイズ レベルは 10dB 低くなります。802.11g 無線のレシーバの感度は、一般に同じデータ レートの 11a 無線よりも 2dBM すぐれています。 たとえば、7921G のデータ シートでは、データ レート 36 Mbps での受信感度は、802.11g の場合は -78 dBm で、802.11a の場合は -76 dBm となっています。したがって、ノイズ フロアを 10 dB 向上させると、802.11a セルの感度は 8 dBm 向上します。802.11g と 802.11a とのパス損失の差異など他にも項目があるため、正比例はしません。ただし、同じカバレッジ セルを希望する場合は、802.11g ネットワークの電力レベルを 11a ネットワークよりも 1 または 2 レベル引き下げる必要があります。

送信電力の動的制御

Cisco Aironet AP ではデフォルトで DTPC が有効になっています。 DTPC は、Wireless LAN Controller により自動化されており、スタンドアロン AP 上で設定できます。 DTPC を使用するには、クライアントで少なくとも Cisco Compatible Extensive v2 機能がサポートされている必要があります。

DTPC では次のことが実現されます。

電話の送信電力を AP の送信電力と一致するように設定します。

AP はクライアントに知らせるために送信電力をアドバタイズします。

片通話を防止します。すなわち、RF トラフィックは単方向でのみ受信されます。

DTPC により、電話の送信電力を AP の送信電力に自動的に一致させることができます。 図9-14 の例では、電話の送信電力が 5 mW から 100 mW に変更されています。

図9-14 クライアントと AP の電力の一致

 

802.11g および 802.11a のライセンス要件では、クライアントの送信電力は 100mW ありません。アクセス ポイントの最大設定送信電力が、クライアント電話端末のハードウェア サポートより高い値にならないようにすることを強くお勧めします。 電話の送信電力が AP よりやや低い方が、AP の送信電力が電話より少ないよりも望ましいとされますが、送信電力が一致していると、片通話(典型的なケースとしては、ユーザが相手の声を聞き取りにくい)が発生する可能性を減らすことができます。

ユーザにとってローカルな干渉源

干渉はユーザによってローカルですが、近接ユーザにも影響する可能性があります。 Bluetooth(BT)は、Wi-Fi 2.4 GHz チャネルと干渉するパーソナル エリア ネットワークで使用される一般的な RF プロトコルです。図9-15 は、実際の BT 信号が 802.11b/g クライアントで使用されるすべての 2.4 GHz チャネルにまたがっていることを示しています。 この図は電話に取り付けられた BT ヘッドセットを使用した 802.11g コールに基づくものです。図9-16 は、BT ヘッドセットからのジッタも示しています。

図9-15 標準的な BT イヤピースの 802.11b/g 2.4 GHz スペクトラムにおける Bluetooth(BT)信号パターン

 

ピンクは、最大ホールド回線、すなわちテスト中に達した最大送信電力を示す回線です。 黄色は、10 秒の最新サンプル期間における最大送信電力を示しています。青緑色は、テスト期間における平均送信電力を示します。縦の破線は、重複しない 3 つの 802.11b/g チャネル、Ch1、Ch6、および Ch11 を区切っています。グラフは 2.400 GHz(左)から 2.500 GHz(右)までを示しています。Ch11 の縦の青線の右端からが、欧州と日本で使用されている 802.11 スペクトラム部分です。 このデータは、北米の規制ドメイン用に設定されている AP およびクライアントでキャプチャされました。このグラフは、BT イヤピースが容易に FCC 認定外に伝送していたことを示しています。

BT 信号は非常に狭いことに注意してください。BT はデータを単一周波数(MHz)で送信し、送信を中止し、802.11 2.4 GHz 帯域の別の周波数に移動した後、データを送信します。これが絶え間なく繰り返されます。802.11b および 802.11g 信号は、混合周波数 22 MHz で送信されます。無線はその周波数 22 MHz に残ります。22 MHz のグループをチャネルと呼びます。最大ホールド回線は、検索モードでの BT の強度を示します。信号レベルは 50mW(17dBm)OFDM 802.11g 無線より上です。この強度および長さの信号により、802.11b/g 電話は VoWLAN コールをドロップします。BT 信号の強度が低いと、ジッタが発生して MOS 値が低くなります。

図9-16 は、それぞれ BT イヤピースを使用する 3 つの同時通話の Ethereal ジッタ分析の例を示しています。

図9-16 ジッタ分析の例

 

3 つのコールはすべて同一 AP 上にあり、この AP 上の他の電話へのコールでした。