音声とユニファイド コミュニケーション : Cisco Unified Communications Manager(CallManager)

Cisco 無線 IP Phone 7920 のローミング問題のトラブルシューティング方法

2004 年 1 月 22 日 - ライター翻訳版
その他のバージョン: PDFpdf | 機械翻訳版 (2013 年 8 月 21 日) | 英語版 (2008 年 6 月 13 日) | フィードバック

目次

概要
前提条件
     要件
     使用するコンポーネント
     関連製品
     表記法
ローミング問題のトラブルシューティング方法
     情報の収集
     収集された情報の分析
ケース スタディ
     ケース スタディ 1: 7920 電話で音声が消失する
     ケース スタディ 2:ローミング時に音声が消失する
関連するシスコ サポート コミュニティ ディスカッション
関連情報

概要

新しい Cisco 無線 IP Phone 7920 の登場により、IP テレフォニー ネットワークには無線コンポーネントが導入されました。この新しいテクノロジーの組み合わせには、難しい面もあります。電話が正しく設定されていない場合は、そのパフォーマンスに影響します。

この文書では、一般的な「ローミング問題」について説明します。問題のトラブルシューティングに必要な情報をキャプチャし、その情報を分析して考えられる原因と解決策を見つける方法を解説します。

前提条件

要件

この文書に関する特別な要件はありません。

使用するコンポーネント

この文書の情報は、次のソフトウェアおよびハードウェア バージョンに基づいています。

  • Cisco CallManager 3.3(3)SR1

  • Cisco IP Phone FW 7900 シリーズソフトウェア バージョン 7920.3.3-01-06

  • Cisco IOS(R) ソフトウェア リリース 12(2)13JA が動作する Cisco Aironet 1200 シリーズ アクセス ポイント(AP)

  • VxWorks バージョン 12.0(4) が動作する Cisco Aironet 350 シリーズ AP

この文書の情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されています。この文書内で使用されているデバイスはすべて、クリアな状態(デフォルト)から設定作業を始めています。コマンドが実稼動中のネットワークに与える影響について理解しておいてください。

関連製品

この設定は、次のバージョンのハードウェアとソフトウェアにも使用できます。

  • Cisco CallManager バージョン 3.2 (2c) 以降

  • Cisco IP Phone FW 7900 シリーズ ソフトウェア バージョン 7920.3.3-01-05 以前

    注: 一部のパラメータ値は、旧バージョンでは異なります。

  • Cisco IOS ソフトウェア リリース 12(2)11JA 以降が動作する Cisco Aironet 1200、1100、または 350 シリーズ AP

  • VxWorks バージョン 12.0(12) 以降が動作する Cisco Aironet 350 シリーズ AP

表記法

文書の表記法の詳細は、「シスコ テクニカル ティップスの表記法」を参照してください。

ローミング問題のトラブルシューティング方法

「ローミング問題」の症状は、さまざまな問題が原因で発生する可能性があります。最も多いのは、ローミング問題が干渉に関連している場合や、適切なカバー範囲の不足により生じる場合です。問題の原因が何であるかを判断するには、さらに詳細な情報が必要です。

こういった重要な詳細情報を入手するには、最初に一連の質問に答える必要があります。続いて、問題が発生しているそれぞれの場所で、トレース情報をキャプチャする必要があります。

情報の収集

関連するすべての情報を収集するには、次の手順に従います。

  1. 次の質問に答えることにより、何が発生しているかを正確に説明します。

    • 具体的に、どのようなことに気づきましたか。

    • それはどのような場合に発生しますか。

    • それはすべての電話に影響しますか。全インストール ベースの中で何台の電話が影響を受けますか。

    • それはどこで発生しますか。

      注: 最初は、問題がいたるところで発生しているように思われるかもしれませんが、まずこのようなことはありません。問題が発生している個所を特定することで、各場所を1つずつ分析することができます。

  2. ローミング問題が生じる特定の場所に関する、トレースなどの情報を収集します。

    ローミング問題が生じるそれぞれの場所に関してテストを行い、以下に示す情報をキャプチャして後で分析する必要があります。1 か所から開始して、その結果に基づき、後で別の場所を分析することをお勧めします。

    1. 次のように、テスト シナリオを設定します。

      1. 建物の地図がある場合は、テスト シナリオの位置をマークします。

        これによって障害物や曲がり角などの情報が明らかになり、シスコ テクニカル サポートの支援により問題を解決しなければならない場合に便利です。

      2. AP(AP1)に接続された 7920 電話(PH1)を使用して、別の電話(PH2)への通話を開始します。

        PH2 は第 2 の AP(AP2)に接続しており、テスト期間中この状態を維持する 7920 電話を使用できます。

      3. コールが確立されれば、会話を開始し、PH1 を持って AP1 のカバー領域から AP2 のカバー領域に歩いて移動します。

        移動中に情報を書き留め(下記の「サイト調査」のステップ F を参照)、問題が発生した時点と消滅した時点をメモします。

        7920_ip_phone_roaming-1.gif

      4. 通話を終了します。

    2. 設定に関する次の情報を収集します。

      • PH1(移動した電話)の IP アドレスと MAC アドレス

      • PH2(移動せず、AP2 の近くにあった電話)の IP アドレスと MAC アドレス

      • (テスト開始時に PH1 に関連付けられていた)AP1 の IP アドレスと MAC アドレス

      • (テスト時に PH2 のローミング先であった)AP2 の IP アドレスと MAC アドレス

    3. ソフトウェア レベルに関する次の情報を収集します。

      • AP のソフトウェア バージョン

      • 電話のファームウェア(FW)バージョン

        注: バージョンを調べるには、Menu > Phone Settings > Phone Status > FW version の順に選択します。

      • Cisco CallManager のバージョン

    4. ローミングに関与する 2 つの AP の設定を取得します。

      設定を取得するには、Cisco IOS AP で show run コマンドを発行するか、VxWorks AP で Cisco Services > Manage System Configuration > Download Non-Default System Configuration の順に選択します。

    5. 両方の AP で、ローミングが起こった瞬間の前後それぞれ数秒間のログを取得します。

      ログを調べるには、Cisco IOS AP で show log コマンドを発行するか、VxWorks AP で Log > Download Log の順に選択します。

    6. 次に示すように、テスト時のさまざまな場所における情報に関する、サイト調査を実行します。

      注: サイト調査を実施することで、電話に関する Radio Frequency(RF; 無線周波数)関連の問題を把握するための、非常に有用な情報が得られます。このステップでは、正確なデータをキャプチャしてください。

      1. 電話で Site Survey メニューに移動するには、Menu > Network Configuration の順に選択します。

        表示される情報は、「(ステータス) - チャネル -ssid-rssi-qbss」という構造になっています。次に例を示します。

        (c)6,ssid...,42,0
         (a)11,ssid...,14,1
         (a)1,ssid...,26,4
      2. キャプチャを行うたびに、各行の全体を書き留め、またすべての行を対象にします。

        Service Set Identifier(SSID; サービス セット識別子)がすべてのエントリで同じである場合は SSID を省略でき、また最後の数字(QBSS; QoS basic service set)は、すべてのエントリで値が 5 以下である場合は省略できます。

      3. 出発地点(AP1 の近く)と終了地点(AP2 を通過した地点)の間にあるさまざまな地点で、完全なサイト調査をキャプチャし、それぞれの位置での時刻を明記します。

        約 5 か所でキャプチャを行います。問題が発生した時点と問題が解決された時点をメモします。

        次の例は、まだ問題が発生してない場所のキャプチャです。

         AP1 - 10m
         
         !--- これが場所を表します。
         
         (a)1,18
         
         !--- これらがサイト調査の値です。SSID はすべてのエントリで同一であるため、
         !--- SSID の値は含まれていません。QBSS は常に 5 以下であるため、
         !--- QBSS も省略されています。
         
         (c)6,38 

        次の例は、問題が発生した場所のキャプチャです。

         AP1+30m
         
         !--- : これは同時に AP2-20m を意味します。
         !--- この位置から音声の消失が始まっています。
         
         (c)6,18
         (a)11,25
         
         AP1+30m
         
         !--- : これは同時に AP2-20m を意味します。
         !---  音声が元に戻っています。
         (a)6,25
         (c)11,40
         

収集された情報の分析

問題の説明

ステップ 1 の「情報の収集」にある質問に答えることで、特定の症状を判別して、問題の原因を明らかにすることができます。

  • 具体的に、どのようなことに気づきましたか。

    この質問は、問題の特定に役立ちます。具体的に接続が失われた合計の時間を明示できれば完璧です。

  • それはどのような場合に発生しますか。

    この質問は、問題がローミングのみに関連しているかどうか、または通話時に周期的に発生するかどうかの判別に役立ちます。

  • それはすべての電話に影響しますか。全インストール ベースの中で何台の電話が影響を受けますか。

    この質問は、特定の電話に存在するハードウェアの問題や、影響を受ける電話のみに適用されている設定の特定に役立ちます。また、問題の範囲も明らかにします。

  • それはどの場所で発生しますか。

    この質問は、障害物により適切な無線カバー範囲がない領域、突然の信号消失、または干渉の発生源などの環境要因の特定に役立ちます。ローミング問題が、階段、トンネル、曲がり角の裏、厚いドアを通過した場所など、特定の場所でのみ発生する場合は、「情報の収集」のステップ F でキャプチャしたサイト調査情報を使用して、正確な RF の問題を絞り込むことができます。

ローミング問題のいくつかの症状と、考えられる原因を次に示します。上記の質問に対する答えに基づいて、原因の一部を除外し、調査を続行することができます。

症状

考えられる原因

特定の AP へのローミングで時間がかかりすぎるため、音声が数秒間失われる

設定エラー:無線設定と QoS に関する AP1 と AP2 の設定を確認します。特に VxWorks から移行した Cisco IOS AP に関しては、変換時に一部の値が適切に設定されなかった可能性があります。トラフィック キューおよび RTS 関連の設定に対しては、デフォルト値が設定されていることを確認します(トラフィック クラスのコマンドはデフォルト値に設定される必要があるため、Cisco IOS 設定に出現することは禁じられています)。これらの値を変更すると、ローミングに関する RF 環境が不安定になる可能性があります。

その他のデバイス(その他 AP を含む)からの干渉:ローミング元 AP またはローミング先 AP が送信に使用する同一のチャネルに対する干渉は、ローミングの決定に影響し、場合によっては数秒間音声が失われる可能性があります。サイト調査で、信号の強い(Received Signal Strength Indication[RSSI] が 20 以上の)AP が、重複しない各チャネルに対して 1 つだけ出現するように、注意深く設計する必要があります。

突然の信号消失:電話は、現在の AP からの突然の信号消失は起こりにくい環境でローミングするよう、最適化されています。突然の信号消失が生じた場合は、新しい AP との関連付けのやり直しに数秒かかる場合があります。突然の信号消失が生じる場所に到達する前に、電話がすでにローミングを完了しているようにします。そのためには、AP の電力レベルを変更するか、ある条件下では、AP を追加して特定の位置のカバー状況を改善します。

特定の AP へのローミングが不可能である

設定エラー:認証に関する AP2 と RADIUS サーバの設定を確認します。 共有キー認証に関しては、Wired Equivalent Privacy(WEP)キーを確認します。AP が電話上のキーと一致しない場合があるためです。 Lightweight and Efficient Application Protocol(LEAP)の場合は、AP と RADIUS サーバの設定が適切でないため、要求が RADIUS サーバに到達していない場合があります。TCP ポートの設定と、共有秘密パスワードが両側で一致することを確認します。

設定エラー:AP1 と AP2 が同一の IP サブネット内に存在することを確認します。現時点では、7920 電話はレイヤ 2 のローミングのみをサポートしています。

設定エラー:AP2 SSID が、電話の SSID リストで設定されている SSID(またはブロードキャスト SSID)と同じであることを確認します。

ローミング時に音声が数秒間失われ、会話時に何度か失われる

その他のデバイス(その他 AP を含む)からの干渉:ローミング元 AP またはローミング先 AP が送信に使用する同一のチャネルに対する干渉は、ローミングの決定に影響し、通話時に数秒間音声が失われる可能性があります。同一チャネルのその他の AP を含む、干渉の発生源の可能性があるものを調査します。干渉の検出には、AP のキャリア テスト オプション、PC の Aironet Client Utility(ACU)、または別のサードパーティ製スペクトル アナライザが使用できます。

チャネル使用率が高すぎる:サイト調査で、チャネル使用率の値(各回線の QBSS の数値)を確認します。その値が極めて高く、ほかの AP のチャネル使用率の値もきわめて高い場合は、(ローミング時を含め)会話中に音声品質が低下する場合があります。

AP および電話のバージョン

AP と電話のバージョンが Cisco.com にある最新バージョンではない場合、特に最新バージョンよりも数世代前のリリースである場合は、各バージョンのリリース ノートをチェックして、最新バージョンで修正されている(ローミング問題の原因の可能性がある)バグが存在しないことを確認します。

次に、ローミング問題の原因の可能性があり、現在は修正されているバグの例を示します。

  • Cisco bug ID CSCec61438登録ユーザのみ(接続済みの RSSI が 45 より低い場合、7920 は関連付けられていないチャネルをスキャンしない):このバグは、アクティブ チャネルの RSSI が高い場合、ローミングが遅くなり、音声パケットが失われる原因になる場合があります。このバグは、電話のファームウェア 01-06 で修正されています。

    一部ツールについては、ゲスト登録のお客様にはアクセスできない場合がありますことを、ご了承ください。

  • Cisco bug ID CSCeb75140登録ユーザのみ(12.03T がロードされた AP350 が、少し時間が経過するとビーコンを停止する):このバグは、AP で VxWorks 12.0(3)T が動作していると、すべての電話が同時に音声パケットを失う原因になる場合があります。このバグは、バージョン 12.0(4) で修正されています。

    一部ツールについては、ゲスト登録のお客様にはアクセスできない場合がありますことを、ご了承ください。

ローミングに関与する 2 つの AP の設定

セキュリティ(SSID、認証のタイプ、RADIUS サーバ、および WEP キー)に関する AP での設定は、電話での設定と一致する必要があります。設定が一致しなければ、AP へのローミングが不可能になります。

無線の設定と QoS の設定は、関連付けとローミングがどのように行われるかに影響します。影響が不明である場合は、これらの設定を変更しないでください。

Cisco IOS が動作する AP に関しては、Radio0-802.11b Settings にある次のデフォルト値をそのままにします。

7920_ip_phone_roaming-2.gif

また、QoS Access Categories に関する次のデフォルト値もそのままにします。

7920_ip_phone_roaming-3.gif

無線電話は Cisco Discovery Protocol(CDP)を使用して、自らの存在を AP に通知します。これにより、その電話に対するすべてのトラフィックが、自動的により高い優先度で音声キューに入れられます。音声トラフィックを優先させる場合も、ポリシーを作成したりキューを変更する必要はありません。

VxWorks が動作する AP では、値を変更できます。ただし、発生しうる影響をテストした場合を除き、RTS Threshold(2339)、Fragmentation Threshold(2338)、Beacon Period(100)および Radio QoS queuesbvg の各パラメータは、デフォルト値のままにすることをお勧めします。

推奨される設定の詳細については、文書「Cisco 7920 無線 IP Phone の WEP キー、VLAN および LEAP の設定」を参照してください。

AP のログ

収集された AP の発信元と送信先のログを使用すると、認証エラー、サポート対象外の設定、およびローミングが「クリーン」であるかどうかを調べることができます。ローミングが行われたのはどの時点であったか、ある期間電話が同じ AP に関連付けられたままであったか、またはすぐに別の AP に移動したかを判別することができます。

適切なローミングのログは、次に示すログに近い形式になります。この場合、両方の AP のログでは Roamed to および Associated メッセージ(または以前に関連付けられている場合は Reassociated)の時刻は、同じであるか、離れていても数秒です。確認するには、2 つの AP の時計が同期している必要があります。

 On AP1
 Nov 17 15:38:55.475 Information Station 000d.2228.5225 Roamed to
 000d.211d.88af
 Oct 17 15:38:55.475 Information Interface Dot11Radio0, Deauthenticating Station
 000d.2228.5225 Reason: Deauthenticated because sending station is leaving
 (or has left) BSS
 On AP2 (mac address 000d.211d.88af )
 Nov 17 15:38:55.475 Information Interface Dot11Radio0, Station
 000d.2228.5225 Reassociated KEY_MGMT[NONE]

1 つの AP ではなく、非常に短い時間(約 1 分間)に次々と複数の AP に対してローミングが行われていると思われる場合は、設定に問題がある場合があります。設定を確認し、特にこの文書の「ローミングに関与する 2 つの AP の設定」の項にあるパラメータに注目します。

サイト調査

サイト調査により、電話が RF 上で認識している内容が明らかになります。次の例は、サイト調査の機能を明らかにし、この文書の「情報の収集」の項のステップ F から得られるサイト調査結果を分析できるようにする、動作シナリオです。

  1. サイト調査の各サンプルに関しては、設計要件が満たされていることを確認します。

    Cisco Unified Wireless IP Phone 7920 Design and Deployment Guide」は、無線 IP 電話の適切な設計を行うための最適のリファレンス ガイドです。ガイドラインの主要点は、次のとおりです。

    • チャネルの重複がないネットワークを設計します。

      無線に割り当てられる全周波数チャネルのうち、お互いに干渉することのない、重複しない周波数は 3 つしかありません(1-6-11 など)。無線の設計では、AP には重複しないチャネルのみを使用します。重複しないチャネルを使用して動作し、音声に影響する干渉を回避すると、電話が最適化されます。

    • 十分なカバー範囲のある AP が、常に最低 1 つは必要です。

      信号が十分強く(つまり RSSI が最低値の 20 よりも大きい)、チャネルの使用率が十分低い(つまり QBSS が 15 よりも低い)場合、AP は電話とのデータの送受信を行う「候補」になります。

    • 異なるチャネルでの 2 つまたは 3 つの AP による十分なカバー範囲がある、(ローミング地点ではなく)ローミング領域が必要です。

      AP からの信号の差が十分に大きい領域では、ローミングがスムーズに行われる必要があります。たとえば、ローミング領域におけるサイト調査により、次のような 2 つのエントリが得られる場合があります。

      (c)6,ssid...,46,3
      (a)11,ssid...,25,7
    • 同一チャネルでは、信号の強い AP が複数存在してはなりません。

      同一チャネルで信号の強いエントリが 2 つ以上存在する場合は、各 AP により送信されるデータが、それ以外の AP およびクライアントと干渉する場合があります。

    文書「Cisco Unified Wireless IP Phone 7920 Design and Deployment Guide」に記載されている要件が 1 つでも満たされていないと、それがローミング問題の原因になる場合があります。これは、設計の微調整により修正可能です。

  2. ユーザがキャプチャした各サンプルに関与する、2 つの AP の信号の変化を評価します。

    一般的には、信号の変化では、ローミング先として機能する AP の RSSI が徐々に増大するにつれて、現在の AP の RSSI が徐々に減少するという現象が見られます。重複領域では、同時に両方の AP の信号が強くなっていても、チャネルは異なっている必要があります。ローミングが行われるのは、特定の領域で、2 つの AP の RSSI の差が特定の値に達した時点です。

    現在の AP からの信号が突然消失し、ローミング先 AP の信号強度がまだ十分でない場合は、音声パケットが失われる場合があります。信号が突然消失する原因(RF に対する障害物、曲がり角、または電子レンジ、同じ周波数で動作する Bluetooth などの機器、その他の AP などによる干渉)を突き止めるか、ローミング領域を増強する(たとえば、送信電力を増強したり、AP の再割り当てを行う)ことで設計を微調整して、RF への障害物を克服する必要があります。

  3. QBSS 値を評価して、ローミングが(チャネルが輻輳していることを示す)高い QBSS 値によって引き起こされたのかどうかを判定します。

    これが正しい場合、その AP 上のトラフィック負荷を制限するか、設計に冗長性を導入し、十分な信号強度の AP を常に使用できるようにして、チャネルで輻輳が発生しないようにする必要があります。

次の例に、図中の全 AP 間でローミングが成功する設計の、サイト調査の値を示します。

7920_ip_phone_roaming-4.gif

注: 

  • 各円は、その中心に配置された AP のカバー範囲の領域を表します。円が小さければ、その AP では送信電力が低く設定されています。

  • 青い円は、チャネルの 1 つを再利用する AP のカバー範囲の領域を表しています。その AP の送信電力と位置は、干渉が起こらないよう、適切に選択されています。このことは、各サンプルにはチャネル 1 で信号が強い固有のエントリがあるため、サイト調査のサンプルにより確認できます。

  • ポイント A は、AP Ch1 から AP Ch6 へのローミングが行われる領域の位置を示しています。両方の AP よりスムーズなローミングが実現されるため、この領域のカバー範囲は適切です。この領域の強い AP 信号は、以下に示すサイト調査のエントリで確認できます。

    (c)1,ssid,27,2
     
     !--- これは、現在電話が接続されている場所です。
     
     (a)6,ssid,40,0
     
     !--- これは、電話のローミング先である場所です。
     
     
  • その他のポイントをランダムに選択して、上記の「サイト調査」の項のステップ 1 で説明されている設計規則が守られていることを確認します。

  • この例のサイト調査では、次のものが示されています。

    • 電話の接続先である AP を表す、赤い (c) が付いたエントリ。

    • アクティブなチャネルを示す (a) が含まれるその他のエントリ。(これらのチャネルは、信号が強く、QBSS 値が低く、かつある程度の差で接続済みの AP よりも RSSI や QBSS が優れていれば、ローミングの候補になり得ます。)

    • 場合によっては、同じチャネルの別の AP を表す (c) (ただし (c) 以降が黒になっている)2 つ目のエントリがあります。信号が強い場合、この AP は干渉を起こします。

  • RSSI 値が 20 よりも大きい場合、その信号は「十分な強度がある」と見なされます。(20 以上の値を使用することをお勧めしますが、制限を設けているわけではありません。) QBSS 値が 15 よりも大きい場合、それは「十分に低い」と見なされます(またはそのチャネルはチャネル使用率が高くないとされます)。

    ローミングを実現するには、RSSI または QBSS において、現在の AP と候補の AP との間にある程度の差が存在する必要があります。両方の値は、電話のファームウェアにおいて、RSSI Diff Threshold および QBSS Diff Threshold パラメータとして定義されています。現在の電話のファームウェア バージョン(01-06)では、ローミングを引き起こすのに必要な RSSI または QBSS の差は、15 になっています。その他の電話のファームウェア バージョンでは、これらのしきい値は別の値になっている場合があります。使用中のファームウェア バージョンのしきい値を確認するには、リリース ノートを確認してください。

ケース スタディ

この文書の「ローミング問題のトラブルシューティング方法」で説明したトラブルシューティングの手法は、次に示す 2 つのケース スタディでフォローされています。それぞれのローミング問題の原因が明らかにされ、推奨される修正処理が示されています。

ケース スタディ 1:7920 電話で音声が消失する

ケース スタディ 1 では、7920 電話で音声が消失しています。次に示すように、「情報の収集」と「収集された情報の分析」に対する手順に従います。

  1. 次の質問に答えることにより、何が発生しているかを正確に把握します。

    • 具体的に、どのようなことに気づきましたか。

      アクティブな通話時に、音声が数秒間消失しました。

    • それはどのような場合に発生しますか。

      1 日のあらゆる時間帯で、アクティブな通話のあらゆる時点で発生します。

    • それはすべての電話に影響しますか。全インストール ベースの中で何台の電話が影響を受けますか。

      はい、20 台ある電話のすべてが影響を受けます。

    • それはどの場所で発生しますか。

      1 階の特定のオフィスでのみ発生します。

  2. 問題が出現する特定の場所に関する、トレースなどの情報を収集します。

    1. テスト シナリオを設定します。

      問題が発生するオフィスに 1 組の 7920 電話を置き、移動させずそのままにします。(カバー範囲の問題を発生させないようにするため)AP を、数 メーターだけ離れた、直接見える位置に置きます。通話を行い、トラブルシューティング用に情報をキャプチャします。

    2. AP と電話のバージョンに関する情報を収集します。

      AP では Cisco IOS 12.(2)11JA1 が動作し、電話のファームウェアは 01-06 です。これらのバージョン、およびそれ以降のバージョンでは、症状の説明になるバグが報告されていないことが確認されています。(既知のバグの詳細については、Bug Toolkit登録ユーザのみ)を参照してください。)

      一部ツールについては、ゲスト登録のお客様にはアクセスできない場合がありますことを、ご了承ください。

    3. ローミングに関与する 2 つの AP の設定を取得します。

      デフォルト設定のままであることが確認されています。

    4. 音声が失われる時点での、AP の 1 〜 2 秒間のログを取得します。

      Oct 23 15:09:27.134: %DOT11-4-MAXRETRIES: Packet to client
       000d.2222.5522 reached max retries, remove the client
       Oct 23 15:09:27.134: %DOT11-6-DISASSOC: Interface
       Dot11Radio0, Deauthenticating Station 000d.2222.5522 Reason: Previous
       authentication no longer valid
       Oct 23 15:09:28.730: %DOT11-6-ASSOC: Interface Dot11Radio0,
       Station 000d.2222.5522 Associated KEY_MGMT[NONE]

      問題: 電話にパケットを送信しようとする際、AP は電話に到達できません。数回の試行の後、関連付けが解除されます。約 1.5 秒後、電話は AP に再び関連付けられます。このことは、約 1.5 〜 2 秒間 RF 信号が失われることを示しています。電話は移動中ではなく、AP から電話までの無線経路に障害物がないため、別の無線デバイスによる干渉があると結論付けられます。(そのデバイスは、同一チャネルの別の AP である場合があります。)

    5. サイト調査を実行します。

       
       !--- これは通話の開始時点で、品質は良好です。
       
       (c)1,ssid,54,1
       (a)6,ssid,25,1
       
       !--- 次のエントリは、音声が最初に失われた時点を示しています。
       
       (N)1,ssid,56,1
       (N)6,ssid,23,1
       
       !--- 次のエントリでは、音声が復活しています。
       
       (c)1,ssid,57,0
       (a)6,ssid,22,2
       
       !--- この箇所は、音声が再び失われる直前です。
       
       (c)1,ssid,53,2
       (a)6,ssid,26,0
       
       !--- 次に示す箇所で、音声が再び失われます。
       
       (N)1,ssid,52,1
       (N)6,ssid,26,0 

      問題: 音声が失われるたびに、サイト調査により (N) のステータスを持つエントリが示されています。このステータスは、RF が失われ、全周波数の再スキャンが行われていることを示しています。表示されている RSSI と QBSS の値は、音声消失状態になる前に存在していたものです。これらの値により、QBSS の値は低く、信号は強いことが明らかになります。また、サイト調査では AP に関するエントリは 2 つのみ存在し、それらは重複していないチャネルです。これにより、短時間信号が完全に失われることが音声消失の原因であると確認できます。音声消失の原因は、同一チャネル上のもう一方の AP にあるのではなく、干渉の可能性が最も高いと考えられます。干渉の原因は、その無線周波数で送信を行っている別のデバイスであると考えられます。

    6. 追加ステップとして、干渉の発生源として考えられるものを調査します。

      まず、発生源を特定します。近隣や社内の別の部署からほかの AP が送信を行っていないことを確認します。その領域で、電波が漏えいする可能性がある電子レンジや、Bluetooth が使用されていないことを確認します。近隣で特別な機器が使用されていないことを確認します。無線送信を行っているデバイスを判別できない場合は、干渉の周波数の特定を試み、その周波数が一部のチャネルのみに影響しているかどうかを判別します。干渉しているチャネルから離れたチャネルを使用するよう、設計を変更します。

      このケースを解決するには、Cisco IOS が動作する AP1200 を、VxWorks が動作する AP350 と交換します。これにより、全チャネルの信号とノイズを対象にした「キャリア テスト」を実行できるようになります。次の図に結果を示します。

      7920_ip_phone_roaming-5.gif

      問題: AP が送信を行っているチャネル 1 には、大量のノイズが発生しています。時折、無線干渉の発生源が出現し、電話への RF 信号をブロックします。

      解決策: AP のチャネルを、ノイズがないチャネル 11 に変更します。信号が強い 2 つの AP に同じチャネルを使用することを避けるため、AP 用に選択するチャネルの再設計をしなければならない場合もあります。

ケース スタディ 2:ローミング時に音声が消失する

ケース スタディ 2 では、ローミング時に音声が消失しています。次に示すように、「情報の収集」と「収集された情報の分析」に対する手順に従います。

  1. 次の質問に答えることにより、何が発生しているかを正確に把握します。

    • 具体的に、どのようなことに気づきましたか。

      ローミングの直前に音声が失われ、ローミングが完了した音声が復活します。

    • それはどのような場合に発生しますか。

      1 日のあらゆる時間帯の、ローミング時に発生します。

    • それはすべての電話に影響しますか。全インストール ベースの中で何台の電話が影響を受けますか。

      はい、その領域では、30 台ある電話のすべてが影響を受けます。

    • それはどの場所で発生しますか。

      特定の領域で発生し、常に同じ 2 つの AP が関与します。

  2. ローミング問題が生じる特定の場所に関する、トレースなどの情報を収集します。

    1. テスト シナリオを設定します。

      ケース スタディ 1 のテスト シナリオを繰り返します。通話を行い、トラブルシューティング用に情報をキャプチャします。

    2. AP と電話のバージョンに関する情報を収集します。

      AP では Cisco IOS 12.(2)11JA1 が動作し、電話のファームウェアは 01-06 です。これらのバージョン、およびそれ以降のバージョンでは、症状の説明になるバグが報告されていないことが確認されています。(既知のバグの詳細については、Bug Toolkit登録ユーザのみ)を参照してください。)

      一部ツールについては、ゲスト登録のお客様にはアクセスできない場合がありますことを、ご了承ください。

    3. ローミングに関与する 2 つの AP の設定を取得します。

      デフォルト設定のままであることが確認されています。

    4. 音声が失われる時点での AP のログを取得します。

      On AP2 (target where is roaming TO)
       Oct 17 10:25:06.257 InformationInterface Dot11Radio0,
       Station 000d.2222.5544 Associated KEY_MGMT[NONE]
       On AP 1 (source where is roaming FROM)
       Oct 17 10:25:06.258 InformationInterface Dot11Radio0, Deauthenticating
       Station 000d.2222.5544 Reason: Deauthenticated because sending station
       is leaving (or has left) BSS
       Oct 17 10:25:06.257 InformationStation 000d.2222.5544 Roamed to
       000d.2888.f744

      問題: ローミングの問題は存在せず、時間の遅延も存在しないように思われます。このことは、ローミングの直前の数秒間、音声が送信されていないことを示しています。サイト調査を行って、電話がローミングをもっと早めに開始しない理由を判別する必要があります。

    5. サイト調査を実行します。

       AP1 +8 meters
       (a)1,21,0
       (c)6,28,11
       AP1 +12 meters
       (a)1,17,3
       (c)6,22,10
       (a)11,6,1
       AP1 +15 meters
       
       !--- この部分は、音声が失われている時点です。
       
       (c)6,18,10
       (a)11,13,1
       
       !--- 現在の AP は RSSI 値が 20 よりも低く、
       !--- 十分な強度の信号ではありません。
       !--- 十分な強度の信号を持つ(RSSI 値が 20 よりも大きい)
       !--- ローミングの候補は、他に存在しません。
       
       AP1 +17 meters
       
       !--- : これは同時に AP2-12m を意味します。
       !---  音声が元に戻っています。
       
       (a)6,14,7
       (c)11,30,0
       
       !--- RSSI が急上昇した直後、ローミングが発生したため、
       !--- その差はローミングが行われるのに
       !--- 十分な大きさ(15 よりも大きい)になっています。
       
       AP1+17 meters
       
       !--- : これは同時に AP2-8m を意味します
       
       (a)6,12,6
       (c)11,35,0

      問題: カバー範囲が問題です。スムーズなローミングを実現するには、ローミング領域が不適切です(RSSI 値が 20 よりも大きく、信号の差が適切(15)である 2 つの AP が必要)。具体的には、ユーザが階段の周囲を移動するまでは信号の強い AP は存在しませんが、ユーザが階段の陰から移動すると、AP2 からの信号の強度が十分になり、信号の差が適切になるため、ローミングが発生可能になります。

      解決策: ローミングが行われる時点で信号が強い 2 つの AP が存在するローミング領域を作成します。ユーザが向きを変えて AP2 の信号が突然上昇する前に AP2 へのローミングが行われるように、この領域は階段の始まりになることがあります。適切な信号を実現するには、AP2 の送信電力を高める、AP2 を再配置する、階段の途中に新しい AP を追加する、などの方法があります。

注: この文書の手順に従っても問題を解決できない、またはシスコ テクニカル サポートの追加支援が必要である場合は、この文書の「情報の収集」の項でキャプチャした情報を初期データとして使用し、サービス要求を行ってください。ユーザが収集した情報により、エンジニアに適切な出発点が提供され、より迅速な解決の実現に役立ちます。


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