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2016.02  第 2 号 特集記事-3

ルー・タッカー
特集記事 3
2016.2  第 2 号

OpenStack の最新動向と、シスコの取り組み
~シスコ OpenStack プライベート セミナー レポート~

シスコは 2015 年 10 月、OpenStack Summit の開催に合わせ、OpenStack に関するプライベート セミナーを行いました。
クラウド コンピューティング担当 VP & CTO のルー・タッカー (Lew Tucker)を初め、シスコで OpenStack への取り組みをリードする 4 名が登壇し、成長戦略としての OpenStack 活用の意義や、OpenStack の導入手法、Cisco ACI との関係などが解説されました。

「未来への成長戦略としての OpenStack」
(OpenStack as a Strategy for Future Growth)

ルー・タッカー(Lew Tucker)
Vice President and Chief Technology Officer, Cloud Computing, Cisco

ルー・タッカー

 様々な業界がイノベーションの波によって変革されつつあります。UBER や Airbnb、NETFLIX、Amazon といったディスラプター(破壊者)が、業界を大きく変えているのです。これからのビジネスでは、このようなディスラプション(破壊)を、自ら実践していくことが必要です。もし皆さんが他社をディスラプトできなければ、おそらく他社が皆さんをディスラプトすることになるからです。

  ここで重要な役割を果たしているのがクラウド コンピューティングです。これらの企業はすべてクラウドを介してサービスを提供しています。当初はより安価にサービスを提供する手段として評価されましたが、最近ではダイナミックにプロビジョニングを行える点が注目されています。データセンターのあり方も変化しています。過去のデータセンターは物理的なものだと考えられてきましたが、最近ではソフトウェアで定義されるようになっています。またオープンソースの活用も広がっています。さらにサービスをプライベート、パブリックの両方で展開でき、両者の間を自由に移動することも可能になっています。  

 シスコはこのような世界を作り出すため、OpenStack に様々な形で貢献しています。シスコは以前からスタンダード ベースの会社です。昔は TCP/IP といったプロトコルがスタンダートの基盤でしたが、現在ではこれがオープンソースへと移っています。OpenStack への貢献も当然の流れだと言えます。

  実際にシスコが果たしている貢献は多岐にわたります。

OpenStack contributions by Cisco

 最近シスコが関与したものとしては、Kolla や Magnum といったコンテナ領域のプロジェクトがあります。コンテナは仮想マシンの代替として、開発者に新たな選択肢を提供するものです。また Neutron でもシスコは大きな貢献を果たしています。IPv6 や仮想ルータを Neutron の世界に持ち込むといった取り組みを通じて、OpenStack でもシスコのテクノロジーを簡単に使えるようにしています。この他にも、仮想マシンの展開状況を可視化する Curvature、AVOS(アナリティクス ツール)、VMTP(パフォーマンス測定ツール)、グループ ベース ポリシー(GBP)でも重要な役割を果たしています。またクラウド パルスや Ceph ダッシュボードといった新規プロジェクトにも取り組んでいます。

  OpenStack の世界では、クラウド コンピューティングと SDN が、まるでハリケーンのように渦巻き、ぶつかり合っています。シスコは Neutron の開発段階からこのような状況を予測し、これらのモデルを両立しようと考えてきました。そのために ACI や OpenDaylight といったネットワーク テクノロジーを開発し、OpenStack を通じてこれらを提供できるようにしてきたのです。ラックの後ろで絡まり合っていたケーブルと、手作業で行われてきた各種設定は、いまでは OpenStack の中のコードへと変わりつつあります。これによって GBP も可能になりました。

  これまで数多くのハードウェアを使ってきた大手通信会社でも、OpenStack への注目度が高まっています。様々なネットワーク機器が NFV へと移行しつつあるからです。また放送業界でもソフトウェアへの移行が進みつつあります。OpenStack はこのような動きを促進する基盤になっています。OpenDaylight で定義されたテクノロジーを、OpenStack に融合しようという取り組みも進んでいます。OpenStack は様々なオープンソース テクノロジーを統合するための、受け皿としての役割も果たしているのです。

  アプリケーションやサービスのあり方も、いま一度見直す必要があります。これからは一連のサービスを小さなコンポーネントに分け、マイクロ サービスとして提供することが、重要な手法になるでしょう。またサービス オーケストレーションによって、継続的なデプロイメントと改善を行うことも重要です。これによってダウンタイムを最小化できるからです。さらにこれらを扱う人間にも、継続的な学習が必要です。最近のテクノロジーの変化は、あまりにもスピーディだからです。

  継続的デプロイメントをシステムに、そして継続的な学習を企業組織に組み込んでいくこと。これを行う以外に、前進する方法はないのです。

「Cisco Metapod のご紹介」(Introduction to Cisco Metapod)

ショーン・リンチ (Sean Lynch)
Vice President of Product Management, Cloud Services, Cisco

ショーン・リンチ

 私のセッションでは Metapod についてお話します。OpenStack は製品ではなく製品を構成する個々の要素の集合体ですが、Metapod はこれらの要素を組み合わせ、簡単に活用できるようにした製品です。

  これはシスコが 2014 年 9 月に買収した Metacloud で開発されたものです。私はファウンダー& CEO として Metacloud に関わってきました。その前は EC 業界第 3 位の Ticketmaster でグローバル オペレーションのトップを務め、私と一緒に Ticketmaster を去った人々が、Metacloud の創立メンバーとなりました。Ticketmaster は大規模な SaaS を提供していますが、Metacloud ではこのバックグランドから、製品開発にも SaaS の発想を活かそうと考えました。つまりオンプレミス システムとして導入した OpenStack を、パブリック クラウドのような形で、サービスとして活用できるようにしたのです。これによってクラウドのライフサイクルを、フルに管理できるようになります。SaaS の会社は改善を加えながらサービスを提供していますが、これと同じことがオンプレミス システムでも実現できるのです。

  Metacloud は 3 つの物理ノードでクラウド コントローラを構成します。これら全てに OpenStack のエージェントが搭載されており、独自アルゴリズムによってコントローラ間で負荷分散が行われます。高可用性もはじめから取り入れられているのです。

  ダッシュボードも独自のものを用意しています。これは OpenStack 標準の Horizon ではありません。私どもが培ってきたノウハウを投入し、Angular.js によるクライアント サイドのレンダリングを行っています。これによってリッチな可視化をスピーディに行えるようにしています。また Graphite 等で使える API も用意しています。

  この Metacloud をシスコのハードウェアに実装したものが Metapod です。ハードウェアは ASR 1000、Nexus 9000、Cisco UCS で構成されており、コンピュート ノードは最大 500 までスケールできます。ハードウェア、ソフトウェア、サービスが全てまとまっているため、簡単に利用を開始できます。TCO も他のパブリッククラウドと比べて低くなります。非常に魅力的な製品だと言えます。

  Metapod を導入すれば、自らのデータセンターでパブリック クラウドの体験が得られます。複数の製品を調達して組み合わせる必要はなく、コードやパッチセットの管理も不要になります。ハイブリッド クラウドの実現も容易です。下位レイヤのオペレーションやエンジニアリングを行うことなく、理想的な形でクラウドを利用できるようになるのです。 

「すぐに OpenStack を活用できるシスコの統合インフラ」
(Cisco UCS Integrated Infrastructure - Enabling OpenStack based Private Clouds)

バラジ・シバスブラマニアン (Balaji Sivasubramanian)
Director, Product Management, Open Source UCS Solutions, Cisco

バラジ・シバスブラマニアン

 自社のシステムに OpenStack を導入したいというお客様が増えています。しかし実際の導入では、Red Hat のどのディストリビューションを選択すべきか、サーバやネットワーク スイッチを適切に機能させるにはどうすべきか等、数々の課題があります。

 シスコはこの課題の解決手段として、事前検証された統合インフラを提供しています。Cisco UCS にパートナーのテクノロジーを載せ、シスコが検証し、すぐに利用可能な形で提供しているのです。お客様はこれらの検証を行う必要がありません。OpenStack のようなオープンソースを社内システムとして導入可能なのか否かという問いに対し、シスコが検証を行って答えを出しているのです。

 シスコではこのような OpenStack の統合インフラとして、2 種類のオファリングを用意しています。1 つは Cisco UCS と Ceph ベースのブロック ストレージ、Red Hat の OpesStack Platform(OSP)を組み合わせたもの。もう 1 つは Cisco UCS と NetApp のバックエンド ストレージ、Red Hat OSP を組み合わせた FlexPod です。これらを利用することで、OpenStack ベースのプライベート クラウドを、すぐに立ち上げることが可能になります。またサポート モデルもメリットの1つです。Cisco UCS や Nexus はもちろんのこと、OpenStack や Red Hat OSP、ストレージに関しても、全ての問い合わせにシスコが対応します。

 これらは OpenStack 導入の新たな選択肢です。OpenStack の導入や設定に苦労するのではなく、すぐにでも使っていただけるようにしたい。それこそがシスコの望みなのです。

「OpenStack と Cisco ACI の統合によるプライベート クラウドの実現」
(Realize the Private Cloud - OpenStack + Cisco ACI Integration)

大平 伸一
シスコシステムズ合同会社 システムズエンジニアリング SDN 応用技術室 
テクニカルソリューションズアーキテクト

大平 伸一

 シスコは 2008 年に Nexus の販売を開始し、2009 年には Cisco UCS でサーバを抽象化、そして 2014 年にネットワークを仮想化する ACI をリリースしています。これらに共通しているのがポリシー モデルです。これでデータセンター全体を抽象化し、プロビジョニングを自動化できる世界を実現しようとしています。その一方で OpenStack に対しても、Easy(簡単)、Security(セキュリティ)、Reliable(信頼性)、Complete(完全性)という 4 つの方針を掲げ、積極的に取り組んでいます。

  ここで重要になるのもポリシー モデルです。OpenStack と ACI は、使用している用語は異なりますが、いずれも同様のポリシー モデルを採用しています。OpenStack ではこれをグループ ベース ポリシー(GBP)と呼んでいます。

  GBP は現在のネットワークが抱える 3 つの課題を解決します。第 1 の課題は物理的要素への依存のため、構築や導入が長期化すること。第 2 は設定変更を手作業で行うことによる運用コスト増大。そして第 3 がレイヤ 7 のネットワーク機器との迅速な連携が困難なことです。ポリシー モデルを導入すれば、サーバ間の接続モデルを定義するだけで、ネットワークを設定できます。サーバが移動した場合にはネットワークが自動的に追随し、ポリシーを適用します。新規サーバが追加された場合も、サーバの属性に応じてポリシーを自動適用でき、レイヤ7のネットワーク機器へのリダイレクトも容易になります。

  GBP のユーザ インターフェイスとしては、Horizon、CLI、Heat が用意されています。ここから ACI のコントローラである APIC へとポリシーを展開し、APIC から OpFlex で、物理スイッチ、仮想スイッチ、レイヤ4-7 のデバイス群をコントロールできます。現在は Neutron ドライバを経由してコントロールしていますが、近い将来にはネイティブ ドライバで、OVS に直接 GBP を展開できるようになり、仮想マシン間のトラフィックにより細かいポリシー制御をかけられるようになります。さらに Floating IP や NAT を OVS 上で実行させることや、サービス リダイレクションを行うことも可能になります。

  シスコは現在 Nexus 9000 シリーズをベースに ACI を提供していますが、これと OpenStack や KVM、OVS を組み合わせ、プライベート クラウドを実現できる段階にきているのです。

実機を使って行われた 3 種類のデモ
Cisco Cloud Web Security(CWS)

 これらの講演の後、パーティ会場において、実機を使った3種類のデモも行われました。

 第 1 のデモは、OpenStack と Cisco ACI の連携ソリューションです。OpenStack から ACI の管理を行うことで、従来のサーバ インフラのみならずネットワークの領域でも、プロビジョニングやオーケストレーション等を、深い知識なしで行えることが示されました。これによってサーバ管理者がネットワークも管理することが可能になり、TCO の削減が可能になります。

  第 2 は Cisco Metapod です。これは Sean Lynch の講演にもあるように、オンプレミスでパブリック クラウドと同様の環境を実現し、統合管理を「as a Service」として提供できるようにする統合インフラです。これによってユーザはインフラ管理から解放されます。また OpenStack で標準化された環境を用いることで、他のクラウドへのマイグレーションや管理のアウトソース化も容易になります。

  第 3 のデモは OpenStack とデータセンター ネットワーク製品の連携です。シスコは OpenStack ファウンデーション創立以来のゴールドメンバーとして、OpenStack への様々な貢献を果たしています。特にネットワーク領域に関しては様々なプロジェクトに参画してきた実績があり、ここで得られた成果はシスコ製品にも反映されています。今回のデモでは、Cisco ASR 1000 と OpenStack の連携によって、仮想スイッチからルータまでのネットワーク設定を、自動的に行えることが示されました。

  これらのデモ コーナーには数多くの人々が集まり、説明員との活発なやり取りが見られました。またこのパーティでは芸者による演舞も披露され、華やかな雰囲気の中、参加者同士の親睦も深めることができました。