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目次
この章では、メディア ターミネーション ポイント(MTP)ソフトウェアについて説明します。 Cisco Unified Communications Manager は、このソフトウェアを使用して、SIP または H.323 エンドポイントもしくはゲートウェイを介してルーティングされたコールをリレーできます。
(注) |
トランスコーダとして機能するハードウェア MTP の詳細については、トランスコーダを参照してください。 |
メディア ターミネーション ポイント(MTP)ソフトウェア デバイスを使用することで Cisco Unified Communications Manager は SIP や H.323 エンドポイントまたはゲートウェイ経由でルーティングされるコールを中継できます。
メディア ターミネーション ポイントは、コール保留、コール転送、コール パーク、会議などの補足サービスを拡張します。これらのサービスは、コールが H.323 エンドポイントにルーティングされる場合は、MTP がないと使用できません。 一部の H.323 ゲートウェイでは、補足コール サービスを有効にするにはコールで MTP を使用することが必要になる場合がありますが、通常、Cisco IOS ゲートウェイでは MTP を必要としません。 H.323 補足サービスで MTP が必要となるのは、Empty Capability Set(ECS)または FastStart をサポートしていないエンドポイントのみです。 シスコのすべてのエンドポイント、およびその他のほとんどのエンドポイントは ECS と FastStart をサポートしているため、MTP を必要としません。
MTP リソースは、2 つの全二重 G.711 コーダ/デコーダ(CODEC)ストリーム接続を受け入れます。 MTP は、2 つの接続間でメディア ストリームのブリッジ処理を行います。 ブリッジ処理では、一方の接続の入力ストリームから受信したストリーミング データが他方の接続の出力ストリームに渡され、またその逆も行われます。 さらに、MTP は、2 つの接続の要求に応じて、a-law から mu-law へ(およびその逆)のトランスコーディングやパケット サイズの調整を行います。
各 MTP はデバイス プールに属しています。デバイス プールには、優先順に配列された Cisco Unified Communications Manager のリストが指定されており、デバイス プールのメンバーであるデバイスが登録を試みるときは、そのリストの順に行う必要があります。 このリストは、 Cisco Unified Communications Manager グループを表します。 リスト内の最初の Cisco Unified Communications Manager は、デバイスのプライマリ Cisco Unified Communications Manager を指定します。
MTP デバイスは、プライマリ Cisco Unified Communications Manager が使用可能である場合は常にその Cisco Unified Communications Manager に登録され、サポートしている MTP リソースの数を Cisco Unified Communications Manager に通知します。 Cisco Unified Communications Manager は、MTP リソースを制御します。 同じ Cisco Unified Communications Manager に複数の MTP を登録できます。 特定の Cisco Unified Communications Manager に複数の MTP が登録されている場合、その Cisco Unified Communications Manager は、MTP ごとのリソース セットを制御します。 また、必要に応じてネットワーク システム全体に MTP を分散させることもできます。
たとえば、MTP サーバ 1 が 48 の MTP リソース用に設定され、MTP サーバ 2 は 24 のリソース用に設定されているとします。 両方の MTP が同じ Cisco Unified Communications Manager に登録されている場合、その Cisco Unified Communications Manager は両方のリソース セット、つまり、合計 72 の登録済み MTP リソースを保持します。
Cisco Unified Communications Manager は、コール エンドポイントで MTP が必要であると判定すると、アクティブ ストリームが最も少ない MTP から MTP リソースを割り当てます。 その MTP リソースは、エンドポイントの代わりにコールに挿入されます。 MTP リソースの使用は、システムのユーザにも、リソースが代わりに挿入されたエンドポイントにも見えない形で行われます。 MTP リソースが必要なときに、そのリソースが使用できない場合、コールは MTP リソースを使用せずに接続されるため、そのコールは補足サービスを利用できないことになります。
MTP デバイスが設定されたサーバ上で Cisco IP Voice Media Streaming アプリケーションが有効化され、実行されていることを確認してください。
Cisco IP Voice Media Streaming アプリケーションは、MTP、会議ブリッジ、アナンシエータ、および保留音の各アプリケーションに共通で、 Cisco Unified Communications Manager のサービスとして実行されます。
Cisco IP Voice Media Streaming Application サービスによって提供される MTP デバイスは、IPv4 と IPv6 の両方のオーディオ メディア接続をサポートしています。 MTP デバイスは、プラットフォームが IPv6 用に設定され、IPv6 エンタープライズ パラメータが有効になっていると、自動的にデュアル モードで設定されます。 MTP デバイスは、TCP 制御チャネルの IPv4 のみをサポートしています。
メディア リソース マネージャ(MRM)は、 Cisco Unified Communications Manager システムのソフトウェア コンポーネントであり、その主な機能はリソース登録とリソース予約です。 データベースで定義されている各 MTP デバイスは、MRM に登録されます。 MRM は、システム内で使用可能な MTP デバイスの総数と、どのデバイスに使用可能なリソースがあるかを追跡します。
リソースの予約時に、MRM はリソース数を判別し、メディア リソース タイプ(この場合は、MTP)および登録済みの MTP デバイスの場所を識別します。
MRM は、登録情報を使用して共有リソース テーブルを更新します。
MRM はまた、 Cisco Unified Communications Manager 内での MTP とトランスコーダの共存もサポートしています。
Cisco CallManager サービスをサポートする MTP and Transcoder Resource Throttling Percentage サービス パラメータは、設定済みの MTP またはトランスコーダ リソースの割合を定義し、 Cisco Unified Communications Manager が、コールを接続できる可能性の最も高い MTP またはトランスコーダにコールを送信します。 アクティブな MTP またはトランスコーダ リソースの数が、このパラメータに対して設定されている割合より大きくなると、 Cisco Unified Communications Manager は、この MTP またはトランスコーダへのコールのスロットリング(送信停止)を行います。 Cisco Unified Communications Manager は、メディア リソース グループ リスト(MRGL)を 1 回検索して、コールの両側で一致するコーデックを使用する MTP またはトランスコーダを見つけます。 Cisco Unified Communications Manager が、一致するコーデックを使用する使用可能な MTP またはトランスコーダを見つけることができない場合、 Cisco Unified Communications Manager は MRGL の一番上に戻って検索を繰り返します。この検索には、スロットリング状態にあり、コールの機能の一部と一致する MTP またはトランスコーダが含まれます。 Cisco Unified Communications Manager がリソースを使用できると判定した場合、 Cisco Unified Communications Manager は、コールに最適な MTP またはトランスコーダにコールを送信します。MTP またはトランスコーダがコールにリソースを割り当てることができない場合、コールは失敗します。 場合によっては、 Cisco Unified Communications Manager がハードウェア MTP またはトランスコーダ上のリソースを使用可能と認識しても、ハードウェア上の実際のポートは使用できないことがあります。
たとえば、Cisco IP Voice Media Streaming Application サービスをサポートする Call Count サービス パラメータに、ソフトウェア MTP またはトランスコーダに対して(または、最大セッションが 40 に設定されている場合などは、ハードウェア リソースに対して)40 を入力し、MTP and Transcoder Resource Throttling Percentage サービス パラメータを 95 パーセントに設定したとします。38 のリソースがこの MTP またはトランスコーダ上で使用されている場合(.95 x 40 = 38)、 Cisco Unified Communications Manager は MTP またはトランスコーダへのコールのスロットリングを行います。 MTP またはトランスコーダに対して新しい要求が到着すると、 Cisco Unified Communications Manager はリソースの数が 38 以下になったかどうかをチェックし、38 以下であれば、コールを MTP またはトランスコーダに送信します。
このサービス パラメータの最大値、最小値、およびデフォルト値については、 Cisco Unified Communications Manager の管理ページにある [サービスパラメータ設定(Service Parameter Configuration)] ウィンドウで疑問符をクリックしてください。
Cisco Unified Communications Manager の管理ページにおけるメディア ターミネーション ポイント タイプは次のとおりです。
MTP タイプ |
説明 |
||
---|---|---|---|
Cisco IOS Enhanced Media Termination Point |
このタイプは、Cisco 2600XM、Cisco 2691、Cisco 3725、Cisco 3745、および Cisco 3660 アクセス ルータと、次の場合の MTP をサポートします。
このタイプはサービス プロバイダー環境においてネットワーク アドレス変換をサポートし、プライベート アドレスを隠すことができます。 Cisco Unified Communications Manager の管理ページでは、ゲートウェイのコマンドライン インターフェイス(CLI)で、存在する同じ MTP 名を入力するようにしてください。 |
||
Cisco Media Termination Point Software |
1 つの MTP は、デフォルトで 48(ユーザ設定可能)の MTP リソースを提供します。この数は、ネットワークとネットワーク インターフェイス カード(NIC)の速度に応じて変わります。 たとえば、100 MB のネットワーク/NIC カードが 48 の MTP リソースをサポートできるのに対して、10 MB の NIC カードは同数のリソースをサポートできません。 10 MB のネットワーク/NIC カードの場合、約 24 の MTP リソースを提供できます。ただし、使用可能な MTP リソースの正確な数は、その PC 上の他のアプリケーションが消費しているリソース、プロセッサの速度、ネットワークの負荷、その他のさまざまな要因によって決まります。 |
プロビジョニングは、MTP リソースを展開する際に考慮する必要がある重要な点の 1 つです。 プロビジョニングでは、コールの負荷パターンとネットワーク トポロジの慎重な分析が必要となります。
MTP 設定を計画する際は、次の情報を考慮に入れてください。
設定が不適切の場合は、作業負荷が増えたときに期待するパフォーマンスが得られないことがあります。
1 つの MTP が、デフォルトで 48(ユーザ設定可能)の MTPストリームを提供し、2 つのストリームが 1 つのリソースを構成します。これは、MTP の両端(送信と受信)でそれぞれ 1 つのストリームが必要になるためです。 10 MB のネットワーク/NIC カードの場合、約 24 の MTP リソースを提供できます。ただし、使用可能な MTP リソースの正確な数は、その PC 上の他のアプリケーションが消費しているリソース、プロセッサの速度、ネットワークの負荷、その他のさまざまな要因によって決まります。
サーバが 48 の MTP ストリームを処理できると想定する場合(48 でなくても、システムがサポートする適正な MTP リソースの数を適用できます)、システムに必要な MTP のおおよその数を決定するには、次の式で検討してください。
n を 48 で割った値 = 必要な MTP アプリケーション数(n/48 = MTP アプリケーション数)
説明は、次のとおりです。
n は、H.323 および SIP コールに対する MTP サポートが必要なデバイスの数を表します。
余りが生じた場合は、MTP を設定した Cisco IP Voice Streaming Application サービスをもう 1 つ追加します。
1 つの H.323 または SIP エンドポイントが MTP を必要とする場合、1 つの MTP リソースが消費されます。 発信側と終端のデバイス タイプによっては、1 つのコールによって複数の MTP リソースが消費される場合があります。 コールに割り当てられた MTP リソースは、そのコールが終了すると解放されます。
MTP リソースの使用状況をモニタするには、サービスアビリティ リアルタイム監視ツール(RTMT)を使用します。 perfmon カウンタである Media TermPoints Out of Resources は、MTP リソースが要求されたときに、H.323 または SIP コールがそのリソースなしで接続するたびに増えます。 この数は、発信者に必要な MTP リソースの数や、リソースが十分にあるかどうかを判定するのに役立ちます。
同じシステム要件が、Cisco IP Voice Media Streaming Application、MTP リソース、および Cisco Unified Communications Manager システムに適用されます。
DTMF シグナリングのパフォーマンスを最適化するには、Cisco IOS リリース 12.4(11)T 以降を使用します。 この Cisco IOS リリースは、番号の RFC 2833 DTMF MTP パススルーをサポートしています。
Full Streaming Endpoint Duplex Count は、特定の MTP によってサポートされている MTP リソースの数で、MTP デバイス設定に特有のデバイス特性を示します。
コール失敗またはユーザ アラートを防ぐには、次の状態を避けてください。
Cisco IP Voice Media Streaming Application サービスは Cisco Unified Communications Manager と同一 PC 上で動作できますが、同一 PC 上で実行しないように強く推奨します。 Cisco IP Voice Media Streaming Application が Cisco Unified Communications Manager と同一 PC 上で動作していると、 Cisco Unified Communications Manager のパフォーマンスに悪影響を与えることがあります。
MTP の設定時に、変更を有効にするには MTP をリセットするように求められます。 MTP をリセットしても、MTP リソースに接続されているコールの接続は解除されません。 [リセット(Reset)] を選択した場合、MTP にアクティブなコールがなくなるとすぐに、変更が有効になります。
(注) |
MTP の設定を更新した後で、[リスタート(Restart)] を選択すると、MTP に接続されているコールがすべて終了されます。 |
ソフトウェア MTP デバイスに適用されるシステム要件と制限事項は、次のとおりです。
1 台のサーバでアクティブにできる Cisco IP Voice Streaming Application は 1 つに限定されます。 追加の MTP リソースを提供するには、ネットワーク上にある他のサーバで Cisco IP Voice Streaming アプリケーションをアクティブにすることができます。
各 MTP が一度に登録できる Cisco Unified Communications Manager は 1 つに限定されます。 システム内には、設定内容に応じて、複数の MTP を存在させることができます。各 MTP は、1 つの Cisco Unified Communications Manager に登録できます。
Cisco Unified Communications Manager のパフォーマンスに悪影響を与える可能性があるため、コール処理の負荷が大きい Cisco Unified Communications Manager 上では Cisco IP Voice Streaming Media Application をアクティブにしないようにすることを強くお勧めします。
ここでは、MTP デバイスが登録されている Cisco Unified Communications Manager が到達不能になったときの、MTP デバイスのフェールオーバーとフォールバックの方法について説明します。 また、MTP デバイスに関連したコールに影響を与える可能性がある状態(たとえば、MTP のリセットや再起動)についても説明します。
次に、MTP が登録されている Cisco Unified Communications Manager が非アクティブになったときの、MTP デバイスの回復方法について説明します。
プライマリ Cisco Unified Communications Manager に障害が発生した場合、MTP は、MTP が属するデバイス プールに対して指定された Cisco Unified Communications Manager グループ内で、次に使用可能な Cisco Unified Communications Manager への登録を試みます。
プライマリ Cisco Unified Communications Manager が障害後に使用可能な状態に戻り、現在まだ使用されていない場合、MTP デバイスはただちにプライマリ Cisco Unified Communications Manager に再登録されます。
コール保存モードでアクティブだったコールまたは会議は、すべてのパーティが切断されるまで、システムによって保持されます。 システムは、補足サービスを使用可能にしません。
MTP が新しい Cisco Unified Communications Manager への登録を試み、登録確認応答を受信しなかった場合、MTP は次の Cisco Unified Communications Manager に登録されます。
MTP デバイスは、ハード リセットまたはソフト リセット後に登録を解除し、続いて接続を解除します。 リセットが完了すると、デバイスは Cisco Unified Communications Manager に再登録されます。
特定のメディア ターミネーション ポイントがどのメディア リソース グループを使用しているかを見つけるには、 Cisco Unified Communications Manager の管理ページの [メディアターミネーションポイントの設定(Media Termination Point Configuration)] ウィンドウで、ドロップダウン リスト ボックスから [依存関係レコード(Dependency Records)] を選択し、[移動(Go)] をクリックします。 [依存関係レコード要約(Dependency Records Summary)] ウィンドウに、メディア ターミネーション ポイントを使用しているメディア リソース グループに関する情報が表示されます。 メディア リソース グループに関するより詳細な情報を見つけるには、メディア リソース グループをクリックして [依存関係レコード詳細(Dependency Records Detail)] ウィンドウを表示します。 依存関係レコードがシステムで使用できない場合は、[依存関係レコード要約(Dependency Records Summary)] ウィンドウにメッセージが表示されます。
メディア ターミネーション ポイントの Real-Time Monitoring Tool カウンタを使用すると、現在使用中のメディア ターミネーション ポイント数、現在 Cisco Unified Communications Manager に登録されているが現時点で使用されていないメディア ターミネーション ポイント数、メディア ターミネーション ポイントがコールに対して要求されたが使用できるリソースがなかった回数をモニタすることができます。
Cisco Unified Communications Manager は、メディア ターミネーション ポイントに関するすべてのエラーを Local SysLog に書き込みます。 Cisco Unified Serviceability では、Cisco IP Voice Media Streaming Application サービスのトレースを設定できます。多くの問題のトラブルシューティングを行うには、サービスの [Error] オプションではなく、[Significant] または [Detailed] オプションを選択する必要があります。 問題をトラブルシューティングした後、[デバッグトレースレベル(Debug Trace Level)] を [Error] オプションに戻します。
Cisco Unified Communications Manager は、 Cisco Unified Serviceability でメディア ターミネーション ポイントの登録および接続アラームを生成します。
テクニカル サポートが必要な場合は、Cisco Unified Communications のパートナーや Cisco Technical Assistance Center(TAC)に連絡する前に、ソフトウェア MTP ログを検索して確認してください。
ソフトウェア MTP ログにアクセスするには、次の CLI コマンドを使用します。
file list activelog cm/trace/cms/sdi/*.txt
file get activelog cm/trace/cms/sdi/*.txt
file view activelog cm/trace/cms/sdi/cms00000000.txt
file tail activelog cm/trace/cms/sdi/cms00000000.txt
目次
- メディア ターミネーション ポイント
- ソフトウェア MTP の設定
- メディア ターミネーション ポイントの概要
- メディア リソース マネージャによる MTP の管理
- MTP とコール スロットリング
- Cisco Unified Communications Manager の管理ページにおける MTP のタイプ
- ソフトウェア MTP の計画
- ソフトウェア MTP デバイスの特性
- コール失敗の回避
- MTP のシステム要件と制限事項
- MTP のフェールオーバーとフォールバック
- アクティブな Cisco Unified Communications Manager が非アクティブになった場合
- 登録されている MTP デバイスのリセット
- 依存関係レコード
- ソフトウェア MTP のパフォーマンス モニタリングおよびトラブルシューティング
この章では、メディア ターミネーション ポイント(MTP)ソフトウェアについて説明します。 Cisco Unified Communications Manager は、このソフトウェアを使用して、SIP または H.323 エンドポイントもしくはゲートウェイを介してルーティングされたコールをリレーできます。
(注)
トランスコーダとして機能するハードウェア MTP の詳細については、トランスコーダを参照してください。
- ソフトウェア MTP の設定
- メディア ターミネーション ポイントの概要
- メディア リソース マネージャによる MTP の管理
- MTP とコール スロットリング
- Cisco Unified Communications Manager の管理ページにおける MTP のタイプ
- ソフトウェア MTP の計画
- MTP のシステム要件と制限事項
- MTP のフェールオーバーとフォールバック
- 依存関係レコード
- ソフトウェア MTP のパフォーマンス モニタリングおよびトラブルシューティング
ソフトウェア MTP の設定
手順メディア ターミネーション ポイント(MTP)ソフトウェア デバイスを使用することで Cisco Unified Communications Manager は SIP や H.323 エンドポイントまたはゲートウェイ経由でルーティングされるコールを中継できます。
関連情報
メディア ターミネーション ポイントの概要
メディア ターミネーション ポイントは、コール保留、コール転送、コール パーク、会議などの補足サービスを拡張します。これらのサービスは、コールが H.323 エンドポイントにルーティングされる場合は、MTP がないと使用できません。 一部の H.323 ゲートウェイでは、補足コール サービスを有効にするにはコールで MTP を使用することが必要になる場合がありますが、通常、Cisco IOS ゲートウェイでは MTP を必要としません。 H.323 補足サービスで MTP が必要となるのは、Empty Capability Set(ECS)または FastStart をサポートしていないエンドポイントのみです。 シスコのすべてのエンドポイント、およびその他のほとんどのエンドポイントは ECS と FastStart をサポートしているため、MTP を必要としません。
MTP リソースは、2 つの全二重 G.711 コーダ/デコーダ(CODEC)ストリーム接続を受け入れます。 MTP は、2 つの接続間でメディア ストリームのブリッジ処理を行います。 ブリッジ処理では、一方の接続の入力ストリームから受信したストリーミング データが他方の接続の出力ストリームに渡され、またその逆も行われます。 さらに、MTP は、2 つの接続の要求に応じて、a-law から mu-law へ(およびその逆)のトランスコーディングやパケット サイズの調整を行います。
各 MTP はデバイス プールに属しています。デバイス プールには、優先順に配列された Cisco Unified Communications Manager のリストが指定されており、デバイス プールのメンバーであるデバイスが登録を試みるときは、そのリストの順に行う必要があります。 このリストは、 Cisco Unified Communications Manager グループを表します。 リスト内の最初の Cisco Unified Communications Manager は、デバイスのプライマリ Cisco Unified Communications Manager を指定します。
MTP デバイスは、プライマリ Cisco Unified Communications Manager が使用可能である場合は常にその Cisco Unified Communications Manager に登録され、サポートしている MTP リソースの数を Cisco Unified Communications Manager に通知します。 Cisco Unified Communications Manager は、MTP リソースを制御します。 同じ Cisco Unified Communications Manager に複数の MTP を登録できます。 特定の Cisco Unified Communications Manager に複数の MTP が登録されている場合、その Cisco Unified Communications Manager は、MTP ごとのリソース セットを制御します。 また、必要に応じてネットワーク システム全体に MTP を分散させることもできます。
たとえば、MTP サーバ 1 が 48 の MTP リソース用に設定され、MTP サーバ 2 は 24 のリソース用に設定されているとします。 両方の MTP が同じ Cisco Unified Communications Manager に登録されている場合、その Cisco Unified Communications Manager は両方のリソース セット、つまり、合計 72 の登録済み MTP リソースを保持します。
Cisco Unified Communications Manager は、コール エンドポイントで MTP が必要であると判定すると、アクティブ ストリームが最も少ない MTP から MTP リソースを割り当てます。 その MTP リソースは、エンドポイントの代わりにコールに挿入されます。 MTP リソースの使用は、システムのユーザにも、リソースが代わりに挿入されたエンドポイントにも見えない形で行われます。 MTP リソースが必要なときに、そのリソースが使用できない場合、コールは MTP リソースを使用せずに接続されるため、そのコールは補足サービスを利用できないことになります。
MTP デバイスが設定されたサーバ上で Cisco IP Voice Media Streaming アプリケーションが有効化され、実行されていることを確認してください。
Cisco IP Voice Media Streaming アプリケーションは、MTP、会議ブリッジ、アナンシエータ、および保留音の各アプリケーションに共通で、 Cisco Unified Communications Manager のサービスとして実行されます。
Cisco IP Voice Media Streaming Application サービスによって提供される MTP デバイスは、IPv4 と IPv6 の両方のオーディオ メディア接続をサポートしています。 MTP デバイスは、プラットフォームが IPv6 用に設定され、IPv6 エンタープライズ パラメータが有効になっていると、自動的にデュアル モードで設定されます。 MTP デバイスは、TCP 制御チャネルの IPv4 のみをサポートしています。
メディア リソース マネージャによる MTP の管理
メディア リソース マネージャ(MRM)は、 Cisco Unified Communications Manager システムのソフトウェア コンポーネントであり、その主な機能はリソース登録とリソース予約です。 データベースで定義されている各 MTP デバイスは、MRM に登録されます。 MRM は、システム内で使用可能な MTP デバイスの総数と、どのデバイスに使用可能なリソースがあるかを追跡します。
リソースの予約時に、MRM はリソース数を判別し、メディア リソース タイプ(この場合は、MTP)および登録済みの MTP デバイスの場所を識別します。
MRM は、登録情報を使用して共有リソース テーブルを更新します。
MRM はまた、 Cisco Unified Communications Manager 内での MTP とトランスコーダの共存もサポートしています。
MTP とコール スロットリング
Cisco CallManager サービスをサポートする MTP and Transcoder Resource Throttling Percentage サービス パラメータは、設定済みの MTP またはトランスコーダ リソースの割合を定義し、 Cisco Unified Communications Manager が、コールを接続できる可能性の最も高い MTP またはトランスコーダにコールを送信します。 アクティブな MTP またはトランスコーダ リソースの数が、このパラメータに対して設定されている割合より大きくなると、 Cisco Unified Communications Manager は、この MTP またはトランスコーダへのコールのスロットリング(送信停止)を行います。 Cisco Unified Communications Manager は、メディア リソース グループ リスト(MRGL)を 1 回検索して、コールの両側で一致するコーデックを使用する MTP またはトランスコーダを見つけます。 Cisco Unified Communications Manager が、一致するコーデックを使用する使用可能な MTP またはトランスコーダを見つけることができない場合、 Cisco Unified Communications Manager は MRGL の一番上に戻って検索を繰り返します。この検索には、スロットリング状態にあり、コールの機能の一部と一致する MTP またはトランスコーダが含まれます。 Cisco Unified Communications Manager がリソースを使用できると判定した場合、 Cisco Unified Communications Manager は、コールに最適な MTP またはトランスコーダにコールを送信します。MTP またはトランスコーダがコールにリソースを割り当てることができない場合、コールは失敗します。 場合によっては、 Cisco Unified Communications Manager がハードウェア MTP またはトランスコーダ上のリソースを使用可能と認識しても、ハードウェア上の実際のポートは使用できないことがあります。
たとえば、Cisco IP Voice Media Streaming Application サービスをサポートする Call Count サービス パラメータに、ソフトウェア MTP またはトランスコーダに対して(または、最大セッションが 40 に設定されている場合などは、ハードウェア リソースに対して)40 を入力し、MTP and Transcoder Resource Throttling Percentage サービス パラメータを 95 パーセントに設定したとします。38 のリソースがこの MTP またはトランスコーダ上で使用されている場合(.95 x 40 = 38)、 Cisco Unified Communications Manager は MTP またはトランスコーダへのコールのスロットリングを行います。 MTP またはトランスコーダに対して新しい要求が到着すると、 Cisco Unified Communications Manager はリソースの数が 38 以下になったかどうかをチェックし、38 以下であれば、コールを MTP またはトランスコーダに送信します。
このサービス パラメータの最大値、最小値、およびデフォルト値については、 Cisco Unified Communications Manager の管理ページにある [サービスパラメータ設定(Service Parameter Configuration)] ウィンドウで疑問符をクリックしてください。
Cisco Unified Communications Manager の管理ページにおける MTP のタイプ
Cisco Unified Communications Manager の管理ページにおけるメディア ターミネーション ポイント タイプは次のとおりです。
表 1 メディア ターミネーション ポイント タイプ MTP タイプ
説明
Cisco IOS Enhanced Media Termination Point
このタイプは、Cisco 2600XM、Cisco 2691、Cisco 3725、Cisco 3745、および Cisco 3660 アクセス ルータと、次の場合の MTP をサポートします。
G.711 から G.711、または G.729 から G.729 コーデックをサポートするデバイスで、ソフトウェアだけを実装するとき、DSP は使用しないもののパケット化にかかる時間が同じであれば、ゲートウェイごとに最大 500 セッションをサポートします。
G.711、G.729a、および G.729b コーデックを使用するデバイスで DSP を使用してハードウェアだけを実装する場合、NM-HDV2 ごとに 200 セッション、NM-HD ごとに 48 セッションをサポートします。
(注) SIP トランク上で G.729 コーデックを使用する方法の詳細については、Session Initiation Protocol を参照してください。
このタイプはサービス プロバイダー環境においてネットワーク アドレス変換をサポートし、プライベート アドレスを隠すことができます。
Cisco Unified Communications Manager の管理ページでは、ゲートウェイのコマンドライン インターフェイス(CLI)で、存在する同じ MTP 名を入力するようにしてください。
Cisco Media Termination Point Software
1 つの MTP は、デフォルトで 48(ユーザ設定可能)の MTP リソースを提供します。この数は、ネットワークとネットワーク インターフェイス カード(NIC)の速度に応じて変わります。 たとえば、100 MB のネットワーク/NIC カードが 48 の MTP リソースをサポートできるのに対して、10 MB の NIC カードは同数のリソースをサポートできません。
10 MB のネットワーク/NIC カードの場合、約 24 の MTP リソースを提供できます。ただし、使用可能な MTP リソースの正確な数は、その PC 上の他のアプリケーションが消費しているリソース、プロセッサの速度、ネットワークの負荷、その他のさまざまな要因によって決まります。
ソフトウェア MTP の計画
プロビジョニングは、MTP リソースを展開する際に考慮する必要がある重要な点の 1 つです。 プロビジョニングでは、コールの負荷パターンとネットワーク トポロジの慎重な分析が必要となります。
MTP 設定を計画する際は、次の情報を考慮に入れてください。
設定が不適切の場合は、作業負荷が増えたときに期待するパフォーマンスが得られないことがあります。
1 つの MTP が、デフォルトで 48(ユーザ設定可能)の MTPストリームを提供し、2 つのストリームが 1 つのリソースを構成します。これは、MTP の両端(送信と受信)でそれぞれ 1 つのストリームが必要になるためです。 10 MB のネットワーク/NIC カードの場合、約 24 の MTP リソースを提供できます。ただし、使用可能な MTP リソースの正確な数は、その PC 上の他のアプリケーションが消費しているリソース、プロセッサの速度、ネットワークの負荷、その他のさまざまな要因によって決まります。
サーバが 48 の MTP ストリームを処理できると想定する場合(48 でなくても、システムがサポートする適正な MTP リソースの数を適用できます)、システムに必要な MTP のおおよその数を決定するには、次の式で検討してください。
n を 48 で割った値 = 必要な MTP アプリケーション数(n/48 = MTP アプリケーション数)
説明は、次のとおりです。
n は、H.323 および SIP コールに対する MTP サポートが必要なデバイスの数を表します。
余りが生じた場合は、MTP を設定した Cisco IP Voice Streaming Application サービスをもう 1 つ追加します。
1 つの H.323 または SIP エンドポイントが MTP を必要とする場合、1 つの MTP リソースが消費されます。 発信側と終端のデバイス タイプによっては、1 つのコールによって複数の MTP リソースが消費される場合があります。 コールに割り当てられた MTP リソースは、そのコールが終了すると解放されます。
MTP リソースの使用状況をモニタするには、サービスアビリティ リアルタイム監視ツール(RTMT)を使用します。 perfmon カウンタである Media TermPoints Out of Resources は、MTP リソースが要求されたときに、H.323 または SIP コールがそのリソースなしで接続するたびに増えます。 この数は、発信者に必要な MTP リソースの数や、リソースが十分にあるかどうかを判定するのに役立ちます。
同じシステム要件が、Cisco IP Voice Media Streaming Application、MTP リソース、および Cisco Unified Communications Manager システムに適用されます。
DTMF シグナリングのパフォーマンスを最適化するには、Cisco IOS リリース 12.4(11)T 以降を使用します。 この Cisco IOS リリースは、番号の RFC 2833 DTMF MTP パススルーをサポートしています。
コール失敗の回避
コール失敗またはユーザ アラートを防ぐには、次の状態を避けてください。
Cisco IP Voice Media Streaming Application サービスは Cisco Unified Communications Manager と同一 PC 上で動作できますが、同一 PC 上で実行しないように強く推奨します。 Cisco IP Voice Media Streaming Application が Cisco Unified Communications Manager と同一 PC 上で動作していると、 Cisco Unified Communications Manager のパフォーマンスに悪影響を与えることがあります。
MTP の設定時に、変更を有効にするには MTP をリセットするように求められます。 MTP をリセットしても、MTP リソースに接続されているコールの接続は解除されません。 [リセット(Reset)] を選択した場合、MTP にアクティブなコールがなくなるとすぐに、変更が有効になります。
(注)
MTP の設定を更新した後で、[リスタート(Restart)] を選択すると、MTP に接続されているコールがすべて終了されます。
MTP のシステム要件と制限事項
ソフトウェア MTP デバイスに適用されるシステム要件と制限事項は、次のとおりです。
1 台のサーバでアクティブにできる Cisco IP Voice Streaming Application は 1 つに限定されます。 追加の MTP リソースを提供するには、ネットワーク上にある他のサーバで Cisco IP Voice Streaming アプリケーションをアクティブにすることができます。
各 MTP が一度に登録できる Cisco Unified Communications Manager は 1 つに限定されます。 システム内には、設定内容に応じて、複数の MTP を存在させることができます。各 MTP は、1 つの Cisco Unified Communications Manager に登録できます。
Cisco Unified Communications Manager のパフォーマンスに悪影響を与える可能性があるため、コール処理の負荷が大きい Cisco Unified Communications Manager 上では Cisco IP Voice Streaming Media Application をアクティブにしないようにすることを強くお勧めします。
MTP のフェールオーバーとフォールバック
アクティブな Cisco Unified Communications Manager が非アクティブになった場合
次に、MTP が登録されている Cisco Unified Communications Manager が非アクティブになったときの、MTP デバイスの回復方法について説明します。
プライマリ Cisco Unified Communications Manager に障害が発生した場合、MTP は、MTP が属するデバイス プールに対して指定された Cisco Unified Communications Manager グループ内で、次に使用可能な Cisco Unified Communications Manager への登録を試みます。
プライマリ Cisco Unified Communications Manager が障害後に使用可能な状態に戻り、現在まだ使用されていない場合、MTP デバイスはただちにプライマリ Cisco Unified Communications Manager に再登録されます。
コール保存モードでアクティブだったコールまたは会議は、すべてのパーティが切断されるまで、システムによって保持されます。 システムは、補足サービスを使用可能にしません。
MTP が新しい Cisco Unified Communications Manager への登録を試み、登録確認応答を受信しなかった場合、MTP は次の Cisco Unified Communications Manager に登録されます。
依存関係レコード
特定のメディア ターミネーション ポイントがどのメディア リソース グループを使用しているかを見つけるには、 Cisco Unified Communications Manager の管理ページの [メディアターミネーションポイントの設定(Media Termination Point Configuration)] ウィンドウで、ドロップダウン リスト ボックスから [依存関係レコード(Dependency Records)] を選択し、[移動(Go)] をクリックします。 [依存関係レコード要約(Dependency Records Summary)] ウィンドウに、メディア ターミネーション ポイントを使用しているメディア リソース グループに関する情報が表示されます。 メディア リソース グループに関するより詳細な情報を見つけるには、メディア リソース グループをクリックして [依存関係レコード詳細(Dependency Records Detail)] ウィンドウを表示します。 依存関係レコードがシステムで使用できない場合は、[依存関係レコード要約(Dependency Records Summary)] ウィンドウにメッセージが表示されます。
ソフトウェア MTP のパフォーマンス モニタリングおよびトラブルシューティング
メディア ターミネーション ポイントの Real-Time Monitoring Tool カウンタを使用すると、現在使用中のメディア ターミネーション ポイント数、現在 Cisco Unified Communications Manager に登録されているが現時点で使用されていないメディア ターミネーション ポイント数、メディア ターミネーション ポイントがコールに対して要求されたが使用できるリソースがなかった回数をモニタすることができます。
Cisco Unified Communications Manager は、メディア ターミネーション ポイントに関するすべてのエラーを Local SysLog に書き込みます。 Cisco Unified Serviceability では、Cisco IP Voice Media Streaming Application サービスのトレースを設定できます。多くの問題のトラブルシューティングを行うには、サービスの [Error] オプションではなく、[Significant] または [Detailed] オプションを選択する必要があります。 問題をトラブルシューティングした後、[デバッグトレースレベル(Debug Trace Level)] を [Error] オプションに戻します。
Cisco Unified Communications Manager は、 Cisco Unified Serviceability でメディア ターミネーション ポイントの登録および接続アラームを生成します。
テクニカル サポートが必要な場合は、Cisco Unified Communications のパートナーや Cisco Technical Assistance Center(TAC)に連絡する前に、ソフトウェア MTP ログを検索して確認してください。
ソフトウェア MTP ログにアクセスするには、次の CLI コマンドを使用します。
file list activelog cm/trace/cms/sdi/*.txt
file get activelog cm/trace/cms/sdi/*.txt
file view activelog cm/trace/cms/sdi/cms00000000.txt
file tail activelog cm/trace/cms/sdi/cms00000000.txt