Cisco Analog Telephone Adaptor(ATA)186 はファックス伝送をパススルーとしてのみサポートします。ファックス リレーはサポートできません。ATA は両ポートとも FAX コールをサポートしています。FAX コールが正しく動作するために、Cisco ATA 186 とサポートするゲートウェイを正しく設定する必要があります。シスコのゲートウェイ上でファックス リレーはデフォルトでオンになっています。ATA とゲートウェイ間で FAX コールが動作するために、ゲートウェイ上でファックス リレーを無効にする必要があります。
Cisco ATA 186 は次の 2 つのいずれかの方法でファックスを送信します。
ファックス検出メソッドまたは
受信(Rx)および送信(Tx)コーデック
ファックス検出モードでは、LBRCを使用してCisco ATA 186を設定できます。RxおよびTxコーデックモードは、ファックストーンを検出するまで、音声コールのコーデックをネゴシエートします。ファックス トーンを検出すると、次を実行します。
ファックス トーン検出をオフにする。
サイレンス サプレッションをオフにする。
G.711 u-law または G.711 A-law にコーデックを再ネゴシエートする。
注:ファクトーンは、ATAによって終了されたコールに対してのみ検出できます。ATA が発信するコールに関しては、ファックスの検出とコーデックの再ネゴシエーションはサポートするゲートウェイにより開始する必要があります。G.711 ファックス モードでは、Cisco ATA 186 は介入なしにエンド FAX 装置間で送信される Real-Time Transport Protocol (RTP) パケットを通過します。ATA 186 は通常の音声コールのようにファックス セッションを処理します。
注:ファクスの伝送速度は最大9600 bpsまでサポートされます。ファックス転送速度の詳細については、ATA 186 上でのファックス パススルー制限を参照してください。ATA 186 I1/I2 は最大 14.4 kbps までのファックス レートをサポートできます。
注:アナログモデムコールではATA 186はサポートされていません。ドキュメント全体で参照されるモデムはファックス モデムを意味します。
注:Cisco CallManager Express(CME)に接続されたATAのファックスパススルーは、現在、H.323プロトコルでのみサポートされています。
この設定を開始する前に、上記の要件が満たされていることを確認してください。
H.323 を使用する Cisco ATA 186 バージョン 2.0 以降
Cisco ATA 186 には IP 接続が必要であり、Web サーバ経由でアクセスできなければなりません。
基本設定については、ATA 基本設定を参照してください。
このドキュメントの情報は、次のソフトウェアとハードウェアのバージョンに基づいています。
Cisco ATA 186 I1/I2 バージョン 2.12
ファックス モード設定例のゲートウェイとして、Cisco IOS® ソフトウェア リリース 12.1 の Cisco 3640 ゲートウェイ
ファックス検出メソッド設定例のゲートウェイとして、Cisco IOS® ソフトウェア リリース 12.1 の Cisco 5300 ゲートウェイ
このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にあるデバイスに基づいて作成されました。このドキュメントで使用するすべてのデバイスは、初期(デフォルト)設定の状態から起動しています。対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのようなコマンドについても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。
このドキュメントでは、次のネットワーク設定を使用します。
ドキュメント表記の詳細については、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。
Web インターフェイスを使用して Cisco ATA 186 を設定するために、Web ブラウザを使用して http://<ip_address_of_ata>/dev(たとえば、http://172.16.104.117/dev)にアクセスします。
Cisco ATA 186 を設定するには、次のパラメータを設定する必要があります。
音声モード
bit 2 (18)=0 Enable detection of FAX CED (answer) tone and switch to FAX mode for the rest of the call if the tone is detected
接続モード
bit 7=0/1 to disable/enable fax redundancy !--- This must be set based on the !--- configuration of the gateway. 0=disable fax redundancy; 1=enable fax redundancy bit 8-12=the offset to NSE payload type number 96. The legal values are between 0 to 23 correspond to dynamic payload types 96 to 119. When using the ATA 186 for fax with the Cisco Gateway leave this value at default value which is 4 bit 13=0/1 to negotiate G711 u/a law as the new codec to be negotiated !--- This must be set based on the !--- configuration of the gateway. 0=G711ulaw; 1=G711alaw bit 14=0 Enable Modem Pass Through bit 15=0 Enable Modem Pass Through Dectection
CallFeatures と PaidFeatures
bit 15 (31)=1 Fax Permitted
Rx/Tx および LBRC のコーデック値を設定し、必要に応じて音声コールの音声アクティビティ検出(VAD)[ビット 0(16) = 音声モードの 1/0 ] を有効または無効にします。
G.723.1-codec ID 0; G.711a-codec ID 1; G.711u-codec ID 2; G.729a-codec ID 3 LBRC is 0-G.723.1 codec is available to both FXS ports at any time LBRC is 3-G.729a is available to one of the two FXS ports on a first-come-first-served basis
Cisco IOS ゲートウェイ上でファックス検出メソッドを設定するには、この例に示されているように、モデムのパススルーをサポートする必要があります。
dial-peer voice tag voip modem passthrough { NSE [payload-type number] codec {g711ulaw | g711alaw} [redundancy] | system} fax rate disable
ファックス検出例
これは、音声コールの G.729 コーデックと FAX コールの G.711 u-law を使用するファックス検出メソッドの場合の ATA 設定例です。
オーディオモード:0xXXX5XXX5
接続モード:0xXXXX04XX
Rx コーデック:3
Tx コーデック:3
LBR コーデック:3
これは、Cisco 5300 ゲートウェイの show running-config コマンド出力です。
5300-gw#show running-config Building configuration... . . . ! voice service voip modem passthrough nse codec g711ulaw ! . . dial-peer voice 1 pots destination-pattern 2T port 1:0 ! dial-peer voice 3 voip incoming called-number 2T destination-pattern 300. session target ipv4:172.16.85.233 modem passthrough nse codec g711ulaw fax rate disable.
Web インターフェイスを使用して Cisco ATA 186 を設定するために、Web ブラウザを使用して http://<ip_address_of_ata>/dev(たとえば、http://172.16.104.117/dev)にアクセスします。
Cisco ATA 186 を設定するには、次のパラメータを設定する必要があります。
音声モード
bit 0 (16)=0 Disable VAD bit 1 (17)=1 Use G711 Codec Only
A-law と u-law それぞれの Rx/Tx コーデック 1/2
接続モード
bit 14=0 Enable modem passthrough bit 15=1 Disable modem passthrough detection
CallFeatures と PaidFeatures
bit 15 (31)=1 Fax Permitted
注:Cisco IOS音声アプリケーションソフトウェアゲートウェイは、ATAが設定されているのと同じコーデックとVADを使用して設定する必要があります。このシナリオでは、すべてのコール、ファックス、または音声は VAD なしの G.711 を使用します。ゲートウェイ上でダイヤルピアを設定するには、Cisco IOS プラットフォームにおけるダイヤルピアとコール レッグの理解とダイヤル プラン、ダイヤル ピア、およびディジット操作の設定を参照してください。すべての Cisco IOS ゲートウェイは、ファックス モードで使用できます。この例では、Cisco 3640 ゲートウェイが使用されることを示します。
ファックス モード メソッドの例
これは、ファックスと音声コールの両方にファックス モード メソッドと G.711 u-law を併用する場合の Cisco ATA 186 とゲートウェイのサンプル設定です。
Audio Mode:0xXXX2XXX2(この設定ではXは考慮されません)
Connect Mode:0xXXXX8XXX(この設定ではXは考慮されません)
Rx コーデック:1
Tx コーデック:1
LBR コーデック:1
これは、Cisco 3640 ゲートウェイの show running-config コマンド出力です。
3640-gw#show running-config Building configuration... . . . dial-peer voice 11 voip incoming called-number 5000 destination-pattern 3000 session target ipv4:172.16.85.233 codec g711ulaw no vad ! dial-peer voice 5000 pots destination-pattern 5000 port 3/1/0 . .
現在、この設定に使用できる確認手順はありません。
ここでは、設定のトラブルシューティングに使用できる情報を示します。
エンドツーエンド Voice over IP (VoIP) 発信をデバッグするために、debug voip ccapi inout コマンドを使用します。音声ポートが受信するとおりに番号を表示するために、debug vtsp dsp コマンドを使用します。
サードパーティのゲートキーパーとゲートウェイを使用する場合は、Cisco ATA 186 のトラブルシューティング ツールが役立つかもしれません。Cisco ATA 186 のトラブルシューティング ツールを有効にするには、次の手順を実行します。
ATA Nprintf フィールドの Cisco ATA 186 と同じサブネット上にある PC の IP アドレスを設定します。
アドレスの後に指定されたポートは 9001 である必要があります。
PC の DOS プロンプトで preserv.exe プログラムを実行します。
preserv.exeプログラムは、Cisco Downloads(登録ユーザ専用)からダウンロードします。 [Downloads]ページで[Voice Software]リンクをクリックし、Cisco ATA 186 Analog Telephone Adaptorリンクにアクセスします。
注:preserv.exeプログラムは、最新のCisco ATA 186ソフトウェアリリースのzipファイルに含まれています。
ATA はエンドポイントとして設計されているため、ダイヤルイン(DID)機能を備えていません。特定のネットワーク シナリオにおいて DID 情報をデュアルトーン多重周波数(DTMF)としてファックスサーバに渡すために、ATA の代わりに H.323 IOS ゲートウェイを使用する必要があります。
ATA 経由でファックスを送信するときに不良回線状態エラーまたはビジー信号を受信する場合は、FAX 装置の ECM(エラー訂正モード)を無効にし、ファックスの再送信を試してみてください。ECM 設定は、ほとんどの FAX 装置で設定できます。この設定をオンにすると、FAX 装置が送受信に非常に敏感になります。
ATA 186でSuper G3 Faxを使用すると、ファックス操作が失敗します。G3はT.30の標準であり、実際にはV.34を使用できます。音声ゲートウェイによってモデムコール(位相反転を含む2100Hz)として認識されます。 Super G3 FAX 装置は 33.6 kbps の速度(モデム速度)をサポートします。これらほとんどの FAX 装置はデュアル モデムを使用してファックスを送受信します。Cisco ATA はアナログ電話と G3 ファックス伝送(最大 14400 bps)をサポートするように設計されました。 Cisco ATA はモデムをサポートするように設計されませんでした。つまり、Super G3 ファックスは 33.6 kbps を使用して発信を確立するため、Cisco ATA との併用はサポートされませんでした。ファックスについては、ルータまたは VGXXX のいずれかの FXS ポートを推奨します。
回避策として、これらのパラメータの変更を試すことができます。
ファックスの速度を 9600 bps(問題がない場合の推奨速度)に変更します。
G3 にプロトコルを設定します。
エラー訂正モード(ECM)を無効にします。
上記のアクションに効果がない場合は、ルータの Foreign Exchange Station(FXS)ポートに FAX 装置を差し込み、モデムのパススルー用にルータを設定します。
注:これらの回避策のいずれも成功しない場合は、別のファックス機器を使用する必要があります。
シナリオによっては、最初に FAX 装置に着信者番号を入力し、CMC トーンを待ってから CMC 番号を入力すると、ATA は Cisco CallManager に CMC 番号を渡さないことがあります。この問題の回避策は、すべての番号を一括送信することです(着信者番号、ポーズ、および CMC コード)。コードは、Cisco CallManager を使用すると問題なく登録され、発信をルーティングします。
アウトプット インタープリタ ツール(登録ユーザ専用)(OIT)は、特定の show コマンドをサポートします。OIT を使用して、show コマンドの出力の分析を表示します。
注:debug コマンドを使用する前に、『debug コマンドの重要な情報』を参照してください。
これらのコマンド出力例は、Cisco ATA 186 とゲートウェイ間で行われる FAX コールの両方のメソッドのデバッグの例です。
この debug コマンド出力は、ファックス検出メソッドにおける Cisco ATA 186 から AS5300 に送信される FAX コールを示します。
!--- Call that is made to 22151 from the ATA. Calling 22151 SCC->(0 0) <cmd 16>CLIP SCC->(0 0) <cmd 2><0 0> dial<32151> block queue <- (18 1318384 0) Connect to <0xac100d18 1720>.. >>>>>>>> TX CALLER ID : 0x1 0x80 6 !--- Setup Sen to the 5300. Q931<-0:Setup:CRV 30970 !--- Call proceeding received from the 5300. Q931->0:Proceeding Connect H245... block queue <- (19 1318384 555258) NuConnectDispatcher: 0x78fa H245 TCP conn ac100d18 11076 CESE/MSDSE start:<0 0 0 0> capSize = 3 H245->0:Cese RemoteInputCap <15 5> RemoteInputCap <15 4> RemoteInputCap <15 1> RemoteAudioCap <4 11> MODE FRAME : 11 2 RemoteAudioCap <4 10> Capability set accepted H245->0:MSD: <rn tt> = <0x1274 60> H245->0:CeseAck H245->0:MsdAck h323.c 1826: cstate : 3 ->H245<0> OLC H245<-0:LcseOpen !--- Codec negotiated is G729A as configured. set TX audio to G729A 2 fpp SetG723Mode: 2 0 H245->0:LcseOpen H245->0:OLC mode 10 remote OpenLogicalReq G711/G729(10) : 2 fpp OpenRtpRxPort(0,0x0,16384):1 RTP Rx Init: 0, 0 RTP->0:<0xab4555e9 16384> H245->0:LcseOpenAck RTP<-0:<0xac100d18 19066> [0]Enable encoder 18 RTP TX[0]:SSRC_ID = 5e875050 RTP Tx Init: 0, 0 [0]Received pi=8 in q931 !--- Call alerting. Q931->0:Alerting [0]DPKT 1st: 3570916113 3570915873, pt 18 Enable LEC adapt [0]=1 H323Dispatcher : 3 3 !--- Call connected. Q931->0:Connect SCC:ev=12[0:0] 3 0 0:30;3,0,0,0, !--- Fax modem tone detected by the 5300 and !--- so it sent an NSE packet. [0]Rx MTP NSE pkt c0000000 [0]MPT mode 1 SCC:ev=23[0:0] 4 0 !--- Codec renegotiated to G711ulaw and !--- modem passthrough mode active on the ATA. [0:0]Mdm PassThru [0]codec: 18 => 8 [0]Rx MTP NSE pkt c1000000 [0]Rx MTP NSE pkt c1000000 [0]Rx MTP NSE pkt c1000000 1:00;2,0,0,0, 1:30;2,0,0,0, !--- Call complete. Q931->0:ReleaseComplete: reason 16, tone = 13 H245<-0:EndSessionCmd 1 0: Close RTPRX [0:0]Rel LBRC Res Q931<-*:ReleaseComplete
これは、ファックス モード メソッドで 3640 から Cisco ATA 186 が受信する FAX コールの debug コマンド出力です。
!--- Call received with DNIS 3000. Q931->*:SetUp:CR = 45 called number : 3000 SetUp routed to 0 Remote alias = 5300-gw >> callingpartynumber info: 0x0 0x83 5 !--- Call proceeding sent. Q931<-0:Proceeding SCC:ev=21[0:0] 0 0 SCC<-Alerting <5300-gw 208> SCC:ev=5[0:0] 13 0 !--- Ringing the phone on the voice port. [0:0]RINGING SCC->(0 0) <cmd 3> CESE/MSDSE start:<0 0 0 0> capSize = 2 !--- Sent call alerting. Q931<-0:Alerting H245->0:Cese RemoteInputCap <15 5> RemoteInputCap <15 4> RemoteInputCap <15 1> RemoteAudioCap <4 3> MODE FRAME : 3 20 Capability set accepted H245->0:MSD: <rn tt> = <0x17d 60> H245->0:CeseAckH245->0:MsdAck h323.c 1826: cstate : 4 ->H245<0> OLC H245<-0:LcseOpen set TX audio to G711 (3) 20 fpp !--- Codec negotiated is G.711 with VAD disabled. G.711 Silence Suppression off H245->0:LcseOpen H245->0:OLC mode 3 remote OpenLogicalReq G711/G729(3) : 20 fpp OpenRtpRxPort(0,0x0,16384):1 RTP Rx Init: 0, 0 RTP->0:<0xab4555e9 16384> H245->0:LcseOpenAck RTP<-0:<0xac100d18 18526> [0]Enable encoder 0 RTP TX[0]:SSRC_ID = 71d26005 RTP Tx Init: 0, 0 SCC->(0 0) <cmd 4> !--- Call connected. Q931<-0:Connect Enable LEC adapt [0]=1 SCC:ev=12[0:0] 6 0 [0]DPKT 1st: 3570916113 3570915873, pt 0 0:30;3,0,0,0, 1:00;3,0,0,0, SCC->(0 0) <cmd 11> !--- Call complete. H245<-0:EndSessionCmd 1 0: Close RTPRX Q931<-*:ReleaseComplete