Cisco Unified Communications システム リリース 8.x SRND
IP テレフォニーの移行オプション
IP テレフォニーの移行オプション
発行日;2012/12/18 | 英語版ドキュメント(2012/07/30 版) | ドキュメントご利用ガイド | ダウンロード ; この章pdf , ドキュメント全体pdf (PDF - 39MB) | フィードバック

目次

IP テレフォニーの移行オプション

共存か、または移行か

移行の前提条件

Unified Communications の移行

マルチサイト企業における QSIG の必要性

IP テレフォニーの移行の概要

集中型 Unified Communications 配置

どの Unified Communications サービスを最初に移行するか

IP テレフォニーの移行オプション

この章では、個々のスタンドアロン通信コンポーネントを統合 Cisco Unified Communications システムに移行するための複数の方法について説明します。この章のトピックは、使用するプロトコルや必要な機能に基づく決定などの技術的視点ではなく、カスタマーまたはビジネスの視点から説明しています。

共存か、または移行か

これは、回答する必要がある重要な質問です。

共存とは、通常、2 つ以上のシステムが長期間(6 か月を超える任意の期間)にわたって共存することを意味します。このシナリオでは、PBX、ボイスメール、またはその他のいずれの機能であっても、機能の透過性が重要な考慮事項になります。必要な機能の透過性レベルを実現するために、既存のシステムへの投資やアップグレードが必要となる場合があります。

移行は、通常、短期間(6 か月未満の任意の期間)で実施します。このシナリオでは、ユーザは、移行が「短い」期間で完了することを認識しているため、既存の機能のサブセットをより許容しやすくなります。この「短い」期間については、多くの場合、既存のシステム機能で十分であるため、一般的に、移行では共存よりもコストが少なくなります。

移行の前提条件

カスタマーは、任意の Unified Communications サービスを実装する前に、基盤となる IP インフラストラクチャが「UC 対応」(冗長性、ハイ アベイラビリティ、Quality of Service(QoS)、インライン パワー イーサネット ポートなど)となっていることを確認する必要があります。詳細については、「ネットワーク インフラストラクチャ」の章を参照してください。

通常、すべての要件(FAX/モデム、環境制御システムなど)が適切に特定および考慮されるように、何らかのサイト調査またはユーザ調査を実行する必要があります。

Unified Communications の移行

Unified Communications システム(または該当する個々の Unified Communications サービス)への移行には、次の 2 つの方法があります。

段階的な移行

この方法は、通常、配置する Unified Communications サービスを中心とした、小規模な試用から開始します。カスタマーが Unified Communications サービスの試用に慣れたあと、移行を開始します。この場合は、ユーザのグループを一度に 1 つずつ Unified Communications サービスの実稼働バージョンに移動します。

並行カットオーバー

この方法は、段階的アプローチと同様に開始しますが、試用が進行し、カスタマーが納得した時点で、すべてのユーザを一度に新しい Unified Communications サービスにカットオーバーする日時を選択します。

並行カットオーバーには、段階的な移行に比べて次の利点があります。

並行カットオーバーを採用した場合、予期しない事態が発生したとき、最小限の労力で、基本的に以前の状態のままのシステムに戻すことができる、バックアウト計画を使用できます。たとえば、PBX からの段階的な移行の場合、IP テレフォニー ゲートウェイからの着信 PSTN トランクを PBX に転送して戻すだけで、ユーザに対してサービスを復元できます。

並行カットオーバーを採用すると、ライブ トラフィックを伝送する前に、Unified Communications サービスの設定を確認できます。このシナリオでは、Unified Communications サービスのカットオーバー前に任意の期間実行できるため、すべてのユーザ情報(電話機、ゲートウェイ、ダイヤル プラン、メールボックスなど)を適切に設定できます。

加入者がカットオーバー前の都合のよいときに Unified Communications サービスを調べたり使用したりできるようにすることによって、ゆとりを持ってトレーニングを実行できます。

システム管理者は、「利害共同体」のために特別なプロビジョニングを行う必要はありません。段階的な移行では、コール ピックアップ グループ、ハント グループ、シェアド ラインなどの機能の完全性の維持を考慮する必要があります。これらのアソシエーションは、並行カットオーバーで完全な Unified Communications サービスに移行するときに、簡単に決定できます。

並行カットオーバーには、サポートするインフラストラクチャを含み、Unified Communications サービスのために最初の時点で十分な資金が必要になるという短所があります。これは、サービスを提供する前に、サービス全体を配置する必要があるためです。一方、段階的な移行では、必要となったときにシステムの個々のコンポーネントを購入できます。このアプローチでは、完全に配置する前に、小規模な試用システムから開始できます。

いずれかの方法が正しいというわけではなく、それぞれのカスタマーの環境と優先事項に応じて、最適なオプションが決まります。

例 6-1 IP テレフォニーの段階的な移行

このアプローチは、通常、主要な企業 PBX に接続された IP テレフォニーの小規模な試用を伴います。使用するシグナリング プロトコルの選択は、必要な機能および実装コストによって決まります。Cisco Unified Communications Manager(Unified CM)では、通常の PSTN タイプ PRI や QSIG PRI、および H.323 と SIP をサポートしています。これらのオプションのうち、QSIG PRI は、通常、任意の 2 つのシステム間に最高レベルの機能透過性を提供します。

PSTN タイプ PRI は、基本的なコール接続および Automatic Number Identification(ANI; 自動番号識別)を提供します。このプロトコルで発信者名情報がサポートされる場合もあります。このレベルの接続は、すべての PBX で使用できるため、最もコストがかからないオプションと見なされます。つまり、PBX は、PRI を介してパブリック ネットワークに接続できる場合、Unified CM に接続できます。これは、Unified CM が接続の「ネットワーク」側として設定できるためです。

PSTN タイプ PRI または QSIG では、段階的な移行のプロセスが似ています。ユーザをグループ単位で PBX から Unified CM に移動しますが、一度にグループを 1 つずつ移動して、移行を完了します。

約 60 のビルに分散された 23,000 人ものユーザで構成されている Cisco San Jose キャンパスでは、この方法で IP テレフォニーへの移行が行われました。週末ごとに 1 つのビルという割合で、開始から完了までちょうど 1 年かかりました。選択されたビル内のすべてのユーザが特定され、金曜日の夜に、それらのユーザの内線番号が PBX から削除されました。同時に、PBX ルーティング テーブルへの追加が行われ、これらの内線番号にダイヤルしたすべての人が正しい PRI トランクを通じてルーティングされ、Unified CM に配信されるようにしました。週末の間に、ユーザの新しい内線番号が Unified CM に作成され、新しい IP Phone が該当するオフィス ロケーションに届けられ、月曜日の朝には使用できる準備が整っていました。このプロセスは、すべてのユーザが移行されるまで、各ビルに対して繰り返されました。

例 6-2 IP テレフォニーの並行カットオーバー

すべての IP Phone およびゲートウェイが完全に設定および配置され、ユーザのデスク上には IP Phone と PBX 電話機の両方が同時に置かれます。このアプローチでは、システムをテストする機会だけでなく、新しい IP Phone にユーザが慣れる機会を提供します。発信専用のトランクも IP テレフォニー システムに接続できるため、新しい IP Phone を使用して外部コールおよび内部コールを発信する機会がユーザに提供されます。

IP テレフォニー システムが完全に配置された時点で、着信 PSTN トランクを PBX から IP テレフォニー ゲートウェイに移動して新しいシステムを完全なサービスに移行する日時を選択できます。IP テレフォニー システムの運用に確信を持てるまで、PBX をそのまま残しておき、確信できた時点で PBX の使用を停止することもできます。

Cisco San Jose キャンパスのボイスメール サービスは、23,000 人ものユーザにサービスを提供する 4 つの Octel 350 システムによって行われていました。Cisco Unity サーバがインストールされ、ユーザのメールボックスが設定されました。ユーザは、新しいアクセス番号をダイヤルして自分の Unity メールボックスにアクセスできます。これにより、自分の名前とグリーティングを録音し、また同時に新しいテレフォニー ユーザ インターフェイス(TUI)に慣れることができます。約 2 週間後、Unified CM 一括管理ツール(BAT)の更新が金曜日の夜に実行され、話中転送番号と無応答転送番号(CFB/CFNA)、および Unity システムへのすべてのユーザの Messages ボタンの宛先番号が変更されました。月曜日の朝に仕事に戻ったときには、Unity によるサービスがユーザに提供されていました。Octel 350 システムは 1 か月間そのまま残されたため、Octel 350 システムの使用停止までに、ユーザは Octel 350 システムに残っていたすべてのメッセージに応答できました。

マルチサイト企業における QSIG の必要性

1 つのロケーションだけで構成される企業もあれば、複数のサイトで構成される企業もあります。企業によっては、遠く離れた場所に分散している可能性もあります。マルチサイト企業用の PBX ネットワークは、通常、独自のプロトコル(Avaya DCS、Nortel MCDN、Siemens CorNet、NEC CCIS、Fujitsu FIPN、Alcatel ABC など)を実行する T1 トランクまたは E1 PRI トランクをロケーションに応じて使用して接続されています。これらの独自のネットワーキング プロトコルによって、PBX はエンド ユーザ間に高レベルの機能透過性を提供できます。

QSIG は、異なるベンダーが提供する PBX の相互接続を可能にするために開発されたため、同様のレベルの機能透過性を実現します。

QSIG をサポートすることで、Unified CM を大規模な企業ネットワークに導入できると同時に、ユーザ間の機能透過性も維持できます。PBX ロケーションは、IP テレフォニーに適宜変換できます。

ただし、短期間で PBX の使用を停止する場合、PBX 上で QSIG をすでに有効にしているか、または PBX の追加機能が特に必要である場合を除き、PBX のアップグレード コストは妥当ではありません。たとえば、PBX を 2 ~ 3 か月で使用中止にする予定である場合、PBX で QSIG を有効化するのに 30,000 ドルかけるのは有益ではありません。

IP テレフォニーの移行の概要

IP テレフォニーの移行の 2 つの方法はいずれも適切に機能し、いずれか一方が正しいということはありませんが、ほとんどの場合、並行カットオーバーの方法が、より適切に機能します。また、大規模な企業では、QSIG を使用して Unified CM を企業ネットワークの一部に組み込むことによって、いずれの移行方法にも改良を加えることができます。

シスコは、Unified CM システムと PBX システム間の相互運用性テスト専用の実験施設を持っています。このテストの結果は、次の Web サイトに公開されているアプリケーション ノートとして入手できます。

http://www.cisco.com/go/interoperability

このアプリケーション ノートは頻繁に更新され、この Web サイトには新しいドキュメントが絶えず追加されています。この Web サイトを頻繁に確認して、最新情報を入手してください。

集中型 Unified Communications 配置

企業が Unified Communications の集中型配置を選択した場合は、次の 2 つのオプションがあります。

外側から開始し、中央サイトに向かって内側に進める(つまり、最も小さいサイトから最も大きいサイトへ)。

中央サイトから開始し、エッジに向かって外側に進める。

ほとんどのカスタマーは、次の利点があるため、最初のオプションを選択します。

すべての Unified Communications サービスを完全に配置したあと、Unified Communications をリモート ロケーションに配置する前に小規模な試用を実行できる。

Unified Communications の配置は、一度に 1 つずつのロケーションで実行でき、以降のロケーションは適宜移行できる。

このオプションは、Unified Communications のコア サービスが中央サイトに配置されたあとには、実装コストが最も低くなる。

IT スタッフは、中央サイトに移行する前に、小規模サイトの移行時に貴重な経験を積むことができる。

リモート サイトは、並行アプローチで移行する必要がありますが、中央サイトは、並行または段階的のいずれかのアプローチを使用して移行できます。

どの Unified Communications サービスを最初に移行するか

この選択は、カスタマーの個別のビジネス ニーズに大きく依存します。また、Cisco Unified Communications ソリューションによって、個々のサービスのほとんどを他のサービスとは独立して配置できます。たとえば、IP テレフォニー、ボイス メッセージング、コンタクト センター、およびコラボレーションは、すべて互いに独立して配置できます。

この機能により、大幅な柔軟性がカスタマーにもたらされます。あるカスタマーが、ボイスメール システムのサポートが終了したことによって、顧客満足度の低下につながるさまざまな問題を抱えているとします。多くの場合、Cisco Unity は現在の PBX とともに配置および統合できるため、この問題を解決できます。新しいボイスメール システムが適切に運用されるようになったあと、次の Unified Communications サービス、つまり IP テレフォニーに取り組むことができます。