Cisco IOS マルチプロトコル ラベル スイッチング コ ンフィギュレーション ガイド リリース15.1
マルチプロトコル ラベル スイッチングの概要
マルチプロトコル ラベル スイッチングの概要
発行日;2012/01/16 | ドキュメントご利用ガイド | ダウンロード ; この章pdf , ドキュメント全体pdf (PDF - 14MB) | フィードバック

目次

マルチプロトコル ラベル スイッチングの概要

MPLS/タグ スイッチングの用語

MPLS コマンドと保存設定

MPLS/タグ スイッチング CLI コマンドの概要

利点

ラベル スイッチング機能

ラベル バインディングの配布

MPLS およびルーティング

MPLS トラフィック エンジニアリング

MPLS トラフィック エンジニアリングを使用する理由

MPLS トラフィック エンジニアリングのしくみ

MPLS バーチャル プライベート ネットワーク

MPLS のサービス品質

IP precedence フィールドでの QoS の指定

マルチプロトコル ラベル スイッチングの概要

この章では、Multiprotocol Label Switching(MPLS; マルチプロトコル ラベル スイッチング)配布プロトコルについて説明します。MPLS は、高性能のパケット転送テクノロジーであり、データ リンク レイヤ(レイヤ 2)スイッチングのパフォーマンスおよびトラフィック管理機能と、ネットワーク レイヤ(レイヤ 3)ルーティングのスケーラビリティ、柔軟性、およびパフォーマンスが統合されています。これにより、サービス プロバイダーは急激な発展に伴って生じる課題に対応できるようになります。また、既存のインフラストラクチャを犠牲にしなくても、ディファレンシエーテッド サービスの機会が提供されます。

MPLS アーキテクチャは、次のように柔軟性にきわめて優れています。

データは、レイヤ 2 テクノロジーの任意の組み合せを使用して転送できます。

サポートは、すべてのレイヤ 3 プロトコルに対して提供されています。

今日のネットワークで提供される何よりも優れたスケーリングが可能です。

具体的には、MPLS を使用すると、ATM スイッチド ネットワーク上で IP サービスの効率的な提供が可能になります。MPLS では、完全なルータベースのインターネット バックボーン上で送信元と宛先の間にさまざまなルートを作成できます。MPLS を使用するサービス プロバイダーは、費用を抑え、収益と生産性を向上させることができます。


ルータ上でラベル スイッチングを行うには、そのルータでシスコ エクスプレス フォワーディングをイネーブルにする必要があります。設定情報については、シスコ エクスプレス フォワーディング機能のマニュアルを参照してください。


この章では、MPLS について説明します。次の項で構成されています。

「MPLS/タグ スイッチングの用語」

「MPLS コマンドと保存設定」

「MPLS/タグ スイッチング CLI コマンドの概要」

「利点」

「ラベル スイッチング機能」

「ラベル バインディングの配布」

「MPLS およびルーティング」

「MPLS トラフィック エンジニアリング」

「MPLS バーチャル プライベート ネットワーク」

「MPLS のサービス品質」

MPLS/タグ スイッチングの用語

Cisco IOS Release 12.1 以降では、タグ スイッチング配布プロトコルの代わりに MPLS 配布プロトコルが使用されています。タグ スイッチングの Command-Line Interface(CLI; コマンドライン インターフェイス)コマンドはサポートされていますが、今後のリリースでは廃止される予定です。

表 1 に、タグ スイッチング用語(このマニュアルの以前のリリースで使用)とそれに対応する MPLS 用語(このマニュアルで使用)を示します。

 

表 1 タグ スイッチング用語と MPLS 用語の対応表

(旧)タグ スイッチング用語
(新)MPLS 用語

タグ スイッチング

マルチプロトコル ラベル スイッチング(MPLS)

タグ(タグ スイッチングの短縮形)

MPLS

タグ(項目またはパケット)

ラベル

TDP(タグ配布プロトコル)

LDP(ラベル配布プロトコル)

Cisco TDP と LDP(MPLS ラベル配布プロトコル)の機能はほとんど同じですが、メッセージ形式に互換性はなく、異なる手順が一部使用されています。シスコは、TDP から完全準拠の LDP に移行しています。

タグ スイッチド

ラベル スイッチド

TFIB(タグ転送情報ベース)

LFIB(ラベル転送情報ベース)

TSR(タグ スイッチング ルータ)

LSR(ラベル スイッチング ルータ)

TSC(タグ スイッチ コントローラ)

LSC(ラベル スイッチ コントローラ)

ATM-TSR(ATM タグ スイッチ ルータ)

ATM-LSR(ATM ラベル スイッチ ルータ、Cisco BPX 8650 スイッチなど)

TVC(タグ VC、タグ仮想回線)

LVC(ラベル VC、ラベル仮想回線)

TSP(タグ スイッチ パス)

LSP(ラベル スイッチ パス)

XTag ATM(拡張タグ ATM ポート)

XmplsATM(拡張 MPLS ATM ポート)

MPLS コマンドと保存設定

タグ スイッチングから MPLS への移行期間中、コンフィギュレーション コマンドに MPLS 形式とタグ スイッチング形式の両方が存在する場合、タグ スイッチング バージョンは保存設定に書き込まれます。たとえば、次のコマンドを発行して、ルータの POS インターフェイスに対して MPLS ホップバイホップ転送を設定できます。

Router# configure terminal
Router(config)# interface POS3/0
Router(config-if)# mpls ip
 

この例では、mpls ip コマンドにはタグ スイッチング形式(tag-switching ip)が存在します。これらのコマンドを入力し、この設定を保存するか、show running configuration コマンドを使用して実行コンフィギュレーションを表示すると、コンフィギュレーション コマンドは次のように表示されます。

interface POS3/0
tag-switching ip
 

(タグ スイッチング形式と MPLS 形式の両方が存在する)コマンドのタグ スイッチング形式を保存すると、下位互換性が確保されます。新しいルータ ソフトウェア イメージを使用して設定を変更して書き込んでおくと、MPLS 形式のコマンドをサポートしていない以前のソフトウェア バージョンでも、その新しいイメージによって作成された設定を使用できるようになります。

タグ スイッチング形式のコマンドを使用した場合、タグ スイッチング コマンドをサポートし、新しい MPLS コマンドをサポートしていない以前のソフトウェアでインターフェイス コンフィギュレーションを正しく解釈できます。

MPLS/タグ スイッチング CLI コマンドの概要

表 2 に、汎用目的の MPLS コマンドの概要を示します。特に指定のないかぎり、これらの MPLS コマンドは既存のタグ スイッチング コマンドを基に作成され、既存のコマンドと類似した構文が維持されています。これが、新しい MPLS 機能を実装する基礎となっています。タグ スイッチング バージョンのコマンドは、今後のリリースでは廃止される予定です。

 

表 2 このマニュアルに記載の MPLS コマンドの概要

コマンド
対応するタグ スイッチング コマンド
説明

debug mpls adjacency

debug tag-switching adjacency

隣接データベース内のラベル スイッチング エントリに対する変更を表示します。

debug mpls events

debug tag-switching events

重要な MPLS イベントに関する情報を表示します。

debug mpls lfib cef

debug tag-switching tfib cef

CEF ルートの追加、変更、または削除時に作成、解決、および無効化されるラベル書き換えに関する詳細情報を出力します。

debug mpls lfib enc

debug tag-switching tfib enc

ラベル書き換えが作成または更新され、Label Forwarding Information Base(LFIB; ラベル転送情報ベース)に格納されるときのラベルのカプセル化に関する詳細情報を出力します。

debug mpls lfib lsp

debug tag-switching tfib tsp

TSP トンネルの追加または削除時に作成および削除されるラベル書き換えに関する詳細情報を出力します。

debug mpls lfib state

debug tag-switching tfib state

ラベル スイッチングをイネーブルまたはディセーブルにしたときにどうなるかをトレースします。

debug mpls lfib struct

debug tag-switching tfib struct

LFIB 関連のデータ構造(LFIB 自体、ラベル書き換え、ラベル情報データなど)の割り当てと解放をトレースします。

debug mpls packets

debug tag-switching packets

ホスト ルータによってスイッチングされるラベル付きパケットを表示します。

nterface atm

interface atm

インターフェイス コンフィギュレーション モードを開始し、インターフェイス タイプとして ATM を指定し、その ATM インターフェイスでのサブインターフェイスの作成をイネーブルにします。

mpls atm control-vc

tag-switching atm control-vc

ラベル スイッチング ピア デバイスへの初期リンクに使用する VPI および VCI を設定します。

mpls atm vpi

tag-switching atm vpi

ラベル VC の VPI フィールドで使用する値の範囲を設定します。

mpls ip(グローバル コンフィギュレーション)

tag-switching ip(グローバル コンフィギュレーション)

プラットフォーム用に通常ルーティングされるパスに沿って IPv4 パケットの MPLS 転送が行われるようにします。

mpls ip(インターフェイス コンフィギュレーション)

tag-switching ip(インターフェイス コンフィギュレーション)

特定のインターフェイス用に通常ルーティングされるパスに沿って IPv4 パケットの MPLS 転送が行われるようにします。

mpls ip default-route

tag-switching ip default-route

IP デフォルト ルートに関連付けられているラベルの配布をイネーブルにします。

mpls ip propagate-ttl

tag-switching ip propagate-ttl

IP パケットが MPLS でカプセル化された場合の Time-to-Live(TTL; 存続可能時間)値を設定します。

mpls ip ttl-expiration pop

該当なし

パケット内のラベルの数に応じて、グローバル IP ルーティング テーブルまたは元のラベル スタックを使用してパケットを転送します。

mpls label range

tag-switching tag-range downstream

mpls mtu

tag-switching mtu

ラベル付きパケットのインターフェイス単位の Maximum Transmission Unit(MTU; 最大伝送ユニット)を設定します。

show mpls forwarding-table

show tag-switching forwarding-table

Label Forwarding Information Base(LFIB; ラベル転送情報ベース)の内容を表示します。

show mpls interfaces

show tag-switching interfaces

ラベル スイッチング用として設定されている 1 つまたは複数のインターフェイスに関する情報を表示します。

show mpls label range

該当なし

パケット インターフェイスで使用できるローカル ラベルの範囲を表示します。

利点

MPLS は、サービス プロバイダー ネットワークに対して、次のような大きな利点をもたらします。

Virtual Private Network(VPN; バーチャル プライベート ネットワーク)に対するスケーラブルなサポート:MPLS を使用すると、サービス プロバイダー ネットワークで VPN サービスがサポートされるようになるため、インターネットの成長が大幅に促進されます。

VPN 用に MPLS を使用する方法は、VPN を構築する代わりとなる魅力的な代替手段となります。この場合、ATM またはフレーム リレー Permanent Virtual Circuit(PVC; 相手先固定接続)、あるいはさまざまな形式のトンネリングを使用してカスタマーのサイトのルータを相互接続します。

PVC VPN モデルとは異なり、MPLS VPN モデルはスケーラビリティが高く、サイトやカスタマーの増加に対応できます。また、MPLS VPN モデルは、完全メッシュの PVC またはサービス プロバイダー ネットワーク上でのトラフィックのバックホーリング(次善ルーティング)を必要とせずに、VPN サイト間の「any-to-any」通信をサポートしています。各 MPLS VPN ユーザにとって、サービス プロバイダーのネットワークはプライベート IP バックボーンとして機能するように見えます。このバックボーンでは、ユーザは対象の VPN 組織内の他のサイトには到達できますが、それ以外の VPN 組織のサイトには到達できません。

ユーザの視点では、MPLS VPN モデルを使用すると、ネットワーク ルーティングを大幅に簡略化できます。たとえば、MPLS VPN ユーザは、多数の PVC で構成されるトポロジ的に複雑な仮想バックボーン上のルーティングを管理する必要がなく、通常、サービス プロバイダーのバックボーンをデフォルト ルートとして使用して他のすべての VPN サイトと通信できます。

明示的ルーティング機能(コンストレイントベース ルーティングまたはトラフィック エンジニアリングとも呼ばれる):明示的ルーティングでは、「コンストレイントベース ルーティング」が使用されます。このルーティングでは、トラフィック フローのパスがトラフィック フローのリソース要件(制約)を満たす最短パスになります。

MPLS トラフィック エンジニアリングでは、帯域幅要件、メディア要件、トラフィック フロー間のプライオリティなどの要因を考慮に入れることができます。これらのトラフィック エンジニアリング機能を使用すると、サービス プロバイダー ネットワークの管理者は次の作業を行うことができます。

ネットワークのトラフィック フローの制御

ネットワークの輻輳の削減

ネットワーク リソースの最適利用

したがって、ネットワーク管理者はネットワーク内のさまざまなポイント間を流れると予測されるトラフィックの量を指定でき(それによってトラフィック マトリクスを確立)、さらにルーティング システムを利用して次の作業を行うことができます。

ネットワーク トラフィックの最良パスの計算

トラフィックを伝送する明示パスの設定

ラベル スイッチング機能

従来のレイヤ 3 転送メカニズムでは、パケットがネットワークを通過すると、各ルータは、レイヤ 3 ヘッダーからのパケットの転送に関連するすべての情報を抽出します。そのあと、この情報は、パケットのネクストホップを判別するためのルーティング テーブル ルックアップのインデックスとして使用されます。

最も一般的な状況では、ヘッダー内の関連フィールドは宛先アドレス フィールドだけですが、場合によっては他のヘッダー フィールドが関連することもあります。そのため、ヘッダー分析は、パケットが通過する各ルータで個別に行う必要があります。また、各ルータでは複雑なテーブル ルックアップも行う必要があります。

ラベル スイッチングでは、レイヤ 3 ヘッダーの分析は 1 回だけ行われます。そのあと、レイヤ 3 ヘッダーは、 ラベル と呼ばれる固定長の構造化されていない値にマッピングされます。

同じネクストホップが常に選択されているかぎり、複数の異なるヘッダーを同じラベルにマッピングできます。実質的に、ラベルは Forwarding Equivalence Class を表します。つまり、実際には異なっているのに、転送機能で区別できない一連のパケットを表します。

最初のラベル選択は、レイヤ 3 パケット ヘッダーの内容だけに基づいている必要はありません。たとえば、後続ホップでの転送判断はルーティング ポリシーに基づくこともあります。

ラベルが割り当てられると、短いラベル ヘッダーがレイヤ 3 パケットの先頭に追加されます。このヘッダーは、ネットワーク上でパケットの一部として伝送されます。ネットワークの各 MPLS ルータを通過する後続ホップでは、ラベルが交換され、パケット ヘッダーで伝送されたラベルの MPLS 転送テーブル ルックアップを使用して転送判断が行われます。したがって、パケットがネットワークを通過しているときにパケット ヘッダーを再評価する必要はありません。ラベルは固定長で構造化されていないため、MPLS 転送テーブル ルックアップ プロセスは単純かつ高速です。

ラベル バインディングの配布

ネットワーク内の各 LSR は、Forwarding Equivalence Class を表すために使用するラベル値の決定をローカルで個別に行います。このアソシエーションは、 ラベル バインディング と呼ばれます。各 LSR は、それぞれが行ったラベル バインディングについてネイバーに通知します。このようにネイバー ルータにラベル バインディングを認識させる処理は、次のプロトコルによって促進されます。

LDP:通常ルーティングされるパスに沿った MPLS 転送をサポートするために使用されます。

Resource Reservation Protocol(RSVP; リソース予約プロトコル):MPLS トラフィック エンジニアリングをサポートするために使用されます。

Border Gateway Protocol(BGP; ボーダー ゲートウェイ プロトコル):MPLS VPN をサポートするために使用されます。

ラベル付きパケットが LSR A からネイバー LSR B に送信されている場合、IP パケットによって伝送されるラベル値は、パケットの Forwarding Equivalence Class を表すために LSR B によって割り当てられたラベル値になります。したがって、IP パケットがネットワークを通過するとき、ラベル値が変わります。

MPLS およびルーティング

ラベルは Forwarding Equivalence Class を表し、ネットワークの特定のパスを表すわけではありません。一般に、ネットワークのパスは、引き続き既存のレイヤ 3 ルーティング アルゴリズム(OSPF、Enhanced IGRP、BGP など)によって選択されます。つまり、各ホップでラベルが検索されるときに、指定されたネクストホップがダイナミック ルーティング アルゴリズムによって判別されます。

MPLS トラフィック エンジニアリング

MPLS トラフィック エンジニアリング ソフトウェアを使用すると、MPLS バックボーンによってレイヤ 2 ATM およびフレーム リレー ネットワークのトラフィック エンジニアリング機能を複製および拡張できます。MPLS は、レイヤ 2 およびレイヤ 3 のテクノロジーを統合したものです。MPLS は、従来のレイヤ 2 機能をレイヤ 3 で使用できるようにすることによって、トラフィック エンジニアリングを可能にします。したがって、1 層のネットワーク内で、レイヤ 2 ネットワークの上にレイヤ 3 ネットワークを重ねることによって初めて実現できる機能を提案できます。

トラフィック エンジニアリングは、サービス プロバイダーおよび Internet Service Provider(ISP; インターネット サービス プロバイダー)のバックボーンに不可欠です。 このようなバックボーンは、伝送容量の大量使用をサポートしている必要があります。また、リンク障害やノード障害に耐えられるように、復元力が非常に高いネットワークである必要があります。

MPLS トラフィック エンジニアリングによって、統合型のトラフィック エンジニアリングが可能になります。MPLS を使用すると、レイヤ 3 にトラフィック エンジニアリング機能が統合され、バックボーンの容量とトポロジによる制約を前提に、IP トラフィックの ルーティングが最適化されます

MPLS トラフィック エンジニアリングを使用する理由

WAN 接続は、 ISP 予算において 高価な項目です。トラフィック エンジニアリングにより、ISP はネットワーク トラフィックをルーティングして、スループットと遅延の観点でユーザに 最善のサービスを提供 できるようになります。トラフィック エンジニアリングでは、サービス プロバイダーの効率を高めることによって、ネットワークのコストを削減します。

現在、一部の ISP は、オーバーレイ モデルを基礎としてサービスを提供しています。 オーバーレイ モデルでは、 伝送機能は レイヤ 2 スイッチングによって管理されます。ルータは完全メッシュの仮想トポロジだけを認識し、ほとんどの宛先が 1 ホップ離れて出現します。明示的なレイヤ 2 中継レイヤを使用すると、使用可能な帯域幅をトラフィックで どのように 使用するかを正確に制御できます。ただし、オーバーレイ モデルには、多数のデメリットがあります。MPLS トラフィック エンジニアリングでは、個別のネットワークを稼動させることも、スケーラブルでない完全メッシュのルータ相互接続を使用することもなく、オーバーレイ モデルのトラフィック エンジニアリングの利点が得られます。

MPLS トラフィック エンジニアリングのしくみ

MPLS トラフィック エンジニアリングでは、RSVP を使用して、バックボーン上で LSP を自動的に確立および維持します。LSP で使用されるパスは、LSP リソース要件とネットワーク リソース(帯域幅など)によって決まります。

使用可能なリソースは、リンクステートベースの Interior Gateway Protocol(IGP; 内部ゲートウェイ プロトコル)の拡張によってフラッディングされます。

トラフィック エンジニアリング トンネルは、必要なリソースと使用可能なリソースの調和に基づいて LSP ヘッドで計算されます(コンストレイントベース ルーティング)。IGP は、これらの LSP にトラフィックを自動的にルーティングします。通常、MPLS トラフィック エンジニアリング バックボーンを通過するパケットは、入力ポイントと出力ポイントを接続する単一の LSP 上を伝送されます。

MPLS トラフィック エンジニアリングは、次の Cisco IOS メカニズムに基づいて構築されています。

IP トンネル インターフェイス:レイヤ 2 の観点では、MPLS トンネル インターフェイスは LSP のヘッドを表します。これは、帯域幅要件、メディア要件、プライオリティなどの一連のリソース要件を使用して設定されます。

レイヤ 3 の観点では、LSP トンネル インターフェイスはトンネル宛先への単一方向仮想リンクのヘッドエンドです。

MPLS トラフィック エンジニアリング パス計算モジュール:この計算モジュールは LSP ヘッドで動作します。このモジュールは、LSP で使用するパスを決定します。パス計算では、フラッディングされたトポロジおよびリソース情報を含むリンクステート データベースが使用されます。

トラフィック エンジニアリング拡張を備えた RSVP:RSVP は各 LSP ホップで動作し、計算されたパスに基づいて LSP をシグナリングおよび維持するために使用されます。

MPLS トラフィック エンジニアリング リンク管理モジュール:このモジュールは各 LSP ホップで動作し、RSVP シグナリング メッセージに対するリンク コール アドミッションを実行し、フラッディングされるトポロジおよびリソース情報のブックキーピングを行います。

リンクステート IGP(トラフィック エンジニアリング拡張を備えた Intermediate System-to-Intermediate System(IS-IS)または OSPF):これらの IGP は、リンク管理モジュールから トポロジ およびリソース情報をグローバルにフラッディングするために使用されます。

リンクステート IGP(IS-IS または OSPF)で使用される SPF 計算の拡張:IGP は、トンネル宛先に基づいて適切な LSP トンネルにトラフィックを自動的にルーティングします。また、スタティック ルートを使用して、LSP トンネルにトラフィックを誘導することもできます。

ラベル スイッチング転送:この転送メカニズムは、レイヤ 2 と類似の機能をルータに提供し、RSVP シグナリングによって確立された LSP の複数のホップを経由してトラフィックを誘導できるようにします。

バックボーンのエンジニアリングを行う方法の 1 つは、すべての入力デバイスからすべての出力デバイスへのトンネルのメッシュを定義することです。MPLS トラフィック エンジニアリング パス計算モジュールおよびシグナリング モジュールは、これらのトンネルの LSP で使用されるパス、リソースのアベイラビリティの影響を受ける対象、およびネットワークのダイナミック状態を判別します。入力デバイスで動作する IGP は、どの出力デバイスにどのトラフィックを送信するかを判別し、入力から出力へのトンネルにそのトラフィックをステアリングします。

入力デバイスから出力デバイスへのフローが大きくなりすぎて、単一のリンクに収まらず、単一のトンネルでは伝送できなくなる可能性があります。この場合、特定の入力および出力の間に複数のトンネルを設定し、それらの間でフローの負荷が共有されるようにすることができます。

MPLS バーチャル プライベート ネットワーク

Cisco IOS ネットワークで MPLS VPN を使用すると、スケーラブルなレイヤ 3 VPN バックボーン サービス(アプリケーション、データ ホスティング ネットワーク コマース、テレフォニー サービスなど)を展開および管理する機能をビジネス上のカスタマーに提供できます。VPN は、1 つまたは複数の物理ネットワークでリソースを共有するセキュアな IP ベースのネットワークです。VPN には地理的に分散したサイトが含まれており、共有バックボーン上で安全に通信できるようになっています。

カスタマーのサイトと VPN の間には 1 対 1 の関係は必ずしも存在しません。特定のサイトを複数の VPN のメンバにすることができます。ただし、サイトを関連付けることができる VPN Routing and Forwarding(VRF; VPN ルーティングおよび転送)インスタンスは 1 つだけです。各 VPN は 1 つまたは複数の VPN VRF に関連付けられます。VRF には、ルーティングおよび転送テーブルと、CE ルータに接続されているカスタマーのデバイスの VPN メンバシップを定義したルールが含まれています。VRF は次のもので構成されます。

IP ルーティング テーブル

CEF テーブル

CEF 転送テーブルを使用するインターフェイスのセット

ルーティング テーブル内の情報を制御するルールおよびルーティング プロトコル パラメータのセット

VPN ルーティング情報は、VRF ごとに IP ルーティング テーブルおよび CEF テーブルに格納されます。VRF ごとに別個のルーティング テーブルおよび CEF テーブルのセットが維持されます。これらのテーブルにより、情報が VPN の外部に転送されることが防止されます。また、VPN の外部にあるパケットが VPN 内のルータに転送されることも防止されます。

MPLS のサービス品質

MPLS の Quality of Service(QoS; サービス品質)機能を使用すると、ネットワーク管理者は MPLS ネットワーク上でディファレンシエーテッド タイプのサービスを提供できるようになります。ディファレンシエーテッド サービスは、伝送されたパケットごとに QoS によって指定されている特定の種類のサービスを提供することによって、さまざまな要件を満たします。サービスはさまざまな方法で指定できます。たとえば、IP パケット内の IP precedence ビット設定を使用して指定します。

ディファレンシエーテッド サービスを提供するとき、MPLS QoS はパケット分類、輻輳回避、および輻輳管理を提供します。 表 3 に、これらの機能とその説明を示します。

 

表 3 QoS サービスおよび機能

サービス
QoS 機能
説明

パケット分類

Committed Access Rate(CAR; 専用アクセス レート)。パケットは、ラベルが割り当てられる前にネットワークのエッジで分類されます。

入力または出力伝送レートに従ってパケットを分類します。MPLS EXP ビットか、IP precedence または DSCP ビット(どちらか適切なもの)を設定できます。

輻輳回避

Weighted Random Early Detection(WRED; 重み付けランダム早期検出)。パケット クラスは、ドロップの確率に基づいて区別されます。

ネットワーク トラフィックを監視して、IP precedence または DSCP ビットか、MPLS 試験的フィールドに基づいてパケットをドロップすることによって輻輳を回避します。

輻輳管理

Class-Based Weighted Fair Queueing(CBWFQ; クラスベース均等化キューイング)。パケット クラスは、帯域幅とバウンディッド遅延に基づいて区別されます。

ネットワーク トラフィックの各種クラスへの帯域幅割り当てを確保するためにキューイング アルゴリズムを使用する自動スケジューリング システムです。


) MPLS QoS を使用すると、Label Edge Router(LER; ラベル エッジ ルータ)、LSR、ATM-LSR など、MPLS デバイス内で Cisco IOS IP QoS(レイヤ 3)機能をできるだけ厳密に複製できます。MPLS QoS 機能は、すべてのインターフェイス タイプの IP QoS 機能にほぼ 1 対 1 でマッピングされます。


QoS 機能(CAR、WRED、および CBWFQ)の設定の詳細については、『 Cisco IOS Quality of Service Solutions Configuration Guide 』を参照してください。

CAR、WRED、および WFQ の完全なコマンド構文情報については、『 Cisco IOS Quality of Service Solutions Command Reference 』を参照してください。

IP precedence フィールドでの QoS の指定

サイト間で IP パケットを送信するとき、IP precedence フィールド(IP パケットのヘッダーにある DSCP フィールドの最初の 3 ビット)で QoS を指定します。IP precedence マーキングに基づいて、その QoS で許可されている遅延や帯域幅のパーセントなど、パケットに対して必要な処理が行われます。サービス プロバイダー ネットワークが MPLS ネットワークの場合、IP precedence ビットはネットワークのエッジで MPLS EXP フィールドにコピーされます。ただし、サービス プロバイダーは、MPLS パケットの QoS を別の値(サービスの提供によって決定される値)に設定することを望む場合があります

この機能を使用すると、サービス プロバイダーは、カスタマーに属する IP precedence フィールドの値を上書きする代わりに、MPLS 試験的フィールドを設定できます。IP ヘッダーは、カスタマーが引き続き使用できます。IP パケットの QoS は、パケットが MPLS ネットワークを通過したときに変更されません。

図 1 に、カスタマーに属する IP ネットワークの 2 つのサイトを接続する MPLS ネットワークを示します。

 

図 1 カスタマーに属する IP ネットワークの 2 つのサイトを接続する MPLS ネットワーク


) ネットワークは双方向ですが、このマニュアルの目的ではパケットは左から右に移動します。


表 4 に、図 1 の記号の意味を示します。

 

表 4 デバイスの記号

記号
意味

CE1

カスタマー装置 1

PE1

サービス プロバイダー エッジ ルータ(入力 LSR)

P1

サービス プロバイダーのネットワークのコア内にあるサービス プロバイダー ルータ

P2

サービス プロバイダーのネットワークのコア内にあるサービス プロバイダー ルータ

PE2

サービス プロバイダー エッジ ルータ(出力 LSR)

CE2

カスタマー装置 2


) PE1 と PE2 は、MPLS ネットワークと IP ネットワークの間の境界にあることに注意してください。


図 1 では、次の動作が行われます。

パケットは、IP パケットとして、プロバイダー エッジ ルータ(入力ラベル スイッチング ルータとも呼ばれる)である PE1 に到達します。

PE1 は、パケットを MPLS パケットとして送信します。

サービス プロバイダー ネットワーク内には、キューイング メカニズムによって検索する IP precedence フィールド はありません。これは、パケットが MPLS パケットであるためです。パケットは、プロバイダー エッジ ルータである PE2 に到達するまで、MPLS パケットのまま維持されます。

PE2 は、各パケットからラベルを削除し、パケットを IP パケットとして転送します。

この MPLS QoS 拡張により、サービス プロバイダーは、タイプ、入力インターフェイス、および他の要因に基づいてパケットを分類できるようになります。この場合、IP precedence または DSCP フィールドを変更することなく、MPLS 試験的フィールド内で各パケットを設定(マーク付け)します。たとえば、サービス プロバイダーは、パケットを分類するときに、PE1 が受信するパケットのレートを考慮することも、考慮しないこともできます。レートを考慮する場合、サービス プロバイダーはレート内パケットをレート外パケットとは異なる方法でマーク付けします。


) MPLS EXP ビットを使用すると、MPLS パケットの QoS を指定できます。IP precedence/DSCP ビットを使用すると、IP パケットの QoS を指定できます。