目次

はじめに

この文書では、Cisco IOS(R) ソフトウェアのスケジューラ関連のエラー メッセージと、そのトラブルシューティング方法について説明しています。 これらのメッセージは特定のプラットフォームに関連するものではありません。 Cisco IOS ソフトウェアをサポートしているどのプラットフォームでも表示される可能性があります。

このドキュメントで取り上げるメッセージは次のものです。

出会えば「SCHED に…」 このページで説明されないエラーメッセージはこのページの上で、Cisco を知らせるために feedback 形式を使用します。

前提条件

要件

このドキュメントに関しては個別の要件はありません。

使用するコンポーネント

このドキュメントは、特定のソフトウェアやハードウェアのバージョンに限定されるものではありません。

表記法

ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。

背景説明

Cisco IOS ソフトウェア スケジューラは Cisco IOS ソフトウェア カーネルの一部で、各プロセスの状態を表す一連のプロセス キューを使用して、システム内のすべてのプロセスを管理します。 それぞれのキューは、その状態にあるプロセスのコンテキスト情報を保持しています。 プロセスの状態が移行するのは、スケジューラによってプロセスのコンテキストがあるプロセス キューから別のプロセス キューに移されたときです。 プロセス キューには次のようなものがあります。

トラブルシューティング

SCHED-3-STUCKMTMR

ルータで各種のイベントが発生したときにプロセスに通知を渡すため、プロセスをイベントに登録することができます。 このメッセージは、プロセスが 2 回連続して実行された後に、登録されたタイマーが時間切れになり、タイマーの値が変更されない場合に表示されます。 これは常に、ソフトウェア関連の表面的な問題です。

このような問題が発生すると、コンソール上に次のようなメッセージが表示されます。

%SCHED-3-STUCKMTMR: Sleep with expired managed timer 1C7410, 
time 0x1063F9C52 (00:00:00 ago).
-Process= "IP SNMP", ipl= 6, pid= 44
-Traceback= 31BC79A 31BC9C0 323E130

これらのトレースバックの原因を絞り込むためには、このエラー メッセージがどのプロセスから出力されたかという情報が役立ちます。 次に、これらのメッセージが表示される、一般的な理由を示します。

このメッセージは、上記のプロセス以外でも出力される場合があります。 これは常に表面的なメッセージのため、Cisco IOS ソフトウェアのアップグレードは必要ありません。 Cisco IOS ソフトウェア リリース群の最新リリースを使用していることを確認してください。 登録ユーザ向けの Cisco.com で入手した最新版の Cisco IOS ソフトウェア リリースでもメッセージが表示される場合は、シスコ テクニカルサポートに連絡して、サービスリクエストをオープンしてください。 この際に、エラー メッセージが記録された完全な show log と、問題が発生したルータやスイッチ show tech を提出してください。

SCHED-3-THRASHING

このメッセージは、指定されたプロセスが 50 回連続して制御を解放してもまだ未処理のイベントが残っていることを示しています。

このような問題が発生すると、コンソール上に次のようなメッセージが表示されます。

%SCHED-3-THRASHING: Process thrashing on watched queue 
'ARP queue' (count 54).
-Process= "ARP Input", ipl= 5, pid= 6
-Traceback= 6020589C 60205BC4 60236520 601F4FD8 601F4FC4

これらのスラッシング チェックは、何らかの理由によってプロセスがそのジョブを実行しない状態になっているかかどうかを判断するために行われます。 監視対象キューでのスラッシング チェック(シグナルを送っている厄介なメッセージ)では、そのキューにある要素の数がチェックされます。 一定回数スケジューリングで、この数が変わらない場合は、メッセージが出力されます。

キューによっては、長さが制限されています。 ルータがきわめてビジーになると、常にキューがいっぱいの状態になります。 その結果、スケジューラのスラッシング コードは混乱し、これらのキューはまだ処理されていないと判断します。 スラッシング コードは、このキューを処理するはずのプロセスがジョブを実行していないと判断し、スラッシング メッセージを出力します。

最近の Cisco IOS ソフトウェア コードでは、このようなスケジューラの動作は変更されています。 現在のスケジューラでは、キューが変更されているか追跡するために(プロセスがスラッシングしているかどうかをより正確に判断できます)、キューからアイテムが削除されると必ず記録し、一定時間何も削除されない場合にだけスラッシング メッセージを出力するようになっています。

多くの場合、キューのスラッシング メッセージは表面的なものです。

これらのメッセージの原因が必ずしもソフトウェアの不具合にあるとは限りません。 ルータの瞬間的、または継続的な要求に対して発生する場合があります。 メッセージの回数が増えたり、常に表示される場合は、トラフィックの負荷を見直す必要がある可能性があります。

これらのコードの変更は Cisco Bug ID CSCdj68470登録ユーザ専用)で報告されています。

SCHED-3-UNEXPECTEDEVENT

このメッセージは、プロセスが処理方法が不明なイベントを受け取ると表示されます。 次に、例を示します。

%SCHED-3-UNEXPECTEDEVENT: Process received unknown event (maj 10, min 0).
-Process= "IP SNMP", ipl= 0, pid= 23
-Traceback= 602842B8 6017CFB8 6017CFA4

この問題には、次のような原因が考えられます。

これらのメッセージの原因は常にソフトウェアの不具合にあります。 どのプロセスでイベントの処理方法が不明になっているかによって、現れる Cisco IOS ソフトウェアの不具合も異なります。

プロセスが Exec または Virtual Exec である場合は、次の問題が発生する可能性が高くなります。

%SCHED-3-UNEXPECTEDEVENT: Process received unknown event (maj 80, min 0).
-Process= "Exec", ipl= 0, pid= 20
-Traceback= 604A0D68 6049B400 6049C974 601B2F5C 601B338C 601CC384 601CC9E0 601F5628 
602383EC 602383D8

or

%SCHED-3-UNEXPECTEDEVENT: Process received unknown event (maj 80, min 0).
-Process= "Virtual Exec", ipl= 0, pid= 2
-Traceback= 60479FA0 60474638 60476474 601B0E20 601B0A38 601E5088 601E5B08 601F0A54 
60231324 60231310

このエラー メッセージの原因は、以前の一部のバージョンに誤って残っていたデバッグ コードにあります。 Cisco IOS ソフトウェア 12.0 のメインライン リリースで、これが再度発生しています。 このエラー メッセージは、TACACS を設定していて、ルータの Command Line Interface(CLI; コマンドライン インターフェイス)で show line コマンドを実行したときに出力される可能性があります。 このエラー メッセージは、ルータの機能に影響しないので、表面的な不具合と判断できます。 このエラー メッセージが出力されないようにするには、Cisco IOS ソフトウェアを以降のリリースにアップグレードするしか方法はありません。

使用しているリリース トレインに応じて、Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.0(11)、12.0(11)S、または 12.1(2) 以降を稼動させる必要があります。 これ以外の不具合が発生している場合は、対応するリリース トレインで使用可能な最新の Cisco IOS ソフトウェアにアップグレードすることを検討してください。 最新版の Cisco IOS ソフトウェア リリースでも問題が発生する場合は、シスコ テクニカルサポートに連絡して、新しいサービスリクエストをオープンしてください。 その際には、トレースバックをデコードするために、エラーメッセージが記録された show logging コマンドの完全な出力と、show version の出力を用意してください。

この問題の詳細については、Cisco Bug ID CSCdp17107(登録ユーザ専用)を参照してください。

SCHED-2-WATCH

最初にイベントのデータ構造を作成しないで、イベントを登録しようとすると、このメッセージが表示されます。 これは Cisco IOS ソフトウェアの内部ソフトウェア 不具合です。 次のようなメッセージが出力されます。

%SCHED-2-WATCH: Attempt to enqueue uninitialized watched queue (address 0).
-Process= "Net Input", ipl= 0, pid= 29
-Traceback= 601B821C 60193428 604F59EC 604F6110 601C09F8 601934E0 6019304C 
  601A65E8 601A65D4

どのカードでも Online Insertion and Removal(OIR; 活性挿抜)時に、この種類のエラー メッセージが表示される場合があります。 たとえば、Cisco 12000 シリーズ インターネット ルータでは、GSR12016 シリーズのルータで Gigabit Route Processor(GRP; ギガビット ルート プロセッサ)カードを交換すると、このようなメッセージが表示されます。

%SCHED-2-WATCH: Attempt to set uninitialized watched boolean (address 0).
-Process= "LC Crash Complete Process", ipl= 0, pid= 29
-Traceback= 60189CA8 60244E08 6017562C 60175618

古いバージョンのコードには、冗長性の問題がいくつかあります。 これらの問題のほとんどは、最新の Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.0S で解決されています。 必ず、Cisco IOS ソフトウェア リリース 12.0(18)S1 および 12.0(17)S2 以降のソフトウェア リリースを使用してください。 障害のあるカードを装着し直してもうまくいかない場合は、ルータのコールド リロードで問題が解決する場合があります。

メッセージは、次に示す 7500 シリーズ ルータの出力と類似のものです。

%OIR-6-REMCARD: Card removed from slot 3, interfaces disabled
%SCHED-2-WATCH: Attempt to set uninitialized watched Boolean (address 0).
-Process= "OIR Handler", ipl= 0, pid= 7
-Traceback= 60236120 60C64838 60280594 60280874 602211BC 602211A8

ほとんどの場合、このような SCHED エラー メッセージは Cisco IOS ソフトウェアでの内部ソフトウェアの不具合が原因です。 そのため、これらのエラー メッセージのトラブルシューティングを行う際は、まず既知の不具合を調べてください。

使用しているリリース トレインの最新の Cisco IOS ソフトウェア イメージにアップグレードすると、スケジューラ関連の修正済みの問題を一掃できます。

それでも問題が解決しない場合は、show tech-support および show log コマンドの出力と、エラー メッセージの正確なコピーを、Cisco のサポート担当者にお知らせください。

TAC のサービス リクエストをオープンする場合に収集する情報

上記のトラブルシューティング手順を実行した後も、依然としてサポートが必要な場合は、シスコのテクニカル サポートでサービスリクエストをオープンする登録ユーザ専用)ことができます。 必ず次の一覧に示されている情報を収集してください。
  • エラー メッセージが表示されたコンソールのキャプチャ
  • 実施したトラブルシューティングの手順と、各手順を実施した際のブート シーケンスを示すコンソールのキャプチャ
  • 故障したハードウェア コンポーネントとシャーシのシリアル番号
  • トラブルシューティングのログ
  • show technical-support コマンドからの出力
収集したデータは、圧縮しないプレーン テキスト形式(.txt)でサービス リクエストに添付してください。 TAC Service Request Tool登録ユーザ専用)を使用して、情報をケースにアップロードすることができます。 TAC Service Request Tool にアクセスできない場合は、情報を E メールの添付ファイルで attach@cisco.com 宛てに送信してください。 メッセージの件名の行にサービスリクエスト番号を記入することにより、サービスリクエストに関連情報を添付できます。

必要のない限り、この情報を収集する前に手動でルータをリロードしたり、ルータの電源のオフ/オンを行わないでください。 これにより、問題の根本的な原因を判断するために必要な重要情報が消えてしまう可能性があります。

関連情報