ASDM を使用した Cisco ASA 5500 シリーズ コンフィギュレーション ガイド ASA 5505、ASA 5510、ASA 5520、ASA 5540、ASA 5550、ASA 5580、ASA 5512-X、ASA 5515-X、ASA 5525-X、ASA 5545-X、ASA 5555-X、および ASA 5585-X 用ソフトウェア バージョン 8.4 および 8.6
NAT に関する情報(ASA 8.3 以降)
NAT に関する情報(ASA 8.3 以降)
発行日;2012/09/25 | 英語版ドキュメント(2012/06/20 版) | ドキュメントご利用ガイド | ダウンロード ; この章pdf , ドキュメント全体pdf (PDF - 22MB) | フィードバック

目次

NAT に関する情報(ASA 8.3 以降)

NAT を使用する理由

NAT の用語

NAT のタイプ

NAT のタイプの概要

スタティック NAT

スタティック NAT に関する情報

ポート変換を設定したスタティック NAT に関する情報

1 対多のスタティック NAT に関する情報

他のマッピング シナリオ(非推奨)に関する情報

ダイナミック NAT

ダイナミック NAT に関する情報

ダイナミック NAT の欠点と利点

ダイナミック PAT

ダイナミック PAT に関する情報

ダイナミック PAT の欠点と利点

アイデンティティ NAT

ルーテッド モードとトランスペアレント モードの NAT

ルーテッド モードの NAT

トランスペアレント モードの NAT

VPN の NAT

NAT の実装方法

ネットワーク オブジェクトと Twice NAT の主な違い

ネットワーク オブジェクト NAT に関する情報

Twice NAT に関する情報

NAT ルールの順序

NAT インターフェイス

NAT パケットのルーティング

マッピング アドレスとルーティング

リモート ネットワークのトランスペアレント モード ルーティングの要件

出力インターフェイスの決定

DNS および NAT

関連情報

NAT に関する情報(ASA 8.3 以降)

この章では、ネットワーク アドレス変換(NAT)がASAでどのように機能するかについて説明します。この章は、次の項で構成されています

「NAT を使用する理由」

「NAT の用語」

「NAT のタイプ」

「ルーテッド モードとトランスペアレント モードの NAT」

「VPN の NAT」

「NAT の実装方法」

「NAT ルールの順序」

「NAT パケットのルーティング」

「DNS および NAT」

「関連情報」


) NAT の設定を開始するには、「ネットワーク オブジェクト NAT の設定(ASA 8.3 以降)」または「Twice NAT の設定(ASA 8.3 以降)」を参照してください。


NAT を使用する理由

IP ネットワーク内の各コンピュータおよびデバイスには、ホストを識別する固有の IP アドレスが割り当てられています。パブリック IPv4 アドレスが不足しているため、これらの IP アドレスの大部分はプライベートであり、プライベートの企業ネットワークの外部にルーティングできません。RFC 1918 では、アドバタイズされない、内部で使用できるプライベート IP アドレスが次のように定義されています。

10.0.0.0 ~ 10.255.255.255

172.16.0.0 ~ 172.31.255.255

192.168.0.0 ~ 192.168.255.255

 

NAT の主な機能の 1 つは、プライベート IP ネットワークがインターネットに接続できるようにすることです。NAT は、プライベート IP アドレスをパブリック IP に置き換え、内部プライベート ネットワーク内のプライベート アドレスをパブリック インターネットで使用可能な正式の、ルーティング可能なアドレスに変換します。このようにして、NAT はパブリック アドレスを節約します。これは、ネットワーク全体に対して 1 つのパブリック アドレスだけを外部に最小限にアドバタイズするように NAT を設定できるからです。

NAT の他の機能には、次のおりです。

セキュリティ:内部アドレスを隠蔽し、直接攻撃を防止します。

IP ルーティング ソリューション:NAT を使用する際は、重複 IP アドレスが問題になりません。

柔軟性:外部で使用可能なパブリック アドレスに影響を与えずに、内部 IP アドレッシング スキームを変更できます。たとえば、インターネットにアクセス可能なサーバの場合、インターネット用に固定 IP アドレスを維持できますが、内部的にはサーバのアドレスを変更できます。


) NAT は必須ではありません。特定のトラフィック セットに NAT を設定しない場合、そのトラフィックは変換されませんが、セキュリティ ポリシーはすべて通常どおりに適用されます。


NAT の用語

このマニュアルでは、次の用語を使用しています。

実際のアドレス/ホスト/ネットワーク/インターフェイス:実際のアドレスとは、ホストで定義されている、変換前のアドレスです。内部ネットワークが外部にアクセスするときに内部ネットワークを変換するという典型的な NAT のシナリオでは、内部ネットワークが「実際の」ネットワークになります。内部ネットワークだけではなく、ASA に接続されている任意のネットワークを変換できます。したがって、外部アドレスを変換するように NAT を設定した場合、「実際の」は、外部ネットワークが内部ネットワークにアクセスしたときの外部ネットワークを指します。

マッピング アドレス/ホスト/ネットワーク/インターフェイス:マッピング アドレスとは、実際のアドレスが変換されるアドレスです。内部ネットワークが外部にアクセスするときに内部ネットワークを変換するという典型的な NAT のシナリオでは、外部ネットワークが「マッピング」ネットワークになります。

双方向の開始:スタティック NAT では、 双方向に 開始できます。つまり、ホストへの接続とホストからの接続の両方を開始できます。

送信元および宛先の NAT:任意のパケットについて、送信元 IP アドレスと宛先 IP アドレスの両方を NAT ルールと比較し、1 つまたは両方を変換する、または変換しないことができます。スタティック NAT の場合、ルールは双方向であるため、たとえば、特定の接続が「宛先」アドレスから発生する場合でも、このガイドを通じてのコマンドおよび説明では「送信元」および「宛先」が使用されていることに注意してください。

NAT のタイプ

「NAT のタイプの概要」

「スタティック NAT」

「ダイナミック NAT」

「ダイナミック PAT」

「アイデンティティ NAT」

NAT のタイプの概要

NAT は、次の方法を使用して実装できます。

スタティック NAT:実際の IP アドレスとマッピング IP アドレスとの間での一貫したマッピング。双方向にトラフィックを開始できます。「スタティック NAT」を参照してください。

ダイナミック NAT:実際の IP アドレスのグループが、(通常は、より小さい)マッピング IP アドレスのグループに先着順でマッピングされます。実際のホストだけがトラフィックを開始できます。「ダイナミック NAT」を参照してください。

ダイナミック ポート アドレス変換(PAT):実際の IP アドレスのグループが、1 つの IP アドレスにマッピングされます。この IP アドレスのポートが使用されます。「ダイナミック PAT」を参照してください。

アイデンティティ NAT:実際のアドレスがスタティックにそのアドレス自身に変換されます。基本的に NAT を回避します。大規模なアドレスのグループを変換するものの、小さいアドレスのサブセットは免除する場合は、NAT をこの方法で設定できます。「アイデンティティ NAT」を参照してください。

スタティック NAT に関する情報

スタティック NAT では、実際のアドレスからマッピング アドレスへの固定変換が作成されます。マッピング アドレスは連続する各接続で同じなので、スタティック NAT では、双方向の接続(ホストへの接続とホストから接続の両方)を開始できます(接続を許可するアクセス ルールが存在する場合)。一方、ダイナミック NAT および PAT では、各ホストが以降の各変換に対して異なるアドレスまたはポートを使用するので、双方向の開始はサポートされません。

図 32-1 に、一般的なスタティック NAT のシナリオを示します。この変換は常にアクティブなので、実際のホストとリモート ホストの両方が接続を開始できます。

図 32-1 スタティック NAT

 

ポート変換を設定したスタティック NAT に関する情報

ポート変換を設定したスタティック NAT では、実際のプロトコルとマッピング プロトコル(TCP または UDP)およびポートを指定できます。

この項は、次の内容で構成されています。

「ポート アドレス変換を設定したスタティック NAT に関する情報」

「アイデンティティ ポート変換を設定したスタティック NAT」

「標準以外のポートのポート変換を設定したスタティック NAT」

「ポート変換を設定したスタティック インターフェイス NAT」

ポート アドレス変換を設定したスタティック NAT に関する情報

スタティック NAT を使用してポートを指定する場合、ポートまたは IP アドレスを同じ値にマッピングするか、別の値にマッピングするかを選択できます。

図 32-2 に、ポート変換が設定された一般的なスタティック NAT のシナリオを示します。自身にマッピングしたポートと、別の値にマッピングしたポートの両方を示しています。いずれのケースでも、IP アドレスは別の値にマッピングされています。この変換は常にアクティブなので、変換されたホストとリモート ホストの両方が接続を開始できます。

図 32-2 ポート変換を設定したスタティック NAT の一般的なシナリオ

 


) セカンダリ チャネルのアプリケーション インスペクションが必要なアプリケーション(FTP、VoIP など)を使用する場合は、ASAが自動的にセカンダリ ポートを変換します。


アイデンティティ ポート変換を設定したスタティック NAT

次のポート変換を設定したスタティック NAT の例では、リモート ユーザが FTP、HTTP、および SMTP にアクセスするための単一のアドレスを提供します。実際にはこれらのサーバは、実際のネットワーク上の異なるデバイスですが、各サーバに対して、異なるポートでも同じマッピング IP アドレスを使用するというポート変換ルールを設定したスタティック NAT を指定できます (図 32-3 を参照)。この例の設定方法については、「FTP、HTTP、および SMTP のための単一アドレス(ポート変換を設定したスタティック NAT)」を参照してください)。

図 32-3 ポート変換を設定したスタティック NAT

 

標準以外のポートのポート変換を設定したスタティック NAT

ポート変換を設定したスタティック NAT を使用すると、予約済みポートから標準以外のポートへの変換や、その逆の変換も実行できます。たとえば、内部 Web サーバがポート 8080 を使用する場合、ポート 80 に接続することを外部ユーザに許可し、その後、変換を元のポート 8080 に戻すことができます。同様に、セキュリティをさらに高めるには、Web ユーザに標準以外のポート 6785 に接続するように指示し、その後、変換をポート 80 に戻すことができます。

ポート変換を設定したスタティック インターフェイス NAT

スタティック NAT は、実際のアドレスをインターフェイス アドレスとポートの組み合わせにマッピングするように設定できます。たとえば、ASAの outside インターフェイスへの Telnet アクセスを内部ホストにリダイレクトする場合、内部ホストの IP アドレス/ポート 23 を ASA のインターフェイス アドレス/ポート 23 にマッピングできます。(ASA への Telnet では最低セキュリティのインターフェイスは許可されませんが、インターフェイス ポート変換が設定されたスタティック NAT は、その Telnet セッションを拒否するのではなく、リダイレクトします)。

1 対多のスタティック NAT に関する情報

通常、スタティック NAT は 1 対 1 のマッピングで設定します。しかし場合によっては、1 つの実際のアドレスを複数のマッピング アドレスに設定することがあります(1 対多)。1 対多のスタティック NAT を設定する場合、実際のホストがトラフィックを開始すると、常に最初のマッピング アドレスが使用されます。しかし、ホストに向けて開始されたトラフィックの場合、任意のマッピング アドレスへのトラフィックを開始でき、1 つの実際のアドレスには変換されません。

図 32-4 に、一般的な 1 対多のスタティック NAT シナリオを示します。実際のホストが開始すると、常に最初のマッピング アドレスが使用されるため、実際のホスト IP/最初のマッピング IP の変換は、理論的には双方向変換のみが行われます。

図 32-4 1 対多のスタティック NAT

 

たとえば、10.1.2.27 にロード バランサが存在するとします。これは、要求された URL に応じて、トラフィックを正しい Web サーバにリダイレクトします(図 32-5を参照)。(この例の設定方法については、「複数のマッピング アドレス(スタティック NAT、1 対多)を持つ内部ロード バランサ」を参照してください)。

図 32-5 1 対多のスタティック NAT

 

他のマッピング シナリオ(非推奨)に関する情報

ASAには、1 対 1、1 対多だけではなく、少対多、多対少、多対 1 など任意の種類のスタティック マッピング シナリオを使用できるという柔軟性があります。1 対 1 マッピングまたは 1 対多マッピングだけを使用することをお勧めします。これらの他のマッピング オプションは、予期しない結果が発生する可能性があります。

機能的には、少対多は、1 対多と同じです。しかし、コンフィギュレーションが複雑化して、実際のマッピングが一目では明らかでない場合があるため、必要とする実際の各アドレスに対して 1 対多のコンフィギュレーションを作成することを推奨します。たとえば、少対多のシナリオでは、少数の実際のアドレスが多数のマッピング アドレスに順番にマッピングされます(A は 1、B は 2、C は 3)。すべての実際のアドレスがマッピングされたら、次にマッピングされるアドレスは、最初の実際のアドレスにマッピングされ、すべてのマッピング アドレスがマッピングされるまで続行されます(A は 4、B は 5、C は 6)。この結果、実際の各アドレスに対して複数のマッピング アドレスが存在することになります。1 対多のコンフィギュレーションのように、最初のマッピングだけが双方向であり、以降のマッピングでは、実際のホスト のトラフィックを開始できますが、実際のホスト から のすべてのトラフィックは、送信元の最初のマッピング アドレスだけを使用できます。

図 32-6 に、一般的な少対多のスタティック NAT シナリオを示します。

図 32-6 少対多のスタティック NAT

 

多対少または多対 1 コンフィギュレーションでは、マッピング アドレスよりも多くの実際のアドレスが存在します。実際のアドレスが不足するよりも前に、マッピング アドレスが不足します。双方向の開始を実現できるのは、最下位の実際の IP アドレスとマッピングされたプールの間でマッピングを行ったときだけです。残りの上位の実際のアドレスはトラフィックを開始できますが、これらへのトラフィックを開始できません。接続のリターン トラフィックは、接続の固有の 5 つの要素(送信元 IP、宛先 IP、送信元ポート、宛先ポート、プロトコル)によって適切な実際のアドレスに転送されます。


) 多対少または多対 1 の NAT は PAT ではありません。2 つの実際のホストが同じ送信元ポート番号を使用して同じ外部サーバおよび同じ TCP 宛先ポートにアクセスする場合は、両方のホストが同じ IP アドレスに変換されると、アドレスの競合がある(5 つのタプルが一意でない)ため、両方の接続がリセットされます。


図 32-7 に、一般的な多対少のスタティック NAT のシナリオを示します。

図 32-7 多対少のスタティック NAT

 

このようにスタティック ルールを使用するのではなく、双方向の開始を必要とするトラフィックに 1 対 1 のルールを作成し、残りのアドレスにダイナミック ルールを作成することをお勧めします。

ダイナミック NAT

この項では、ダイナミック NAT について説明します。次の項目を取り上げます。

「ダイナミック NAT に関する情報」

「ダイナミック NAT の欠点と利点」

ダイナミック NAT に関する情報

ダイナミック NAT では、実際のアドレスのグループは、宛先ネットワーク上でルーティング可能なマッピング アドレスのプールに変換されます。マッピングされたプールにあるアドレスは、通常、実際のグループより少なくなります。変換対象のホストが宛先ネットワークにアクセスすると、ASAは、マッピングされたプールから IP アドレスをそのホストに割り当てます。変換は、実際のホストが接続を開始したときにだけ作成されます。変換は接続が継続している間だけ有効であり、変換がタイムアウトすると、そのユーザは同じ IP アドレスを保持しません。したがって、アクセス ルールでその接続が許可されている場合でも、宛先ネットワークのユーザは、ダイナミック NAT を使用するホストへの確実な接続を開始できません。

図 32-8 に、一般的なダイナミック NAT のシナリオを示します。実際のホストだけが NAT セッションを作成でき、応答トラフィックが許可されます。

図 32-8 ダイナミック NAT

 

図 32-9 に、マッピング アドレスへの接続開始を試みているリモート ホストを示します。このアドレスは、現時点では変換テーブルにないため、ASAはパケットをドロップしています。

図 32-9 マッピング アドレスへの接続開始を試みているリモート ホスト

 


) 変換が継続している間、アクセス ルールで許可されていれば、リモート ホストは変換済みホストへの接続を開始できます。アドレスは予測不可能であるため、ホストへの接続は確立されません。ただし、この場合は、アクセス ルールのセキュリティに依存できます。


ダイナミック NAT の欠点と利点

ダイナミック NAT には、次の欠点があります。

マッピングされたプールにあるアドレスが実際のグループより少ない場合、予想以上にトラフィックが多いと、アドレスが不足する可能性があります。

この事象が発生した場合には、PAT または PAT フォールバック方式を使用します。PAT では、単一アドレスのポートを使用して 64,000 を超える変換を処理できるためです。

マッピング プールではルーティング可能なアドレスを多数使用する必要があるのに、ルーティング可能なアドレスは多数用意できない場合があります。

ダイナミック NAT の利点は、一部のプロトコルが PAT を使用できないということです。たとえば、PAT は次の場合は機能しません。

GRE バージョン 0 などのように、オーバーロードするためのポートがない IP プロトコルでは機能しません。

一部のマルチメディア アプリケーションなどのように、1 つのポート上にデータ ストリームを持ち、別のポート上に制御パスを持ち、公開規格ではないアプリケーションでも機能しません。

NAT および PAT のサポートの詳細については、「デフォルト設定値」を参照してください。

ダイナミック PAT

この項では、ダイナミック PAT について説明します。次の項目を取り上げます。

「ダイナミック PAT に関する情報」

「ダイナミック PAT の欠点と利点」

ダイナミック PAT に関する情報

ダイナミック PAT では、実際のアドレスおよび送信元ポートが 1 つのマッピング アドレスおよび固有のポートに変換されることによって、複数の実際のアドレスが 1 つのマッピング IP アドレスに変換されます。使用できる場合、実際の送信元ポート番号がマッピング ポートに対して使用されます。ただし、実際のポートが使用 できない 場合は、デフォルトで、マッピング ポートは実際のポート番号と同じポート範囲(0 ~ 511、512 ~ 1023、および 1024 ~ 65535)から選択されます。そのため、1024 よりも下のポートでは、小さい PAT プールのみを使用できます。(8.4(3) 以降、8.5(1) または 8.6(1) を除く)下位ポート範囲を使用するトラフィックが数多くある場合は、PAT プールに対して、サイズが異なる 3 つの層の代わりにフラットなポート範囲を使用するように指定できます。

送信元ポートが接続ごとに異なるため、各接続には別の変換セッションが必要です。たとえば、10.1.1.1:1025 には、10.1.1.1:1026 とは別の変換が必要です。

図 32-10 に、一般的なダイナミック PAT のシナリオを示します。実際のホストだけが NAT セッションを作成でき、応答トラフィックが許可されます。マッピング アドレスはどの変換でも同じですが、ポートがダイナミックに割り当てられます。

図 32-10 ダイナミック PAT

 

接続の有効期限が切れると、ポート変換も 30 秒間の非アクティブ状態の後に有効期限切れになります。このタイムアウトは変更できません。宛先ネットワークのユーザは、PAT を使用するホストへの接続を確実には開始できません(アクセス ルールでその接続が許可されている場合も同じです)。


) 変換が継続している間、アクセス ルールで許可されていれば、リモート ホストは変換済みホストへの接続を開始できます。実際のポート アドレスおよびマッピング ポート アドレスはどちらも予測不可能であるため、ホストへの接続は確立されません。ただし、この場合は、アクセス ルールのセキュリティに依存できます。


ダイナミック PAT の欠点と利点

ダイナミック PAT では、1 つのマッピング アドレスを使用できるため、ルーティング可能なアドレスが節約されます。さらに、ASA インターフェイスの IP アドレスを PAT アドレスとして使用できます。

ダイナミック PAT は、制御パスとは異なるデータ ストリームを持つ一部のマルチメディア アプリケーションでは機能しません。NAT および PAT のサポートの詳細については、「デフォルト設定値」を参照してください。

ダイナミック PAT によって、単一の IP アドレスから送信されたように見える数多くの接続が作成されることがあります。この場合、このトラフィックはサーバで DoS 攻撃として解釈される可能性があります。(8.4(2)/8.5(1) 以降)アドレスの PAT プールを設定して、PAT アドレスのラウンドロビン割り当てを使用すると、この状況を緩和できます。

アイデンティティ NAT

IP アドレスを自身に変換する必要のある NAT コンフィギュレーションを設定できます。たとえば、NAT を各ネットワークに適するものの、1 つのネットワークを NAT から除外するという広範なルールを作成する場合、スタティック NAT ルールを作成して、アドレスを自身に変換することができます。アイデンティティ NAT は、NAT からクライアント トラフィックを除外する必要のある、リモート アクセス VPN で必要です。

図 32-11 に、一般的なアイデンティティ NAT のシナリオを示します。

図 32-11 アイデンティティ NAT

 

ルーテッド モードとトランスペアレント モードの NAT

NAT は、ルーテッド モードおよびトランスペアレント ファイアウォール モードの両方に設定できます。この項では、各ファイアウォール モードの一般的な使用方法について説明します。次の項目を取り上げます。

「ルーテッド モードの NAT」

「トランスペアレント モードの NAT」

ルーテッド モードの NAT

図 32-12 は、内部にプライベート ネットワークを持つ、ルーテッド モードの一般的な NAT の例を示しています。

図 32-12 NAT の例:ルーテッド モード

 

1. 内部ホスト 10.1.2.27 が Web サーバにパケットを送信すると、パケットの実際の送信元アドレス 10.1.2.27 はマッピング アドレス 209.165.201.10 に変更されます。

2. サーバが応答すると、マッピング アドレス 209.165.201.10 に応答を送信し、ASA がそのパケットを受信します。これは、ASA がプロキシ ARP を実行してパケットを要求するためです。

3. ASA はその後、パケットをホストに送信する前に、マッピング アドレス 209.165.201.10 を変換し、実際のアドレス 10.1.2.27 に戻します。

トランスペアレント モードの NAT

NAT をトランスペアレント モードで使用すると、ネットワークで NAT を実行するためのアップストリーム ルータまたはダウンストリーム ルータが必要なくなります。

トランスペアレント モードの NAT には、次の要件および制限があります。

トランスペアレント ファイアウォールにはインターフェイス IP アドレスがないため、インターフェイス PAT を使用できません。

ARP インスペクションはサポートされていません。また、何らかの理由で、一方のASAのホストがもう一方のASAのホストに ARP 要求を送信し、開始ホストの実際のアドレスが同じサブネットの別のアドレスにマッピングされる場合、実際のアドレスは ARP 要求で可視のままになります。

図 32-13 に、インターフェイス内部と外部に同じネットワークを持つ、トランスペアレント モードの一般的な NAT のシナリオを示します。このシナリオのトランスペアレント ファイアウォールは NAT サービスを実行しているため、アップストリーム ルータは NAT を実行する必要がありません。

図 32-13 NAT の例:トランスペアレント モード

 

1. 内部ホスト 10.1.1.75 が Web サーバにパケットを送信すると、パケットの実際の送信元アドレス 10.1.1.75 はマッピング アドレス 209.165.201.15 に変更されます。

2. サーバが応答すると、マッピング アドレス 209.165.201.15 に応答を送信し、ASA がそのパケットを受信します。これは、アップストリーム ルータには、ASA の管理 IP アドレスに転送されるスタティック ルートのこのマッピング ネットワークが含まれるためです。必要なルートの詳細については、「マッピング アドレスとルーティング」を参照してください。

3. その後、ASAはマッピング アドレス 209.165.201.15 を変換して実際のアドレス 10.1.1.1.75 に戻します。実際のアドレスは直接接続されているため、ASAはそのアドレスを直接ホストに送信します。

4. ホスト 192.168.1.2 の場合も、リターン トラフィックを除き、同じプロセスが発生します。ASA はルーティング テーブルでルートを検索し、192.168.1.0/24 の ASA スタティック ルートに基づいてパケットを 10.1.1.3 にあるダウンストリーム ルータに送信します。必要なルートの詳細については、「リモート ネットワークのトランスペアレント モード ルーティングの要件」を参照してください。

VPN の NAT

スプリット トンネリングを許可しない場合は、すべての VPN トラフィック(インターネットに向かうトラフィックでも)が VPN トンネルを通過します。ASA によって復号化された後、基本的に VPN トラフィックは他の内部トラフィックと同じになります。内部ユーザがインターネットにアクセスする必要がある場合は、NAT で提供されるパブリック IP アドレスが必要です。

図 32-14 に、www.example.com の Web サイトにアクセスする VPN クライアントを示します。この例では、outside インターフェイスのインターフェイス PAT ルールが VPN-assigned アドレス 10.1.1.10 に一致します。インターフェイス内通信がイネーブルの場合、トラフィックは入ったインターフェイスと同じインターフェイスから出て、www.example.com に到達することができます。ヘアピン ネットワーキングの必要がない同様の例には、VPN 終端用の ASA およびインターネット ゲートウェイとして NAT が設定された別の ASA が含まれています。

図 32-14 インターネット宛 VPN トラフィックのインターフェイス PAT(ヘアピン、インターフェイス内)

 

図 32-15 に、インターネット宛トラフィックのインターフェイス PAT ルールも示します。ただし、サイトツーサイト トンネルの端など、VPN エンドポイント間のすべての通信については、NAT を実行しません。したがって、VPN で接続された他の内部ネットワークに向かうトラフィックに対しては、(Twice NAT を使用して)アイデンティティ NAT ルールも作成する必要があります。

図 32-15 VPN サイトとクライアント間の通信を許可するアイデンティティ NAT

 

NAT の実装方法

ASAは、 ネットワーク オブジェクト NAT および Twice NAT という 2 種類の方法でアドレス変換を実装できます。この項は、次の内容で構成されています。

「ネットワーク オブジェクトと Twice NAT の主な違い」

「ネットワーク オブジェクト NAT に関する情報」

「Twice NAT に関する情報」

ネットワーク オブジェクトと Twice NAT の主な違い

これら 2 つの NAT タイプの主な違いは、次のとおりです。

実際のアドレスの定義方法

ネットワーク オブジェクト NAT:NAT をネットワーク オブジェクトのパラメータとして定義します。ネットワーク オブジェクトが IP ホスト、範囲、またはサブネットを指定するので、コンフィギュレーションでは実際の IP アドレスの代わりにこのオブジェクトを使用できます。ネットワーク オブジェクトの IP アドレスが実際のアドレスとして機能します。この方法では、ネットワーク オブジェクトがコンフィギュレーションの他の部分ですでに使用されていても、そのネットワーク オブジェクトに NAT を容易に追加できます。

Twice NAT:実際のアドレスとマッピング アドレスの両方のネットワーク オブジェクトまたはネットワーク オブジェクト グループを識別します。この場合、NAT はネットワーク オブジェクトのパラメータではありません。ネットワーク オブジェクトまたはグループが、NAT コンフィギュレーションのパラメータです。実際のアドレスのネットワーク オブジェクト グループ を使用できることは、Twice NAT がよりスケーラブルであることを意味します。

送信元および宛先 NAT の実装方法

ネットワーク オブジェクト NAT:各ルールは、パケットの送信元または宛先のいずれかに適用できます。つまり、送信元 IP アドレスに 1 つ、宛先 IP アドレスに 1 つと、2 つのルールが使用されることがあります。これらの 2 つのルールを相互に結び付けて、送信先と宛先の組み合わせに特定の変換を適用することはできません。

Twice NAT:1 つのルールが送信元と宛先の両方を変換します。一致するパケットは、1 つのルールだけに一致します。これ以外のルールはチェックされません。Twice NAT にオプションの宛先アドレスを設定しない場合でも、一致するパケットは、1 つの Twice NAT ルールだけに一致します。送信元および宛先は相互に結び付けられるので、送信元と宛先の組み合わせに応じて、異なる変換を適用できます。たとえば、sourceA/destinationA には、sourceA/destinationB とは異なる変換を設定できます。

NAT ルールの順序

ネットワーク オブジェクト NAT:NAT テーブルで自動的に順序付けされます。

Twice NAT:NAT テーブルで、手動で順序付けします(ネットワーク オブジェクト NAT ルールの前または後)。

詳細については、「NAT ルールの順序」を参照してください。

Twice NAT の追加機能を必要としない場合は、ネットワーク オブジェクト NAT を使用することをお勧めします。ネットワーク オブジェクト NAT は設定が容易で、Voice over IP(VoIP)などの用途では、信頼性が高い場合があります (Twice NAT は 2 つのオブジェクト間だけに適用可能であるため、VoIP では、いずれのオブジェクトにも属さない間接アドレスの変換が失敗することがあります)。

ネットワーク オブジェクト NAT に関する情報

ネットワーク オブジェクトのパラメータとして設定されているすべての NAT ルールは、 ネットワーク オブジェクト NAT ルールと見なされます。ネットワーク オブジェクト NAT は、1 つの IP アドレス、アドレスの範囲、またはサブネットであるネットワーク オブジェクトの NAT を設定するための迅速かつ容易な方法です。

ネットワーク オブジェクトを設定すると、このオブジェクトのマッピング アドレスをインライン アドレスとして、または別のネットワーク オブジェクトやネットワーク オブジェクト グループのいずれかとして識別できるようになります。

パケットがASAに入ると、送信元 IP アドレスと宛先 IP アドレスの両方がネットワーク オブジェクト NAT ルールと照合されます。個別の照合が行われる場合、パケット内の送信元 IP アドレスと宛先 IP アドレスは、個別のルールによって変換できます。これらのルールは、相互に結び付けられていません。トラフィックに応じて、異なる組み合わせのルールを使用できます。

ルールがペアになることはないので、sourceA/destinationA で sourceA/destinationB とは別の変換が行われるように指定することはできません。この種の機能には、Twice NAT を使用します(Twice NAT を使用すると、1 つのルールで送信元アドレスおよび宛先アドレスを識別できます)。

ネットワーク オブジェクト NAT の設定を開始するには、「ネットワーク オブジェクト NAT の設定(ASA 8.3 以降)」を参照してください。

Twice NAT に関する情報

Twice NAT では、1 つのルールで送信元アドレスおよび宛先アドレスの両方を識別できます。送信元アドレスと宛先アドレスの両方を指定すると、sourceA/destinationA で sourceA/destinationB とは別の変換が行われるように指定できます。

宛先アドレスはオプションです。宛先アドレスを指定する場合、宛先アドレスを自身にマッピングするか(アイデンティティ NAT)、別のアドレスにマッピングできます。宛先マッピングは、常にスタティック マッピングです。

Twice NAT では、ポート変換が設定されたスタティック NAT のサービス オブジェクトを使用できます。ネットワーク オブジェクト NAT は、インライン定義だけを受け入れます。

Twice NAT の設定を開始するには、「Twice NAT の設定(ASA 8.3 以降)」を参照してください。

図 32-16 に、2 台の異なるサーバにアクセスしている 10.1.2.0/24 ネットワークのホストを示します。ホストがサーバ 209.165.201.11 にアクセスすると、実際のアドレスは 209.165.202.129 に変換されます。ホストがサーバ 209.165.200.225 にアクセスすると、実際のアドレスは 209.165.202.130 に変換されます (この例の設定方法については、「FTP、HTTP、および SMTP のための単一アドレス(ポート変換を設定したスタティック NAT)」を参照してください)。

図 32-16 異なる宛先アドレスを使用する Twice NAT

 

図 32-17 に、送信元ポートおよび宛先ポートの使用例を示します。10.1.2.0/24 ネットワークのホストは Web サービスと Telnet サービスの両方を提供する 1 つのホストにアクセスします。ホストが Web サービスを求めてサーバにアクセスすると、実際のアドレスは 209.165.202.129 に変換されます。ホストが Telnet サービスを求めて同じサーバにアクセスすると、実際のアドレスは 209.165.202.130 に変換されます。

図 32-17 異なる宛先ポートを使用する Twice NAT

 

図 32-18 に、マッピングされるホストに接続するリモート ホストを示します。マッピングされるホストには、209.165.201.0/27 ネットワークが起点または終点となるトラフィックに限り実際のアドレスを変換するスタティック Twice NAT 変換が設定されています。209.165.200.224/27 ネットワーク用の変換は存在しません。したがって、変換済みのホストはそのネットワークに接続できず、そのネットワークのホストも変換済みのホストに接続できません。

図 32-18 宛先アドレス変換が設定されたスタティック Twice NAT

 

NAT ルールの順序

ネットワーク オブジェクト NAT ルールおよび Twice NAT ルールは、3 セクションに分割される 1 つのテーブルに保存されます。セクション 1 のルールが最初に適用され、次にセクション 2、最後にセクション 3 が適用されます。 表 32-1 に、各セクション内のルールの順序を示します。

 

表 32-1 NAT ルール テーブル

テーブルのセクション
ルールの種類
セクション内のルールの順序

セクション 1

Twice NAT

コンフィギュレーションに登場する順に、最初の一致ベースで適用されます。デフォルトでは、Twice NAT ルールはセクション 1 に追加されます。

(注) Easy VPN Remote を設定する場合、ASA はこのセクションの末尾に非表示の NAT ルールをダイナミックに追加します。非表示のルールではなく、VPN トラフィックに一致する Twice NAT ルールは、このセクションで設定しないでください。NAT エラーのために VPN が機能しない場合は、このセクションではなく、セクション 3 に NAT ルールを追加することを検討してください。

セクション 2

ネットワーク オブジェクト NAT

セクション 2 のルールは、ASAで自動的に決定されるように、次の順に適用されます。

1. スタティック ルール

2. ダイナミック ルール

各ルール タイプでは、次の順序ガイドラインが使用されます。

a. 実際の IP アドレスの数量:小から大の順。たとえば、アドレスが 1 個のオブジェクトは、アドレスが 10 個のオブジェクトよりも先に評価されます。

b. 数量が同じ場合には、アドレス番号(低から高の順)が使用されます。たとえば、10.1.1.0 は、11.1.1.0 よりも先に評価されます。

c. 同じ IP アドレスが使用される場合、ネットワーク オブジェクトの名前がアルファベット順で使用されます。たとえば、abracadabra は catwoman よりも先に評価されます。

セクション 3

Twice NAT

セクション 3 のルールは、コンフィギュレーションに登場する順に、最初の一致ベースで適用されます。Twice NAT ルールを追加するときには、このルールをセクション 3 に追加するかどうかを指定できます。

たとえばセクション 2 のルールでは、ネットワーク オブジェクト内に定義されている次の IP アドレスがあるとします。

192.168.1.0/24(スタティック)

192.168.1.0/24(ダイナミック)

10.1.1.0/24(スタティック)

192.168.1.1/32(ダイナミック)

172.16.1.0/24(ダイナミック)(オブジェクト def)

172.16.1.0/24(ダイナミック)(オブジェクト abc)

この結果、使用される順序は次のとおりです。

192.168.1.1/32(ダイナミック)

10.1.1.0/24(スタティック)

192.168.1.0/24(スタティック)

172.16.1.0/24(ダイナミック)(オブジェクト abc)

172.16.1.0/24(ダイナミック)(オブジェクト def)

192.168.1.0/24(ダイナミック)

NAT インターフェイス

NAT ルールを設定して任意のインターフェイス(つまり、すべてのインターフェイス)に適用できます。または、特定の実際のインターフェイスおよびマッピング インターフェイスを識別できます。実際のアドレスには任意のインターフェイスを指定できます。マッピング インターフェイスには特定のインターフェイスを指定できます。または、その逆も可能です。

たとえば、複数のインターフェイスで同じプライベート アドレスを使用し、外部へのアクセス時にはすべてのインターフェイスを同じグローバル プールに変換する場合、実際のアドレスに任意のインターフェイスを指定し、マッピング アドレスには外部インターフェイスを指定します(図 32-19)。

図 32-19 任意のインターフェイスの指定

 


) トランスペアレント モードの場合は、特定の送信元インターフェイスおよび宛先インターフェイスを選択する必要があります。


NAT パケットのルーティング

ASA は、マッピング アドレスに送信されたすべてのパケットの宛先となる必要があります。また、変換されたパケットの出力インターフェイスも決定する必要があります。この項では、NAT が設定されたパケットの受け入れと配信を ASA が処理する方法について説明します。次の項目を取り上げます。

「マッピング アドレスとルーティング」

「リモート ネットワークのトランスペアレント モード ルーティングの要件」

「出力インターフェイスの決定」

マッピング アドレスとルーティング

実際のアドレスをマッピング アドレスに変換する場合は、選択したマッピング アドレスによって、マッピング アドレスのルーティング(必要な場合)を設定する方法が決定されます。

マッピング IP アドレスに関するその他のガイドラインについては、「ネットワーク オブジェクト NAT の設定(ASA 8.3 以降)」および「Twice NAT の設定(ASA 8.3 以降)」を参照してください。

次のマッピング アドレス タイプを参照してください。

マッピング インターフェイスと同じネットワーク上のアドレス

マッピング インターフェイスと同じネットワーク上のアドレスを使用した場合、ASA はプロキシ ARP を使用してマッピング アドレスのすべての ARP 要求に応答することによって、マッピング アドレスを宛先とするトラフィックを代行受信します。この方法では、ASAがその他のネットワークのゲートウェイである必要がないため、ルーティングが簡略化されます。このソリューションは、外部ネットワークに十分な数のフリー アドレスが含まれている場合に最も適しており、ダイナミック NAT またはスタティック NAT などの 1:1 変換を使用している場合は考慮が必要です。ダイナミック PAT ではアドレス数が少なくても使用できる変換の数が大幅に拡張されるので、外部ネットワークで使用できるアドレスが少ししかない場合でも、この方法を使用できます。PAT では、マッピング インターフェイスの IP アドレスも使用できます。


) マッピング インターフェイスを任意のインターフェイスに設定して、同じネットワーク上のマッピング アドレスをマッピング インターフェイスの 1 つとして指定する場合、異なるインターフェイスでこのマッピング アドレスに対する ARP 要求を着信するなら、入力インターフェイス上でこのネットワークに対する ARP エントリを手動で設定して、その MAC アドレスを指定する必要があります([Configuration] > [Device Management] > [Advanced] > [ARP] > [ARP Static Table] を参照)。通常、マッピング インターフェイスに任意のインターフェイスを指定して、マッピング アドレスの固有のネットワークを使用すると、この状況は発生しません。


固有のネットワーク上のアドレス

マッピング インターフェイスで使用可能なアドレスより多くのアドレスが必要な場合は、別のサブネット上のアドレスを指定できます。アップストリーム ルータには、ASA を指しているマッピング アドレスのスタティック ルートが必要です。また、ルーテッド モードの場合は、ASA にマッピング アドレスのスタティック ルートを設定してから、ルーティング プロトコルを使用してルートを再配布することもできます。トランスペアレント モードの場合は、実際のホストが直接接続されていれば、ASA を指すアップストリーム ルータにスタティック ルートを設定します。8.3 ではグローバル管理 IP アドレスを指定し、8.4(1) 以降ではブリッジ グループ IP アドレスを指定します。トランスペアレント モードのリモート ホストの場合は、アップストリーム ルータのスタティック ルートで、代わりにダウンストリーム ルータの IP アドレスを指定できます。

実際のアドレスと同じアドレス(アイデンティティ NAT)

(8.3(1)、8.3(2)、8.4(1))アイデンティティ NAT のデフォルト動作で、プロキシ ARP はディセーブルにされます。これは設定できません。

(8.4(2) 以降)アイデンティティ NAT のデフォルト動作で、プロキシ ARP はイネーブルにされ、他のスタティック NAT ルールと一致します。必要に応じてプロキシ ARP をディセーブルにできます。 :必要に応じて通常のスタティック NAT のプロキシ ARP をディセーブルにすることもできます。その場合には、アップストリーム ルータに適切なルートが確実に設定されていなくてはなりません。

アイデンティティ NAT の場合、通常はプロキシ ARP が不要で、場合によっては接続性に関する問題を引き起こす可能性があります。たとえば、「any」の IP アドレスに対して広範囲のアイデンティティ NAT ルールを設定した場合は、プロキシ ARP をイネーブルのままにしておくと、マッピング インターフェイスに直接接続されたネットワーク上のホストに問題が発生する可能性があります。この場合は、マッピング ネットワーク上のホストが同じネットワーク上の別のホストと通信する場合に、ARP 要求に含まれるアドレスが NAT ルールと一致(「any」アドレスに一致)します。このとき、実際にはASA 向けのパケットでない場合でも、ASA はこのアドレスの ARP をプロキシします (この問題は、Twice NAT ルールが設定されている場合にも発生します。NAT ルールは送信元と宛先のアドレス両方に一致する必要がありますが、プロキシ ARP 判定は「送信元」アドレスに対してのみ行われます)。実際のホストの ARP 応答の前に ASA の ARP 応答を受信した場合、トラフィックは誤って ASA に送信されます(図 32-20を参照)。

図 32-20 アイデンティティ NAT に関するプロキシ ARP の問題

 

まれに、アイデンティティ NAT に対してプロキシ ARP が必要になります(仮想 Telnet など)。ネットワーク アクセスに AAA を使用する場合、ホストは他のトラフィックが通過する前に Telnet のようなサービスを使用して ASA で認証を受ける必要があります。ASA に仮想 Telnet サーバを設定すると、必要なログインを提供できます。外部から仮想 Telnet アドレスにアクセスする場合は、プロキシ ARP 機能専用アドレスのアイデンティティ NAT ルールを設定する必要があります。仮想 Telnet の内部プロセスにより、プロキシ ARP を使用すると ASA が NAT ルールに従って送信元インターフェイスからトラフィックを送信せず、トラフィックを仮想 Telnet アドレス宛のままにすることができます (図 32-21 を参照)。

図 32-21 プロキシ ARP と仮想 Telnet

 

リモート ネットワークのトランスペアレント モード ルーティングの要件

直接接続されたネットワーク上にないホストの NAT を ASA が実行する場合は、そのネットワークの ASA にスタティック ルートを設定する必要があります。インスペクションと NAT をイネーブルにしている場合は、(VoIP や DNS トラフィックなど)少なくとも ASA から 1 ホップ離れている埋め込み IP アドレスにスタティック ルートを設定することも必要です。

出力インターフェイスの決定

トランスペアレント モードでは、ASA は NAT コンフィギュレーションを使用して NAT パケットの出力インターフェイスを決定します。したがって、NAT コンフィギュレーションの一貫として、送信元インターフェイスおよび宛先インターフェイスを指定する必要があります。

ルーテッド モードでは、ASA は次のようにして NAT パケットの出力インターフェイスを決定します。

オプションのインターフェイスを指定する場合、ASA によって NAT コンフィギュレーションが使用されて、出力インターフェイスが決定されます。(8.3(1) ~ 8.4(1))唯一の例外はアイデンティティ NAT です。アイデンティティ NAT では、NAT コンフィギュレーションに関係なく、常にルート ルックアップが使用されます。(8.4(2) 以降)アイデンティティ NAT の場合、デフォルト動作は NAT コンフィギュレーションの使用ですが、代わりにルート ルックアップを常に使用するオプションがあります。

特定のインターフェイスを指定しない場合、ASA はルート ルックアップを使用して出力インターフェイスを決定します。

DNS および NAT

応答内のアドレスを NAT コンフィギュレーションと一致するアドレスに置き換えて、DNS 応答を修正するようにASAを設定することが必要になる場合があります。DNS 修正は、各トランスレーション ルールを設定するときに設定できます。

この機能は、NAT ルールに一致する DNS 応答で A レコード(アドレス レコード)をリライトします。マッピング インターフェイスから他のインターフェイスに移動する DNS 応答では、A レコードはマップされた値から実際の値へリライトされます。逆に、任意のインターフェイスからマッピング インターフェイスに移動する DNS 応答では、A レコードは実際の値からマップされた値へリライトされます。


) Twice NAT ルールを設定する場合、送信元アドレスおよび宛先アドレスを指定すると、DNS 修正を設定できません。これらの種類のルールでは、A と B に向かった場合に 1 つのアドレスに対して異なる変換が行われる可能性があります。B.したがって、ASAは、DNS 応答内の IP アドレスを適切な Twice NAT ルールに一致させることができません。DNS 応答には、DNS 要求を求めたパケット内の送信元アドレスと宛先アドレスの組み合わせに関する情報が含まれません。


図 32-22 に、outside インターフェイスからアクセス可能な DNS サーバを示します。ftp.cisco.com というサーバが内部インターフェイス上にあります。ftp.cisco.com の実際のアドレス(10.1.3.14)を、外部ネットワーク上で可視のマッピング アドレス(209.165.201.10)にスタティックに変換するように、ASAを設定します この場合、このスタティック ルールで DNS 応答修正をイネーブルにする必要があります。これにより、実際のアドレスを使用して ftp.cisco.com にアクセスすることを許可されている内部ユーザは、マッピング アドレスではなく実際のアドレスを DNS サーバから受信できるようになります。内部ホストが ftp.cisco.com のアドレスを求める DNS 要求を送信すると、DNS サーバは応答でマッピング アドレス(209.165.201.10)を示します。ASA は、内部サーバのスタティック ルールを参照し、DNS 応答内のアドレスを 10.1.3.14 に変換します。DNS 応答修正をイネーブルにしない場合、内部ホストは ftp.cisco.com に直接アクセスする代わりに、209.165.201.10 にトラフィックを送信することを試みます。

図 32-22 DNS 応答修正:Outside 上の DNS サーバ

 

図 32-23 に、外部 DNS サーバから DMZ ネットワーク上にある ftp.cisco.com の IP アドレスを要求する内部ネットワークのユーザを示します。DNS サーバは、ユーザが DMZ ネットワーク上に存在しない場合でも、外部と DMZ 間のスタティック ルールに従って応答でマッピング アドレス(209.165.201.10)を示します。ASA は、DNS 応答内のアドレスを 10.1.3.14 に変換します。ユーザが実際のアドレスを使用して ftp.cisco.com にアクセスする必要がある場合、これ以上の設定は必要ありません。内部と DMZ 間にもスタティック ルールがある場合は、このルールに対して DNS 応答修正もイネーブルにする必要があります。このとき、DNS 応答は 2 回修正されます。この場合、ASA は内部と DMZ 間のスタティック ルールに従って、DNS 応答内のアドレスを再度 192.168.1.10 に変換します。

図 32-23 DNS 応答修正:別々のネットワーク上の DNS サーバ、ホスト、サーバ

 

図 32-24 に、外部の Web サーバと DNS サーバを示します。ASAには、外部サーバ用のスタティック変換があります。この場合、ftp.cisco.com のアドレスを DNS サーバに要求すると、DNS サーバは応答で実際のアドレス 209.165.20.10 を示します。ftp.cisco.com のマッピング アドレス(10.1.2.56)が内部ユーザによって使用されるようにするには、スタティック変換に対して DNS 応答修正を設定する必要があります。

図 32-24 DNS 応答修正:ホスト ネットワーク上の DNS サーバ

 

関連情報

ネットワーク オブジェクト NAT を設定するには、「ネットワーク オブジェクト NAT の設定(ASA 8.3 以降)」 を参照してください。

Twice NAT を設定するには、「Twice NAT の設定(ASA 8.3 以降)」を参照してください