ASDM を使用した Cisco ASA 5500 シリーズ コンフィギュレーション ガイド ASA 5505、ASA 5510、ASA 5520、ASA 5540、ASA 5550、ASA 5580、ASA 5512-X、ASA 5515-X、ASA 5525-X、ASA 5545-X、ASA 5555-X、および ASA 5585-X 用ソフトウェア バージョン 8.4 および 8.6
アプリケーション レイヤ プロトコル インスペクションの準備
アプリケーション レイヤ プロトコル インスペクションの準備
発行日;2012/09/25 | 英語版ドキュメント(2012/06/20 版) | ドキュメントご利用ガイド | ダウンロード ; この章pdf , ドキュメント全体pdf (PDF - 22MB) | フィードバック

目次

アプリケーション レイヤ プロトコル インスペクションの準備

アプリケーション レイヤ プロトコル インスペクションに関する情報

インスペクション エンジンの動作

アプリケーション プロトコル インスペクションを使用するタイミング

ガイドラインと制限事項

デフォルト設定値

アプリケーション レイヤ プロトコル インスペクションの設定

アプリケーション レイヤ プロトコル インスペクションの準備

この章では、アプリケーション レイヤ プロトコル インスペクションを設定する方法について説明します。インスペクション エンジンは、ユーザのデータ パケット内に IP アドレッシング情報を埋め込むサービスや、ダイナミックに割り当てられるポート上でセカンダリ チャネルを開くサービスに必要です。これらのプロトコルでは、高速パスでパケットを渡すのではなく、ASA で詳細なパケット インスペクションを行う必要があります(高速パスの詳細については、「ステートフル インスペクションの概要」を参照してください)。そのため、インスペクション エンジンがスループット全体に影響を与えることがあります。ASA では、デフォルトでいくつかの一般的なインスペクション エンジンがイネーブルになっていますが、ネットワークによっては他のインスペクション エンジンをイネーブルにしなければならない場合があります。

この章は、次の項で構成されています。

「アプリケーション レイヤ プロトコル インスペクションに関する情報」

「ガイドラインと制限事項」

「デフォルト設定値」

「アプリケーション レイヤ プロトコル インスペクションの設定」

アプリケーション レイヤ プロトコル インスペクションに関する情報

この項は、次の内容で構成されています。

「インスペクション エンジンの動作」

「アプリケーション プロトコル インスペクションを使用するタイミング」

インスペクション エンジンの動作

図 46-1 に示されているように、ASA は基本動作に 3 種類のデータベースを使用します。

アクセス リスト:特定のネットワーク、ホスト、およびサービス(TCP/UDP ポート番号)に基づく接続の認証と認可のために使用されます。

インスペクション:事前定義済みの一連のスタティックなアプリケーションレベルのインスペクション機能を含みます。

接続(XLATE および CONN テーブル):確立済みの各接続についての状態および他の情報を保持します。この情報は、確立済みのセッション内でトラフィックを効率的に転送するため、アダプティブ セキュリティ アルゴリズムおよびカットスルー プロキシによって使用されます。

図 46-1 インスペクション エンジンの動作

 

図 46-1 では、動作にはその発生順に番号が付けられており、次でその動作について説明します。

1. TCP SYN パケットがASAに到着して、新しい接続を確立します。

2. ASA はアクセス リスト データベースをチェックして、接続が許可されるかどうかを判定します。

3. ASA は接続データベース(XLATE および CONN テーブル)に新しいエントリを作成します。

4. ASA はインスペクション データベースをチェックして、接続にアプリケーションレベルのインスペクションが必要かどうかを判定します。

5. アプリケーション インスペクション エンジンがパケットに必要な処理を完了した後、ASA はパケットを宛先システムに転送します。

6. 宛先システムは初期要求に応答します。

7. ASA は応答パケットを受信し、接続データベースで接続を検索して、確立済みのセッションに属しているのでパケットを転送します。

ASA のデフォルト コンフィギュレーションには、サポートされるプロトコルを特定の TCP または UDP ポート番号と関連付けて、必要とされる特殊な処理を識別する、一連のアプリケーション インスペクション エントリが含まれます。

アプリケーション プロトコル インスペクションを使用するタイミング

ユーザが接続を確立すると、ASA はアクセス リストと照合してパケットをチェックし、アドレス変換を作成し、高速パスでのセッション用にエントリを作成して、後続のパケットが時間のかかるチェックをバイパスできるようにします。ただし、高速パスは予測可能なポート番号に基づいており、パケット内部のアドレス変換を実行しません。

多くのプロトコルは、セカンダリの TCP ポートまたは UDP ポートを開きます。既知のポートで初期セッションが使用され、動的に割り当てられたポート番号がネゴシエーションされます。

パケットに IP アドレスを埋め込むアプリケーションもあります。この IP アドレスは送信元アドレスと一致する必要があり、通常、ASAを通過するときに変換されます。

これらのアプリケーションを使用する場合は、アプリケーション インスペクションをイネーブルにする必要があります。

IP アドレスを埋め込むサービスに対してアプリケーション インスペクションをイネーブルにすると、ASA は埋め込まれたアドレスを変換し、チェックサムや変換の影響を受けたその他のフィールドを更新します。

ダイナミックに割り当てられたポートを使用するサービスに対してアプリケーション インスペクションをイネーブルにすると、ASA はセッションをモニタしてダイナミックに割り当てられたポートを特定し、所定のセッションの間、それらのポートでのデータ交換を許可します。

ガイドラインと制限事項

この項では、この機能のガイドラインと制限事項について説明します。

コンテキスト モードのガイドライン

シングル コンテキスト モードとマルチ コンテキスト モードでサポートされています。

ファイアウォール モードのガイドライン

ルーテッド ファイアウォール モードとトランスペアレント ファイアウォール モードでサポートされています。

フェールオーバーのガイドライン

インスペクションが必要なマルチメディア セッションのステート情報は、ステートフル フェールオーバーのステート リンク経由では渡されません。GTP は例外で、ステート リンクで複製されます。

IPv6 のガイドライン

IPv6 は次のインスペクションでサポートされています。

FTP

HTTP

ICMP

SIP

SMTP

IPsec パススルー

その他のガイドラインと制限事項

一部のインスペクション エンジンは、PAT、NAT、外部 NAT、または同一セキュリティ インターフェイス間の NAT をサポートしません。NAT サポートの詳細については、「デフォルト設定値」を参照してください。

すべてのアプリケーション インスペクションについて、適応型セキュリティ アプライアンスはアクティブな同時データ接続の数を 200 接続に制限します。たとえば、FTP クライアントが複数のセカンダリ接続を開く場合、FTP インスペクション エンジンはアクティブな接続を 200 だけ許可して 201 番目の接続からはドロップし、適応型セキュリティ アプライアンスはシステム エラー メッセージを生成します。

検査対象のプロトコルは高度な TCP ステート トラッキングの対象となり、これらの接続の TCP ステートは自動的には複製されません。これらの接続がスタンバイ装置に複製されている間、TCP ステートを再確立するベスト エフォート型の試みが行われます。

インスペクション リセット動作

リセット アクションを使用するようにインスペクション エンジンを設定した場合、パケットがリセットをトリガーすると、次の条件下で、ASA は TCP リセットを送信します。

service resetoutbound コマンドがイネーブルな場合、ASA は TCP リセットを内部ホストに送信します。( service resetoutbound コマンドはデフォルトではディセーブルになっています)。

service resetinbound コマンドがイネーブルな場合、ASA は TCP リセットを外部ホストに送信します。( service resetinbound コマンドはデフォルトではディセーブルになっています)。

詳細については、ASA コマンド リファレンスの service コマンドを参照してください。

この動作により、リセット アクションが ASA および内部サーバ上の接続を確実にリセットするため、DoS 攻撃に対応できます。外部ホストの場合、ASA はデフォルトでリセットを送信しないため、情報が TCP リセットを介して公開されることはありません。

デフォルト設定値

デフォルトでは、すべてのデフォルト アプリケーション インスペクション トラフィックに一致するポリシーがコンフィギュレーションに含まれ、すべてのインスペクションがすべてのインターフェイスのトラフィックに適用されます(グローバル ポリシー)。デフォルト アプリケーション インスペクション トラフィックには、各プロトコルのデフォルト ポートへのトラフィックが含まれます。適用できるグローバル ポリシーは 1 つだけなので、グローバル ポリシーを変更する(標準以外のポートにインスペクションを適用する場合や、デフォルトでイネーブルになっていないインスペクションを追加する場合など)には、デフォルトのポリシーを編集するか、デフォルトのポリシーをディセーブルにして新しいポリシーを適用する必要があります。

表 46-1 にサポートされているすべてのインスペクション、デフォルトのクラス マップで使用されるデフォルトのポート、およびデフォルトでオンになっているインスペクション エンジン(太字)を示します。この表には、NAT に関する制限事項も含まれています。

 

表 46-1 サポートされているアプリケーション インスペクション エンジン

アプリケーション1
デフォルト ポート
NAT に関する制限事項
標準2
コメント

CTIQBE

TCP/2748

拡張 PAT はサポートされません。

--

--

DCERPC

TCP/135

--

--

--

DNS over UDP

UDP/53

NAT サポートは、WINS 経由の名前解決では使用できません。

RFC 1123

PTR レコードは変更されません。

FTP

TCP/21

--

RFC 959

--

GTP

UDP/3386
UDP/2123

拡張 PAT はサポートされません。

--

特別なライセンスが必要です。

H.323 H.225 および RAS

TCP/1720 UDP/1718
UDP (RAS) 1718-1719

同一セキュリティのインターフェイス上の NAT はサポートされません。

スタティック PAT はサポートされません。

拡張 PAT はサポートされません。

ITU-T H.323、H.245、H225.0、Q.931、Q.932

--

HTTP

TCP/80

--

RFC 2616

ActiveX と Java を除去する場合の MTU 制限に注意してください。MTU が小さすぎて Java タグまたは ActiveX タグを 1 つのパケットに納められない場合は、除去の処理は行われません。

ICMP

--

--

--

すべての ICMP トラフィックは、デフォルトのクラス マップで照合されます。

ICMP ERROR

--

--

--

すべての ICMP トラフィックは、デフォルトのクラス マップで照合されます。

ILS(LDAP)

TCP/389

拡張 PAT はサポートされません。

--

--

Instant Messaging(IM; インスタント メッセージ)

クライアントにより異なる

拡張 PAT はサポートされません。

RFC 3860

--

IP オプション

--

--

RFC 791、RFC 2113

すべての IP オプション トラフィックは、デフォルトのクラス マップで照合されます。

MGCP

UDP/2427、2727

拡張 PAT はサポートされません。

RFC 2705bis-05

--

MMP

TCP 5443

拡張 PAT はサポートされません。

--

--

NetBIOS Name Server over IP

UDP/137、138(送信元ポート)

拡張 PAT はサポートされません。

--

NetBIOS は、NBNS UDP ポート 137 および NBDS UDP ポート 138 に対してパケットの NAT 処理を実行することでサポートされます。

PPTP

TCP/1723

--

RFC 2637

--

RADIUS Accounting

1646

--

RFC 2865

--

RSH

TCP/514

PAT はサポートされません。

Berkeley UNIX

--

RTSP

TCP/554

拡張 PAT はサポートされません。

外部 NAT はサポートされません。

RFC 2326、2327、1889

HTTP クローキングは処理しません。

SIP

TCP/5060
UDP/5060

外部 NAT はサポートされません。

同一セキュリティのインターフェイス上の NAT はサポートされません。

拡張 PAT はサポートされません。

RFC 2543

--

SKINNY(SCCP)

TCP/2000

外部 NAT はサポートされません。

同一セキュリティのインターフェイス上の NAT はサポートされません。

拡張 PAT はサポートされません。

--

一定の条件下で、Cisco IP Phone 設定をアップロード済みの TFTP は処理しません。

SMTP および ESMTP

TCP/25

--

RFC 821、1123

--

SNMP

UDP/161、162

NAT および PAT はサポートされません。

RFC 1155、1157、1212、1213、1215

v.2 RFC 1902 ~ 1908、v.3 RFC 2570 ~ 2580

SQL*Net

TCP/1521

拡張 PAT はサポートされません。

--

v.1 および v.2

Sun RPC over UDP および TCP

UDP/111

拡張 PAT はサポートされません。

--

デフォルトのルールには UDP ポート 111 が含まれています。TCP ポート 111 の Sun RPC インスペクションをイネーブルにする場合は、TCP ポート 111 を照合する新しいルールを作成し、Sun RPC インスペクションを実行する必要があります。

TFTP

UDP/69

--

RFC 1350

ペイロード IP アドレスは変換されません。

WAAS

--

拡張 PAT はサポートされません。

--

--

XDCMP

UDP/177

拡張 PAT はサポートされません。

--

--

1.デフォルト ポートに対してデフォルトでイネーブルになっているインスペクション エンジンは太字で表記されています。

2.ASA は、これらの標準に準拠していますが、検査対象のパケットには準拠を強制しません。たとえば、各 FTP コマンドは特定の順序である必要がありますが、ASA によってその順序を強制されることはありません。

アプリケーション レイヤ プロトコル インスペクションの設定

この機能は、セキュリティ ポリシー ルールを使用してサービス ポリシーを作成します。サービス ポリシーでは、一貫性と柔軟性を備えた方法で ASA 機能を設定できます。たとえば、サービス ポリシーを使用すると、すべての TCP アプリケーションに適用されるタイムアウト コンフィギュレーションではなく、特定の TCP アプリケーションに固有のタイムアウト コンフィギュレーションを作成できます。詳細については、「サービス ポリシーの設定」を参照してください。

一部のアプリケーションでは、デフォルトでインスペクションがイネーブルになっています。詳細については、「デフォルト設定値」を参照してください。この項を参照してインスペクション ポリシーを変更してください。

手順の詳細


ステップ 1 [Configuration] > [Firewall] > [Service Policy Rules ] の順に選択します。

ステップ 2 「通過トラフィックのサービス ポリシー ルールの追加」を参照して、サービス ポリシー ルールを追加または編集します。

標準以外のポートを照合する場合は、非標準ポート用の新しいルールを作成します。各インスペクション エンジンの標準ポートについては、「デフォルト設定値」を参照してください。必要に応じて同じサービス ポリシー内に複数のルールを組み合わせることができるため、照合するトラフィックに応じたルールを作成できます。ただし、トラフィックがインスペクション アクションを含むルールと一致し、その後同様にインスペクション アクションを含む別のルールとも一致した場合、最初に一致したルールだけが使用されます。

ステップ 3 [Edit Service Policy Rule] > [Rule Actions] ダイアログボックスで、[Protocol Inspection] タブをクリックします。

新しいルールの場合、[Add Service Policy Rule Wizard - Rule Actions] というダイアログボックス名が表示されます。

ステップ 4 適用する各インスペクション タイプを選択します。

ステップ 5 (任意)一部のインスペクション エンジンでは、トラフィックにインスペクションを適用するときの追加パラメータを制御できます。インスペクション マップを設定するには、各インスペクション タイプの [Configure] をクリックします。

既存のマップを選択することも、新しいマップを作成することもできます。[Configuration] > [Firewall] > [Objects] > [Inspect Maps] ペインから、インスペクション マップを事前に定義できます。

ステップ 6 必要に応じて、他の [Rule Actions] タブを使用し、このルールに対して他の機能を設定できます。

ステップ 7 [OK] をクリックします(またはウィザードで [Finish] をクリックします)。