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2016.06  第 3 号 特集記事-1

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「止まらない工場」から「学習する工場」へ
~「FANUC Intelligent Edge Link and Drive(FIELD) system」共同記者発表会~

2016 年 4 月 18 日、ファナック株式会社とシスコシステムズ合同会社、Rockwell Automation、株式会社Preferred Networks(プリファード ネットワークス)は、「FANUC Intelligent Edge Link and Drive(FIELD) system」の開発に関する共同記者発表を行いました。FIELD system は、ファナックのオートメーション システムで使用されるCNCやロボット、周辺デバイス、センサーに対し、高度なアナリティクスを提供するためのプラットフォームであり、マシンの信頼性や品質、柔軟性、スピードの向上を通じて、総合設備効率(OEE)と収益率を向上させます。また高度な機械学習やディープ ラーニングの機能も提供し、これまで以上にインテリジェントな製造業の実現を可能にします。今回はこの共同記者発表会のレポートを通じて、FIELD system 開発の背景や意義、今後の展望等を紹介します。

世界初の製造業向けオープン プラットフォームを 4 社共同で開発

ファナック株式会社代表取締役社長稲葉 善治 氏
ファナック株式会社 代表取締役社長
稲葉 善治 氏

3労働人口の減少や、それに伴う人件費の高騰によって、製造業の現場では自動化の要求が高まっています。このような傾向は少子高齢化が進む日本だけの話ではなく、欧米や中国、アジアでも顕著になってきました。製造業の自動化は、全世界を巻き込んだグローバルな流れだといえます。その一方で日本の製造業にとっては、海外工場の品質を、いかにして日本と同じレベルまで高めていくかという課題も突きつけられています。
「例えば自動車の海外生産比率は、すでに 2/3 にまで高まっています」と語るのは、共同記者発表会で最初に登壇した、ファナック株式会社 代表取締役社長の稲葉 善治氏です。「海外工場では高いコスト パフォーマンスが求められますが、それだけではなく、現地の要望に対応できるカスタマイズ性も必要です。ファナックは最先端技術の開発によって、このニーズに応え続けてきました。」

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その代表例として稲葉氏が挙げたのが、シスコと共同開発を行い、2016 年 1 月に発表を行った「ファナック ZDT(Zero Down Time)ソリューション」です。これは IoT をベースに工場を変革するものであり、ロボットや制御装置、製造工程に何らかの不具合が発生する可能性をシステムが事前に検知、ダウンタイムが生じる前の情報提供を行います。この情報にもとづき故障前に必要な対策を実施することで、ダウンタイム ゼロの実現が可能。すでに米国の工場に導入されており、現時点で約 6,000 台の機械が接続されていると言います。
「これをさらに一歩進め、IoT の新たな潮流に乗るため、ファナックはシスコシステムズ、ロックウェル オートメーション、Preferred Networks とアライアンスを結び、製造現場に特化したソリューションを開発します」と稲葉氏。これはファナックが得意とするエッジ ヘビーなシステムをフォグやクラウドと接続し、機械学習やディープ ラーニングも取り込んだプラットフォームになると説明します。「様々なメーカーの製品も簡単に接続でき、サードパーティのソフトウェアやアプリケーションも組み込めます。これによってユーザの多様な要望に対応可能な高いカスタマイズ性を持つ、世界初の製造業向けオープン プラットフォームにしていきます。」

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ファナック株式会社専務取締役 ロボット事業本部長稲葉 清典 氏
ファナック株式会社 専務取締役 ロボット事業本部長
稲葉 清典 氏

次に登壇したファナック株式会社 専務取締役 ロボット事業本部長の稲葉 清典氏は、この FIELD system についてさらに詳細に説明します。
「エッジで機器が相互につながることで、リアルタイムな処理が可能になります。またこれらをフォグに接続し、ここで汎用アプリケーションや深層学習アプリケーション、サードパーティ アプリケーションを動かすことで、エッジの負荷を削減しながら自律分散型の処理も実現できます。さらに外部のクラウドにも、セキュリティを担保した上で接続されます。」

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このような構成のプラットフォームは、既存機器の活用にも役立つと指摘します。古い機器で高い処理能力を確保することは困難ですが、実際のデータ処理を上位レイヤのアプリケーションで実行することで、実質的に機器をアップグレードしたのと同じ効果が得られるからです。
ソリューションの供給ルートとしては、従来のロボット インテグレータや FA インテグレータ等に加え、新たに「トータル インテグレーション パートナー」を置くことで、窓口の一元化を進めていく予定。すでに大手メーカー等、国内外 100 社を超える企業と話を進めていると言います。

製造業と IT 業界のイノベーションを融合する歴史的な取り組み

シスコシステムズシニア バイス プレジデント IoT 兼アプリケーション担当 ローワン・トロロープ(Rowan Trollope)氏
シスコシステムズ シニア バイス プレジデント
IoT 兼アプリケーション担当
ローワン・トロロープ(Rowan Trollope)氏

「これは製造業と IT 業界の双方にとって、歴史的なパートナーシップです。」このように語るのは、シスコシステムズ シニア バイス プレジデントのローワン・トロロープ氏です。「FIELD system はロボティクスをリアルタイムにシスコのネットワークに接続し、数多くのメリットを実現します。特に日本の製造業では、その必要性を強く感じている方が多いと思います。首相官邸もロボット戦略を強く打ち出しています。ロボットを活用した自動化は、日本の製造業にとって不可欠なものになるでしょう。」
 またこのような取り組みを「今」行うことにも、大きな意義があると指摘します。製造現場では 3D プリンターやナノテクノロジー等の新たな進化が始まっており、IT 分野でもビッグデータやクラウド、マシン ラーニングといった、歴史的な変化が進みつつあるからです。しかしこれまでは、製造業とIT業界は別の世界であり、両者の連携はそれほど進んでいませんでした。FIELD system はこれらを融合させるという、画期的な取り組みなのです。
「もちろん製造業とシリコンバレーのイノベーションを融合させるのは、決して簡単ではありません」とトロロープ氏。これまで相互に関係が薄かったため、相手のことを深く理解していないからです。「ここにいる4社はその壁を超えるために集まりました。これによって自己変革するマシンが相互につながり、柔軟に変化できる未来の工場を目指していきます。」
ここで重要な役割を果たすのが、コンピューティングとネットワークを融合し、処理をエッジに分散させようという、シスコが IoT のために推進しているフォグ コンピューティング アーキテクチャです。例えばネットワーク ファブリックの中でソフトウェア コードを実行すれば、高度なデータ活用をよりリアルタイムに処理できるようになります。またここにディープ ラーニングを組み込めば、エッジにおけるマシン レベルでの学習も効率的に行なえます。
「この次のステップでは、工場全体のインテリジェンスを高めることで新たな価値を生み出すことが可能になり、さらにその先では、あらゆるものがシームレスにつながる世界を前提とした、ビジネス モデルの再定義が行われることになるはずです。4 社のパートナーシップによる製造業と IT の融合は、このような長い旅路への第一歩なのです。」

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ロックウェル オートメーション上級副社長 戦略的開発 兼 最高技術責任者(CTO)スジット・チャンド(Sujeet Chand)氏
ロックウェル オートメーション 上級副社長
戦略的開発 兼 最高技術責任者(CTO)
スジット・チャンド(Sujeet Chand)氏

ロックウェル オートメーションからは最高技術責任者を務めるスジット・チャンド氏が登壇し、スマート アセットの重要性と、それらを接続したコネクテッド エンタープライズの価値についてプレゼンテーションが行われました。
「ほとんどのメーカーは、品質、対応力、生産性、コスト削減等、多岐にわたる共通テーマを持っています」とチャンド氏。その目的は、工場から価値を生み出すことにあると指摘します。「そしてそのための起点となるのがスマート アセットです。」

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スマート アセットとは、自己認識やシステム認識を持つ、よりスマートな機械と装置のことだとチャンド氏は説明します。これらの機械や装置からは、電圧や消費電力、稼働時間、温度などのリアルタイム データが収集されます。そしてこれらが意味のある情報へと変換され、ここからアナリティクスやディープ ラーニングによって有用な知識が創出され、さらに知恵が生み出されていきます。これを再びスマート アセットにフィードバックすることで、より効率的なプロセスやワークフローが可能になり、運用が変革されていくと言います。  「このような変革を成し遂げるには、スケーラビル コンピューティングやセキュアなネットワーキング、情報管理と分析、モビリティ、視覚化、複数分野の制御といったテクノロジーと、プラットフォームが必要です。当社はシスコと協業し、そのリファレンス アーキテクチャを作っています。」
このようなアーキテクチャの活用例として、チャンド氏はミシガン大学の先進製造研究室の取り組みを紹介します。ロックウェル オートメーションとファナックが技術サポートとアプリケーション サポートを提供し、自動車の機械加工と組み立てアプリケーションのデータを分析。その初期結果として、パフォーマンス改善の機会が多く存在することがわかったと語ります。
「スマート アセットから始まるコネクテッド エンタープライズは、市場投入に要する時間の短縮、資産に関する総費用の低減、資産活用の改善、企業リスクの管理を可能にし、生産性と国際競争力の変革を実現します」とチャンド氏。「4 社が協業することで、その導入や活用を加速できます。この市場のリーダーと協業できることに、誇りを感じています。」

分散協調型のディープ ラーニングで短時間での最適化が可能

株式会社 Preferred Networks代表取締役社長 最高経営責任者西川 徹 氏
株式会社 Preferred Networks 代表取締役社長 最高経営責任者
西川 徹 氏

最後に登壇した株式会社 Preferred Networks 代表取締役の西川 徹氏のプレゼンテーションでは、製造業の IoT 活用におけるディープ ラーニングの意義や、その実際の適用例の説明が行われました。
「IoT の普及によるデバイスの進化、ディープ ラーニング等の人工知能の進化、そして分散協調型の新しいコンピューティングを融合することで、賢くなった機械を賢く繋ぐことが可能になります」と西川氏。ディープ ラーニングはその中で、これまでの手法では発見できなかった異常を検知する上で、重要な役割を果たすと語ります。また検知された情報にもとづき、IoT デバイスの制御を行うことも重要であり、これによって学習による最適化も実現できると言います。

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その一例として、ばら積みされた円柱の取り出しを、ゼロから自動学習するロボットのケースを紹介。最初は失敗が多く、取り出し率も低かったものが、1,000 データの学習によって取得率を 60 %に改善、5,000 データの学習後には 90 %まで向上、これは熟練者のチューニングに匹敵する数字であり、ここに至るまでの時間はわずか 8 時間だったと説明します。
またこれを分散協調型へと発展させることで、学習効果はより強化されるとも指摘します。その例として西川氏が挙げるのが、自動車の自動走行のデモです。これはミニチュアの自動車を複数自動走行させ、その中に人が操作する自動車を混ぜ、走行の邪魔をするというもの。通常であれば相手を避けながら安全走行するための学習に 3 ~ 4 日かかるところ、このデモでは半日で達成したと言います。「これは今年 1 月にラスベガスで展示したものですが、物理的制約が存在する状況でも協調分散型によって、学習時間を短縮できることを実証できました。」
さらに、3 台のロボットが協調して学習するデモもビデオで紹介。各ロボットが学習内容を相互にフィードバックする分散協調型学習が、FIELD system によって実現されています。また制御系やアクチュエータ、ロボットのレイヤだけではなく、セルやライン間の連携、工場間の連携まで行うことで、全てのレイヤでの全体最適化も可能になり、障害にも迅速に対応できるロバストな工場が実現できると語ります。
「FIELD system は、このようなことが実現可能な世界初のプラットフォームです。これを今後さらに加速し、製造業に革命を起こしたいと考えています。」

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各社のプレゼンテーションが終わった後、媒体各社からの質疑応答が行われました。この中で稲葉 善治氏は「これはまだ最初の一歩に過ぎませんが、これまで熟練オペレータが行っていたことが、今後はこのシステムで実現可能になります」とコメント。FIELD system で工場間をセキュアな形でつないでいけば、日本の工場で確立した生産プロセスを、地球の裏側の工場でもすぐに実行可能になると語ります。
 「ファナックはこれまでに 400 万台近くのロボットを出荷しており、現在も 200 万台以上が世界各地で稼働しています。またファナック以外のロボットや製造機器、センサー等も、このプラットフォームに接続可能にします。これらをつないでいくことで FIELD system が、世界の工場のデファクト スタンダードになると信じています。」

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