内容

概要

このドキュメントでは、VIC-2BRI-NT/TE カードと VIC-2BRI-S/T カードを ISDN ネットワーク デバイスとして接続する際に必要な設定とケーブル配線について詳しく説明します。

注:VIC2-2BRI-NT/TEと呼ばれる新世代の音声インターフェイスカード(VIC)があります。これは、同様の機能を持つ古いカードのハードウェアリフレッシュです。「ISDN BRI 音声インターフェイス カードについて」では、VIC-2BRI-NT/TE と VIC2-2BRI-NT/TE が比較されています。

前提条件

要件

このドキュメントに特有の要件はありません。

使用するコンポーネント

このドキュメントの情報は、次のソフトウェアとハードウェアのバージョンに基づいています。

このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。

表記法

ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。

背景説明

ISDN BRI ボイスポートが他のタイプのアナログボイスポートよりも優れている点は、ISDN 信号方式により、エンドツーエンドのコール情報が提供されることです。このコール情報には、送信先および送信元番号、番号タイプ、コール経過ステータス、コール クリア原因コードなどの詳細が含まれます。また、ボイスがデジタル Pulse Code Modulation(PCM; パルス符号変調)ストリームとして送信されるため、ボイスレベルや減衰を原因とする問題が少なくなります。

従来の IOS ルータ/ゲートウェイでは、VIC-2BRI-S/T カードによって長い間 ISDN BRI ボイスポートがサポートされていました。このため、ルータを ISDN 端末装置として既存の ISDN ボイスネットワークへのインターフェイスにすることが可能でした。リリース 12.1.(3)X 以降、シスコでは ISDN ネットワークのエミュレーションを提供しており、新しい VIC-2BRI-NT/TE カードによって擬似出力の生成がサポートされています。

VIC-2BRI-NT/TE カードは VIC-2BRI-S/T と同じ方式で端末(またはユーザ)側装置として通常の ISDN 基本速度サービスへのインターフェイスとなります。このカードも VIC-2BRI-S/T と同様に、レイヤ 1、2、および 3 のネットワーク側装置として動作するソフトウェア設定可能オプションを使用できます。この機能により、ボタン電話システム、小規模 PBX、ISDN ハンドセットなどの既存の ISDN 端末装置を Voice over IP(VoIP)ネットワークに統合できます。

擬似回線出力(出力ソース 1)を提供するように VIC-2BRI-NT/TE カードを設定すると、カード自体と ISDN 端末装置との間に物理層接続を確立できます。リンクが確立されると、ルータで ISDN ボイスコールを発信または終端でき、VoIP コールとしてリモートの場所に送信できます。

VIC-2BRI-NT/TE カードおよび VIC-2BRI-S/T カードの物理的ピン配置は、各カードが外部 NT1 装置を通じて直接 ISDN ネットワークに接続するように設計されています。この場合、BRI ポート RJ45 ソケットと ISDN NT1 とのケーブル接続はストレート型(1 対 1)カテゴリ 5 ケーブルです。

ネットワーク モードで動作する BRI ポートを ISDN 端末装置に接続するときは、2 台の装置間で送受信信号ペアを接続するために BRI クロスケーブルが必要です。適切な RJ45 ISDN BRI クロスケーブルのピン配置を次に示します。

bri_voice_port_cfg_fig1.gif

設定

このセクションでは、このドキュメントで説明する機能を設定するために必要な情報を提供しています。

VIC-2BRI-NT/TE カードおよび VIC-2BRI-S/T カードの設定

ネットワーク側 ISDN として動作し、ライン パワーが有効な VIC-2BRI-NT/TE の基本設定を次に示します。

!
interface BRI 1/0
 no ip address
 isdn switch-type basic-net3
 
!--- Local ISDN switch type
  
 isdn protocol-emulate network
 
!--- Layer 2/3 network operation
  
 isdn layer1-emulate network
 
!--- Act as ISDN NT1 device

 isdn incoming-voice voice

 !--- Accept ISDN voice calls

 line-power				

 !--- Generate line power, only possible on VIC-2VRI-NT/TE

!

注意事項

!
Voice-port 1/0
 description - network side BRI port to key system 
 cptone AU

 !--- Select appropriate call progress tones
 
 compand-type a-law

 !--- Use a-law companding for voice calls
  
!

ネットワーク図

このドキュメントでは、次のネットワーク セットアップを使用します。

bri_voice_port_cfg_net.gif

設定

このドキュメントでは、次の設定を使用しています。

2610 ルータ
2610#show run
Building configuration...

Current configuration : 1232 bytes                                             
!
version 12.2
service timestamps debug datetime msec localtime
service timestamps log uptime
no service password-encryption
!
hostname 2610
!
ip subnet-zero
!
isdn switch-type basic-net3
call rsvp-sync
voice rtp send-recv
!
interface FastEthernet0/0
 ip address 192.168.1.1 255.255.255.0
 duplex auto
 speed auto
!
interface BRI1/0
 no ip address
 isdn switch-type basic-net3
 isdn protocol-emulate network
 isdn layer1-emulate network
 isdn incoming-voice voice
 isdn skipsend-idverify
 line-power
!
interface BRI1/1
 no ip address
 isdn switch-type basic-net3
 isdn protocol-emulate network
 isdn layer1-emulate network
 isdn skipsend-idverify
 line-power
!         
ip classless
ip http server
ip pim bidir-enable
!
voice-port 1/0/0
 compand-type a-law
 cptone AU
!
voice-port 1/0/1
 compand-type a-law
 cptone AU
!
dial-peer cor custom
!
dial-peer voice 1 pots
 incoming called-number .
 direct-inward-dial
 port 1/0/0
!         
dial-peer voice 2 pots
 incoming called-number .
 direct-inward-dial
 port 1/0/1
!
dial-peer voice 100 voip
 destination-pattern 8.......
 session target ipv4:192.168.1.10
 dtmf-relay h245-alphanumeric
 codec g723r63
 ip precedence 5
!
dial-peer voice 1000 pots
 destination-pattern 0
 port 1/0/0
!
dial-peer voice 1001 pots
 destination-pattern 0
 port 1/0/1
!
line con 0
line aux 0
line vty 0 4
!
no scheduler allocate
end

確認

ここでは、設定が正しく機能していることを確認するために使用する情報を示します。

一部の show コマンドが Output Interpreter Tool(登録ユーザ専用)によってサポートされており、これによって show コマンドの出力の分析を表示できます。

show isdn status コマンドの出力例を次に示します。

2610#show isdn status 
Global ISDN Switchtype = basic-net3
ISDN BRI1/0 interface
        ******* Network side configuration *******
        
!--- Network side
 
        dsl 0, interface ISDN Switchtype = basic-net3
    Layer 1 Status:
        ACTIVE
    Layer 2 Status:
        TEI = 64, Ces = 1, SAPI = 0, State = MULTIPLE_FRAME_ESTABLISHED
    Layer 3 Status:
        0 Active Layer 3 Call(s)
    Active dsl 0 CCBs = 0
    The Free Channel Mask:  0x80000003
    Number of L2 Discards = 0, L2 Session ID = 5
ISDN BRI1/1 interface
        ******* Network side configuration *******
        
!--- Network side

        dsl 1, interface ISDN Switchtype = basic-net3
    Layer 1 Status:
        DEACTIVATED
    Layer 2 Status:
        Layer 2 NOT Activated
    Layer 3 Status:
        0 Active Layer 3 Call(s)
    Active dsl 1 CCBs = 0
    The Free Channel Mask:  0x80000003
    Number of L2 Discards = 0, L2 Session ID = 0
    Total Allocated ISDN CCBs = 0

注:NTからのケーブルを取り外しても、NTレイヤ1はアクティブ状態のままです。これはI.430標準セクション5.18に従います。NTが電力とクロックを提供する場合、常にアップ状態になります。

この例では、2 つの BRI ポートがネットワーク側動作用に設定されています。ポート 1/0 はアクティブであり、TEI は 64 で、リンク上にコールはありません。ポート 1/1 はアクティブにされていません。

トラブルシュート

ここでは、設定のトラブルシューティングに使用できる情報を示します。

VIC-2BRI-NT/TE カードおよび VIC-2BRI-S/T カードのトラブルシューティング

ISDN BRI ボイスインターフェイス カードでは、標準的な ISDN トラブルシューティング テクニックを使用します。Q921(レイヤ 2)および Q931(レイヤ 3)の ISDN デバッグはリンクやネットワークの問題を特定する際に非常に役立ちます。次のデバッグは、ISDN コールがルータに着信し、接続した後、通常どおりにクリアダウンする様子を示しています。次のような有益な情報が得られます。

Calling number	: 55551000
Called number 	: 84487633

コールはゲートウェイ ルータの BRI ポート 1/0 に、1:50:33.397(タイムスタンプは時/分/秒/ミリ秒に書式設定されています)に着信しました。 送信元番号は 55551000、送信先番号は 84487633 でした。コールは 1:51:01.561 に接続され、1:51:13.345 に接続解除されました。通話時間は約 12 秒です。debug isdn q931 コマンドからの出力例を次に示します。

2610#
*Mar  2 01:50:53.397: ISDN BR1/0: RX <- SETUP pd = 8  callref = 0x09
*Mar  2 01:50:53.397:         Bearer Capability i = 0x8090A3
*Mar  2 01:50:53.401:         Channel ID i = 0x83
*Mar  2 01:50:53.401:         Progress Ind i = 0x8183 - Origination address 
      is non-ISDN 
*Mar  2 01:50:53.405:         Calling Party Number i = 0x00, 0x80, '55510000', 
      Plan:Unknown, Type:Unknown
*Mar  2 01:50:53.409:         Called Party Number i = 0x81, '84487633', 
      Plan:ISDN, Type:Unknown
*Mar  2 01:50:53.417: ISDN BR1/0: Event: Received a VOICE call from 55510000 
      on B1 at 64 Kb/s
*Mar  2 01:50:53.417: ISDN BR1/0: Event: Accepting the call id 0xC
*Mar  2 01:50:53.437: ISDN BR1/0: TX -> CALL_PROC pd = 8  callref = 0x89
*Mar  2 01:50:53.437:         Channel ID i = 0x89
*Mar  2 01:50:54.085: ISDN BR1/0: TX -> ALERTING pd = 8  callref = 0x89
*Mar  2 01:51:01.561: ISDN BR1/0: TX -> CONNECT pd = 8  callref = 0x89
*Mar  2 01:51:01.561:         Channel ID i = 0x89
*Mar  2 01:51:01.589: ISDN BR1/0: RX <- CONNECT_ACK pd = 8  callref = 0x09
*Mar  2 01:51:13.345: ISDN BR1/0: RX <- DISCONNECT pd = 8  callref = 0x09
*Mar  2 01:51:13.349:         Cause i = 0x8090 - Normal call clearing
*Mar  2 01:51:13.357: ISDN BR1/0: TX -> RELEASE pd = 8  callref = 0x89
*Mar  2 01:51:13.361:         Cause i = 0x8090 - Normal call clearing
*Mar  2 01:51:13.393: ISDN BR1/0: RX <- RELEASE_COMP pd = 8  callref = 0x09

参考リンク

これらの URL で、ISDN のトラブルシューティングの詳細情報を参照できます。

注:debug コマンドを使用する前に、「debug コマンドに関する重要な情報」を参照してください。

関連情報